そして数日後、魔法学院との合同訓練の日がやってきた。
今回の訓練では騎士学院生4名、魔法学院生4名の計8名でパーティを組んで王都の外に出て訓練をするそうだ。
なんでもココ最近魔物の数が増加しているらしいのでその増えた魔物を減らすための討伐も兼ねての実戦訓練になったらしい。
王都の門の前に集合した俺たちは今回一緒に行動する魔法学院の生徒と顔を合わせたのだが……全員知ってる人でした。
今回の班分けは入試順位で分けられているそうなので俺たちのパーティは入試順位1位から4位まで……つまり騎士学院側はクライス、ミランダ、俺、ノインの4人で魔法学院側はシン、オーグ、マリア、シシリーさんの4人である。
ケントは5位なので……同じパーティになれなくて残念だ。ケント、強く生きろ。
「ルカ兄、今日はよろしくね」
「おー。でも俺とシンが同じパーティって過剰戦力なんじゃね?」
「ルカの言う通りなのだが、今回は入試順位で振り分けられたのだから仕方ないだろう。それよりルカ、そちらのメンバーを紹介してくれないか?」
早速同じパーティになったシンが挨拶してきたので返事をしていると、横からオーグも話に加わってきた。
「え? 見たことあるだろ?」
「お前たちの家で見たことはあるが、ウォーレス以外とは会話をしていないからな」
「言われてみればそうなのか」
クライスたちは放課後俺の家で鍛錬をしているので遊びに来たオーグたちと顔を合わせたことはある。
しかし紹介まではしていないので顔は知ってても名前は知らない程度の関係なのだ。
「そういう訳だ。頼む」
「頼まれても困るって言うね。まぁとりあえずクライス、自己紹介よろしく」
「俺からか?」
「首席なんだから当たり前でしょ」
「そうか……わかった。騎士養成士官学院1年首席のクライス=ロイドだ」
「アタシもした方がいいの? 次席のミランダ=ウォーレスよ」
「入試順位3位! ルカ=ウォルフォード!」
「なんでお前も自己紹介してんの? あ、俺はノイン=カーティスです」
なんか流れで知ってるはずのミランダも自己紹介してたから俺もするべきかなって。
「では次はこちらだな……シン」
「そこまで言ったならお前からやれよ……まぁ、高等魔法学院1年首席のシン=ウォルフォードです。そこに居るバカ……間違えた、ルカ兄の弟です」
「ぶっ殺す」
「話が進まんから黙ってろ。次席のアウグスト=フォン=アールスハイドだ」
「マリア=フォン=メッシーナよ」
「あの……シシリー=フォン=クロードです。よろしくお願いします」
ふむ、合同訓練があると聞いた時には微妙な雰囲気だったからもっと不穏な感じになるかと思ったけど、お互いそんなことは無さそうで何よりだ。
やっぱり元々顔見知りだった事が大きいのかな? だとしたらクライスたちを自宅に呼んで鍛錬していた俺のファインプレイだろ。
そうして自己紹介を終えた俺たちは指導教官を待つためにその場に留まり雑談をし始めた。
「ルカ兄、そっちの3人って魔物狩りしたことあるの?」
「いや、無いよ。そっちは?」
「こっちも無いよ。どうする? 普通に連携してみる?」
「いや、出来れば何回かは騎士学院生だけでやらせて欲しい。今の実力を認識させたい」
今回の合同訓練で実際に魔物と戦うと聞いてクライスたちは腰が引けていた。
今のクライスたちなら中型でも弱い方の魔物ならソロで討伐出来る実力はあるのだが、どうやら実感は無いそうなのでこの機会に少し自信を持たせたい。
「そっか、なら最初はしばらく交互にやってみる? オーグたちも相当実力が伸びてきてるのにまだ自信が無いみたいなんだ」
「いいんじゃね? けどそれならやっぱ初戦は譲ってよ。自分たちだけで魔物が狩れるってわからせてから魔法学院生たちの前に立たせて盾にするから」
「そうだね。オーグたちも騎士学院生が前に出て盾の役割を果たしてくれれば落ち着いて魔法が使えるだろうし……」
雑談といいつつ軽くシンと打ち合わせをしてから揃ってオーグに目を向けると頷いたのでこれにて今回の合同訓練の段取りは決定した。
「という訳だからクライス、ミランダ、ノイン。頑張ってね」
「頑張れって……お前は出ないのか?」
「俺が出ちゃったら何の訓練にもならないでしょうよ。俺はクライスたちとシンたちの間に立ってクライスたちがヤバくなったら助ける役やるよ」
「わかった」
「今回のメンバーで戦う場合、ノインが魔物を撹乱してクライスが足止めしつつ攻撃、ミランダがトドメって感じになると思うからよろしくね」
「ああ、ケントが居ないから俺がチームの盾にならないといけないのか……」
「
クライスの気はバランス型だからパーティに欠けているところがあればその穴埋めをしてもらわなければならない。
「アタシが
「クライスとノインが
ミランダはこの中で一番鍛錬に熱が入っているからね。
元々の才能もあるし、最近は刀の扱い方も上手くなってきているのでミランダならあと少し相手の攻撃を去なす技術を身に付ければ大型の魔物が相手でもソロで倒せるようになると思う。
「自信はあんまねーけど頑張ってみる!」
「ノインなら多分きっと恐らく大丈夫だから頑張って」
「何かフォローしろよ!」
「ほら、ノインってなんやかんや言いつつやればできる子じゃん? やってこいよ」
「フォローになってねぇ!」
「頑張れ」
「適当か!」
まぁノインなら何とかなるだろ。なんたってクライスたちの中で一番気配を消すのが上手いんだから。
こうして騎士学院チームに戦い方を伝えていると、魔法学院チームでもシンがオーグたちに戦い方を伝えていた。
「こっちもだよ。ルカ兄と騎士学院の生徒たちが居る限り俺たちに魔物が襲いかかって来ることは無いから落ち着いて魔法を使ってね」
「ああ、わかっている」
「そ、そうね……」
「が、頑張ります……」
「あとシシリーにはもし騎士学院生が怪我をしたら治癒魔法を掛けてあげて欲しいんだ」
「わ、わかりました!」
ふむふむ、シシリーさんが
つまりクライスやノイン、ついでに俺が怪我をして
嫉妬に狂うシンとか絶対面白いだろ。是非とも見たい。
「クライス、今回は優秀な
「え? あ、ああ。わかった……」
「ノインもね。今回は初めての実戦なんだから温存出来るところは温存しておこう」
「おう、了解だぜ!」
「よし、じゃあそんな感じで頑張って」
「ねぇルカ、アタシは?」
「ミランダは女の子なんだから怪我しないように気を付けて」
「なんでアタシだけ!?」
そりゃミランダは女の子なんだからシシリーさんがミランダに触れて治療してもシンが嫉妬しないからですよ。
「なぁノイン、ルカとミランダって……」
「ああ、鍛錬が休みの日でもミランダはルカの家に行ってるって話だし、俺たちは怪我してもいいけどミランダには気を付けろって言ってるし……これは確定じゃね?」
「だよな……まさかルカに先を越されるなんて」
「アイツって確かついこの間まで森で暮らしてたんだよな? なのにこんなに手が早いなんて思ってなかったよ」
「?? なんの話してんの?」
「「なんでもない!」」
真っ赤になった怒れるミランダを宥めていると、クライスとノインがヒソヒソ話をしていたのでなんの話をしているのか聞いてみたのだが、必死な様子でなんでもないと返されてしまった。
「くっくっく……なんだルカ、楽しそうじゃないか」
「いきなりなんだよオーグ……まぁこいつらと居るのは楽しいけどさ」
「そうか。それはいいことだ」
それからオーグがニヤニヤしながらこちらを見てきていたが、すぐにこちらに向かって歩いてくる気配をふたつ捉えたのでそちらに顔を向けてみる。
この気配ってもしかして――
「ようルカ、シン」
「2人とも、今日はよろしくお願いしますね」
「クリスねーちゃん! あとついでのジーク!」
「おいコラ! なんで俺がついでなんだよ? メインだろ!」
「うるせーチャラ男!
「おま……それはシャレになんねーよ!」
「黙れチャラ男! お前なんて開いてはいけない新たな扉を開けばいいんだ!」
お前なんて『秘密の薔薇園研究会』に入っちゃえばいいんだ!
クライスは教えてくれなかったけど、後日ちゃんとノインに教えてもらったからどんな活動してるのか知ってるんだぞ!
「まぁまぁルカ兄落ち着いて。それより2人が指導教官なんだね。頼むから喧嘩しないでよ?」
「「「こいつが絡んで来なかったらな(ね)」」」
「なんでルカ兄もそっち側なんだよ……」
そりゃ相手がジークだからだよ。察しろよ。
そうしてクリスねーちゃんとタッグを組んでジークを睨み付けていると、騎士学院生と魔法学院生が俺たちの周りに集まり始めた。
「あ、あの! 私、シンの同級生のマリアです! ジ、ジークフリート様、あ……握手をしてもらえませんか?」
「あ! ズルいぞマリア! えっと……アタシはルカの同級生でミランダって言います。あの……アタシもいいですか?」
マリアはともかくミランダまでジークに握手を求めるとは……なんだかモヤモヤするな。
俺の弟子ならジークなんかに触っちゃいけません! チャラ菌
が移る!
「俺……いえ、私はクライス=ロイドと申します。クリスティーナ様にお会いできた事、心より嬉しく思います。それで、あの……握手を……」
「俺はノインです! 今日は是非俺の勇姿を見てください!」
隣ではクリスねーちゃんがクライスとノインに絡まれている。
いけない。それは俺の役目だ!
「ルカです! 俺の戦う姿こそ見てください!」
「いい加減にしろ! お前はほとんど戦わない予定だろうが!」
「痛……くはないけど何すんだよオーグ!」
クライスたちに負けじとアピールをしているとすぐ近くに立っていたオーグに脳天にチョップを落とされた。
オーグの力では量と質を兼ね備える俺の気の防御を貫くことは不可能なのでダメージは入っていないのだが頭を叩かれたという事実が俺の心にダメージを与えてきた。
「殿下、ルカを叩くのであればこちらをお使いください」
「ふむ? これはハリセンか?」
「はい。このハリセンにはシンが《衝撃百倍》と《ルカ限定》の付与をしていますのでルカにダメージを与えられる数少ない武器となっております」
クリスねーちゃん!?
「そうか。わかった、ありがとう」
「お礼ならばメリダ様に」
「了解した」
「待てオーグ! 早まるな!」
そのハリセンはいけない! そのハリセンで叩かれたら普通に痛いんだ!
「叩かれたくなければ静かにしていろ」
「なんでオーグにそんなこと言われなきゃいけないんだよ」
叩こうとしても俺が避ければ叩けないんだぞ?
クリスねーちゃんに叩かれるのならともかくオーグになんて叩かれてやんねーよ。
ばあちゃん? ばあちゃんのは避けたら後がもっと怖いから避けないだけだよ。
「ルカ、話が進みません。静かにしていなさい」
「わかったよクリスねーちゃん!」
「コイツは一体何なのだ……」
オーグは頭を抱えているが、俺はクリスねーちゃんに言われたことはきちんと守るので放っておいて欲しい。
こうして合同訓練を開始するため俺たちはクライスを先頭に隊列を組み始めた。
ところで俺は何時まで黙っていればいいのかな?