聖女様の飼い猫   作:もふもふもふも

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10話 猫と初討伐

 

 暖かい陽の光が街を照らすお昼時。

 

 俺は、ちょこまか逃げ惑うネズミを追いかけ回していた。

 ネズミよ、テメェに個人的な恨みはねぇが……俺に出会ってしまったのが運の尽きよ、大人しく狩られなさい。そして、この俺に狩られたことをあの世で泣きながら感謝するんだな。

 

「キュキュッ……ピーピー!」

 

「………」

 

 愚か者め。

 獲物の立場で声を上げるのは、自分が何処に居るのかを伝えているようなもんだぞ。声を上げなくとも、お前の独特な足音は既に記憶してるから、絶対に逃がさんけど。

 

 一心不乱に逃げるネズミに追い付き、俺は猫パンチを放った。おら、避けてみろ畜生風情が。

 

「キュピッ!?」

 

 俺の寸分の狂いもない正確無比なパンチを諸に食らったネズミは、ゴロゴロと転がった。勝負あったな……良い線まではいったが、所詮は獣。猫たる俺の敵じゃあない。ふっ、すまんね最強すぎて。

 

「はぁ……やっと休憩かぁ。……ほんっっと、受付の仕事ってどうしてこうも疲れるかなぁ。なんでもいいから、なんか良いこと起きないか……うぉおおお!? ナニコレぇ!!?」

 

 おう、OL娘。

 今日もお仕事お疲れ様だぜ。“良いこと”をご所望のようだな。……ふむ、良かろう、君はいつも頑張っているし、慈悲深き俺が褒美としてこの畜生をくれてやる。

 

「き、君はこの前の白猫さん。綺麗な見た目に反して、やることは完全にハンターなんだね……」

 

「にゃあ」

 

 そりゃ猫ですから。

 でも、こんな俺も最高にカワイイだろう?

 

「キュッ……キュピッ……」

 

「うげっ……まだ生きてるじゃん。て、ダメダメ白猫さん……こんなので遊んだら。ごはんなら私があげるから」

 

「みゃおん」

 

 OL娘に抱き上げられて、赤子をあやすように揺らされる。

 この体勢で程よい力加減で顎まで撫でてくるとはな……やはり此奴は才能の塊だ。

 

「はあ……コレの処理、どうしようかな……て、え? あ、あれ、これって」

 

 ん、どうかしたのかい?

 ネズミをまじまじと見つめ、OL娘は驚愕に目を見開いた。

 

「ま、間違いない……コレは“魔物”だよ。魔物の『大鼠(おおねずみ)』。戦闘力こそ最弱の部類だけどすばしっこくて、悪知恵の働く厄介な奴だ」

 

 え、これ魔物だったの!?

 確かに色合いが多少可怪しく、大きさも普通のネズミより大きかったけれども……ファンタジー仕様かと思ってた。

 俺、気が付かぬ間に魔物を追い込んでたのか……天才じゃん。

 

「そんな……此処は街の中だよ? 街には魔物を一切通さない結界が張られているのに、どうして……ま、まさか、結界に綻びが?」

 

「にゃー」

 

 取り敢えず、コイツにトドメ刺してもいいか? 

 俺の初陣の成果を語るには少々インパクトが弱いが、異世界に来て初めての魔物討伐だ。派手に狩ってやる。

 

「ま、まって白猫さん! そんなもの食べたらお腹壊すよ!!」

 

 別に食べねーよ。

 なに、俺、魔物食べそうな奴だと思われてたのか……普通のネズミだって食べたことないのに。

 

「と、兎に角、このことを早くギルド長に伝えないとっ。ありがとう白猫さん、お手柄だよ!」

 

 そうだろう? 俺はカワイイだけじゃない、戦闘力の面でも最強なのさ。もっと猫を讃えよ。そして跪け雑兵共。

 

 俺は迫力いっぱいに鳴いた。

 

「にゃあん」

 

「くっ……い、今は急いでいるから甘えた声出さないで……胸キュンしてる場合じゃないんだよぅッ」

 

 あ、はい。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

『やはり、この気配は……不味いですね』

 

「?」

 

 ウキウキ気分で廃教会に戻ると、なんか聖女ちゃんが難しい声で唸っていた。なんだなんだどうしたのさ。

 

『おかえりなさい、猫さん。今日ももふもふふわふわな見た目ですね、撫でたいです!』

  

「にゃー」

 

 知ってる。それで、一体何が不味いんだ? 言ってみろ。

 聖女ちゃんの頭によじ登り、俺は回答を待った。

 

『わっ……ふふ、座り心地はどうですか?』

 

「にゃあ」

 

 中々ぞい。

 

『ふぅ……やはり、猫さんが居ると感覚の鋭さが増しますね。これならば、もう少し範囲を拡大することができそうです』

 

 範囲? 一体なんの話です? 教えなさいよ。

 

『少々、オイタをする輩が内側に潜り込んでいるみたいですが、今の私ならば対処可能です。邪な気配を持つ者を、猫さんに近づけるワケにはいきません。……私の“希望の光”を脅かす存在は、誰であろうと赦すワケにはいかない』

 

「……」

 

 清廉で透き通る声質なのに、すげぇドスの利いた声だぜ。聖女ちゃんって、怒ると怖いタイプっぽいな。

 ……マジで何があったのさ。取り敢えず事情を話してくれよ、この俺は魔物をも知らぬ内に倒した実績のある、世界最強のカワイイ猫なんだぞ。 

 聖女ちゃんの悩みも、直ぐに解決してあげようではないか。

 

『どうか、猫さんはそのままで居て下さいね。貴方は平和の証なんです。危険な存在は、絶対に私が近づけたりしません。……貴方が居る世界じゃないと、私……どうなるかわかりませんから』

 

 重いよ。あいも変わらず重すぎるんだよお前は。

 しかし、心配しなくとも俺は俺のままで居続けるよ。自由気ままに歩き、望むままに食べて寝て遊ぶを繰り返す。人々の上に立ち、奉仕させる生活を謳歌し続ける。

 今日のことで相性次第では魔物にも俺が勝てることが証明されたから、偶には魔物討伐をするのも悪くない。

 

 冒険者が戦うのを見るだけじゃ最早満足できねぇ……俺には俺の狩りがあるのさ。いつか聖女ちゃんにも戦果を持って帰ってくるからね……楽しみにしててくれ。

 

『えへへ、ゴロゴロ言ってくれてますね……私の言葉を解ってくれたのでしょうか』

 

「にゃあ」

 

『ふふ、なら安心できます』

 

 おう、安心しときな。

 

 聖女ちゃんは心配症が先行し過ぎてる所があるんでな。俺が自ら引っ張って行かなきゃならん。全く、猫たる俺にここまでやらせるとは……世話の焼ける“聖女”だぜ。

 

『……よし、今の者で全てですね。潜り込んだ者の浄化は終えました。これもひとえに、猫さんが傍にいてくれたお蔭ですね!』

 

「にゃあ」

 

 そうか。

 

 結局なんの話かよくわからんかったが、これだけは言える。

 

 流石俺。

 

 




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