魔物の討伐を訓練に加えてから数日、小型、中型、大型、災害級と次々と討伐していき、討伐報酬もどんどん増えていった。
その討伐報酬から今回俺が用意した装備品代やこれまでの指導料名目でミランダたちからお金を押し付けられてしまった。
俺はダメ元で「要らない」と言ってはみたのだが、「施しを受けるだけなど騎士としてウンタラカンタラ」と言われてしまいなし崩し的に受け取ることになってしまい現在俺の口座残高はエライコッチャになっている。
これ、一生働かなくても食っていけるんじゃないのかな……
まぁお金はあって困るものではない。
前世の俺も歴史的大企業の跡取り候補ということでそれなりの額の個人資産も持っていたのだから今世でも前世と同じようにしておけばいいだけだろう。
前世と同じようにということは――
「マネ活しなきゃ」
「マネ活? 急にどうしたの?」
夕食後、何故かお金の話になったので市民証に表示されている預金額を見ながら呟くと、その呟きに隣に座っていたシンが反応を示した。
「結構貯まったからそろそろお金でお金を生み出す錬金術をやろうかと」
「錬金術って……つまりどういうこと?」
「投資だよ」
ある程度お金が貯まったら資産運用を考えるのは当然だろ?
「投資って……大丈夫なの?」
「まぁ変なのに引っ掛からなければ問題ないよ。お前はやった事ないの?」
「あるわけないじゃん」
そういえばコイツって前世は普通のブラック企業に勤めてたって言ってたな。
もしかして余剰金を投資に回す余裕も無かったのだろうか?
「ふーん……まぁお前も今相当貯め込んでるだろ? ある程度貯まってるなら一部は市場に回さなきゃ」
経済は動かしてナンボだよ。
「それはそうなんだけど……どうしたらいいのか分かんなくて」
「経済的に余裕のある人に娘を嫁がせるのは親として好ましい事ですからね。シンくんの資産が増えていくのは私としては願ったり叶ったりよ。もし資産運用に困ったら相談にいらっしゃいな。これでも領地経営までしている子爵家ですからね」
「はぁ……ありがとうございます」
俺たちが資産運用について話をしていると、シシリーさんのお母さんも会話に加わってきた。
ふむ、この世界にはお貴族様がいるんだからお貴族様に投資するのはアリかもしれない。
変なお貴族様に投資してしまうとケツの毛まで毟られるのかもしれないが、シシリーさんの実家なら俺の毛を毟る必要もないだろう。
毟るのなら俺のじゃなくてシンの毛を毟ってね。
「えっと……クロード夫人、よろしいでしょうか?」
「あら、何かしら? あと私の事は家族になるのだからアイリーンで構わないわよ」
「え? ああ、はい……じゃあアイリーンさん、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」
「なぁに?」
「クロード子爵領に投資しようと思うんですけど……手続きとかってどうすればいいですか?」
「投資? 家に?」
「はい」
お貴族様に投資するとなると当然親族となるクロード子爵家がその筆頭候補ということになる。
クロード子爵領は温泉地でもあるので将来の発展性にも期待できるのでこの世界に来て最初の投資先としてこれ以上はないだろう。
「そうねぇ……私では即答出来ないから主人が居る時にお願いしてもいいかしら?」
「分かりました」
現在シシリーさんのお父さんは王都屋敷にて婚約披露パーティー(本番)に向けての準備をしているため俺たちの合宿地であるクロード子爵領には来ていない。
またすぐに顔を合わせるだろうからその時にでも相談してみよう。
「ふむ、ルカは案外しっかりしているのだな……どうだ? 王国債には興味は無いか?」
アイリーンさんとの会話が終わるのを待っていたのか、今度はオーグがそんな話をし始めた。
「王国債? 利率は?」
「利率まで気にするのか……王国債は利率は低いが信用度は高い。一口どうだ?」
「ならなるべく長期のを貰おうかな。利率は変動制? 固定制?」
「長期となると20年だな。それだと1年毎の変動制だ。3年、5年、10年なら固定制もあるぞ」
「なら変動20年と固定5年を半分ずつにしようかな」
「案外手堅いな。では今度城に戻った際担当者に伝えておこう。金額はどうする?」
「両方とも2災害級分で」
「変な単位を生み出すな!」
そんな話をしている間にシンはシンで自分の商会を立ち上げる方向に話が進んでいたようなのでシンが商会を立ち上げるならその時にはそちらにも投資をしよう。
シンが魔道具を販売するなら損する事は無いだろうし、株主優待にも期待出来そうだ。
これはお金の使い道に困っていたミランダたちにも教えておこう。
ウォルフォード流投資術だ!
◇◆
そうこうしているうちにシンの王都での婚約披露パーティー(本番)の日がやって来た。
俺の中の予定では今日に合わせてミランダにドレスや宝飾品を贈り、いい雰囲気の中告白しようと考えていたのだが今回のパーティーも俺たち学生は制服での参加と指定されてしまったので出鼻を挫かれた気分になった俺はその計画は断念した。
まぁその話は置いておいて……
パーティー中にシシリーさんのお父さんであるロイスさんに話を付けて投資の約束をし、王国債の最上位責任者であるディスおじさんと王国債購入の約束をし、ついでに有名リゾート地を領地に持つユリウスの実家のリッテンハイム侯爵家、領地に優秀な職人たちが軒を連ねる職人街を持つトールの実家フレーゲル男爵家、領地が港町であり海運事業が盛んなマリアの実家メッシーナ伯爵家、そしてシンが立ち上げる商会で販売する魔道具の制作を一手に引き受けるビーン工房にもそれぞれ投資の約束をしたので多分これで利回りだけで生きていけるような気がする。
それを見ていたミランダたちも俺と同じように魔物討伐で得た報奨金を投資していたのでこれはシンの商会設立を見習って『ウォルフォード証券』を立ち上げてみるのも面白いかもしれない。
俺に経営は出来ないので俺の手足となって働いてくれる人が居ればだけど。
前世で親父が「社長は部下が不正をしないよう睨みを利かせるのと何かあった時に責任を取って腹を切るのが仕事」だって言ってたから俺もウォルフォード証券を立ち上げるならきちんとその役割を果たさなければ!