賢者の孫のお兄ちゃん(魔力無しVer.)   作:愛飢夫

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初めての授業を受けました

 その後食堂へと案内された俺たちは流れでそのまま昼食を食べることになった。

 

 騎士学院の食堂はなんというかバイキングみたいな感じで好きな物を好きなだけ食べ放題、しかも無料! という至れり尽くせりな食堂だった。しかも美味い。

 

 なんでも『三大高等学院』と呼ばれる『騎士養成士官学院』、『高等魔法学院』、『高等なんとか学院』は3校共通で学費や寮費、食堂での食費が無料らしい。

 それらのお金は全て国が予算を組んでいるのだそうだ。

 

 国から支払われたお金で食って学んで国に仕えない俺は穀潰しってことなのかな?

 

 学費とかはじいちゃんが払ってくれるものだと思っていたから入学したけど、こうして税金が入っているのなら国に仕えない俺は入学するべきでは無かったのかもしれない。

 しかし既に入学してしまっている以上今更「辞めます」と言っても繰り上がり合格者が出る訳でも無いので気にしても仕方の無い事だろう。

 

 つまり何が言いたいのかというと――

 

「ルカ、取りすぎではないのか?」

「食べ放題だって言われたからつい……」

 

 テーブルに着いた俺の目の前には料理が山のように積まれたお皿が何枚も並んでいた。

 

「そんなに食べられるのか?」

「『腹が減っては戦ができぬ』って言うじゃない?」

「それはわかるが……明らかに食べ過ぎじゃないのか? そんなに食べて午後の実技で動けるのか?」

 

 そう言うクライスの前には肉、野菜、スープ、パンがバランスよく配置されている。

 

「ルカもだけど、ケントも良く食うよな……」

「俺は体がデカイからな。おかわり取ってくる」

「マジかよ……」

 

 ケントは見た目通りの健啖家のようで最初に取ってきた量は俺より少なめだったのだがあっという間に平らげておかわりを取りに向かう。

 反対にノインの食は細いようで対面に座っているミランダよりも並んでいる料理の量は少なかった。

 ミランダの前に並んでいるお皿には肉ばかりが乗っており、野菜は殆ど乗っていない。

 

「ノインは強くなりたいならもっと肉を食べるべきよ」

「ミランダは肉しか食ってないじゃん。もっと野菜食えよ」

「嫌よ。アタシは野菜は好きじゃないし、野菜を食べても強くはなれないじゃない」

「そこまで言い切られるとむしろ清々しいな……なんというか、俺より力ありそうな。何より男らしい」

「アタシは女よ!」

「ノインはデリカシーというやつを学ぶべき」

「昨日クラスの奴らを煽りまくってたルカにだけは言われたくないぞ!?」

 

 失礼な、別に煽ってなんかないぞ?

 

 そんな風にワイワイと騒ぎながら楽しい昼食の時間を過ごし、一度教室に戻って実技用の皮鎧を身に付けて第一訓練場へと移動する。

 

 ちょっと食べ過ぎてお腹が重いので気を循環させて消化速度を早めておこう。

 

「それでは騎士養成士官学院最初の授業を始める」

「「「よろしくお願いします!」」」

「授業内容は模擬戦だ。昨日の自己紹介は入試成績順にやってもらったから今日は逆に成績が下の者から誰と戦うか選んでもらおうか」

 

 先生が指名するんじゃなくて生徒が戦いたい相手を指名するの?

 なら俺が指名する番がきた時に「マロウ先生と戦いたい」って言えば戦ってもらえるのかな?

 

「では早速始めようか。入試順位10位ジョン=ウォリアス」

「は、はい!」

「お前は誰と戦いたい?」

 

 名前を呼ばれたヒソヒソくんたちの中の1人……赤毛のツンツン頭が特徴のジョン・ウォリアスくんは一瞬だけ悩むように視線を宙に彷徨わせ、すぐに俺へと向けてきた。

 

「ルカ=ウォルフォードでお願いします!」

「だそうだ。ウォルフォード、どうする? 受けるか?」

 

 マロウ先生に「受けるか?」と聞かれるが、勝負を挑まれて拒否するなんて武人として有り得ない。

 

「もちろん。でもその前にひとつだけいいですか?」

「なんだ? 言ってみろ」

 

 マロウ先生の許可が出たので俺は昨日話していた内容通りの提案をすることにした。

 

「昨日の放課後に『5人纏めて相手する』って言っちゃったんでウォリアスくんとその後ろの4人纏めて相手してもいいですか? 多分あの4人も俺を指名してくると思うんで、その方が早いです」

「……そうなのか?」

「舐めるな! 1人ずつだ!」

 

 俺の提案を聞いたマロウ先生が確認するようにウォリアスくんたちへと視線を向けると、ウォリアスくんは顔を真っ赤に染めながら反論してきた。

 

「ちなみに俺もルカを指名するつもりだぞ」

「アタシもよ」

「俺もだな!」

「……俺も挑戦してみたい」

 

 俺の後ろでクライスたちも何か言っていたが、聞こえなかったフリをしよう。

 いや、逆に全員が俺と戦いたいのなら9対1の乱戦とかとても面白そう――

 

「だそうだ」

「俺としては1対1でも5対1でも9対1でもなんでもいいです。じゃあ1人ずつってことでサクサクやりましょうか」

「9対1……?」

 

 正直このレベルの相手と1対1で戦っても得られる物はほとんど無いから多対1の経験を積みたかったんだけど、それは俺の都合だからね。

 全員と1対1をやった後で今度は俺提案の9対1をやらせてもらおう。いや、マロウ先生含め10対1の方がいいかな?

 

「あ、ああ……それでは2人は武器を選べ」

 

 そう言ってマロウ先生は様々な大きさの木剣や木槍の入った樽を指し示した。

 樽の横には色んなサイズの盾も置かれている。

 

「うーん……」

 

 さて、どれにしよう?

 

 短剣、長剣、大剣、双剣、短槍、長槍etc……

 どの武器を使っても戦えるからこそどれを使うか悩んでしまう。

 乱戦なら一発で薙ぎ払える大剣とか槍が便利なんだけど、1対1で槍を使って勝っても「間合いが……」なんて言い訳をされたらとてもダルい。

 

「おい、早く決めろよ」

 

 そう声を掛けられたので声のした方へと視線を向けると、右手に長剣を、左手に円形盾を持ったウォリアスくんが立っていた。

 

 一般的な騎士スタイルか……考えるのもめんどいし、それなら俺もそれに合わせようかな。

 同じ装備で圧倒されたらなにかの参考にもなるかもしれないし。

 

 そう思い樽の中から適当に長剣サイズの木剣を引き抜き、並べられている中からウォリアスくんが持っているのと変わらない大きさの盾を取る。

 

 そして訓練場の真ん中へと移動して5m程の距離を開けてウォリアスくんと向かい合った。

 

「準備はいいか?」

「バッチコイです」

「大丈夫です」

 

 マロウ先生の確認の声に合わせて剣と盾を構える。

 元々盾を使わない俺は普段なら両手で剣を握るのだが、今日は片手剣スタイルなので盾を持つ左半身を前に出し、軽く右足を引いた構えを取った。

 

 うーむ……一応この型もミッシェルさんから叩き込まれたのでそれなりに使えるけど、前世で一度も盾を使ったことが無いからかやはりすごい違和感がある。

 

「では……始め!」

「やぁぁぁあああ!!」

 

 マロウ先生が開始の合図を出すと同時、ウォリアスくんは盾を前に出しながら突撃を仕掛けて来た。

 

「オラァ!」

 

 そして掛け声と共に体重を乗せた盾突撃(シールドバッシュ)を放って来る。

 

「うーん……」

 

 ウォリアスくんら踏み込みからここまで全て真っ直ぐ進んできているので一歩横にズレれば回避することは容易いのだが、遅すぎて回避するのも申し訳なくなってきた。

 

「喰らえウォルフォード!」

 

 実はそれはフェイントで、直前になって違う動きをする――なんてことはなく、そのまま愚直に体当たりを仕掛けてきたので構えている盾に角度を付けて斜めに受けてそのまま盾を時計回りに動かして受け流す。

 

「柔よく剛を制すってね」

「うおっ!?」

 

 力の流れを完全に乱されたウォリアスくんは前のめりになりたたらを踏んだ。

 その隙にウォリアスくんの木剣を自分の木剣でたたき落としてそのまま首筋へと添える。

 

「ほい。これでウォリアスくんは一回死んだよ」

「……えっ?」

 

 ウォリアスくんは『一体何が起こったのかわからない』といった様子でこちらを見ているので何が起きたのか説明してあげよう。

 

「《盾突撃(シールドバッシュ)》はいいんだけど、真っ直ぐ来すぎだよ。それに一歩目の踏み込みが遅いからこっちとしては回避、反撃、受け流しとどの選択肢も選べる状況になっちゃってる。そしてなにより体当たりの瞬間に視線を切っちゃったでしょ? だから俺が何をしたのかわからないんだよ。戦闘中はいついかなる場合においても敵から視線を外しちゃいけない」

 

 仮に《盾突撃(シールドバッシュ)》を仕掛けてきたのがミッシェルさんやクリスねーちゃんだったら俺の選択肢を潰す動きをしてから突撃を仕掛けてくるからね。

 最低でも『視線の誘導』くらいはしないと相手の選択肢を潰すのは不可能だよ。

 

「あ、ああ……」

「せっかく盾だけじゃなく剣も持ってるんだからもっと『斬りかかるぞ!』って気迫を出してみたり、突撃する直前に剣を動かして『《盾突撃(シールドバッシュ)》はブラフだぞ!』みたいな雰囲気出すとかするといいよ。時には愚直な行動だからこそ相手を惑わすことが出来たりするけど、まずは自分の行動で相手を惑わすことから始めてみよう」

「わ、わかった……」

 

 ウォリアスくんが頷いたので説明とアドバイスはこれくらいにしておこう。

 

「勝負あり! 勝者ウォルフォード!」

 

 俺の意図を察していたのか、マロウ先生は俺が口を閉ざすと同時に試合終了の合図を出した。

 

「やはり強いな……」

「そう? ありがと」

 

 試合終了の礼をしてから皆のの所に戻るとクライスがしみじみとそんなことを呟いた。

 

 そうは言うけどクライスならウォリアスくんに俺と似たようなやり方で勝てると思うよ。

 

「外から見ててもルカの動きがわからなかったわ……」

「受け流しって相当難しいのにあんなアッサリと……しかもウォリアスも結構鋭い踏み込みだったのに……」

「……ルカには力押しは通用しないということだな」

 

 ミランダとノイン、ケントがコソコソと話しているが、結構ゆっくり動いたつもりだったんだけどな……

 ウォリアスくんの踏み込みは遅すぎるし、力任せの攻撃を仕掛けて来てもそもそも力は俺の方が上だろうから無意味だね。

 

「よし、では次は――」

 

 それからマロウ先生に名前を呼ばれた全員が対戦相手に俺を指名してきたので全員と戦い、アドバイスをしていった。

 そしてようやく俺が指名する番が回ってきたので「マロウ先生と戦ってみたいです」と言ってみたのだが、あくまで学生同士が戦う授業だと言われて断られてしまった。

 

「私としては是非とも戦ってみたいとは思うのだが……皆の前で生徒に負ける訳にはいかんしな」

「別に負けるとは決まってなくないですか?」

「いや、残念だが正直言って勝てる気がしない。私が本気で戦ってもウォルフォードの足元にも及ばないだろう」

「そうですか……」

「まぁ機会があれば一度胸を借りたいと思っている。その時にはよろしく頼む」

「わかりました。何時でも言ってください」

「ああ。それで……誰と戦いたい?」

「次席のミランダと首席のクライスも俺を指名する気満々みたいですし……いっそクラス全員対俺でやるのはどうですか?」

「それは……」

 

 結局初めての授業でそこまでするのはどうかと思うとの事でここは首席のクライスを立てると思って俺はクライスを指名した。

 

「俺はこの授業で二度もルカに負けなければならないのか?」

「いや、クライスが別の人を指名すればいいだけじゃん」

「……言われてみればそうだな」

 

 別に俺を指名しないといけないルールじゃないからね?

 

 こうして俺が指名したクライス、俺が指名されたミランダとも戦い試合終了後にアドバイスを送ってあげて授業は無事終了した。

 

 ちなみにクライスはミランダやノイン、ケントなどの上位入学者ではなく10位入学のウォリアスくんを指名して戦っていた。

 

 特に苦戦することもなくアッサリ勝っていたのでやはりクライスはこのクラスの中では飛び抜けて強いんだと思う。

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