賢者の孫のお兄ちゃん(魔力無しVer.)   作:愛飢夫

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真犯人と出会ったらしいです

 じいちゃんとばあちゃんへの紹介も恙無く終了したので裏庭へと場所を改め早速《躁気術》習得のための鍛錬を開始した。

 最初に行うのはミッシェルさんやクリスねーちゃんにもやったのと同じ、俺の《躁気術》を使ってクライスたちの気を活性化させてその感覚を掴ませることだ。

 

 最初はびっくりするかもしれないと思っていたのだが、そういえばクライスたちには入学式の日に一度体験してもらっていたのでクライスたちは《気の活性化》を普通に受け入れていた。

 

「改めてこれが『気が活性化している状態』だよ。まずは自力でこの状態になれるようになることから始めます」

「自力で……どれくらい掛かるだろうか」

「頑張り次第だよ。けどまぁ俺が補助するから1ヶ月半まではかからないくらいじゃないかな?」

 

 ちなみにミッシェルさんがこの『気の活性化』を自力で出来るようになるまでにかかった時間は1週間くらい、クリスねーちゃんで3週間かからないくらいだったかな?

 

 でもその2人はほぼ付きっきりでやってそれくらいの期間だったから、本格的な指導は学院が終わってからの時間しか無いクライスたちならそのくらいはかかると思う。

 俺の補助が無ければ『気の活性化』の前段階の『気の流れの把握』に数年かかるだろうから1ヶ月半でもかなり早い方なんだけどね。

 

「1ヶ月半か……わかった」

「クライスたちは気が活性化された状態の身体能力に慣れることと、俺が活性化する時に動く自分の気の感覚を掴むことに集中してね」

 

 それからしばらくの間クライスたちは裏庭で飛んだり跳ねたり走ったり、時には筋トレしてみたりしながら気の活性化状態が収まるまで動き続けた。

 

「――あれ?」

 

 最初に活性化状態が解除されたのはミランダのようで、徐々に体が重くなっていく感覚に不思議そうな顔をしている。

 

「それは活性化状態が解除されたからだね。少しずつ強化状態が解除されて徐々に普段通りの身体能力に戻っていくよ」

「そっか……でもなんでアタシが一番なの?」

「それは気の量が4人の中で一番少ないからだね。鍛えていけば持続時間は伸びるから今はあんまり気にしなくていいよ」

 

 4人の中で持っている気の量が一番多いのはケントで、クライス、ノイン、ミランダと続いている。

 

「そう……でも気にするなと言われても気になっちゃうわね」

「少ないと行っても4人にそこまで大きな差はないから鍛えていけばすぐに追い付けるよ。それに量では劣ってるけど『気の質』はミランダが一番だから」

「気の質?」

「うん。簡単に言うと『気の量』は持続時間に関係していて『気の質』は強化率に関係してる感じだから」

 

 だから活性化状態の時は4人の中ではミランダが一番強かったりするんだよね。

 まぁクライスとは僅差だからミランダの活性化状態が解除されるまで粘れば最終的に気の量で勝るクライスが勝つんだけど。

 

 質と量トータルでみればクライスが一番バランスがいい。さすが首席。

 

「そうなのね……」

「気の量は体の大きさや鍛え具合にもよるからどうしても女性は男性より少なくなる傾向があるから仕方ないよ」

 

 ミランダは女性としてはかなり鍛えられているけど学院上位の男子生徒と比べるとどうしてもね。

 

「……やっぱり女じゃ男には勝てないのかな」

「そんな事ないよ? さっきも言ったけど『気の質』はミランダが一番綺麗だし、個人差はあれど全体的に見て男性より女性の方が繊細な気のコントロールが出来る人が多いから決して劣ってるってことじゃない」

 

 例え気の量が少なくても質とコントロールで優ればなんの問題もないのだ。

 

「そっか……」

「うん。じゃあ2回目の活性化いってみようか。手を出して」

「お願いするわ」

 

 差し出されたミランダの手に触れてそこから俺の気を流し込んでミランダの気に干渉させる。

 

「んっ……」

 

 ミランダは眉を寄せ頬を紅潮させる。

 

「これでよし。活性化状態が解除されたらまた活性化させるから、解除されたら言ってね」

「ええ……」

「クライスたちもそろそろ解除された頃でしょ? 活性化し直すからこっち来て」

 

 クライスたちの気の量的にそろそろ完全に解除されていると思って声を掛けたのだが、返事がない。

 

「どした?」

 

 不思議に思い正面に立っていたミランダから視線を外してクライスたちへと向けると、クライスたちは目をぱちくりとさせながらミランダの顔を凝視していた。

 

 一体何に驚いているのだろう?

 

 

 

 ◇◆

 

 

 

 その日は5回ほど気の活性化を行い、全員の顔に疲れが見え始めたところで鍛錬を終了して解散となった。

 そして翌日、先日と同じように気配を消しながら屋根伝いに登校すると既に4人は登校していたので朝のホームルームが始まる前に一度気を活性化させる。

 ホームルームが終わる頃には時間経過で活性化状態が解除されているので授業開始前にも活性化させておく。

 

 一応昨日も活性化させたので身体能力が上がっていることは理解しているハズなのだが、授業中に「あっ……」という声とペンが折れる音が聞こえてきたので笑いをこらえるのに必死だった。おかげで寝ずに授業を受けられた。理解出来たかどうかは別として。

 

 その後学院が終わり、自宅の裏庭へと移動して何回か気の活性化と活性化状態に慣れるために軽い運動を繰り返しクライスたちの顔に疲れが見え始めたところで解散となった。

 そうしてクライスたちを見送り、1人でミッシェルさんから教わった型や前世で身に付けた型の復習をしていると、見知った気配が我が家に近付いてきているのを感知した。

 どうやらシンたちが帰ってきたようだ。

 

「おかえりー。お友達の方もいらっしゃい」

 

 型稽古を終わらせて玄関へと周りシンたちを出迎える。

 

「ああ、ルカ兄。ただいま」

 

 なんだろう、シンの声に張りがない。

 

「邪魔するぞ」

「お邪魔します」

「お、お邪魔します……」

 

 シンに続いてオーグ、赤髪の美少女、青髪のナイスバディな美少女も俺に挨拶を返してくれた。

 

 さてさて……どちらがシンの想い人なのかな?

 

「えっと……どこに案内すればいい? 応接室? それともシンの私室?」

 

 シンは難しい顔をしていてお友達を案内する気配が無かったので代わりに俺が聞いてみると、青髪のナイスバディな美少女の方が「シ、シンくんの部屋……」と呟いていたのでおそらくこっちがシシリーさんだろう。なんとなくそんな気がする。

 

「ふむ……私としてはシンの私室に興味があるのだが、今日のところはマーリン殿とメリダ殿にも話があるから応接室で頼む」

「じいちゃんとばあちゃんに? またこいつ何かやらかしたの?」

「まぁ……な」

 

 オーグは歯切れの悪い返事をして俺から視線を逸らした。

 

 シン……お前一体何やったの?

 

 

 

 

 

 ◇◆

 

 

 

 

 

「で、お前今度は何をやらかしたの?」

「やらかしたって……オーグ、ルカ兄にも話して大丈夫か?」

「え? 俺は聞いちゃダメな話なの?」

 

 だったら部屋に戻ってようか? その気になれば自室からでも応接室内の会話を盗み聞くことは出来るけどダメなら聞かないようにするよ?

 

「いや、ルカもシンやマーリン殿、メリダ殿と同じ家で生活しているのだから遅かれ早かれ耳にすることになるだろう。ただし、これから話すことは絶対に他言無用で頼む」

 

 オーグが真剣な眼差しを俺に向けて来たのでこれは冗談などでは無いと判断してとりあえず真顔で頷き返す。

 

「今度は一体何を聞かされるのかねぇ……」

「そうじゃのぉ……」

 

 じいちゃんとばあちゃんは若干遠い目をして囁きあっている。

 ついこの間「シンが魔人を討伐した」と聞かされたばかりなのだからこの反応も仕方の無いことなのだろう。

 

 まったく、じいちゃんとばあちゃんに心配ばかり掛けやがって……

 

 それからシンとオーグから今日起こった出来事を聞いたのだが――

 

「理性のある魔人じゃと!?」

「シン……アンタはまたトラブルを抱えてきたね!? いい加減におしッ!」

 

 説明を聞いたじいちゃんとばあちゃんが驚きのあまり座っていたソファを蹴飛ばすような勢いで立ち上がり、声を張り上げた。

 

 ついでにシンに矛先が向いているが、今回のシンは巻き込まれただけっぽいので冤罪のような気がするよ。

 矛先がこっち向いたら嫌だから黙ってるけどさ。

 

 しかし理性のある魔人か……とりあえず超級にヤバいってことだけは理解した。

 

「おそらくシュトロームには『国家反逆罪』として指名手配が掛かるでしょうが……」

「国家反逆罪て……」

 

 それって死刑しか無いやつじゃない?

 

「奴は私たちの前で『リッツバーグを魔人化させたのは自分だ』と自白したからな。『理性のある魔人が現れた』などと公表しては国民がパニックを起こしかねないからおそらくそうなるだろうと思う」

「そうなんだ……」

 

 ストーカー野郎とはいえ市民を魔人化させたと自白したのなら国家反逆罪は妥当なのかな?

 

「ルカ……頼むから短絡的な行動は謹んでくれよ?」

「短絡的って……例えば?」

「シュトロームを探して正面から戦闘を挑むなどだな」

「そんなことしないよ」

 

 だからなんで皆俺のことを戦闘狂みたいに思ってんの?

 そんな力無き一般市民に被害を出すような奴を殺るなら気配を消してひっそりこっそりアサシネイトだよ!

 

「そうか……それならいいのだが……」

「正面から戦ったら周囲に被害が出るかもじゃん? だから殺るなら暗殺だよね」

「やるなよ! 絶対やるなよ!!」

 

 何それ、フリ?

 

「……確かにルカが本気で気配を断てばワシらでも感知出来んのじゃから可能かもしれんが……」

「ルカ、絶対にやろうとするんじゃないよ。そういうのは大人に任せておきな。アンタが手を汚す必要は無いんだ」

 

 そりゃ俺だって自ら進んで人殺しなんてしたくはないけど、市民に被害を齎すような犯罪者やテロリストが目の前に現れたら俺は躊躇なくこの手を血に染めるだろう。

 だって力無き一般人を守るのは力ある武人の義務なのだから。

 

「そういう事だ。もしもシュトロームが目の前に現れたのなら仕方がないが決して能動的に探そうとするなよ?」

「……わかったよ」

 

 探しには行かないけど全力で範囲を広げた《気配感知》だけは使っておくね。

 ヤバそうな気配を見付けたらそっち方面に散歩に行くよ!

 

「ルカが理解してくれたのなら話は以上だ。何かほかに聞いておきたいことはあるか?」

「あ、それなら……」

 

 俺はオーグから視線を外してシンの隣に並んで座っている女子2人へと向けた。

 

「そろそろそっちの2人を紹介して欲しいかな」

 

 俺がそう言うと、応接室の中を天使が通り過ぎた。

 

「……ルカは知らなかったか? 先日シンの叙勲の話が出た時に顔は合わせているだろう?」

 

 オーグがとても気まずそうに聞いてきたので俺は首を縦に振りながら返事をする。

 

「うん。あの時チラッとは見たけど紹介される前にばあちゃんに引き摺られたからさ」

「ああ……」

 

 その時のことを思い出したのか、オーグは一瞬遠くを見るような目になっていた。




現在ガチで転職を考えておりまして、そっちの活動が忙しくて書き溜める暇がありません……
とりあえず第1志望で受けたとこから不採用通知が来て昨日は精神的に死んでました。慰めろください。

書き溜めが消滅したのでこれからは不採用……じゃなかった、不定期更新になっちゃいます。

皆様愛飢夫を慰めつつ応援してあげてください。高評価や感想、ここ好きを貰えると愛飢夫のモチベーションが上がって採用率も上がるかもしれません。
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