聖女様の飼い猫   作:もふもふもふも

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30話 猫と小袋

 

 聖女ちゃんが泣き喚き、取り乱している現在。 

 

 俺は、ローザに買ってもらったお土産の入った小袋に頭を突っ込み、ガサガサしていた。

 

 取り敢えず聖女ちゃんを泣き止ますために、お土産の一つでも渡そうと思っていたのだが……ううむ、中々このガサガサに気持ちが持っていかれる。

  

 やはり袋が奏でる音や、動き回りたくなるような感触は、猫たる俺にとってはどうにも堪らないモノなのだ。

 

 頭を突っ込むまではそんなに気にならなかったんだけどもなぁ。一度好奇心を刺激されちゃうと、時期状況関係なく飽きるまで夢中になってしまう。猫の宿命、カワイイから仕方ないよね……。

 

 小袋よ、我が刃をその身に刻むことを光栄に思いなさい。

 

 袋を被った状態でコロコロと転がりながら、俺は小袋がズタボロになるくらい遊び尽くそうとした。

 

「まーゔ」

 

『うおーんッ……うぅ……う? ね、ね、猫さん!? 頭が袋から外れないのですか!? ああ、傍にいながらなんという醜態ッ……待っていてください! 今すぐ貴方を救いますから!!』  

 

 え? いや別にコレはそういうんじゃない。邪魔ぁすんじゃねぇよ今良い所なんだからさぁ! ──と言う暇もなく。

 

 突如として謎の風が吹き荒れ、俺の顔を包んでいた袋を引き剥がし、遥か彼方の夜空へと吹き飛ばしていった。

 

 判断が早すぎる。

 

『これで、貴方の視界を遮るモノはありません。無事で良かったッ……』

 

「………」

 

 なんも良くないよ?

 聖女ちゃんが、俺の身を案じてくれたのはわかる。猫が小袋で窒息する可能性は全然あるわけだし。

 けれど、だ。それはそれとして、あの小袋はズタズタにするつもりだったのに! よくも邪魔を!

 

 聖女ちゃんの足元へ行き、俺は報復の気持ちを込めて頭突きを放った。

 

『喜んで……くれているのですか?』

 

「にゃあ」

 

 違います、怒ってるんです。

 

『ッ……貴方には、本当に救われてばかりですねっ』

 

 俺の頭突きを浴び、感極まった声を出す聖女ちゃん。

 よくわからんけど、俺は聖女ちゃんを救っちゃったようである。全くの逆効果かよ。

 

 毎度毎度、繊細なのかバカなのか、わけわからん奴だな……泣き止んだのは喜ばしいことだけれどもさ。

 

『猫さん……勝手に居なくなるのは……いいえ、勝手じゃなくとも、貴方が傍に居ないのは嫌……ですっ。本当に、本当に、死ぬほど心配したんですよ。貴方に、何かあったんじゃないかって……不安で仕方なくって……今まで生きてきた中で、一番堪えたんですからッ』 

 

 重いし、ごめんて。

 今後は森に行く頻度もちょっぴり減らすんで、勘弁しておくれ。泊まりになるときは、声掛けもするように心掛けるし。

 大事だよね、報連相。通じるかは別として。

 

「にゃあ」

 

『うっ……ダメですね。言いたいことは沢山あるのに、猫さんの声を聞くと、どうしようもない“多幸感”に見舞われて、安心しちゃいますっ』

 

 神の声だからな。

 どんないざこざがあっても、俺の声を聞くだけで人々は手を止め、幸福を感じるものだ。

 さながら、“生きた癒し”だぜ。ふふん。

 

『……ほんの少し、身体を確認してもよろしいですか、猫さん。悪い気や、見えていない場所に怪我をしている可能性もありますから』

 

 怪我? そんなもんないと思うが、それで聖女ちゃんが満足するのであれば、甘んじて受け入れてあげよう。感謝しなよ。 

 傍に寝転がり、俺はジッと聖女ちゃんを見上げた。

 

『ぐっ……私のことを見上げてくれる猫さんっ……カワイイがすぎますッ。1日半ぶりの生命の源ッ……えへへ、ずっと見ていたいっ』

 

「………」

 

 めっちゃ嬉しそうなところ申し訳ないが、確認したいのならはよしろや。ジッとしとくのも楽じゃないんだぞ。 

 

『大人しく出来て、猫さんはとっても偉いですねっ。では、確認しますね。──“蝶が羽ばたく魔法”』

 

「シャー」

 

『えぇ!?』

 

 此方へと飛んできた光る蝶を、俺は一撃で薙ぎ払った。

 それは赦さん、極刑だ。今の俺に蝶を見せるのは、“神よ、どうか破壊してください”と言ってるのに等しいぞ。今じゃなくとも破壊するが。

 

『あぁ……あんなに威嚇するなんて……猫さんは蝶が苦手なのでしょうか』

 

 寧ろ好きな部類だぞ。活きの良い獲物として。

 

『しかし、それだけ元気に動いてくれるのは、とても喜ばしいことです。問題はないみたい……ですね』

 

「にゃあ」

 

 応ともさ。心身共に、なんの問題もないぜ。

 あ、でも可愛さには磨きが掛かっちゃったかもしれない。猫の可愛さは、生涯上がり続けるっていうし。ふっ、すまんね進化しちゃう系カワイイ猫で。

 

『けれど……やはり心配です。念のため、治癒魔法を掛けておきますねっ』

 

「……」

 

 まあ、これは仕方ないか。聖女ちゃんの性格上、心配しまくった俺に対して、一度も魔法を掛けないなんて出来ないだろうし。

 俺に使用する際、聖女ちゃんの魔法は暴発気味な傾向にある。だが今回は系統も系統だし、治癒魔法一回程度じゃあ、なんてことな──

 

『──50回くらい』

 

 ……掛けすぎじゃね? そんな掛けられたら、俺のもふもふボディが逆に異常をきたすかもだろ。俺への魔法精度を考えると、十二分にあり得る。

 コ、コイツ、やっぱり頭が可怪しい! ……あ、それはいつものことか。

 

 冷静さを失い、大真面目に治癒魔法を50発放とうとする聖女ちゃんから、俺は全速力で距離を取った。

 

『!? な、なぜ距離を取るのですか猫さん!』

 

「みゃあ」

 

 経験じゃボケ。   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 なんやかんやといつも通りに過ごしている内に、聖女ちゃんは元気を取り戻していった。

 

 最初の大泣きを見たときは、どうなることかと思ったが……流石は俺。今回も無事にやり遂げたぜ。

 

 くたびれた机で爪を研ぎつつ、俺は己の有能さと可愛さに酔いしれた。

 

『く、机で爪研ぎをする猫さんも、とんでもなく天使です……!』

 

 宇宙が爆誕する前から知ってる。

 

 ……さて、今日は聖女ちゃんの足元で眠ってあげるかな。また、『猫さんが居ない!』って泣かれても大変だもの。色々と迷惑を掛けたのも事実だしね。

 聖女ちゃんの足元に寄り添い、俺は目を閉じた。

 

『……ふふ、温かいっ。この温もりに勝るプレゼントはありませんね。……ありがとう、猫さん。私の傍に居てくれてっ』

 

「にゃあ」

 

 俺の温もりに勝るプレゼントはない、か。俺が与える温もりは唯一無二だからね。良いこと言うじゃんか、聖女ちゃん。

 

 

 

 ふふん、俺の温もりに勝るプレゼントは───あれ? プレゼント??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あーー! ローザに買ってもらった聖女ちゃんへのお土産! 小袋に入ったまま吹き飛ばされたんだ!

 お、お前何してくれとんのじゃあああ!!

 

 聖女ちゃんの脛に、俺は猫パンチを叩き込んだ。  

 

「みゃああぁあ」

 

『な、なぜ!?』

 

 

 

 




ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
高評価等もありがとうございます! お陰様で、聖女ちゃんが無事に猫さんと眠れました!
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