そうしてクリスねーちゃんと修行したりシンを修行という建前で叩いてみたり、ジークの尊厳と睾丸を破壊するフリをしてみたりミッシェルさんと更なる高みを目指して戦ってみたりしているうちにあっという間に15歳の誕生日を迎えていた。
15歳というのはこの世界での成人年齢らしく、この日の俺とシンのお誕生日パーティーは今までより盛大なものとなっている。
どの辺が盛大かと言うと参加者の数である。
今までのお誕生日おめでとうパーティーではじいちゃんとばあちゃんを固定メンバーとしてよく我が家を訪れる人たちの中で都合が合う人だけが参加していたのだが、今回はじいちゃんばあちゃんは当然としてミッシェルさん、ディスおじさん、クリスねーちゃん、ジーク、そして俺とはあまり関わりが無かったが我が家の出入り商人であるトムおじさんとオールスター勢揃いとなっているのだ。
ちなみに今更だが俺たちの正確な誕生日はわからないので俺たちをじいちゃんが拾ってくれた日を1歳の誕生日としている。
そんなこんなあってお誕生日おめでとうパーティーが始まったのだが、仕切っているのはじいちゃんではなくなぜかディスおじさんだった。
「さて、我らが英雄マーリン殿のお孫さんたちがこの度めでたく15歳となり成人した。これを祝って乾杯したいと思う。それでは皆、杯をもて。ルカくんとシンくんの成人を祝って……乾杯!」
「「「かんぱーい」」」
俺も皆と一緒に杯を掲げ、口を付ける。
「あのちっこかったルカとシンが成人するとはねぇ……」
開始しばらくの間じいちゃんとばあちゃんによる孫自慢が続き、なんともこそばゆい気持ちになり若干肩身の狭い思いをしていたのだが、やがて話題は俺たちの今後についての話になっていった。
「それで、ルカくんとシンくんはこれからどうするんだい?」
そうディスおじさんが聞いてきたのでシンとアイコンタクトを交わして頷き合い、代表して俺が答えることにした。
「とりあえず街に行ってみます」
「うむ。それから?」
「シンと一緒に片っ端から強いヤツと戦います!」
「ちょっと待って!?」
俺が今後の展望を語っていると、大人しく俺に任せたハズのシンが突然大声を出して話に割って入ってきた。
なにやってんだよもぅ……人が話をしているところに割って入るなんてお兄ちゃんはお前をそんな子に育てた覚えはありませんよ?
「なんだよ」
「いや『なんだよ』じゃないよ! なんでいきなり強いヤツと戦うってなってんの?」
「ロマンだろ?」
そりゃお前男なら強いヤツと戦って更なる強さを得る事こそが本懐でしょう?
その途中で負けて死んでもそれはそれで本望だよ。
「いや……俺は別にそこまで強さに固執してないんだけど」
「は? 何言ってんの? 昔『一緒に世界最強目指そうぜ』って約束しただろ?」
「してねーよ」
「したよ!」
確かあれは3歳の頃だった。
俺が「魔法が使えた上で俺が持ってる知識と経験を活かして幼い頃から鍛えたらきっと世界最強になれるね」って言ったらシンも「いいね」って言ったじゃん!
結局俺が魔法が使えなかったからってなぁなぁにしようとしてもダメなんだからな!
「いつそんな約束したんだよ!」
「3歳の時だよ! そう、あれはお前が初めて魔法を使った翌日の事だった……」
「モノローグ風に語ろうとするな!」
「いいから一緒に武者修行しようぜ! な?」
「『な?』じゃねーよ! やんねーよ!」
「なんで!?」
「いい加減におし!」
「「痛い!」」
俺とシンがギャーギャーと言い争いをしていると、急に不機嫌になったばあちゃんにハリセンでしばかれた。
既に前世の全盛期を超えている俺の肉体は常に気に覆われ高い防御力を誇るのだが、対俺用最終兵器としてシンが作成した《衝撃100倍(ルカ限定)》の付与を施された伝説のハリセンは易々と俺の防御力を超えてくる。
気による防御が出来ないシンも同じハリセンでしばかれているが付与されている(ルカ限定)の効果によりシンには普通のハリセンでしばかれた衝撃しか与えられていない。
これは酷い武器だと思う。というかマジで(ルカ限定)の意味がわからない。
シンが言うには「この世界の魔法は魔力制御とイメージで大体イける」とのことらしいのでイメージ次第で(ルカ限定)のような無理も通すことが出来るらしい。
逆に言えば(ルカ除外)も出来るという事だと思うので俺が前衛、シンが後衛で戦う場合シンは(ルカ除外)をイメージすれば俺を気にせず魔法をぶっぱ出来るという事だろう。
どうやらこの世界、フレンドリーファイアは無しらしい。
「ま、まぁやりたい事があるのはいい事だ」
「ディスおじさん、これはルカ兄が勝手に言ってる事だから! 納得しなくていいから!」
「そ、そうか……ではシンくんはどうしたいんだい?」
「えっと……」
ディスおじさんに聞かれたシンは言い淀む。
ほら、別にやりたい事なんて無いんだから俺と一緒に世界最強目指そうぜ?
「え? 何かあるだろ? ルカの『強いヤツと戦いたい』は置いておいて、街に行けばシンなら魔物ハンターにだってなれるだろうし、付与魔法で魔道具屋だって出来るだろ? それにそれだけ男前なんだから女の子と仲良くなって養ってもらえるかもしれないし」
「そんな考えを持っているのはアナタだけです」
「なんだと?」
「なんですか?」
クリスねーちゃんとジークがメンチ切り合ってる。
最初はお互い嫌い合ってるんだと思ってたけど、実はお互い憎からず思ってるって知ってるからなぁ……
まぁお互い相手には嫌われてると思ってることも知ってるんだけどね。言わないけど。
「ハンター? 魔道具屋ってすぐ出来るの?」
2人がメンチ切り合ってるのを無視してシンは小首を傾げているけど、お前そんな事も知らないの?
これはアレだよアレ……ファンタジー作品によく出てくる冒険者みたいなもんでしょ?
魔道具屋がすぐ出来るかどうかは知らない。
「まさかとは思いますがシンさん……ルカさんもですが、今まで買い物などをしたことは?」
買い物? そういえば……
「無いっすね」
「言われてみれば……俺もありません」
俺とシンが揃って頷くと、周囲の大人たちはぴしりと固まってしまった。
「マーリン……アンタ……」
「マーリン様……これは……」
ばあちゃんとミッシェルさんがじいちゃんを見る。
ばあちゃんの瞳には怒りが、ミッシェルさんの瞳には困惑がそれぞれ浮かんでいた。
それを見たじいちゃんは一瞬『やべっ!』と言いたげな表情を浮かべた後、右手を後頭部に当てペロッと舌を出した。
「常識教えるの忘れとった!」
「「「「な、なにぃぃぃぃいいいい!?!?」」」」
そういえばその辺何も教わってなかったなー。
下手に前世の記憶がある分普通に出来ると思ってたからこっちから聞くことも無かったし……ってあれ? 俺って自分で買い物したことあったっけ?
いや、でもカードは持ってたような……そういえばお札には誰が書かれてたんだっけ?
まぁ思い出せないものは仕方ない、そんなことより……じいちゃん、てへぺろはねぇよ。
明日、明後日は更新お休みさせていただきます。愛飢夫は週休二日です。