賢者の孫のお兄ちゃん(魔力無しVer.)   作:愛飢夫

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告白しました

 じいちゃんがやって来てディスおじさんと一緒に家に入っていったのを見送った後、クリスお姉ちゃんが俺の鍛錬に付き合ってくれると言ってくれたので今俺とクリスお姉ちゃんは庭で木剣を構え向き合っている。2人だけの世界だ。

 シン? アイツなら未だ股間を抑えて隅っこで転がってるジークの腰をトントンしてるよ。

 

「それでは始めましょうか」

「よろしくお願いしますッ!」

 

 開始の挨拶をしつつクリスお姉ちゃんをしっかり見据える。

 

 気の量は俺やミッシェルさんには劣るけど、やはり淀みのない美しい流れ方をしている。

 そこから推定されるクリスお姉ちゃんの戦闘力は……ミッシェルさんの強さを1ミッシェルとするならクリスお姉ちゃんは0.6ミッシェルくらいだろうか?

 ちなみに俺は気を全開にして戦った場合0.5ミッシェル、気を使わず素の肉体能力だけで戦えば0.22ミッシェルくらいの戦闘力くらいである。

 俺は前世で培ってきた技術はあれどまだ体が育ちきっていないため肉体能力がかなり低い。

 これから成長期に入るのでこのまま順調に体が成長すれば13歳時点で気を使わずとも0.9ミッシェル~1.2ミッシェルくらいの実力になる計算なので早く成長したいところだ。

 

 ってなんだこれややこしいな。俺はなぜミッシェルさんの強さを『1ミッシェル』とか謎の単位を考えたんだろう?

 普通に『ミッシェルさんの強さを100として』で良かったじゃん。

 

 まぁ、今はそんなことより目の前のクリスお姉ちゃんに集中しよう。

 クリスお姉ちゃんの強さは全力全開の俺より少し弱くて通常時の俺よりかなり強い。

 となれば気を使ってそれなりに肉体を強化して戦うべきなのだが、今回は模擬戦ではなく稽古なので逆に一切気を使わず素の肉体能力と技術だけでやろうと思う。

 

 刹那の間にそこまで考え、決断した俺は木剣を強く握りクリスお姉ちゃんへと突進した。

 

 その数分後、庭の端にはボコボコにされ倒れ伏す俺の姿があったとかなかったとか……

 

 

 

 ◇◆

 

 

 

 それから大体1ヶ月から2ヶ月に一度我が家を訪れるディスおじさんの護衛として来てくれるクリスお姉ちゃんと剣の稽古などで親交を深め続けた。

 俺の可愛い弟であるシンもクリスお姉ちゃんとジークに懐いて俺とクリスお姉ちゃんが仲良く楽しく剣のお稽古をしている時に邪魔者として入ってきたり何故かジークをお供に森に狩りに出たりと楽しく過ごしていた。

 

 ジークといえば来る度に気安い感じで肩を組んで馴れ馴れしく俺の名前を呼んだりしてきたりもしていたが、俺が笑顔でファイティングポーズを取ると股間を抑え、内股で超高速後退りを見せてくれるのが面白くていつの間にやら仲良くなっていた。

 

 そんな生活が数年続き、13歳になる誕生日の前日に俺はとある決意を持ってクリスねーちゃんに話しかけた。

 

「クリスねーちゃん、ちょっといい?」

「何ですか?」

 

 俺が声をかけると、クリスねーちゃんはこちらに向き直り俺と視線を合わせてくれた。

 

 俺は一度深呼吸をして暴れる心臓を押さえ付け、覚悟を決めてクリスねーちゃんの瞳を睨みながら口を開いた。

 

「我が名はルカ=ウォルフォード! クリスティーナ=ヘイデン殿、貴女に一騎打ちを申し込む!」

 

 俺は今日、クリスねーちゃんに告白する。

 

 明日に13歳になる俺は思った通り成長し、身長も160cm半ばを超えている。

 筋肉も成長を妨げないギリギリを見極めて鍛えているので身体能力も10歳の頃とは比べ物にならないくらいには成長した。

 具体的に言うと今の俺は気を使った全力戦闘時は2ミッシェル、気を使わない状態で0.95ミッシェルくらいの強さになっている。

 この数年の間にクリスねーちゃんも実力を上げていて現在推定0.83ミッシェルくらいとなっているので中々いい勝負が出来ると思う。

 

「一騎打ち……ですか? 理由を聞いても?」

「いや、それは終わってからで!」

「そうですか……なにか理由はあるのですね。わかりました、全力でお相手します」

 

 クリスねーちゃんは一度頷き、浮かべていた微笑を消して木剣を構えた。

 

 今、この庭には俺とクリスねーちゃんしかいない。

 俺は今日、この世界に来て人生初の恋人を作るんだ!

 

「準備は?」

「何時でも!」

「では……参ります!」

 

 クリスねーちゃんは腰を落とし、強く地面を蹴って斬りかかってくる。

 

 普段のクリスねーちゃんは冷静沈着でミステリアスな雰囲気のある美女なのだが、こと戦闘となると普段の印象とは真逆の苛烈な攻めの剣を振るう剣士へと変貌する。

 

 鋭く振るわれるクリスねーちゃんの連撃を時に躱し、時に弾き、時に受け流す。

 そうしてクリスねーちゃんが振るう木剣を捌く度少しずつ、本当に少しずつクリスねーちゃんの中を巡る気の流れと体勢を乱し、崩していく。

 

「はぁ!」

 

 俺の防御でじっくり念入りに気を乱され、体勢を崩されたクリスねーちゃんは一度俺を後退させようと力任せに強引な一撃を放ってくる。

 

 それ、悪手だよ?

 

「シッ!」

 

 横薙ぎに繰り出されたクリスねーちゃんの斬撃に対して俺は木剣を斜めに構えて受け止める。

 そのまま肉体強化には使わず木剣に纏わせていた気を操りクリスねーちゃんの気に干渉させ気の流れを一気に乱させる。

 

 気が乱れれば力も乱れる。俺に気を乱されたことでクリスねーちゃんの剣は刃先まで上手く力が伝わらず僅かに揺れた。

 

 今こそ俺が待ち望んだ『良きタイミング』。

 

 手首を返し、肘を折り、肩を引く。

 そうして剣と気を動かしてクリスねーちゃんの剣に絡ませ巻き上げる。

 

「なッ……!?」

 

 自分の意思に反して木剣を跳ね上げられ致命的な隙を晒したクリスねーちゃんはあまりの驚愕に大きく目を見開いた。

 

 クリスねーちゃんの剣を跳ね上げたことで俺の重心も浮いてしまったが、それでも立て直すのは俺の方が早い。

 

 これで、決める。

 歯を食いしばりながら全身の関節を連動させて木剣の向きを変える。

 

「どおおおおお!」

 

 雄叫びを上げながら足を引き、膝を曲げ、腰を回す。

 

 俺の放った横払いの斬撃は――クリスねーちゃんの脇腹に突き刺さった。

 

 胴有り! 一本!

 

 

 

 ◇◆

 

 

 

 俺の横払いの一撃を受け蹲るクリスねーちゃんに向けて気を送り、クリスねーちゃんの気を活性化させてダメージを癒していく。

 謝罪はしない。戦士同士の一騎打ちの結果の負傷なのだからそれに対して謝罪をするということは相手を侮辱しているのと同じになるから。

 

「私の……負けですね」

 

 しばらくすると痛みが引いてきたのか、クリスねーちゃんは立ち上がり嘆息しながら自らの負けを宣言した。

 

「いつか負ける日が来るかもしれないとは思っていましたが、まさかこんなに早く訪れるとは……ルカ、貴方は素晴らしい才能を持ち、それを磨き上げた一流の剣士です。このまま鍛錬を怠らなければミッシェル様を超える日も遠くはないでしょう。私が保証します」

「クリスねーちゃん……」

「それで……一騎打ちを申し込んできた理由は何ですか? お願い事や頼み事ならば私は敗者ですので私に出来る限りルカの要望にお答えします」

 

 クリスねーちゃんは真剣な眼差しを向けてくる。

 

 今なら「俺と付き合って!」と言えばクリスねーちゃんは敗者の義務として勝者である俺の頼みを断ることは無いだろう。

 

 でも、俺が望んでいるのはそんな事では無い。俺はクリスねーちゃんと相思相愛で真剣な結婚を前提としたお付き合いを望んでいるのだ。

 

 だから――

 

「勝者の特権として命令出来るなら俺の望みは『真剣に考えて答えて欲しい』だよ」

「なるほど……それで、私は何を考えれば?」

「俺と……付き合ってください!」

 

 俺はその場で腰を直角に折り、右手をクリスねーちゃんへと差し出した。

 

 やるべき事はやった。言うべき事も全部言った。あとは返事を待つだけだ。

 

 届け! 俺の初恋!




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