突然だが、気という力はしっかりと練り上げれば僅かにだが物理的に影響を及ぼせるようになる。
しっかりと練り上げた《外気》をその身に纏えば相手の刃を受け止める鎧になるし、武器に纏えば敵を斬り裂く剣となる。
触れた部分から相手に侵食させれば敵を縛る鎖にもなりうるし、集めて固めて飛ばせば数メートル先の木の小枝くらいなら折ることも可能である。
つまり、何が言いたいのかというと――
「ルカ、何をしているの?」
「ちょっとした実験だよ」
ミランダの質問を華麗に右から左へと受け流し、練り上げた気を両足の膝から下に纏わせた。
そしてそのまま右足を持ち上げ、纏わせた気をその場に
「……よし」
第一段階は成功、そのまま右足を地面に降ろそうとすると粘性の高い液体に触れたかのような抵抗を感じる。
これなら――
「シン、お前またとんでもない魔法を創ったな……」
実験をしている間にシンが降りてきたようで、研究会のメンバーたちやクライスたちに囲まれている。
俺の実験を見ているのはミランダだけだ。
そんな状況で何度か実験を繰り返し、これならイケると確信したのでミランダへと向き直る。
「どうしたの? 実験は?」
「成功したよ。ちょっと走ってくる」
再び足に気を纏わせ、並行して体内の気を活性化させて肉体能力を引き上げる。
「……えっ?」
「新しいウォルフォード流の奥義実験だ……よっ!」
言い終わると同時、ちょっと強めに地面を蹴って跳躍する。
「えっ?」
ミランダがポカンとした様子で見上げてくるのをなんとなく気配で感じながら飛び上がり、大体15メートル程の高さに到達した時点で跳躍の推進力が無くなり落下が始まりそうになったので右足を軽く曲げて先程実験したのと同じように右足に纏わせていた気をその場に固定する。
「……ほっ!」
その固定した気に右足を乗せ、沈みきってしまう前に強化した脚力に任せて再び上に向かって跳躍する。2段ジャンプだ。
「ええ!?」
真下でミランダが叫んでいるのが聞こえるが、今はちょっと集中しているのでスルーする。
そして2段目のジャンプの推進力も失われてきたので今度は左足を軽く曲げて気を固定、真上ではなく前方へと蹴り出した。これで3段ジャンプ。
そして空中を進んでいる間に再び両足に気を纏わせ、推進力が無くなりそうなタイミングを見計らい右足の気を固定する。
その工程を繰り返すことで俺は自由に空を駆け回った。
「ふはは! 見よ! これぞ新たなウォルフォード流の奥義《
最初の数歩は直線的に、かつほぼ全力ダッシュくらいの速度でしか進めなかったが、やっているうちになんとなくもうちょっと弱く蹴っても大丈夫だと分かってきたので速度を落とし、縦横無尽に駆け巡る。
かつて思い描いていた「空を自由に飛びたいな」とは少し違うかもしれないが、これはこれでアリだろう。
そうしてしばらく駆け回り、飽きてきたので最後に両足を揃えて踏み切り、後方5回転宙返り3回ひねりを決めて地面に着地した。
うむ、これは10点満点!
「ル、ルカ? 今のは……?」
俺が空を駆け回る姿を見ていた皆は唖然としていたが、ミランダだけは瞳を輝かせながら質問してきた。
「ウォルフォード流の新しい奥義《
「どうやるの!?」
「外に出した気をその場に固定してそれを足場にして空中を移動するんだ。感覚的には水の上を走るのに似てるかな? 右足を水に乗せて沈む前に左足を出す感じだよ」
「やってみる!」
ミランダは両足に気を纏わせ、右足を軽く持ち上げる。
「気を……固定……」
そのままその場で足踏みを始めたので様子を見ていると、今度はシンが呆れたような顔をしてこちらに歩み寄ってきた。
「またとんでもない力技だね」
「お前のも魔力のゴリ押しだろ?」
「いや、俺のはちゃんと理論に基づいて計算とイメージをしっかりしてるから」
「その理論とやらを説明出来るの?」
「……反重力的な?」
何も説明出来てないじゃんか。
「全く……お前たち兄弟はどうなっているのだ……」
頭を抱えるオーグにドヤ顔を向けておいた。
「……出来ない」
「まずは外に出した気の操作をする練習と、あとは水の上を走る練習もした方がいいかもね。ミランダならすぐ出来るよ」
「分かった……」
シンの魔法実験の時間が終わるまで足踏みを続けていたが上手くいかずにしょんぼりしているミランダを慰めながら俺たちはシンの《ゲート》を通ってクロード屋敷へと戻って行った。
この後はシンとシシリーさんの婚約披露パーティがあるらしい。
たまご料理もたくさん出ると聞いたのでとても楽しみだ。
というか昨日付き合い始めたばっかりなのにもう婚約するって……
我が弟ながら手が早すぎて草生えそう。
転職に伴い有給消化に入りました。
有給消化中は暇だからいっぱい書けると思っていたら思いの外書く暇が無いという……