翌日、各国への根回しという名の旅行に出発した。
我が家に全員で集合し、シンのゲートで一度王都の外に出てからシンの浮遊魔法を使って全員で空へと飛び上がる。
今回は最初からちゃんと俺にも掛けてくれたようで何よりだ。
「わあ! 気持ちいいです!」
「メイちゃん、フラフラしてるよ! もうちょっと安定させてみようか」
「はいです! えっと……こうですか?」
「お上手ですよ。メイ姫様」
「えへへ」
シンとシシリーさんに挟まれ両手を繋いで空を飛んでいるメイちゃんを見てほっこりする。
「あちらは楽しそうでいいですわね」
「なんだ? エリーは楽しくないのか?」 「そんなことはありませんけど……私だけアウグスト様に抱えられているのは申し訳ないと言うか、恥ずかしいと言うか……」
そのすぐ近くではオーグが悪役令嬢さんを横抱きにして飛んでいる。
その光景をニヤニヤしながら眺めていると、俺の視線に気付いたオーグが振り返って睨み付けてきた。
「心配するな、後ろを見てみろ。ルカも自力で飛べずにウォーレスに引っ張ってもらっているではないか」
「あら……」
「おいコラオーグ、聞こえてんぞ!?」
シンが「会話が出来るように」と風魔法を使って音声バイパスを繋いでくれているから全部聞こえてるんだぞ!
「ルカ、ルカもお姫様抱っこにしてあげようか?」
「勘弁してください……マジで昨日のうちに俺の靴もジェットブーツにしてもらえば良かった……」
前回の移動を反省して移動用に俺の戦闘服のブーツはジェットブーツに改造してもらったのだが、今日は私服での移動のため俺の靴には何の付与もされていない。
ミランダたちの靴には俺がトイレに行っている間に付与を施したらしいのでこれは完全に故意犯だと思っている。
「だったら跨る?」
「跨らない。このまま牽引してもらえると助かるよ」
ミランダに跨ると俺にも浮遊魔法が掛かっている影響でしっかりと足を使って固定しなければならない。
そうなるとまたお尻とお尻がおしりあいになってしまってとてもハレンチなので緊急時に弓を射る時以外に跨るつもりは無い。
というか俺はミランダではなくナイツの男子メンバーの誰かに引っ張ってもらうか背中に乗せてもらうつもりでいたのに、頼んだら全員に目を逸らされたのでこうしてミランダに引っ張られているだけなのに……
俺の靴がジェットブーツではないので仕方がないとはいえ傍から見れば俺とミランダが仲良くおててを繋いで空を飛んでいるように見えている事だろう。
やべっ、考えてたらちょっと緊張してきた……手汗大丈夫かな?
「分かった。だけど腕が痛くなったりしたらすぐに言ってね。いつでも乗せてあげるから」
「いや、まぁ……うん。その時はお願いするよ」
そうして引っ張られながら空を飛ぶことしばらく、先日も通ったアールスハイド王国とスイード王国の国境にある関所が見えてきた。
今更だが今回の旅こ――ゲフンゲフン、根回しの旅で訪問する国はダーム王国、カーナン王国、クルト王国の3カ国。
アールスハイド王国を出発し、一度スイード王国に入ってから順番に回って行くようだ。
なんでもルート的に一度スイード王国を経由しないとダメなんだって。地理に疎い俺にはよく分からない。
「一度降りるぞ」
前回は緊急事態であり、応援要請もあったのでスイード王国との国境は素通りしたのだが、今回はさすがにそれはダメなのでキチンと越境の手続きをしてスイード王国に入国する。
「アウグスト殿下、それに皆様もようこそお越しくださいました。本日はどのようなご用件で?」
「ああ、ダーム王国に用があってな」
「左様ですか……では王都には?」
「立ち寄らない。今は復興作業で忙しいだろう?」
「それは……」
「スイード王にはまた落ち着いた頃に挨拶させて頂く。そのように伝えておいてくれ」
「かしこまりました。お気を付けて」
関所の兵士とはオーグがやり取りをして通行の許可をゲットする。
俺たちは先に関所を越えたオーグに続いて敬礼して見送ってくれる兵士に軽く会釈をして関所を超えた。
「よし、では飛ぶぞ」
そうして関所を越えた後、すぐにシンの浮遊魔法を使って浮き上がり、再び空を移動してスイード王国を突っ切りダーム王国へと入国した。
◇◆
「ようこそダーム王国へ。市民証を拝見させて頂けますか?」
「ああ」
「拝見しま……!?」
「話は通っているだろうか? 出来ればこのままお目通り願いたいのだが」
「しょ、少々お待ちください!」
オーグの市民証を見たダーム王国王都の入都を管理している兵士は慌てたようにそう言って裏へ引っ込み、上官っぽい兵士を連れて戻ってきた。
「ようこそおいで下さいました。どうぞこちらへ……」
その兵士に案内され、俺たちは詰所の奥にある応接室へと通された。
「改めまして……ようこそおいで下さいました。アウグスト殿下」
「ああ、気を遣わせてしまってすまないな」
「いえ、あの場で殿下の素性が割れてしまいますと何かと面倒でございましょうから」
他国の王族がいきなり現れたとなると騒ぎになるのは必至だからね。
妥当な対応だと思う。
「それでは王城に遣いを出します。皆様でおいでになられますか?」
「いや、今回は私だけでお会いしよう。一応この護衛二人は連れて行くが」
そう言ってオーグはユリウスとトールを指し示す。
ケントも付けようか? 要らない?
まぁオーグの戦闘力はユリウスとトール、それにケントを合わせた3人分の戦闘力を超えているっぽいので魔人に襲われる可能性が無いのならケントの護衛は不要だろう。
ぶっちゃけオーグって俺やシンと同じく前世の記憶持ちなんじゃないかと疑うレベルで天才だからなぁ……
そうしてしばらく待っていると、伝令に向かった兵士が迎えの馬車を引き連れ戻ってきた。
「それでは行ってくる。落ち合う場所は何処にする?」
「別に決めなくても大丈夫だろ。魔力探査で俺らの場所分かるだろ?」
「それもそうだな。では後程」
「あぁ。宿は取っておくよ」
「任せた」
「行ってらっしゃい」
馬車に乗って王城へと向かって出発したオーグたちを見送り、皆の方へと向き直った。
「で、どうする?」
俺がそう問い掛けると、シンが呆れたように嘆息しながら口を開いた。
「どうするって……今オーグが言ってたじゃん。とりあえず宿を押さえに行くよ」
「いや、それは分かってるから……俺が聞いてるのはその後だよ」
俺だってつい数秒前の会話くらい覚えてるわ!
「ああ、なるほどね。特にやることは無いから街を散策しようと思ってるよ」
「そうなんだ」
なるほど、つまり観光か。
「シンお兄ちゃん、ダーム王国ってどんな国なんですか?」
俺がそう納得していると、今まで静かにしていたメイちゃんが尋ねてくる。
メイちゃん、ルカお兄ちゃんには聞かないの? 聞かれても答えられないけどさ。
「えっと……さあ?」
「シン……貴方本当に世間知らずなのねぇ……」
「はぅ……ごめんなさいです……」
「え? ああ! いえ、メイ姫様ならしょうがないですよ! まだ小さいですし、外国のことなんですから!」
あれ? シンって座学も優秀なんじゃなかったっけ? なんで答えられないんだろ?
てかまだ普段はちょっとアレなマリアでもメイちゃんに対しては気を使うんだな。
「そうなんですか?」
「そうなの?」
シンとメイちゃんが揃って首を傾げている。可愛い。
「ええ。初等学院じゃまだ外国の事は詳しく授業でやらないから。中等学院で習うのよ」
「……俺、初等学院も中等学院も通ってない」
「俺もだよ!」
なんだかシンが若干しょんぼりしたように返事をしたので、フォローするためにも自分もそうだとアピールしておく。
「あ……ごめん……でもシンはともかくルカは通ってても覚えてないと思うわよ?」
「何その突然のディス……」
なんか俺にだけ当たり強くない?
「ルカ、大丈夫よ。アタシはルカはやればできる子だって分かってるから」
「ミランダぁ……」
マリアに邪険にされた直後だからかミランダの優しさが心に染みる。
「試験前のルカは頑張ってたじゃない。それにルカなら誰にも気付かれないようにカンニングだって出来るのにしなかったでしょ? カンニングせずに赤点回避したんだから自信持って!」
ミランダぁ……しゅきぃ……
「しかしルカに勉強を教えるのは本当に骨が折れたな……」
「だな……3個教えたら2個忘れるとか頭どうなってんだよ……」
「……人には得手不得手があるということだな」
お前ら! 今ほっこりしてるんだからちょっと黙っといて!
来週はシルバーウィークが無かった鬱憤を晴らすため旅行に行きます。
なので更新出来ないかも……今週中に完成すれば更新します。なので完成するよう祈っておいてください。
いいねとか高評価とかここ好き、感想なんかを大量に頂ければ完成する可能性は高まります。
ちなみにここだけの話ディズニーに行く予定なんですけど、愛飢夫だけ別行動の自由行動です。