聖女様の飼い猫   作:もふもふもふも

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16話 猫と賢い

 

 ベンチの上でのんびり液体になっていた所を、俺は妙なエルフに見られていた。……というか、このエルフ少し前に銀髪エルフさんと何やら一悶着起こしていた奴じゃん。

 

 名前は確か、モーザだったっけ。

 

「この猫は確か……セラスピア様を誑し込んだ悪しき毛玉か」

 

 悪しき毛玉て。

 どんな呼び方だよ。つーか悪じゃないし。大正義カワイイの神だし。

 

「ふんっ、セラスピア様は一体こんな白毛玉の何処が気に入ったというんだ」

 

 モーザは俺の隣に座ると、ジッと睨みつけるように我が全身を観察してくる。

 なんだコイツ……超見てくるじゃん。落ち着かないんで止めてくれませんかね。

 『なに見とるんじゃ三下、烏滸がましいんだよ』という意味を込めて、俺は鳴いた。

 

「にゃあ」

 

「……降伏宣言か?」

 

 何処がだよ。

 

「数いるエルフの中でも、セラスピア様に目を付けた所は褒めてやる。あの方ほど大局を見据え、“上”に立つに相応しいハイエルフもいないからな」

 

 え、そーなんだ。

 銀髪エルフさんってハイエルフだったんか……あ、だから普通のエルフより耳が長かったのね。カッコいい耳なんで気づかなかったぜ。

 王族って結構貴重じゃんね。俺の存在の方が何千倍も貴重だけど。

 

「セラスピア様は本来、お前のような毛玉が喋ることが許されないほど尊き身分の御方なのだ……ましてや、パンチを放つなど言語道断。即刻極刑に処されてもおかしくないくらいの罪をお前は犯してしまったんだ。どうだ、理解できたか?」

 

「にゃあ」

 

 オッケーゆっくり理解したよ! 

 今度銀髪エルフさんもとい、セラスさんが俺の美毛をヘタクソに撫でてきたら、全力で怒れってことだね!

 

「お前、絶対理解できてないだろうっ」

 

 は? できてるっつってんだろ安心して任せろや。 

 

「はあ……私は一体、白毛玉相手に何を本気になっているんだ。疲れているのだろうか」

 

 なに、疲れてんのか?

 なら一撫でしていくかい? 猫を撫でることは、ありとあらゆる難病を治すことに繋がるって偉い人たちが言ってたし。俺は慈悲深いんでな、お前のことも癒してあげよう。

 

 寝転がりながら、俺はモーザに擦り寄った。

 

「な、なんだ急に……何がしたいんだお前は」

 

「にゃあ」

 

「い、意味が分からない……なんだこの生き物は」

 

 世界を統べる神だよ。人類じゃあ理解できんだろうね諦めな。

 

「な、撫でろってことなのか? いや、しかし私は白毛玉など……」

 

「………」

 

「うっ……や、止めろッ、私をそんな目で見るんじゃない!」

 

 だって葛藤時間長いもん。この俺が撫でろと寄ってきているんだぞ? 選択肢などないに等しいだろうに。

 プライドがあるのは結構なことだが、猫の前ではどんな屈強な戦士でも、猫撫で声で『ねこちゃあん、キミはカワイイでちゅね〜』とか言ってくるようになるんだ。そういう風に世界は出来てんだよ。

 

 解りきった結末のために、この俺の貴重な甘えを無駄にするんじゃない。

 

「コ、コイツはセラスピア様を誑かす悪しき毛玉だ……そうだ、コレは飽くまでセラスピア様を救う一環。敵のことを知らなければ、より良い手段など選べる筈もないっ」

 

 漸く心を決めたか、予定調和乙だぜ。

 じゃあ、さっさと撫でなさいな。お前に必要な癒しを恵んでやるからよ。新世界を見せてやろうぞ。

 

 撫でやすいように、俺は頭を差し出した。

 

「よ、よし、行くぞ──」

 

「あー! あの時のにゃんこちゃんじゃーん! 久しぶりだね〜!」

 

「!?」

 

 あ、貴様は冒険者ギルドで会った不敬な魔法使いさんじゃん。こんにちはだぜ。

 

 頭を上げて、俺は一声鳴いた。

 

「にゃあ」

 

「私のこと覚えてくれてるんだ? あはっ、やっぱり賢いねキミ。……ん、そっちのキミは確か……」

 

「……人間に名乗る名前など持ち合わせてはいないな」

 

「その物言い……あ、思い出した。キミ、セラスピアの仕いの子じゃん。キミにも会いたいと思ってたんだよ〜! ルーザ!」

 

「ローザだ。次間違えたら焼き殺すぞ魔法使い」

 

 モーザじゃなかったのか……。

 

 そんでもって、君たち知り合いなの? なんか意外な組み合わせ。コイツらのこと微塵も知らんけれども。どっちも会ったの2回目だししょうがないね。

 

「ローザもこのにゃんこちゃんの友達なの? 実は私もなんだぁ。この子超カワイイよね!」

 

「いいや、全く。お前にしろ、セラスピア様にしろ……このような毛玉の何処に心が惹かれているのか、欠片ほども理解ができん」

 

「え、その割にさっき凄い興奮した顔でその子のこと撫でようとしてなかったっけ?」

 

「貴様何処から見ていた!?」

 

 急に大きい声出すなよ、モ……ローザ。ビックリすんだろうが。

 お前の心身が落ちてることくらい、俺には理解できてるから一々慌てふためくんじゃあない。いくら口では敵愾心を剥き出しにしようと、心はそうはいかぬ。

 

 人類は猫を一目見た瞬間より、『カワイイ』に脳内が支配されちゃうからな。最早洗脳に近い。お前たちと俺とでは、生き物としての次元が違うのだよ。ふふん。

 

「か、勘違いをするなよ。私はこの毛玉を“愛でたい”と思い撫でようとしたワケじゃ断じてない。セラスピア様の忠実な臣下として、敵の情報は探っておく必要があるんだッ」

 

「そかそか……ローザ、君ってカワイイ所があるんだね。もっと堅物って感じのキャラかと思ってたよ」

 

「なっ!? お前、私の話を本気にしていないな!!」

 

「してるよ〜。ね、にゃんこちゃん。キミも本気で解ってるもんね」

 

「にゃあ」

 

 うんうん、ホンキで解ってるよ。

 俺が世界最強の天使ってことはね。お前たち2人も、俺を崇められる時代に生まれたことを、生涯感謝して跪くべきだ。さすれば、もふもふの天国を垣間見せてやる。

 

「ほらぁ、にゃんにゃんも理解できてるって言ってるよ? よかったねローザ」

 

「くっ……なんて気の抜ける返事なんだ。コイツの何処が話を理解出来てるんだ。何も考えてなさそうな顔しかしてないじゃないか」

 

 失礼な。俺ほど知恵に優れた猫もいないのに。お前なら解るよね、魔法使いさん。お前は見どころがあるからな、俺の頭の良さを教えてやれ!

 

「あはっ、そんなことないよ。この子だって沢山モノを考えて生きてる。今は“お腹すいたにゃーん”って鳴いてるじゃん」

 

「なら私の話は理解できてないだろう!」

 

 考えてもないし。いい加減なアフレコすんじゃねーよ。

 

 お前後で『猫パンチVersion2』の刑な。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

『……猫さんは、私が魔法の練習をしていても、全然邪魔しませんね』

 

 そりゃあな。

 危ないし、何より頑張っている聖女ちゃんの邪魔をするほど俺は暇ではないもの。

 

 お蔭で練習が捗るだろう? 俺の思慮深さと優しさに感謝しなよ、永遠にな。

 

『猫さんが、私に気を配ってくれているのは解っているんです。でも……はあ……もっと、猫さんに邪魔されたいですっ』

 

 ……えぇ。

 

 ネコハラしてほしい勢だったのか聖女ちゃん。

 

 結構強大な勢力に所属してたんだな……いや、まあオチが見えてんで絶対邪魔しないけども。

 

 先の展開を理解できる俺……利口すぎるっ。

 

 自分のあまりの賢さに、俺はドヤった。

 

『猫さんの何も考えてなさそうな、のほほんとしたお顔……天使すぎますッ』

 

 

 




ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
高評価等もありがとうございます! 励みと救済、感謝します!!
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