賢者の孫のお兄ちゃん(魔力無しVer.)   作:愛飢夫

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スイード王国王都魔人掃討戦

「居たぞ!」

「アイツだ!」

「囲め! 殺せ!」

 

 複数の声とともにアチコチから魔人どもが集まってくる。

 

「あ? なんだかたくさん居るぞ!?」

「知るか! アイツだ、アイツを殺せ!」

 

 未だに多量の《外気》を纏っているからなのか、魔人どものヘイトは完全に俺へと向いている。

 これは狙い通りなんだけど、コイツら煽り耐性低すぎない?

 

「たかが人間如きが調子乗ってるんじゃねぇぞ!」

「死ね! オラァ!」

 

 先頭を走っていた魔人が魔力を操り、直径1メートル程の火球を生み出し、こちらに向けて飛ばしてくる。

 

 おっそ……

 

「ふむ……」

 

 込められている魔力は見た感じ6歳の春のシンと同等。速度は遅く、狙いは甘い。これなら回避するのも斬り捨てるのも簡単だ。

 しかしせっかく魔力を集めて魔法の形にしてくれているのだ、有効活用してやろう。回避して背後の建物に被害が出るのも面白くないし。

 

 刀を抜き、気を纏わせる。

 普段は固くしなやかで鋭い刃をイメージして纏わせているのだが、今回はいつもとは違うイメージをする。

 

 イメージはバット。その火球、打ち返してやろう。

 

 (騎士養成士官学院高校、4番、ピッチャールカくん)

 

 今にも怒りに我を忘れて暴れだしそうな気持ちを収めるために心の中でわざとふざけたアナウンスをしながら右打席へ入り、バットと左足を上げて華麗な一本足打法に構える。

 そして飛んでくる火球に合わせて力強く踏み込みながら腰を回し、手首を返してバットを火球に叩き付けた。

 

 強烈なピッチャーライナー!

 

 数倍の速度で打ち返された火球は狙い違わず魔法を放った魔人に直撃し、そのまま後方に居た複数の魔人も吹き飛ばした。

 

 ――これは大チャンス!

 

 急いで振り切ったバット――刀を鞘に納め、足元に転がっている適当な瓦礫を拾い上げる。

 このままだとちょっと大きいので左手で軽く叩いて細かく砕き、右手でギュッと握り固めた。

 

 (騎士養成士官学院高校エースルカくん、大きく振りかぶって……投げたぁ!)

 

 心の中で実況しながら握った瓦礫をぶん投げる。

 すると狙っていた通り魔人にぶつかる寸前に瓦礫は細かく崩れて散弾のように魔人どもに着弾し、貫いた。

 

 これぞウォルフォード流投球――じゃなかった。投擲術《死球(デッドボール)》だ!

 

「な、なんだ!? 土魔法か!?」

「でも魔法は使えないって……まさか嘘か!?」

「いや、アイツ瓦礫投げてたぞ!? 本当に人間か!?」

「「「化け物だ!」」」

「失礼な! お前らにだけは言われたくない!」

 

 人であることを捨てた化け物はお前らだろうが! 俺は鍛え始めたのが他の人よりちょびっとだけ早かっただけの普通の人間だ!

 せっかくアルティメット・ナイツのリーダーとしての責任感で冷静に戦おうとしているのに挑発してくるなんて……なんてふてぇ野郎どもだ!

 

 よし決めた、鏖殺だ!

 

「シン!」

「何?」

 

 先程の俺の号令でアルティメット・ナイツとマジシャンズのメンバーたちはバラバラに散って行動を開始したが、何故か少し離れた場所から動かず俺の戦闘を眺めていたシンに呼び掛ける。

 

「更に魔人の注目を集めたい。お前もやれ」

「やれって何を――ああ、あれか」

 

 シンは俺が何を要求したのか分かったようで、自分の周囲に膨大な量の魔力を集め始めた。

 

「な、なんだあの魔力は!?」

「俺たちより多いんじゃ……」

「本当に人間か!?」

 

 血眼になって俺を殺そうとしていた魔人どもの視線がシンへと集まる。

 

 よし、これで効率的に殺せるな。

 

「ウォルフォード流抜刀術《旋風刃》!」

 

 膨大な量の魔力を纏うことで魔人どもの視線を集めたシンに対し、俺は逆に纏っている《外気》のほとんどを体内に戻して活性化。気配を消してそのまま魔人どもの群れの中心へと切り込んだ。

 

「ぎゃあ!?」

「なッ!? どこだ!?」

「うわぁ!?」

 

 シンに視線を向けていた魔人どもは浮き足立ちながら俺を探そうとしているが、そんな状態で気配を消している俺を捉えられる訳もなく……次々と首を刎ねられ、胸を貫かれ、頭を割られて息絶えていく。

 途中逃げ出そうとした魔人や更に集まって来た魔人どもはシンが集めた魔力を魔法に変換して撃破していたので俺は群れの真ん中で刀を振るだけの簡単なお仕事だった。

 

「よし、殲滅完了」

「お疲れ様でした」

「お前もな」

 

 逃げ出す魔人や集まって来る魔人も居なくなったので俺の横に降りてきたシンとグータッチをしてお互いを労い合った。

 

「ここだけで王都に侵入して来た魔人の5分の3くらいは倒したかな? シン、他の様子はどう?」

「大体それくらいは倒したと思うよ。皆も順調に討伐してるね。ルカ兄が気にしてるミランダさんも何体か倒してる」

「べ、別にミランダだけを気にしてる訳じゃないぞ!?」

 

 俺はちゃんとクライスたちの事も気にしてるから!

 

「はいはい。これでこの後はどうする? このまま王都の中に侵入した魔人の討伐を続けるの?」

「ふむ……」

 

 シンに問われたので今後の動きについて少し考えてみる。

 

 王都に侵入した魔人がナイツやマジシャンズによって順調に討伐されているのならそこに俺とシンが加わる必要性は薄いだろう。

 それなら王都に入る前に見た今にも破られそうになっていた城門の守護に向かうべきか。

 そちらにも俺とシン2人で向かう必要は無さそうなのでここは空を飛べて広範囲に指示や攻撃を飛ばせるシンに王都内の魔人殲滅と仲間たちのフォローを任せて俺が単身で城門に向かうのが最善だろう。

 

 その方針をシンに伝えようとした瞬間、俺の背筋に冷たいものが走った。

 これは――この気配は!?

 

「ッ!?」

「ルカ兄!? どうしたの!?」

 

 即座に振り向き、気配を感じた方へと体を向ける。

 その俺の反応を見たシンも同じ方向を向きながら再び大量の魔力を纏った。

 

「シン、この先数キロ……あそこのバルコニーが見えるか?」

「数キロって……望遠の魔法使うからちょっと待って」

 

 そう言って集めた魔力を魔法に変換した瞬間、シンの動きが停止した。

 

「見えたか?」

「見えたよ。なんでじいちゃんとばあちゃんが……てかルカ兄、よく気付いたね」

「むしろなんでお前が気付かなかったのかが謎過ぎる」

 

 じいちゃんはともかく、ばあちゃんがこちらを認識して見てるんだぞ? なんで分からないんだよ。

 

「いや、俺にはそんな謎能力備わってないから」

「マジ? あれだけ折檻されて育ったのに分からないとかお前の危機管理能力どうなってんの?」

「折檻されてたのはルカ兄だけだよ。俺は説教だけだし」

「なんと……」

 

 驚愕の新事実である。

 まさか双子である俺とシンにそんな格差があったとは……やはり俺は長男だからそれだけ期待が大きかったのかね?

 

「まぁその話はいいじゃん。今は魔人の方が大事だろ」

「それはそう」

 

 ばあちゃんが見ているのならなおのことミスは許されない。

 俺たちが来たからには死者どころか負傷者すら出さずに救わなければ!

 

「で、どうする?」

「よし、なら――」

 

 改めて今後の行動指針について話をしようと口を開くと同時、城門のある方向から大きな爆発音が聞こえてきた。

 マジシャンズの誰かの魔法だろうか? 使わないとヤバい状況なら仕方はないが、街を破壊してしまうような魔法を使うのはあまりよろしくないな。

 

 もしかしたら俺かシンが行った方がいいのだろうか?

 

 そう考えて出そうとしていた指示を飲み込んだ瞬間、スイード王国王都内に聞き慣れない声が響き渡った。

 

『撤退! 撤退だ! 魔人たちは一時撤退しろ!』

 

 これは……魔人側指揮官の拡声魔法?

 

 その声が聞こえた直後、建物の向こうに捉えていたいくつかの魔人の気配が外に向かって移動し始めた。

 

 魔人が向かっているのは……おそらく城門だろう。

 だとすると先程の爆発音は何かの合図だったのだろうか?

 

 ちょっと状況がハチャメチャ過ぎてよく分からない。

 

「!? 簡単に逃げられると思うなよ!」

「あ、おい! シン!」

 

 どう行動するのが最善かと考えていると、こちらに背を向けて逃げ出した魔人の姿を見たシンが俺からの指示を受ける前に追撃を始めてしまった。

 

「ホントアイツは……」

 

 シンはこういう時イノシシになるからいけない。ちゃんとフォローしてやらなければ――

 そんなことを思いながら城門の爆発の確認とシンが追い立てた魔人を待ち受けるため《空中歩行(スカイ・ウォーク)》を使って城門へと向けて駆け出した。

 

 すると下で魔人と戦っていたとあるマジシャンズのメンバーから魔法を撃たれてしまった。

 どうやら逃げる魔人と勘違いされてしまったらしい。

 

 ユリウス、後で説教な!

 




甲子園見ました。智辯和歌山優勝おめでとうございます。

わたくしも何かしらで優勝したいのでとりあえず高評価ボタン押していただいてもよろしいですかね?
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