一度部屋に戻り着替えを済ませてから玄関ホールに降りると既に騎士学院男子組以外の全員が揃っていた。
「ミランダ、それカッコイイね!」
「似合ってる」
「なんだかとっても凛々しいわねぇ」
その中には当然ミランダもいて剣道着姿を金髪ロリっ娘たちに褒められていた。
うん、思った通りよく似合ってる。だけど強いて言うならもうちょっと高い位置でポニーテールにしたらいいとおもう。その方が絶対可愛いから。
「ルカ、お前もあまり見ない服を着ているな」
「よく似合っていますね」
「ありがとうトール」
こういう服を着る時は自分の容姿が黒髪黒目で良かったと思えるね。
まぁ多少彫りが深くて日本人顔には見えないことが難点だけど。
「しかしウォーレス殿とお揃いで御座るか……昨夜の一件を考えると、ルカ殿はやはり……」
「ユリウス、自分で黙るのと無理やり黙らされるのどっちがいい?」
「黙るで御座る」
うん。素直でよろしい。
「ルカ兄、せっかくミランダさんがルカ兄が選んだ装備を身につけてくれてるんだからなにか一声掛けてくれば?」
「そう言うお前はお前がデザインした服を着ているシシリーさんに一声掛けたの?」
「もちろん。だからルカ兄も声掛けて来なよ」
「いや、でも今は女子に囲まれてるから……」
後でちゃんと言っとくよ。
「はぁ……ルカ兄さぁ、こういうのって早い方がいいんだよ? 後になればなるほど言い出しづらくなるんだから早く行っておいでよ」
「なんなの? 婚約者ができたからっていきなり恋愛マスター気取りなの?」
お前だってつい最近まで俺と同じ彼女いない歴=年齢だったじゃん。
「皆さんカッコイイです! 私も欲しいです……」
そうしてシンと睨み合っていると横から可愛らしい声が響いてきた。
我らの妹メイちゃんだ。
「そうだね、メイちゃんにも作ってあげようか?」
「本当ですか!? シンお兄ちゃん!」
「ああ、どんなのがいい? 皆と同じにするか?」
「皆さんのもカッコイイですけど……カワイイのがいいです!」
くそぅ、出遅れた……
しかしシンが究極魔法研究会の戦闘服をメイちゃんに作ってあげるのなら俺は剣道着を作ってあげればいいだけだ!
「メイちゃん、俺やミランダが着てる剣道着は? 俺は紺色でミランダは臙脂色だからメイちゃんには薄い黄色とか似合うと思うんだけど――」
「いらないです」
「……えっ?」
「私は魔法使いになるです! だからシンお兄ちゃんたちの服がいいです!」
「そ、そんな……」
瞬間、下半身から力が抜けて俺はその場に崩れ落ちてしまった。
魔法使い……ズルい!
「ルカ、アタシはこの服カッコイイと思う。着心地もいいし、とても気に入ってるから大丈夫よ」
「ミランダ……ありがとう。その服とてもよく似合ってるよ」
「ルカ兄……それは絶対今じゃない……」
「はわわ、大人の情事です!」
子供は……時として残酷だ。
◇◆
その後少しして鎧を身に着けたクライスたちも戻ってきたのでメイちゃんや悪役令嬢さんに見送られ少し前までじいちゃんたちと暮らしていた森の家の近くまでシンの《ゲート》で移動した。
ふむ、魔物の気配が多いな。オーグがこの前「帝国領で魔物が相当増えている」と言ってたしその影響が出ているのかもしれない。
これは……狩り放題だ!
「じゃあ皆大型までの魔物は討伐できるだろうから今回は災害級を狙ってみようと思うんだけど……ルカ兄たちはどうするの?」
「そっちが災害級狙うなら大型までの魔物はこっちで対処するから一緒に連れてってよ」
別行動してもいいんだけど、そうなるとこっちで倒した魔物の素材が持ち帰れなくなっちゃうし。
「分かった。なら大型までは任せるね」
「おう。でもそっちが災害級何体か倒した後でいいからこっちにも1体か2体くらい回してよ」
「別にいいけど……騎士学院生たちだけで討伐できるの?」
「できるよ」
クライスたちはこの合宿でしっかりと実力を伸ばしているからね。4人で組めば災害級の魔物くらい余裕で狩れるよ。
「その割には青い顔してるけど?」
「アイツらに欠けてるのは自信だけだから」
「それはルカ兄のせいなんじゃ……」
「俺も最近そう思ってきた」
合宿地に到着するまでにミランダから「成長した実感が薄い」って言われたからね。
今後はその辺も何とかしたいと思っていたから今回の実戦訓練は渡りに船なのだよ。
合宿前の合同訓練で苦戦した熊の魔物辺りをアッサリ倒せれば自信もつくだろう。
「ルカ兄も反省するんだね」
「ぶっ飛ばすぞコノヤロウ」
お前俺の事なんだと思ってんの? 武術家たるもの日々反省の連続なんだぞ?
「ごめんごめん。まぁ分かったよ。倒した魔物の回収は任せてよ」
「それはよろしく。てか今更だけどハンター協会寄ってかなくて大丈夫? せっかく魔物狩るんだったら討伐前のデータ保存しといた方が良くない?」
以前それをせずに魔物を狩った結果素材の買取はしてもらえたけど討伐報酬は貰えなかった。
なので魔物を狩るのならそうした方がいいと思って提案してみると、シンの表情が固まった。
コイツ……完全に忘れてたな?
「えっと……そうだね、うん。そうしようか」
「バーカ!」
「ルカ兄にだけは言われたくない!」
「お前なんて記念日忘れてたシシリーさんに怒られちまえ!」
「例えルカ兄の誕生日を忘れてもシシリーとの記念日を忘れるなんて有り得ない!」
「お前俺の誕生日忘れたら自分の誕生日も忘れることになるんだぞ?」
「そうだった……」
俺たちは双子なんだから誕生日は同じ日だよ。
「いい加減にしろ! 話が進まん!」
「「ごめんなさい」」
オーグに怒られた俺たちは気を取り直して一度王都へと移動して全員分の市民証の『魔物討伐データ』を記録して再び森へと戻ってきた。
そうして打ち合わせ通りに魔物狩りを開始してしばらく、目的の第一災害級魔物を発見した。
今回の災害級の魔物を一番に発見したのはシシリーさん。
回復や防御魔法などの支援系が得意なシシリーさんは索敵にも優れているようだ。
そんな風に感心して将来の義妹であるシシリーさんを見ていると――
「獅子か……シシリー、俺が前に言った事覚えてる?」
「はい。虎は力が弱いけど素早くて、獅子は力が強いけど動きが鈍い」
「よく出来ました」
「はぅ……」
突然授業が始まったかと思えば流れるようにイチャイチャし始めた。
「あっ……オホン。えー、という訳なので獅子は力が強いため近付くことはあまりオススメしません! となると?」
「遠くから魔法攻撃ッスか?」
「正解!」
シンは焦ったように一度咳払いをして獅子の魔物の討伐方法について話し始めたのだが、正直手遅れだと思う。
しかし究極魔法研究会のメンバーたちは慣れているのか気にした様子もなくシンの質問に答えていた。
なんだろう、俺たちは何を見せられているんだろう?
俺たちの困惑をよそにシンはその場を仕切り始め、ユリウス、ボインちゃん、マーク、ストーンさん、そしてシシリーさんのオーグ曰く「支援系が得意な者ばかり」なメンバーで災害級の魔物を討伐するという話になった。
「じゃあ、5人で一斉に放ってね。用意はできた? それじゃあ――撃て!」
最初は若干自信なさげだった5人だったがのだが、シンの合図で魔法を放ちその結果を見た瞬間驚愕に目を見開いた。
つい先程まで魔物が居たその場所には――
「あー……やっぱオーバーキルだったか……」
災害級とされる獅子の魔物……だったものが僅かに残っているだけだった。
「なんて威力だ……」
「さ、災害級の魔物が粉々に……」
「……本当に魔法だけで討伐してしまうとは」
それを見てクライスたちがドン引きしているが、俺も割と同じ気持ちである。
お前ら、やり過ぎ。
これじゃ何の素材も回収できねぇよ。
「な? 本来攻撃魔法が得意でないメンバーでこれだからね。他の6人は攻撃魔法得意でしょ? 単独で討伐できるんじゃない?」
「いくらなんでも単独は無理でしょ……」
「いや……正直そう難しい事ではないように感じるな」
「多分できる」
「僕もそうだねぇ」
「なんか私たちまで人外になっていってる気がする!」
「自分もそんな気がしてきました……」
「あれ? 俺っていつの間に人外にランクアップしたの?」
「「「元々!」」」
「酷い! 俺が人外なら魔法も使えないのに災害級をアッサリ討伐できるルカ兄はなんなのさ!?」
「おい! 俺を巻き込むな!」
なんだか集団漫才しているなぁと思って見ていたらまさか巻き込まれるとは……
それから巻き込み事故を引き起こしたシンにツッコミという名の割と強めのチョップを入れてから再び災害級の魔物を探して森の中を進んでいく。
そしてすぐに現れた虎の魔物をトニーがジェットブーツとブルブル剣、魔法を駆使してあっさりと単独討伐に成功した。
「本当にアンタたち、とんでもない集団になったもんだね……」
「ほっほ。良い事じゃ」
そんな光景を見てばあちゃんは頭を抱えているが、その横でじいちゃんは楽しそうに笑っている。
じいちゃん……あとでばあちゃんに怒られない? 大丈夫?
その後も探索を続けて発見した魔物は全てサーチアンドデストロイ。
予定通り一通り研究会のメンバーが災害級討伐を経験した後、俺の弟子たちにも災害級との戦いを経験させることができた。
やはり最初は災害級の魔物の大きさにビビっていたが、基本的にアイツらの攻撃は大振りなので攻撃を躱している間に何とか慣れたようで最終的には4人でしっかり連携を取って討伐を成功させていた。
全ての討伐が終わってから王都のハンター協会に立ち寄って換金したのだが、俺の弟子たちは支払われた金額を見て絶句していた。
「ルカ……これはちょっと多すぎる」
「そうね……一学生が持っていていい金額じゃないと思うわ」
「だな……金はあればあるだけいいと思ってたけど、この金額はさすがに怖い」
「……」
皆びっくりし過ぎじゃね? あとケントは頷くだけじゃなくてなにか言え。
「そう言えば魔物討伐をしたらその報酬から月謝を払う約束をしていたな」
「そう言えばそうだったわね……今日渡された装備の代金も払いたいし、ここから払っていいかしら?」
「だな……よし、ルカ! この金から半分払うぞ!」
「……半分と言わず7割くらい持って行って欲しい」
指導料なんてそれこそその気持ちだけで十分なんだけどなぁ……それに装備に関しては師匠から弟子への贈り物みたいなものだから本当に気にしないで欲しい。
とは言え正直にそう伝えたとしてもミランダたちは納得してくれないだろう。
なんかめちゃくちゃ支払いだそうだし。
「うーん……分かった、じゃあ受け取った金額の3割を上限に皆の気持ちを受け取るよ」
「「「「3割で」」」」
「やっぱりか……」
上限を設けないと半分以上を押し付けられそうだったので適当に上限を設定してみたのだが、やはり上限いっぱいの金額を支払われてしまった。
今後訓練で魔物を狩る時は前もって「受け取り上限は1割です」と宣言しておこう。
そうして受け取ったお金で皆にまた何か作ってやるんだ。
昨日久しぶりにいいもの(しゃぶしゃぶ)を食べたからか朝からお腹の調子がとても悪いです。
どうやら作者のお腹は贅沢には慣れてないようです。
ということで皆様、胃薬代わりに高評価とか感想とかここ好きとかください。お願いします。