その後オーグが「《魔力制御》の練習についてなら教えても構わない」と許可を出したのでシンがジークに《魔力制御》の大切さを説いたり、それを聞いても半信半疑だったジークにシシリーさんとマリアが《魔法障壁》を張って《魔力制御》の必要性を証明したりしながら集合場所である王都門前へと戻ると、そこには既に訓練を終えた両学院生が戻ってきていた。
訓練開始前はお互いに反目し合っていた騎士学院生と魔法学院生だったが、訓練が終了しお互い認め合ったのか今まで行われていた訓練について話し合っている姿もチラホラ見える。
うむ、とてもいいことだ。
しかしそんな中、隅っこの方で項垂れている騎士学院生の姿が目に付いた。
あれは……ケントたち入試順位5位から8位の組とAクラスとの合同チームだった組か。
多分だけど、クリスねーちゃんとジークが懸念していたことが現実になったんだろうな。
「あれはケントたちの班ね。大丈夫かしら?」
「なんだかやけに落ち込んでんな……どうする? ケントだけ回収して来ようか?」
「本来なら成績上位である俺たちが声をかけるべきなのかもしれないが……アイツらを慰めるのは面倒だな」
クライスたちの視線が冷たい。
どうやらクライスたちはヒソヒソくんたちの事を本当に嫌っているようだ。
そんな中に放り込まれたケントくん……お労しい。
背中に背負っているバルディッシュとカイトシールドがとても重そうだ。
「まぁいいんじゃない? 俺もアイツらから頼まれなければ何も教える気は無いし」
そもそも俺に師事することだけが強くなる道ではないからね。
むしろ俺とは全く違う道を進んで俺と同等かそれ以上に強くなれるなら是非そうなって頂きたい。
そうなった暁には俺と血湧き肉躍る戦いをしよう。
「殿下からも『あまり広めるな』って言われてたもんな。まぁ、とりあえずケント連れて来る!」
そう言ってノインは駆け出し、しょんぼりしているヒソヒソくんたちの群れの中からケントだけを釣り上げこちらに戻って来た。
「ケント、お疲れ様」
「……ああ、本当に疲れた」
こちらにやって来たケントに軽く手を挙げながら労いの言葉を掛けると、ケントは疲れた表情を浮かべながら返事をした。
「ケント、そちらはどうだったんだ?」
「クライスか……こちらは本当に酷いものだったぞ。俺の組の魔法学院生は女子が多くてな、最初はリックたちが色目を使って大変だった」
「リック?」
「入試順位6位のビステ=リックだ。アイツらルカやクライスたちが居ないからと調子に乗っていてな……」
ヒステリック?
ああ、ヒソヒソくんたちの中で一番声が大きいやつね。
「締めた方がいいかしら?」
「放っておけばいい。それで……いざ訓練が始まると『自分たちが魔法学院の女子を護る』と言い出して誰が誰を護るかで揉め始めた」
「なんだかそれアタシも見た気がするわ」
「「……」」
ミランダが冷めた瞳でクライスとノインを見つめる。
2人は返す言葉も無いようだ。
「それでケントはどうしてたの?」
「1人だけ魔法学院の男子が居たから俺はその男子を護っていた」
「え? 誰?」
俺の知ってる人かな?
「トール=フォン=フレーゲルという男爵子息だ」
「ああ、オーグの護衛の背の低いメガネの方か」
「知っていたのか?」
「顔見知りではあるけど、友達って感じではないね。だってほとんど喋ったこと無いもん」
ユリウスの方はいい筋肉をしているので筋トレ仲間になれそうなのだが、トールの方は見た感じ俺とはタイプが違いそうだからあまり仲良くなれるような気がしない。
「そうか。それで話を進めるが……魔法学院の女子たちに良いところを見せたいリックたちが率先して魔物に斬り掛かって行ったのだが、中々倒せず苦戦してな。俺は魔法学院生たちの所に魔物が向かわないよう牽制したり、リックたちが大怪我を追わないよう立ち回るのに精一杯だった」
「それ……魔物はどうやって倒したんだよ?」
「焦れた魔法学院生が魔法で倒した。その時の魔法の威力を見た結果……ああなった」
ケントが視線で示した方には項垂れている騎士学院生たちが集まっている。
Sクラスの10人とAクラスの2人はオーグたちと遜色無い威力の魔法を使えると聞いたので中型の魔物ならほとんど一撃で屠っていたのだろう。
対して騎士学院側は1対1で中型の魔物と渡り合える実力のある者はケント1人だけ。他の者は小型の魔物にすら苦戦する者ばかりなのだから魔法学院生との実力差を知って落ち込むのも仕方ないな。
まぁ原因は全て自分の実力不足なのだから落ち込んでいる暇があるなら鍛練しろと言いたいところ。
「まぁ……なんだ、ケント、お疲れ様」
「お疲れさん! ケントの話聞いてたら俺こっちの班で良かったぜ!」
「あら? クライスとノインも『シシリーさんを護るんだ!』って争ってたじゃない」
「ちょ! ミランダ!?」
「それは黙っててくれてもいいだろう!?」
「俺の方も話したんだ、そっちの話も詳しく聞かせてくれ」
ノインの軽口に対してミランダが入れたツッコミの内容が気になったのか、ケントはキリッとした顔でこちらの班の出来事を聞いてきた。
「アタシたちの班にはウォルフォードくんが居たんだよ」
「それも2人!」
一応俺も『ウォルフォードくん』なのでアピールしてみたのだが、4人は慣れたような感じで俺の発言を完全にスルーして話を続ける。
なにこれ。いじめ?
「……シン=ウォルフォードか。それは大変そうだな」
「ねぇ、ルカ=ウォルフォードも居たよ」
「それが全然そんな事なくてさ、むしろアタシたちに気を使って貰ってたんだ。それなのに、最後はウォルフォードくんに女の子も美味しいところも持って行かれて2人して落ち込んでたのよ 」
「ミランダ! 変なことを言うな!」
「そうだったのか。お前たちもリックと大して変わらないんだな」
「無視すんな!」
俺の存在をスルーしつつ僅かにだがケントの口角が持ち上がる。
こういう『ニヒルな笑み』みたいな顔はケントに良く似合う。俺も似合うかな? 練習しておこう。
「それで虎の魔物が現れたんだけど……」
「と、虎って災害級のあの虎か!?」
今度は一転して驚愕に目を見開いている。
普段表情がほとんど変わらないケントにしては珍しいな。これを見れただけで合同訓練を頑張って良かったと思える。
「ええ。その虎よ」
「もしかして……その虎の魔物をシン=ウォルフォードがあっさり倒したとかか?」
「あ、違うの。虎の魔物はルカが倒したんだけど、その後にね」
「出来ればその話を詳しく聞きたいのだが……」
「100を超える魔物の群れが現れる→ウォルフォードくんが魔法で一掃→虎が出る→ルカが飛び出す→叩き落とされる→復活して拳で殴り倒す。以上よ」
「適当すぎるだろ……というか叩き落とされたのか? 大丈夫なのか?」
「見ての通りルカは大丈夫よ。叩き落とされても無傷だったわ……まぁ、その話はまた後で詳しくしてあげる。それで、虎の魔物を倒した後なんだけどね」
「あ、ああ……」
「ミランダ、後生だ、辞めてくれ……」
「勘弁してくれよ……」
「お前らは大人しく聞いてなさい。精神を鍛える為の鍛錬です」
「「鬼! 悪魔!」」
ミランダの話を止めようとしていたクライスとノインを引き剥がして正座させる。
これいいな。今後は鍛練を始める前に精神を鍛えるために座禅を組ませて黒歴史発表会をさせてみよう。
黒歴史を知られる恥ずかしさを克服出来たなら魔物なんて怖くもなんとも無くなるはずだ。
俺だって大昔当時読んでいた漫画に影響されて「人斬り抜刀斎になりたい! それから万事屋になって、鬼を倒す柱になって最終的におれは海賊王の右腕の大剣豪になる! あれ? 抜刀斎と万事屋は逆だったかも……順不同!」と将来の夢を宣言した瞬間に親父にぶっ飛ばされた挙句門下生たちの前でそれを発表され弄り倒されるという公開羞恥プレイを経験して怖いものは無くなったんだからお前らも経験しろ。
「……なんだかルカが恐ろしいことを考えてそうな気がするけど、とりあえず話をす進めるわ」
「新たな鍛練方法考えてただけだよ」
「そう、ならいいわ。それで虎の魔物を倒した後なんだけど――」
「全然良くない!」
「そっちをもっと掘り下げて聞いておくべきだ!」
「静かにしなさい!」
未だに話を中断したせることを諦め切れていないクライスたちが再び騒ぎ始めたので虎の魔物を足止めした時と比べて50パーセントオフにした殺気をピンポイントでぶつけてやると顔を真っ青にしてカタカタ震え出したがそのおかげで静かになったのでミランダに話の続きを促した。
この程度の殺気にビビるなんて精神が軟弱な証拠だ。『鉄は熱いうちに打て』とも言うし、出来たてほやほやの黒歴史を発表されるのは良い鍛錬になると思うよ。
それからミランダがクライスたちの黒歴史を掘り返し、その度にクライスたちが悶絶する姿をしばらく眺めていると解散の号令が掛かったので話を中断して我が家の裏庭へと移動して本日の鍛練を開始した。
「喰らえミランダ!」
「この怨みはらさでおくべきか!」
「なんかいつもより強いんだけど!?」
公開羞恥プレイにより心が鍛えられたクライスたちは普段よりも強い力を発揮していつもはやられているミランダ相手に奮闘していた。
うむ、やはり公開羞恥プレイは精神の鍛練にピッタリのようだ。
まだ先だけどこれが終わったら次は何を書こうかなぁ
書けそうなのはオバロ、八男、無職転生あたりかな?もしくはオリジナル?
最近運転中に朗読アプリ使って八男聴いてるから八男書いてみようかなあ
?と思って見てみたら5個しか無かった……
これなら覇権取れるか……?