賢者の孫のお兄ちゃん(魔力無しVer.)   作:愛飢夫

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騙されました

 ブルースフィア帝国帝都を大量の魔物と多数の魔人が襲撃し、帝都は壊滅した――

 

 その話を聞いた俺は即座に帝都を襲った魔人と魔物を撃滅するために持てる限りの武器と魔道具、そして厨房からかっぱらった食料などの物資を背負い屋敷の使用人に帝都に行くにはどの道を行けばいいのかと尋ねていた。

 

「帝都ってどっち?」

「地図をお持ちしますのでお部屋でお待ちください」

「りょ」

 

 声をかけた使用人が親切にも地図を見ながら説明してくれると言うので言われた通り自室に戻って一旦背負っていた荷物を下ろしているとすぐに部屋の扉が叩かれた。

 

「どうぞー」

 

 先程の使用人が地図を持ってきてくれたものだと思い気楽に返事をすると、扉が開いて中に入ってきたのはまさかのじいちゃんとばあちゃん、そしてシンだった。

 

「あれ? 皆揃ってどうしたの?」

 

 内心ヒヤヒヤである。まさか帝都に行こうとしていたのがバレたのだろうか?

 

「すぐに説明するさね。その前に……シン」

「わかってるよ」

 

 ばあちゃんに呼ばれたシンが前に出てきて俺に座るよう促してくる。

 なんかもう全部バレてるような気もするが、ワンチャンバレてない可能性に賭けて本来の目的で一度も使われたことのない勉強机セットの椅子に腰掛けた。

 

「シン、やりな」

「わかったよ……ルカ兄、ごめんね?」

「えっ……?」

 

 シンは謝りながら《異空間収納》を開いて中から細くて長いロープ状のもの……というかロープそのものを取り出して俺と椅子をぐるぐる巻きにし始めた。

 

「……これで良し。ばあちゃん、終わったよ」

「はいよ、ありがとさん。じゃあ話を始めようかね」

 

 シンは俺を椅子ごとぐるぐる巻きにした後も離れずにロープの端を握ったまま……つまりこのロープは魔道具化されていて効果を発動させるために魔力を流し続けているのだろう。

 

 ということは……逃げられない。

 どうやら俺は先程の使用人に嵌められてしまったようだ。

 

「さてルカ、アンタ何をしようとしてたんさね?」

「イヤ……ベツニナニモ……」

「言い逃れをしようとしても無駄だよ。こっちは全部わかってるんだ。アンタ……帝国に行こうとしていたね?」

 

 まっすぐ俺の目を見ていたばあちゃんの視線が外れ、先程俺が下ろした荷物へと向けられる。

 

 どうやら全てはもう手遅れのようだ。

 

「えっと……」

「言い訳はいいさね。それで、なんで帝国に行こうと思ったんだい?」

「それは――」

 

 そんなの簡単だ。そこに居る力無き民が不条理な暴力によって虐げられているからだ。

 

 帝国は貴族の選民意識の強い国で特権階級の人間が平民を見下し搾取している国だと聞いている。

 だけどそれは『帝国』が『帝国国内』で『帝国の法に則って』行っている行動なので見ていて不快ではあったがアールスハイドに住んでいる俺は手も口も出す気は無かった。まぁ俺が帝国に生まれてたら反抗勢力(レジスタンス)になってただろうけど……ってそれは今関係ないな。

 つまり『国』が『法』に則ってやってることなら見過ごすけど魔人や魔物によって虐殺されているのなら俺は帝国の民でも守りたい。

 幸いなことに俺には民を守れるだけの力があるのだから俺が帝国に向かうのは当然の話だと思う。

 

「アンタのことだ、魔人や魔物に殺されそうになっている帝国人を助けたいんだろう?」

「うん……」

「残酷な事だけど、ハッキリ言って手遅れだ。諦めな」

「なんで!?」

「なんでって……考えてもみな。大量の魔物に100を超える魔人の襲撃……アタシやマーリンでも生き残るのは至難の業さね」

「それに帝都が襲撃を受けて既に2週間以上経っておる。運良く襲撃を生き延びて隠れていたとしても……」

 

 ばあちゃんの言葉を引き継いだじいちゃんだったが、そこで言葉を切ってしまった。

 

「それに……仮にアンタが帝国へ行ったとして、どうやって生き残りを探すんだい?」

「それは……俺は人の気配がわかるからそれで……」

「魔物にだって耳も鼻もあるし、なにより魔力の気配に敏感だ。それに今回の魔人には理性が残ってる。理性のある魔人が《索敵魔法》を使えたら……そんな状況で生き残ることの出来る人間が居ると思うのかい?」

「それは……」

 

 正直、俺やシンなら余裕で生き残ることが出来るだろう。

 だけどこの世界の住民たちと比べると俺もシンも隔絶した力を持っている。

 そんな力を持たない一般人が生き残れるかと言うと……それは実質不可能だと言わざるを得ない。

 

「……わかったみたいだね。それがアタシたちがアンタたちが帝国に向かうことを許可出来ない理由だよ」

「でも、もし魔人や魔物たちが他の街に目を向けたら……ってアンタ『たち』?」

「ああ。ルカだけじゃなくシンも帝国に向かおうとしてたんさね」  

「そうなの?」

 

 振り返って背後で魔道具を起動させ続けているシンに確認してみると、とても気まずそうな顔をしながら頷いた。

 

「うん。でも俺は準備をする前にじいちゃんとばあちゃんに相談したんだ。その時にさっきルカ兄が言われてたのと同じことを言われてさ」

「そうなんだ……てかじいちゃんとばあちゃんに相談したら反対されるに決まってるじゃん。バカなの?」

 

 だから俺は黙ってこっそり行こうとしてたのに……まぁ結局バレて縛られ怒られてるんですけどね!

 

「ルカ兄にだけは言われたくない!」

「うっせぇバーカ!」

「相談した俺がバカなら黙って行こうとして結局バレて縛られてるルカ兄はなんなの?」

「バカは俺でした」

 

 そうですね。縛られた俺と縛ったシンの立場を比べるとバカは俺でしたね。

 というかそもそもの話俺が帝都の方向さえ知っていれば使用人に騙されて捕まることも無かったわけで……

 今回の敗因は知識不足。つまりは俺がバカだったことか。次は負けないようもっとちゃんと勉強しよう。頑張れ来週以降の俺!

 

 シンとそんな話をしていると、それを見ていたばあちゃんは呆れた顔をして大きくため息をついた。

 

「はぁ……どっちもどっちさね」

「ほっほ。まぁそう言うでない。2人共悪行や非道を許さぬ強くて優しい子に育っておる証拠じゃろう」

「アンタが……アンタがそんなんだからこの2人は!」

 

 ばあちゃんの怒りの矛先がじいちゃんに向いたのを見て、俺とシンは顔を合わせて苦笑した。

 

「オーグが言うには各国と連携して監視を強めるって感じになるらしいよ。だから下手に俺たちが出張るのは良くないんだってさ」

「まぁ何かしらの対策はすると思ってたけど……それでも魔人や魔物が行動に移したら監視の人員だけじゃどうにもならなくない? 今のうちに襲撃して数を減らした方が良くない?」

「いや、散り散りに逃げられてあっちこっちに被害を撒き散らされる方が困るからね。だから俺たちに出番が回ってくるとするなら魔人たちが打って出てきた時だと思う。俺たちはその時に備えて力を蓄えておくべきだ」

「蓄えるって……」

「俺なら『究極魔法研究会』のメンバーを、ルカ兄はクラスメイトたちを鍛えておけばいいんじゃない?」

「クライスたちを? アイツらが魔人と戦えるようになるにはかなり時間が掛かりそうだけど」

 

 現時点の強さ的にクライスたちは中型の魔物をソロで何とか狩れるくらいだから魔人と戦わせるのは無理無茶無謀。

 せめて災害級をソロ討伐出来るくらいには育てないといけないだろうし……半年じゃちょっと厳しいな。せめて1年は欲しい。

 

 とりあえず何にせよシンの研究会メンバーや俺のクラスメイトたちを強化しておいて損は無いだろうという事で帝国行きは一時保留することになった。

 

 

 

 ◇◆

 

 

 

 ということで最悪魔人とタイマンになっても何とか俺やシンが駆け付けるまで生き残れる強さにまで育てるために今まで以上に厳しくして毎日吐いて気絶するまで鍛練をさせ、皆のレベルが大分上がってきたある日の授業終了後、ホームルームでマロウ先生からある伝達事項があった。

 

「さて、この度王国から通達があった。『オリバー=シュトロームの目的が不明なため具体的な方策は定められないが戦力を増強しておく必要がある。軍人たちは勿論だが、万が一に備えて学生のレベルアップを図り有事に備える』との事だ。お前たち学生も万が一に備えて戦う準備をしておけという事だ」

 

 マロウ先生の言葉を聞いてクラスメイトたちが顔を青ざめさせている。

 ヒソヒソくんたちは純粋にビビっているようなのだがクライスたちはなんで俺を見てるのかな?

 

「そして今のうちから騎士と魔法使いの連携を取れるようになっておけという事で魔法学院との合同訓練を行う事となった」

 

 合同訓練……

 それは中々面白い訓練だと思ったが、周囲の雰囲気は微妙なものだった。

 なんで?

 

「まぁお前たちがそんな雰囲気になるのはわかるが……騎士と魔法使いの連携は将来絶対必要になる。今のうちに経験出来るのはいい事だと思うように。では解散」

 

 マロウ先生はそれだけ言って教室から出て行ってしまった。

 

 さて――

 

「皆そんな変な顔してどうしたの?」

「そうか、ルカは知らないのか」

「何を?」

 

 俺が問い返すとクライスたちは困ったように顔を見合わせる。

 

「ルカ、アタシたち騎士学院の生徒は体を鍛えることがメインで魔法は使えないでしょう?」

「騎士学院なんだからそりゃそうだろうね」

「対して魔法学院は魔法を学ぶために体をあまり鍛えない」

「シン……弟は結構鍛えてるよ?」

「それはルカの弟だからでしょ? 例外よ」

「例外なのか……」

 

 まぁ森から出る前に「規格外」とか言われてたんだからそりゃ例外扱いでも仕方ないか。

 アイツが騎士学院受けてたら余裕で首席だっただろうし。

 

「話を戻すけど、正反対だからか騎士学院の生徒は魔法学院の生徒を『モヤシ』ってバカにしてて逆に魔法学院の生徒は騎士学院の生徒を『脳筋』ってバカにし合っているのよ」

「つまり騎士学院と魔法学院の生徒は仲良くないと?」

「ざっくばらんに言うとその通りよ」

 

 何それ。もうそれどっちもバカじゃん。

 

「今って非常事態なんだろ? そんな細かいこと気にしなくて良くない?」

「そりゃ非常事態だってことはわかるけどさぁ……」

「……奴らに『脳筋』とバカにされるのは承服出来ない」

「俺やケント、ミランダは勉強面でも負けてないからな」

 

 クライス! シレッと俺とノインを除外すんな!

 

「まぁ……そういう事よ」

 

 とはいえまだ近接戦闘でもコイツらよりシンの方が強いんだからそんな事言っても仕方ないと思う。

 まぁシンは例外だって話だから別にするとして、ユリウスはケントに負けず劣らずなマッチョだぞ?

 

「ふーん……でも遠距離戦が出来ない俺たちには魔法使いの援護は必要だと思うけどね」

 

 俺たちの遠距離攻撃って弓か投石だからね。魔法には威力も射程も敵わない。

 さすがの俺も弓や投石ではシンの障壁は抜けないので遠距離戦ではシンには絶対に勝てないのだ。

 

「それはまぁ……」

「結局得手不得手でしかないじゃん。遠距離戦は魔法使いに任せて近接戦は俺たちが担当する。その為に連携は不可欠なんだからこの合同訓練は必要じゃん? 何言われても気にしなかったらいいよ」

「ルカがそう言うなら……」

「でもルカなら遠距離戦でも魔法より速く動いて相手を斬れるんじゃね?」

「余裕」

「じゃあ……」

「将来的にはお前らにも出来るようになるだろうけど、今はまだ無理だろ? だったらこの合同訓練は必要だってこと。おーけー?」

「ぐっ……わかったよ」

「ノイン……ルカに口で負けるなよ」

「……見損なったぞ」

「ねぇ、ノインをバカにするよりルカがまともなことを言えた事を褒める方が先じゃないかしら?」

「ぶん殴るぞコノヤロウ!」

 

 お前ら俺の事なんだと思ってるの!?




キングダムのアニメと映画は全部見終わった……続きが気になって夜しか眠れません。

とりあえず次何見ようか迷ってるのでおすすめあったら教えてください。
違うの見るより賢者の孫もう一周してこいと思った人は高評価しておいて下さい。
高評価たくさんもらえたら賢者の孫見てきます。
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