賢者の孫のお兄ちゃん(魔力無しVer.)   作:愛飢夫

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戦争がはじま……終わったそうです

 それからしばらく、シンに《光魔法》を付与して貰った魔刀《光輝刀》を使って刀の宣伝をしたり、荷物持ち(シン)を連れて災害級を狩ってみたり、シンに玉鋼を作らせてビーン工房に納品したり、お小遣い稼ぎのために災害級を狩っていることがばあちゃんにバレてシン共々正座させられてみたり、剣道着風衣装や浴衣風衣装を発注したり、シシリーさんに渡す用の浴衣をゲットしたシンがシシリーさんに渡せずモダモダしたり、そんなシンに「浴衣の下って下着着けないらしいよ」と囁いて真っ赤な顔をしたシンに追いかけられたり、クライスたちが《躁気術》の基本である《気の活性化》を習得したりした頃、アールスハイド王国軍がブルースフィア帝国との戦争のために国境へと向かって出立したとホームルームでマロウ先生から報告があった。

 

「いよいよ出陣か……」

「だな。勝てればいいけど……」

「そういえばノインの親父さんは軍人だったか……心配だろうな」

「まぁな。でも親父は後方部隊の配置らしいからすぐに戦死するってことは無いだろうけど……やっぱ心配だわ」

 

 その話を聞いてクライスとノインがそんな話をしていた。

 

 そっか、ノインパパは従軍してるのか……そりゃ不安にもなるだろうな。

 後で家族と一緒に居たいか不安を忘れるくらい鍛練したいか聞いておこう。

 

「勝てるのかしら……」

「……大丈夫だろう。帝国は確かに強いが王国だって負けてはいない。それに今回は防衛戦、地の利はこちらにある」

「そうね……」

 

 ミランダとケントもそう言いながら不安そうな顔をしている。

 

「ルカ、お前はどう思う?」

「え? 俺?」

 

 親が従軍しているノインはともかく、他の3人は不安だと思う暇が無いほど鍛練に集中させようかと考えていると、クライスが話を俺へと向けてきた。

 

 いや、なんで俺に聞くんだよ。

 

「そうだ。ルカは基本的に座学はどの教科も出来は微妙だが軍略に関してだけは成績がいいからな。お前の考えを聞いてみたい」

「クライス、お前俺の事ディスってんの? 喧嘩売ってるなら買うけど?」

 

 俺がバカだって事は自分が一番よく知ってるしよくネタにしてるけど、他人から言われると普通に腹立つんだよ?

 

「いや、すまない。そんなつもりは無かったんだが……」

「本日クライスくんは気が枯渇するまで俺と模擬戦することが決定しました」

「それだけは……それだけは勘弁してくれ!」

「クライス、強く生きろ……」

「……冥福を祈る」

「いいなぁ……」

「お前ら他人事だと思って!!」

 

 クライスは危うくガチ泣きをするところだったがノインたちが茶々を入れたことでなんとか踏みとどまった。

 というかミランダ、羨ましいなら何時でも相手してあげるよ?

 

「えっと……それで何だっけ?」

「……ああ、今回の戦争の勝敗をルカはどう見る?」

 

 仕切り直すためにそう質問をしてみると、クライスからそんな質問が返ってきた。

 

 いや、ホントなんでそれを俺に聞くんだよ。

 

「どうだろ? 俺は両軍の戦力差は詳しく知らないから何とも言えないよ」

「両軍の戦力は共に8万だな」

 

 8万かぁ……

 規模的には確か関ヶ原の戦いがそれくらいだったっけ?

 家のご先祖さまがその合戦に出てなにやらでっかい武功を上げたとかなんとか前世のじいちゃんが熱く語っていたから何となく覚えている。

 

「大軍だね。戦地は?」

「国境付近の平原だ。対帝国に備えいくつかの砦が建っている」

「ふーん。籠城は?」

 

 砦に籠って戦えるなら同数同士の戦いで圧倒的優位に……って魔法や魔道具が存在するこの世界ではその辺も変わってきてるのかな?

 いや、でも攻める側だけじゃなく守る側も魔法が使えるなら結局同じなのかしら?

 

「籠城は出来ない。砦には最低限の備えしか無いからな」

「なんで!?」

 

 帝国ってイケイケドンドンな国なんでしょ? だったら堅牢な防御陣地を築いておくべきでしょう。

 色んなゲームでそうだったから俺は詳しいんだ。

 

「なんでって……築城しようとすれば帝国がちょっかいを出してくるからだが……」

「だからって……」

 

 それを何とかするのが戦略でしょうよ……あれ? 戦術だっけ? どっちがどっち?

 

「まぁ……そういう訳で帝国との国境付近には簡易的な砦があるだけだ。戦うなら野戦となる」

「野戦ねぇ……」

 

 クライスの話ではその辺は丘などの高低差のある地形や遮蔽物の少ない平原ということなのでお互い正面から当たる以外無いのだという。

 

 俺が指揮官ならシンに魔法を使わせて平原中に地下通路を張り巡らせて進軍してくる帝国軍を翻弄しつつ各個撃破していくだろうけど、多分トンネル作りって普通の魔法使いには出来なさそうだから策としては下策なんだろうな。

 それやるくらいなら俺が気配を消して敵軍総大将を初めとする指揮官たちを誘拐して捕虜にしていく方がはるかに早い……って今は戦い方を考えるんじゃなくて勝敗を予想するんでしたね。

 てかそもそも俺もシンも王国軍に加わったらダメなんだし。

 

「ぶっちゃけ野戦なら早く到着してしっかり陣を整えた方が有利だよね。あとはそれを成すための指揮官の数質」

「指揮官の数と質は王国軍が圧倒的に優位だと言われているな」

「兵の練度は?」

「正規兵の練度は王国軍が上だが今回は志願兵やハンターも多く混じっているからおおよそ互角だと思われる」

「なら王国勝利じゃね? 士気に関しては防衛側の王国軍の方が高いだろうし」

 

 むしろ負ける要素無くない?

 

「ルカもそう思うか?」

「『も』って事はクライスもそう思ってんの?」

「ああ。だがルカの口からそう聞けて少し安心できた」

「なんでだよ」

 

 俺の戦術、戦略知識なんてほとんどがラノベやアニメ知識なんだぞ? アテにされても困るよ。

 俺個人で言えば軍事行動には全く向かない完全な個人戦力ぞ?

 

「ルカが勝てると言えば勝てる気がする」

「なんだよそれ」

 

 クライスは苦笑しているが、横で聞いていたミランダたちは普通に頷いている。

 

「なんて言うか……ルカの言葉ってなんだか軽いけどそれでも信頼感があるのよね」

「あー、なんかわかる気がする。ルカって嘘つけなさそうだし」

「……ルカは友であり師でもあるからな。そんなルカの言葉なら信ずるに値する」

 

 なんだろう。なんだか背中がムズムズしてきた。

 あとノイン、俺はばあちゃんに怒られそうになったら普通に嘘つくし最終的に全部バレて余計に怒られてる。

 

「よし。ならお前たちは万が一に備えて更に鍛練を重ねる必要があるな! クライスだけの予定だったけど、やっぱ全員気が枯渇するまで俺と模擬戦な!」

「「「ふざけんな!」」」

「バッチコイ!」

 

 うん、やっぱりミランダだけはクライスたち男衆とはなんか違う気がする。

 この4人の中で一番強くなるのはミランダなんだろうな。

 

 

 

 ◇◆

 

 

 

 王国軍が出兵したことで更に鍛錬に熱を入れ、一週間もする頃にはそれぞれの『気の特性』が見え始めた。

 この『気の特性』というのは各々の得意なことを表すもので、大まかに分けて『攻撃型』、『防御型』、『速度型』、『バランス型』に振り分けられる。ちなみに俺は前世でも今世でもバランス型である。

 そして俺が《躁気術》を教えているクライスたちはそれぞれクライスがバランス型、ミランダが攻撃型、ノインが速度型、ケントが防御型といい感じに別れている。

 この4人でパーティ組んだらとてもいいと思う。ケントは大剣両手持ちじゃなくて盾を持つべき。

 デカイのがいいなら大盾でいいから。

 

 あとついでに言えば《躁気術》を扱えるクリスねーちゃんは攻撃型、ミッシェルさんはあの攻撃力でまさかの防御型である。

 攻撃型の気を持つクリスねーちゃんより防御型の気のミッシェルさんの方が倍くらい攻撃力が高いのは最早バグかなんかなんだろうね。

 

 こうしてそれぞれの型が見えてきたので今までの基礎的な鍛練からそれぞれの気の特性に合った鍛練へと移り更なる強さを得るために4人を追い込んでいると、ついに開戦したとの知らせが入ってきた。

 王国対帝国、8万対8万の大戦に固唾を飲んで続報を待っていると、その数日後に入ってきた情報はなんと王国軍が帝国軍およそ6万を討ち取って侵攻を跳ね除けたという実質戦勝報告だった。

 

 その報告を受けてアールスハイド中は大いに盛り上がり、正式な発表はまだなのに早くも『戦勝記念セール』を始める店も出てきてだんだん国中がお祭りムードになってきたある日、国からその盛り上がりに水を差す発表が出された。

 

 その内容は――

 

『王都にて発生した魔人騒動は、理性ある魔人オリバー=シュトロームによって引き起こされたものである。そしてその者はブルースフィア帝国帝都を大量の魔物と自ら造り出した多数の魔人によって攻め滅ぼした。今回の一連の騒動も、全てその者によって引き起こされたものである』というものであった。




今まで頑なに見てなかったけど会社の先輩に「1000円やるから見ろ」と言われてアニメキングダムを全話見ました。
1000円もらう必要も無いくらい面白かったです。

キングダムを見たので戦争書きたかったんですけど……この子戦争出ちゃダメな子だったので『ルカが戦争に出たらこうなる』ってのを書いてみました。
初日に総大将が攫われてえらいこっちゃになりますね。
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