俺の熱い語りを困惑しながら聞いていた職人さんだったが、『刀の美しさ』や『実用性』から『製造方法』へと移るととても興味深そうな顔をして聞いてくるようになり、素材となる『玉鋼』の入った袋をカウンターの上に出すと真剣な顔をして頷いてくれた。
この玉鋼は以前森で暮らしていた時に自分で刀を打とうとしてシンに協力させて砂鉄を集めさせシンの魔法を活用して作り上げた物である。
当時は俺の剣と腕をぶった斬った罪悪感からかとても素直に言うことを聞いてくれていた時期だったのでとてもいい感じの物が出来たと思う。
しかしその完成した玉鋼を刀に加工する腕が俺やシンにあるわけも無く……
なのでその玉鋼をシンの《異空間収納》に保管しておいていつか大きな街に行くことがあれば刀に加工してもらおうと思っていたのだ。
シンがいない時にミッシェルさんが来た時のことを考えて数日前に出しておいてもらって本当に良かった……
ちなみに何故今日の今日まで鍛冶屋さんに来ていなかったのかといえば数日前に玉鋼を出してもらった日まで完全にその存在を忘れていたからである。
シンに言われて思い出したよ。
「なるほど……確かにこれも今まで見たことも聞いたこともない全く新しい武器だな」
「でしょう? ちなみに刀も打った職人さんと振るい手の腕が一流なら鉄の塊も斬れますよ」
「ほう……」
「自分で言うのはちょっとだけ恥ずかしいですけど、俺にはその腕があると自負しています。けれど振るう刀がありません」
そこで一度言葉を切って職人さんの顔をチラリと覗き見る。
「……貴方に俺の腕に見合った刀は打てますか?」
試すような雰囲気を出すため上から目線でそう言うと、職人さんは強い眼差しで俺を睨みつけながらも頷いた。
「やってやろうじゃねーか。来週この時間にまたここに来い。それまでに何本か試作品を打っておく」
「ありがとうございます! ちなみにお代の方はおいくらで……?」
ここまで話を進めておいて手持ちが足りなかったらとても恥ずかしいことになってしまう。
その時は……ダッシュで森まで行って魔物狩って来たらなんとかなるかな? なんとかなればいいな。
「そうだな、素材持ち込み分を引いて……こんなもんだな」
職人さんはカウンターに置いてあった紙にサラサラと代金を書き込んで提示してくる。
うん、全然足りない。半分くらいしか持ってないです。
「えっと……」
「なんだ? 予算オーバーなのか?」
「恥ずかしながら……ちょっとでっかい魔物でも狩って来るんでその素材で物納することは可能でしょうかね?」
「デカイ魔物? 中級の魔物素材なら買い取ってやれない事も無いけどよ……どんな魔物狙うんだ?」
「虎とかどうです? あれならデカイから毛皮剥いで敷物にしたら高く売れると思うんですけど……」
敷物にするなら武器を使わず素手でぶん殴って頭蓋骨ごと脳みそ破壊して毛皮に傷一つ付けないように持ってきますんで。
「と、虎って……災害級のあの虎の魔物の事か!?」
「それですねぇ」
そういえば虎とか獅子の魔物って『災害級』とか言われてるんだけど、そいつらを簡単に狩れてしまう俺たちって何になるんだろうね? 天災級とか?
「ルカ! アンタ災害級の魔物狩れるの!?」
そんなことを考えていると、職人さんと話している俺を放置して店内に並んでいる武器をうっとりとした表情で眺めていたミランダが大きな声を出しながら俺の隣へと戻ってきた。
「狩れるよ? 昔シンが俺を倒すための魔道具制作にハマってた時に素材として提供してたし」
その時の素材を使って作られた《衝撃100倍(ルカ限定)》の付与が施されたハリセンはばあちゃんのメインウエポンになってるし。
「素材って……しかもそれを自分を倒すための魔道具制作に提供するって何なの……」
「シンがどんな手段を用いて俺に勝とうとするのか見るのが楽しくて」
そんなことをせずとも遠距離から超広範囲高威力の魔法を使われたら俺に勝ち目は無いんだけどね。
俺が止めようが無い距離から光を収束させた《ソーラービーム》なんて撃たれたら全力で防御しても防御ごと貫かれて体に穴が空くから当たり所によっては普通に死ねるし。
さすがに光の速度で放たれる《ソーラービーム》は躱せない。
あれ? なんの話をしてたんだっけ?
「そ、そりゃ物納でも構わねーけどよ……災害級の魔物が狩れるなら討伐報酬だけでも何本も刀を作れるくらい稼げるぞ?」
「え? そんなに?」
「そりゃあ災害級の魔物と言えば騎士団が決死の覚悟で討伐するような魔物なんだから当たり前だろ……」
魔物討伐は稼げるとは聞いていたけど虎1匹狩るだけで何本も刀を作れるほどに稼げるものなの?
あいつら数が少ないから探すのはめんどいけど見つけさえすればワンパンで倒せるからそんなに強いイメージ無いんだけどな……
ミッシェルさんの方が何倍も強いよ。
「災害級の魔物を倒せるとかルカはどれだけ強いのよ……」
「じいちゃんハンターやばあちゃん、ミッシェルさんとかシンだって災害級の魔物倒せるよ?」
「賢者様に導師様、それに剣聖様と新たな英雄って……ビッグネームばかりじゃない」
全員身内みたいなもんだしなぁ。
「なんだか魔人と相対したのがシンじゃなくてお前さんだったとしても討伐出来てたのかもしれないな」
「あー、シンは『ルカ兄なら余裕で勝てた』とは言ってましたけど、実際見てないから俺からはなんとも言えないです」
「マジかよ……」
俺の場合遠距離攻撃は出来ないから魔人の魔法を捌きながら接近さえ出来ればどうにでもなると思うけど、肝心の魔人の魔法がどれくらいの規模と威力なのかわからないからなんとも言えないんだよね。
「アタシ、そんな人に教えてもらってるんだ……」
なんだか話を聞いたミランダが遠い目をしているけど、ミランダならそう遠くないうちに災害級の魔物くらい倒せるようになると思うから頑張って頂きたい。
その後なんやかんや話し合い「完成した刀で災害級の魔物を狩りまくって『ビーン工房で作った武器です』と宣伝してくれるのなら予算として持ってきているお金の半分でいい」ということになり無事注文を済ませる事が出来た。
来週には試作品とはいえ刀が手に入る……手に入ったらその日のうちにその刀で災害級の魔物を狩り尽くしてやんよ!