賢者の孫のお兄ちゃん(魔力無しVer.)   作:愛飢夫

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ちょっと成長しました

 

 俺に魔法の才能が無いことが判明した日から数年後、俺は自宅の庭で熊みたいに大きな男性と向かい合っていた。

 

「ではルカ、好きに打ち込んで来なさい」

「はい! やぁぁあああ!!」

 

 俺は手に持った木剣を振りかぶり、男性の膝を狙って振り下ろす。

 

 俺と男性の身長差は1m以上あるのでまずは足元から崩さなければどうにもならない。

 

「うむ、狙いはいいがわかりやすすぎるぞ!」

 

 男性はそう言ってひょいと足を引いて俺の攻撃を躱してしまう。

 

「シッ!」

 

 こちらも元々こんな大振りな攻撃が当たるとは思っていない。

 俺はあえて木剣を地面に叩き付け、その反発力も活かして追撃を繰り出した。

 

「おっと危ない! まさかそんな攻撃をしてくるなんて……ルカには才能がありそうだ!」

 

 男性は俺の放った追撃を木剣で受け止め、手首を返して俺の体勢を崩しに掛かる。

 

「まだ……まだぁぁぁああ!!」

 

 男性の受け流しに対して踏ん張るのではなく逆に飛び込む勢いで体を流し、体を回転させながら背後に転がるように移動して至近距離から全身を一本の剣に見立て飛び掛るように渾身の突きを放つ。

 

「秘技! 《尊厳破壊(ディグニティ・ブレイク)》!」

「それはいけない!!」

 

 低い位置から全身をバネのように使って突き上げるように放った突きを男性は転がるようにして回避する。

 

 チッ、これが決まれば俺の勝ちだったのに……

 

「ルカ! それは使用禁止だと言っただろう!」

「だってミッシェルさんを倒せる技はこれしか無いし……」

 

 魔法の才能が無かった俺が魔法の代わりにミッシェルさんから武術を習い始めたその日に「軽く打ち合おう」と言って油断していたミッシェルさんのケツに鋭い突きをぶち込んでからこの技は禁じられていたのだが、背後を取ったことでついうっかり使ってしまった。

 

「いや、普通に打ち合えばいいだろう……」

「だって勝ちたいもん!」

「その気持ちは大切だが、それ以上に私の尻を大事にしてくれ」

「でも弱点でしょう?」

「弱点だからだ!」

 

 ミッシェルさんは俺やシンが赤ん坊の頃からよく我が家に遊びに来る剣士のおじさんで、ミッシェルさんがトイレに行った後トイレに入るとたまに血が付いていたのでお尻が切れている方の人なのだと思っていた。

 なので取っておきの必殺技として使ってみたら俺が想像していた以上にミッシェルさんは痛がりながら転がったのでちょっと悪いことをしてしまったような気分になったものだ。

 

 しかし戦士たるもの、相手の弱点がわかっているなら狙わないわけにもいかないので俺はミッシェルさんのケツを虎視眈々と執拗に狙っているのだ。

 

「しかしその歳で私の背後を取ろうとするとは……これは更に訓練を厳しくしても大丈夫そうだな!」

「望むところだ!」

「だが尻は禁止だぞ!」

「それは無理!」

「むぅ……ならば私も背後を取らせぬよう少しばかり本気を出そう」

「ミッシェルさん、ばあちゃんがこっち睨んでるよ……」

「なんだと!?」

「隙アリ!」

 

 ミッシェルさんが俺の指差した方向へと顔を向けた瞬間、強く地面を蹴って滑るようにミッシェルさんの背後へと回り込み突きを放つ。

 

「甘い!」

 

 しかしこれは読まれていたようで、ミッシェルさんは左に半歩ズレることで俺の《尊厳破壊(ディグニティ・ブレイク)》を回避しながら反転し、俺の首に木剣を突き付けた。

 

「ぐぬぬ……」

「中々いい作戦だったがまだまだ甘いな!」

「絶対に《尊厳破壊(ディグニティ・ブレイク)》を食らわせてやる!」

「だからやめろ……というかそんな恐ろしい技名を付けるんじゃない!」

「行くぞー!」

 

 一度ミッシェルさんから離れ、木剣を脇に構え直してミッシェルさんに向かって突撃する。

 

「来い!」

「うりゃぁぁああ!!」

 

 それからしばらく、俺は体力の続く限りミッシェルさんに打ち込んだが一撃も入れることは出来なかった。

 

「よし、ここまで!」

「ぜぇ……ぜぇ……」

「ほっほ。ルカ、よぅ頑張ったの」

 

 ミッシェルさんとの訓練が終わると同時にじいちゃんが持ってきてくれた水を受け取り、流し込む。

 

「5歳でこれ程とは……将来どれ程の剣士になるのか末恐ろしいですな」

「ふむ、お主がそこまで言うとなると……」

「このまま鍛えていけば私以上の剣士になることは間違いないでしょうな」

「そこまでか」

「ええ。シンはマーリン殿以上の魔法使いに、ルカは私以上の剣士に……とても将来が楽しみですな」

「ほっほ。そうじゃのぅ」

 

 俺が息を整えている間にじいちゃんとミッシェルさんはそんなことを話していた。

 

 ふむ、やっぱり魔法が使えないのはちょっと悔しかったからシンがどれだけの才能を持っているのか知らなかったがあるどうやらシンは相当の才能を持っているらしい。

 

「さて、そろそろ夕食の準備をするかのぅ……ルカ、手伝ってくれるかい?」

「もちろん! 何でもするよ!」

「うむ。今日はシンが森ウサギとホロウ鳥を獲ってきたからそれを使って夕食を作ろうか」

「うん……ってちょっと待って!」

「ほ?」

 

 じいちゃんは「何?」といった様子でポカンとしているが、今聞き逃したらいけないこと言った!

 

「じいちゃん、今『シンが獲ってきた』って言った?」

「うむ。シンも一通り魔法を覚えたからの、狩りに行く許可を出したんじゃ」

「ずるい! 俺も行きたい!」

「むぅ、それは……」

「大丈夫だと思いますよ」

 

 じいちゃんは難しい顔をしたが、すかさずミッシェルさんが口を挟んだ。

 

「しかしのぅ……」

「ルカは剣術だけではなく弓術も扱えます。それに気配を消す技術は既に一流の狩人と比べても遜色ありません」

 

 今の俺では大人用の弓は引けないが射程が短く、威力の低い子供用の弓なら余裕で引ける。

 たとえ子供用の弓であっても俺が気で肉体と弓、矢を強化すれば野生の猪くらいなら一撃で貫ける威力が出せる。

 

 まぁさすがにそこまで出来ることは教えてないけど。

 

 気配に関しても俺は前世で《隠密術》や《暗殺術》を修めているので気配を消すのはお手の物だ。

 そこら辺の狩人になんて負けてやらない。

 

 一応言っておくけど、暗殺術を修めてはいるけど殺ったことは無い……と思います。記憶にございません。

 

「ふむ、ミッシェルがそこまで言うのなら一度確かめてみてもいいもしれんの」

「では明日にでも2人で狩りに出てみては? 私はこのまま泊まって明日はシンに稽古を付けようかと思います」

「うむ、そうしよう。ルカもそれでいいかの?」

「もちろん!」

 

 そうして翌日、俺はじいちゃんと2人で森に出てたくさんの小動物を弓で仕留めた。

 じいちゃんからは「これなら1人で狩りに出ても大丈夫。だけど気を付けるように」と言われ狩りに出る許可を勝ち取った。

 

 これからはじいちゃんが狩りに出なくても大丈夫なように狩りまくってやるぜ! 

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