自称クズ、聖人やってます ~ざまぁみろ。絶望さえも奪ってやったぞ~   作:杞憂谷

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第5話

目を開けると、斜めに伸びた、眩しい光が差し込んでくる。

 

朝か……。

 

俺は立ち上がり、埃を払う。

 

固い地面で寝たからか、体がバキバキである。

 

一つ伸びをしたところで、腹が鳴る。喉もカラカラだ。

 

そういや、昨日何も食べてないな。……草でも食うか。

 

辺りは石造りの建物、石畳、人は見当たらない。

 

植込みの葉っぱはあるが、誰かが育てているやつは俺の口には合わない。

 

ここは、街から外れて草原や森に出るのがいいだろう。

 

ただ方向が分からない。

 

適当にしばらく歩くと、人通りが出てきた。どこからかパンの焼ける匂いが漂ってくる。空腹を強く意識させられる。

 

俺は適当な男性に声をかける。

 

「なぁ、あんた。この辺に草原だか森だかはねぇか?」

 

「ここから東に行けばいいよ」

 

男性は太陽の方向を指す。

 

「ククク……。ありがとよ」

 

「あぁ、森には魔物がいるから、気を付けてくれよな。んじゃ」

 

男性は歩き去っていく。

 

魔物……?

 

なるほどな、そういう感じの世界なんだな。前世で見た事がある。ゲームや漫画みたいなファンタジー世界ってわけか。

 

ただ、魔物がどれくらい強いかわからない以上一人で行く訳にもいかないな。

 

とりあえず街の東にでも向かうか。そこからどうするか考えよう。

 

――

 

寂れた小さな建物が立ち並ぶ場所へ到着する。

 

確かに遠くには森、手前には草原が広がっている。

 

その辺なら危険も少ないだろうし、一旦食い物には困らないだろう。

 

俺は少し外れた場所まで歩き、草原に足を踏み入れ、屈む。

 

雑草をちぎっては口に放り込む。土の匂いが鼻を抜ける。

 

不味すぎる……。そりゃそうだ、ただの草なのだから。

 

ただ、生きる為には仕方のない事だ。腹の足しにはなるだろう。

 

せめてマヨネーズでもあればな……。

 

草をちぎっては食べ、ちぎっては食べを繰り返す。

 

すると背後から声をかけられる。

 

「おい、あんたどうしたんだ?草でも食って。腹でも減ってんのか?」

 

斧を担いだ大男が心配そうな顔をして立っていた。絶望レベルは3、平和なやつだ。つまらんやつだ。

 

俺は草を咀嚼しながら話す。

 

「ククク……。見りゃわかるだろ。草が大好物なんだよ」

 

「はぁ、珍しいやつだな」

 

危ない危ない、こんな大嘘に騙されるとはチョロいやつだ。

 

俺が嘘をつくのが上手いのかもしれんな。大悪党だし。

 

「斧を持ってるって事は、あんた、森に行くのか?」

 

俺は男に問いを投げる。

 

「そうだ。俺は木こりだから今日も朝早くから木を切ってこなきゃいけねぇんだ。憂鬱だよ」

 

「ククク……。そうかい、森って魔物が出るんだろ?大丈夫なのか?」

 

「まぁ、この辺の魔物はゴブリンとかそんなもんだから平気だよ。数が多くて厄介だが斧で一撃だ」

 

男は背負っている斧を突き出して得意げに話す。

 

ゴブリンか……。この世界で生きていくなら魔物とやらを知っておく必要があるだろう。この男を上手く利用させてもらうか……。

 

「あんたの仕事手伝わせてくれよ、タダでいいからさ……」

 

「はぁ?何言ってんだ?別にいいけどよ」

 

「決まりだな。グフフ……」

 

作戦通りだ。

 

「あぁ。予備の斧貸すよ。家すぐそこだから取ってくる」

 

男は道を引き返していった。

 

程なくして戻ってきた男から斧を受け取り、草原へ入る。

 

しばらく歩いたところで、男と森へ入る。

 

草や木が立ち並ぶ。ところどころ切り株が目立つ。

 

空気がひんやりとしている。が、特にゴブリンとやらの姿は見えない。

 

男が立ち止まると口を開く。

 

「今日はこの辺の木を切って、持って帰るぞ。これくらいの太さの木を見つけて切ってくれ」

 

男は手を小さく広げ、木の太さを体現する。

 

「あぁ、わかったよ。ククク……。さっさと始めよう」

 

早く終わらせて暇にしてやるよ……今のうちに何するか考えておくがいいさ。

 

俺は斧を木に打ち込み、手際よく木を切り倒す。かつて紛争地帯で木で家を建てた経験が役に立つとはな。

 

そんな俺を見て、男は口を開く。

 

「あんた、手際いいな。木こりやってたのかい?」

 

「フハハハ!俺は悪党だから森林伐採なんてお手の物なんだよ」

 

「はぁ?」

 

「いいから、手を動かそうぜ……」

 

木を切り倒しては、細かく割り、その辺に生えている蔓できつく縛る。

 

いい感じの太さの木が少なくなってきた。

 

「なぁ、この辺、切れそうな木少なくなってきたから、もうちょい進もうぜ……」

 

「あぁ、そうだな」

 

木を一か所にまとめて置き、森の奥へと進む。

 

少し進むと、衝撃の光景があった。

 

幼い子供くらいの体高、全身緑色の人型。

 

ゴブリンが血を流して、うつぶせで倒れていたのだ。背中には深い傷が走り、地面に血液がにじんでいる。小さく肩が揺れている。まだ呼吸はしているようだ。

 

「おい!あれ!」

 

俺は声を荒げて叫ぶ。

 

「あぁ。どうせ誰かに襲い掛かって、返り討ちにでもあったんだろ」

 

男は日常風景かのように普通のトーンで話す。

 

俺は斧をその場に落とし、気づけば倒れたゴブリンに駆け寄っていた。なぜか――わからない。ただ、体が先に動いた。

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