大量の羊が一斉に魔物化するというカーナン王国的に空前絶後で前代未聞で驚天動地で吃驚仰天な事件を解決した俺たちは今回の旅行の最終目的地であるクルト王国へと向かっていた。
「ねぇミランダ、最後に行くクルト王国ってどんな国なの?」
カーナン王国王都を出てしばらく歩いてから空中移動に切り替えた頃、最後の目的地の事をまだ聞いていなかったので俺の手を引いて飛んでいるミランダに尋ねてみた。
「クルト王国は麦の一大生産地ね。食料自給率が300パーセントを超える農業国家よ」
「へぇー」
「そのお陰でパンの種類も豊富で、今世界中で作られているパンの発祥の殆どがクルト王国らしいわよ」
「そうなんだ」
だったらアンパンとかクリームパンとかもあるのかな?
たまには菓子パン食いたいよなぁ……てかそろそろ米が食べたい。ガッツリ牛丼とかいいよね。
そうしてクルト王国について教わっていると、ある地点を超えた途端にガラッと見えている景色が変わった。
「おお、これがクルト王国の大穀倉地帯か……」
「すげぇな、実際に見るのと聞くのとじゃ大違いだ」
「……圧巻だな」
「麦の絨毯です!」
まだ収穫までに時間があるのであろう麦畑はまだ小麦色ではなかったが、それでも見応えのある景色であった。
「こりゃ凄い。食料自給率が高いのも頷ける」
見える範囲の麦畑だけで一体どれ程の麦が収穫できるのだろうか?
考えるだけでワクワクしてくる。
「本当に凄いわね……一体どうやってこの麦畑を維持しているのかしら?」
「あれ? ウォーレスさん知らないんスか?」
俺たちが騎士学院生だけで固まって飛びながら喋っていると、その内容に興味を惹かれたのかマークが近寄って来て話に加わった。
「マークは知ってるの?」
俺がそう問い掛けると、マークはいい笑顔を浮かべながら頷いた。
「もちろん知ってるッスよ! これは――」
それからマークはどうやってこの広大な麦畑を維持しているかの説明を始めた。
「まずこの畑を人間の手だけで維持管理するのはまず不可能ッス。つまり魔道具って事ッスね」
「そうなんだ」
「その魔道具を創ったのは導師様ッスよ」
「そうなんだ!?」
ばあちゃんそんなの作ってたんだ……
「はいッス。クルト王国は肥沃な土地が多くて、それまでも麦の生産は盛んに行われていたんス。けど人員的な問題で収穫高を増やすことが出来なかったッス。そこに導師様が畑を耕す魔道具と、収穫と脱穀を同時に行う魔道具を開発したことで畑を広げることが出来て収穫高が劇的に増えたんス。だからクルト王国では賢者様より導師様の方が人気が高いんスよ」
「「「へぇー」」」
マークの説明をクライスたちも興味深げに聞いている。
ばあちゃんってすごい人だったんだなぁ……
「なんか……ばあちゃん歴史上の偉人みたいだね」
「ルカさん、『偉人みたい』じゃなくて紛れもない偉人ッスよ。多分将来的に歴史の教科書にも載るはずッス」
「マジかよ」
身内が教科書に載るなんて……なんだか不思議な気分だな。
「ルカくんは何を言ってるのかなぁ?」
「多分私たち……少なくともウォルフォードくんと兄フォードくんは間違いなく歴史に名が残る」
「アリス……暴走さん……」
「だから略さないで!」
「だったら兄フォードやめろ!」
なんだろう、せっかく珍しく真面目にお勉強をしていたのに水を差された気分だ。
そんな話をしているうちにクルト王国王都へと到着、ダーム王国、カーナン王国の時と同じように門番に声を掛け、王城にアポを取ってもらう。
「さて……どうする? 何か目的はあるか?」
「いや……これと言って何も思い浮かばないな」
王城からの返事を待っている間暇だったのか、オーグが投げかけてきた質問にシンがそう答えていた。
いや……目的ならあるだろ?
「せっかくパンが有名な国に来たんだから食べ歩きだろ」
「あー……確かにそうだね」
「どうせなら大量購入してシンの異空間収納に入れて帰ろうぜ!」
「カーナンで大量に羊肉仕入れてたのに?」
「それはそれ、これはこれ!」
帰ったら美味しいタレを仕込んでジンギスカンパーティーをするんだよ!
「殿下、迎えの馬車が到着致しました」
「そうか、分かった。ルカ、シン。余計なことはするなよ? 今日王都に戻るんだから最後くらいはトラブル無しで終わりたい」
「俺はトラブルメーカーじゃない!」
「いや、シンは立派なトラブルメーカーだと思う」
「ルカ兄!?」
だってこいつ、俺が大人しくしてる間に2回も魔人と交戦してるんだよ? 完全無欠のトラブルメーカーじゃん。
「はぁ……いいな? 大人しくしておけよ?」
「「はーい」」
王城へと向かって出発するオーグを見送り、俺たちも街へと繰り出した。
今日はオーグたちが戻ればシンのゲートでアールスハイドに帰るため全員で行動を共にする。
「おお、いい匂いがする……」
「あちこちでパンが焼かれてる匂いね」
「お腹空いたです!」
街に出ると、まるで街全体から漂ってくるかのようにパンの焼けるいい匂いがしてくる。
メイちゃんじゃないけど、俺もお腹空いたな……メロンパン食べたい。
「あ! サンドイッチ売ってる! 皆で買って食べようよ!」
周囲を見てみると、サンドイッチやクレープを食べながら歩いている姿をよく見かける。
道の脇にはサンドイッチを売っている屋台が並んでおり、肉メインの店、野菜メインの店、フルーツサンドの店など、各店舗が差別化を図っていて見ているだけで楽しくなってくる。
そんな中から女性陣の大半と一部男性メンバーは野菜やフルーツの店で、男性陣の大半と一部の女性メンバーは肉メインの店でサンドイッチを購入。
俺はサンドイッチの基本であるBLTサンドをチョイスした。
迷ったら基本に立ち返る。これが真理だ。
「やはりサンドイッチはカツサンドだな」
「いやいや、照り焼きチキンだろ!?」
「……男は黙ってローストビーフ」
「何言ってるのよ。3種盛りが至高でしょ?」
「「「俺たちより男らしい……」」」
「何よ! 何か文句あるの!?」
アルティメット・ナイツのメンバーたちはどの肉が美味いのかで争っているが、お前らはもうちょっと野菜も食べた方がいいと思うよ。
そうして食べ歩きをしていると、突然ミランダが俺の肩を叩いてきた。
「ルカ、賢者様と導師様よ」
「えっ……!?」
一瞬じいちゃんとばあちゃんが俺たちを追跡しているのかと身構えるが、いくら探ってもそのような気配は感じられない。
「違うぞルカ。あそこの本屋の軒先だ」
「軒先?」
クライスが指差す方を見てみると、本屋の軒先に若い男女の絵が吊るされているのが目に入る。
若く、挑発的な笑みを浮かべた黒髪イケメンの男とメガネをかけた理知的な、それでいてどことなくセクシーな感じの美女の絵だ。
もしかして……あれがじいちゃんとばあちゃんなのか?
「はぁ……格好いいなメリダ様……」
「こっちの賢者様も上手く描けていますわね」
「それにしても……さすがクルト王国ッスね。賢者様関係より導師様関係の方が本が多いッス」
「え……? 本って1種類じゃないの?」
「そんな訳ないじゃない。賢者様と導師様の本は今でも毎年数冊ずつ新刊が出てるわよ」
「最初の1冊がオリジナルだと言われていますけど、知られざる裏話を書いた物や完全な二次創作までありとあらゆるジャンルの本が出てますよ」
じいちゃんとばあちゃんのあまりの美男美女っぷりに固まっていると、そんな話をしているのが聞こえてきた。
マジか、じいちゃんとばあちゃんも大変だな……ってこれからはシンもそうなるのか。
シン、強く生きるんやで……!
この度愛飢夫はなんとジムに通い始めることになりました。
知り合いのプロマッチョにその話をしたところ専属トレーナーになってやると言われ月曜日にトレーニングをしたのですが……
死にかけました。筋肉痛がやべぇです。
まぁなのでそのうちマッチョになってルカくんのイメージ画像が愛飢夫になる日がくるかもしれません。
皆様生暖かい目で愛飢夫を応援していてください。