あれから数十分ほどして復活したばあちゃんの説教が続き、最終的に『俺たちはなんで怒られてるんだろ? 悪いのはじいちゃんじゃね?』とアイコンタクトでシンと意見を一致させた後、ようやく自宅に帰る許可を与えられた。
シンの開いた《ゲート》で自宅リビングに入り、全員が席に着いたタイミングでディスおじさんが真剣な表情を浮かべながら口を開いた。
「しかし……これはちょっとおいそれと世間に出せなくなってしまったな。2人ともちょっと規格外が過ぎるようだ」
「規格外が過ぎるって……」
「それってやべぇヤツってこと?」
それはちょっと酷くない?
「自覚していないようだね……各国がキミたち2人を手に入れたら場合……」
「どうなるの?」
「ゴクリ……」
「世界征服に乗り出す可能性が高い」
「「な、な、なんだってー!?」」
ディスおじさんの返答を聞いた俺とシンは揃って両手を上げて体を仰け反らせた。
てか世界征服とかマジですか? ウケるんですけど。草生える。
「息ピッタリだな……いや、仲が良さそうで何よりだ」
「まぁ双子だし?」
「この環境で仲悪かったら地獄だよね」
割と頻繁に色んな人が訪れるとはいえ基本的にこの家で暮らしているのはじいちゃんと俺とシンの3人だけ。そんな中で俺とシンが仲違いしてしまったとしたらそれはもう息苦しい生活待ったナシである。
もしも万が一そうなっていたら俺は家出をしていたと思う。週1くらいで戻ってじいちゃんに甘えるけど。
「ま、まぁそうだね。話が逸れてしまったが、私が今言ったことは決して有り得ない話ではないよ」
「そうなの?」
「ええ。シンの魔法は1人で国の魔法師団全体に匹敵するでしょうし、ルカの近接戦闘能力は文字通り一騎当千ですし……」
「一騎当千……クリスねーちゃん、素敵な褒め言葉をありがとう。でも盛りすぎだと思うよ」
「盛っていませんよ。考えてみてください。ルカから気を習う前の私でも国有数の騎士だったのです。当時の私が1000人居たとして今のルカを殺せると思いますか?」
「それは無理……かも……」
当時の戦闘力0.6ミッシェルのクリスねーちゃんが相手であれば1000人抜きでも乱戦でも俺が負けることは無いだろう。
なんせ戦闘中常時纏っている気の防御だけで当時のクリスねーちゃんの全力攻撃くらいなら防げてしまうのだから。
気を纏っていない状態なら殺せるだろうけど、気を纏っていない時はもうパッシブで《気配察知》が発動してしまっているので俺の感知を抜けて俺を暗殺するのは俺以上に《躁気術》に長けていないと無理なので俺の暗殺難易度はインフェルノである。
「でしょう?」
「う、うん……てかクリスねーちゃんって国有数の騎士なの?」
「そうですよ」
「そうなんだ……ってアレ? 国有数の騎士であるクリスねーちゃんが護衛してるディスおじさんって何者? もしかして偉いお貴族様だったり?」
俺がそう疑問を口にしながらディスおじさんへと視線を向けるが、ディスおじさんはじいちゃんたちと話をしているようで俺の視線には気付かなかった。
「マーリン殿、ルカくんとシンくんの力はハッキリ言って異常です。2人ともに各国の勢力バランスを崩壊させるほどの力がある。加えて2人ともこの森以外を知らない世間知らず……このまま社会に放り出したら各国の思惑に踊らせることになる。それは2人の為にも世界の為にもなりません」
「そうじゃのぅ……特にルカは『武者修行』と称してあちらこちらにフラフラしそうじゃし……」
言いたい放題だな!?
「そこで私に考えがあります。ルカくんとシンくんを我が国にある高等学院に入学させてみませんか?」
「それは……お主の国に取り込もうという考えかの?」
さすがにツッコミを入れようかと思ったのだが、ディスおじさんの話を聞いていたじいちゃんの声に険が籠るのを感じたので慌ててお口にチャックをする。
こんなじいちゃん初めて見たよ。さすがに今は黙るべき。
しかし学校か……前世で大学まで卒業した俺に今更必要なのか疑問である。ぶっちゃけめんどくさい。
「2人を軍事利用しないことはこの場で誓いましょう。私だって2人のことは赤ん坊の頃から見ています。いつも甥っ子のように感じていた彼らを戦場に放り込むなど、私の感情が許しません」
戦場……つまりは戦争か。
戦争は嫌いだ。国にその命を捧げた兵士同士が戦い散るのならそれは仕方の無いことなのだろうけど、戦争ってのは確実に民間人も巻き込むからね。
戦う力も覚悟も無い民間人を巻き込む戦争は大嫌いだ。そんなことをするくらいなら国が決めた代表者同士でステゴロすればいいと思う。そうなれば俺が出るから。
「となると……どういうことかの?」
俺が戦争について思いを馳せている内にも話は進む。
「ご存知の通り我が国には3つの高等学院があります。これらはそれぞれ15歳までの中等教育が終わった者の中で優秀だった者を専門分野ごとに更に鍛える為の高等教育機関です。ルカくんなら騎士養成士官学院、シンくんなら高等魔法学院。そこなら彼らがどれだけ規格外か、一般に優秀とされる騎士や魔法使いがどの程度のレベルなのか知ることが出来るでしょう。それに……」
ディスおじさんはそこで一度言葉を切って俺とシン、そしてクリスねーちゃんとジークへと視線を滑らせた。
「各高等学院の入学は15歳からです。今までお互い以外の同年代と付き合ったことの無い2人にとって友人を得るちょうどいい機会だとは思いませんか? 歳の近いクリスとジークはその……こんなですし……」
クリスねーちゃんへと視線を向けると、スっと視線を逸らされた。
そして逸らした先でジークと目が合ってメンチを切り始める。
2人が実は隠れ仲良しなのは知ってるけど……クリスねーちゃんを睨むとかジークは何考えてんの? 睾丸と尊厳破壊しちゃうよ? あーん?
「なるほどのぅ……」
「確かマーリン殿は王都に家をお持ちでしたでしょう。そちらに住めばお金の使い方など世間一般の常識も学べると思うのですが」
「ふむ……のぅ、ルカ、シン」
じいちゃんに呼ばれたので睨んでいたジークから視線を外してじいちゃんへと向き直る。
ジークが小さく「怖ぇよ……」などと言っていたが俺には聞こえない。聞こえないったら聞こえない。
「ワシはディセウムの言うことは尤もじゃと思うし、それが一番良いと思うのじゃが……どうかの?」
ふむ、学校か……勉強に関してはとてもどうでもいいのだけど友達が出来るかもしれないのか。
友達か……そういえば前世の俺って友達居たのかな……なんか取り巻きっぽいのは居たような気がするんだけど。
「俺はそれでいいよ! 学校って通ってみたいし、友達が出来るかもしれないんだろ? なんかすっげぇ楽しみなんですけど!」
シンは乗り気か。
勉強は嫌だけど、どうしても嫌ってワケでもないし俺も通ってみようかな?
友達も魅力的だけど、見どころのある奴が居れば弟子にして育ててみるのも楽しそうだし。
「シンは賛成か……ルカはどうじゃ?」
「うん、俺も行ってみようかな。クリスねーちゃんに聞いた感じ俺より強い人ってあんま居なさそうだから武者修行も楽しくなさそうだし。それなら才能ある若者を育てるのも一興かなって思うし」
「ルカくんとシンくん以上に才能のある若者は居ないと思うがね……」
「それはそれ、これはこれ!」
余程才能が無い奴でもない限り誰だって鍛えればそれなりの強さには到達するんだから無駄ってことは無いし。
その中から俺を愉しませてくれるような戦士が現れたらお得じゃん。
「う、うむ……ならば両学院には私から言っておこう。私としてはこのまま無条件で入学させてもいいのだが、形式上入学試験を受けてもらう事になる。いいかな?」
「無理」
「俺は別にいいよ」
「ルカくん、入学後のクラス分けは入学試験の結果を元にして決めるから受けてもらわねば困るのだよ。我が国の高等学院は貴族の権威を一切受け付けない完全実力主義でね……私が便宜を図ることも出来んのだ」
つまり実力で受かれってことか。
実技はまぁ問題無いだろうけど、筆記がなぁ……
俺がそんな事を考えていると、今の話で気になった事があったようでシンがディスおじさんに質問をしていた。
「そうなんだ……貴族の権威を振りかざしたらどうなるの?」
「厳罰に処する」
「恐っ!」
「優秀な騎士や魔法使いの芽を刈り取る行為だからな。国家への反逆と看做される場合もある。2人とも気を付けろよ?」
ディスおじさんはニヤニヤしながら俺たちのことを見ているけど、そもそも俺ら貴族じゃないし振りかざす権威とか持ってないよね?
「俺たちそんなばあちゃんに殺されるようなことをするほど命知らずじゃないよ!」
「あ゛あ゛!?」
やべっ、ばあちゃんがすげぇ顔して睨んできてる。絶対ばあちゃんの方は見ないようにしておこう。
「そ、そうだよ。それよりディスおじさん、さっきから『我が国』とか権威があるっぽい話とかしてるけど、ディスおじさんって何者なの?」
睨まれているのは俺なのだが、ばあちゃんから見て俺の延長線上に座っているシンも居心地が悪いのか慌てて話を逸らそうとディスおじさんに質問を投げ掛けた。
シン、ナイス判断!
ネトフリ見てたらオバロの聖王国編を発見してしまった……
見てたらやっぱりオバロって面白いよなぁと再確認。
ノリと勢いで消しちゃったけどオバロ二次も復活させようかなぁ