鏡を通してそのキャラの別の並行世界の可能性を見ることができる技術。さらに、その並行世界のキャラの力を借りることができる。
リンバスでは宿敵の立ち位置にいる姿や闇落ちした姿が並行世界の可能性として実装されていて、それらは尊厳破壊人格として実装されているぞ!
「計画は最終段階に入りました。完成の日は近いでしょう」
「嵐が近づいてきたということだ」
「十日後に飛空船が完成します。その時あれらはロンディニウムの上空に向かい、この嵐の先導者になるでしょう」
今子供の姿をみている人がいるのなら、この光景の違和感にすぐ気づいただろうね
子供の頭には可愛らしいウサギの耳が生えているんだ。それは彼女がコータスであることを示しているね
なのにおかしなことに、彼女の頭上にはサルカズの王冠が輝いているんだ。サルカズの王、魔王である証がね
さらに良く見た人は、もう一つの違和感にも気づいたみたいだね
子供と話している人はその姿を完全に隠しているけれど、この人もまた、サルカズではないんだ
サルカズではない二人が、サルカズの未来について語っているなんて、とっても不思議だね
「アーミヤ、私を飛行船に乗せないというが、考え直してはくれないか」
「いいえ、私が飛行船に乗ります。あなたに戦闘力は元から期待していませんから。ザ・シャードの守りはブラッドブルートの大君に任せます」
「あなたにはアナンナの掌握という大事があります。まさか忘れたわけではないでしょう?」
「忘れたことなどないさ。ただ……ああ、認めよう。私は焦っているんだ。」
「アーミヤ、少しでいい。ロンディニウムを離れる許可が欲しいんだ。この戦争の結果を決定付けるものを手に入れることができるかもしれない。君なら、それが何かは分かるだろう」
「……いいでしょう」
「ここを離れるまでの間、あなたの責務を果たしなさい」
「王庭はあなたを必要としています。私の戦士たちにも己が最も信頼する指揮官が不可欠です」
「元より、あなたは私より人の心に通じています。探し物のついでに、貴族を幾人か仲間に引き入れて来なさい」
子供の言葉には相手に対する信頼が見えるね。もしかしたら、本気で言っているのかも
「ありがとう。最後のは、冗談として受け取っておくよ」
「それと、君があの…護衛を遠ざけたのも気づけているよ。聴罪師から随分と不満を向けられたのではないかい?」
「あなたの護衛を外したのは軍事委員会の決定です。大事を決するときを迎えるにあたって、不確定要素に目を配る人員は、多ければ多いほどいいですから。」
「アーミヤ、疲れてはいないか?」
「それはあなたの方でしょう。飛行船と塔、計画の要も準備はできています。この戦争は私の勝利で終えられる可能性が高い。サルカズの長い歴史の中で、これほど有利に進められた戦争は間違いなくこれが初めてでしょう」
「この結果はあなたの助けも得て作り出したものです。だというのに、あなたからは喜びの感情が感じられませんね」
「………ああ」
「この戦争で、サルカズは他のすべての国に対抗できる武力を手に入れることになります」
「対抗する、か」
「君の大望は始めから知っているのに、実際に聞くと毎回少し不思議な気分になるよ。とても信じられなくて」
「どこの大国であろうとも、カズデルの復興を許すことはありません」
「ですが、すぐにその心配はなくなるでしょう」
「もちろんだ」
「嵐の行先すらも思いのまま操れるなら、頭上に垂れ込める暗雲を憂う者はいない」
「過ぎ去りし過去において、サルカズは敵に追い立てられるがままでした」
「彼らは何度となく廃墟から立ち上がりました。一度また一度とカズデルを築き直しました。そして、同じ数だけ彼らの帰る場所が、彼奴らの起こした争いで粉々になるところを目の当たりにしてきました」
「アーミヤ、それは記録か?」
「いいえ、魔王である私の、決して忘れない記憶です」
「二百年前のあの戦争の中、廃墟となったカズデルとそれを目の前にしたサルカズの苦しみを、私はすべて知っています」
「そう、時間です。カズデルを再建するのに二百年かかりました。次は五百年でしょうか。その時までにどれほどのサルカズが苦しむのでしょうか」
「サルカズはこれ以上、待てない」
「君は恐れていないのか。嵐が、君とサルカズを飲み込み、引き裂いてしまうことを」
「あなたはテラで始めて目を覚ました時、私を恐れましたか?」
「その沈黙が答えです。私はサルカズに必要な戦争をためらうことはありません」
「戦争…戦争が始まるな」
「何人…きっと多くの人が死んでしまう。サルカズも、ヴィクトリア人も、それ以外の国の人々も、この戦火から逃れられないだろう」
「あなたは本当に……軟弱すぎる。やっぱりあなたとは気が合いませんね」
「目覚めてから何年もカズデルのために戦争の準備を行い、サルカズの理解と尊敬を勝ち取った今でも、罪悪感が消えませんか」
「何度でも言いましょう。この戦争は必要なものです。私にとっても、そしてあなたにとっても、です」
「わかっている………わかっているんだ…」
「負い目など感じる必要はありません」
「高みにいる悪霊を制裁する者がいないことが心配なのであれば、私があなたの罪を裁きます」
「私は、約束を決して違えませんよ」
「ありがとう」
「覚悟は、できてるよ」
「ああ、そういえば、聞くことが一つありました」
「あなたの恋人に何か伝言はありますか。私から彼女に伝えることはすでに決めていますので」
「へ、陛下!なぜこのような所に?」
「そう畏まらないでください。飛行船を見て回っているところです。あなたはお仕事の最中ですか?」
「はっ、武器の整備の最中でございます。あっ、わ、私はつい先日軍事委員会に入ったばかりの新人で、お初にお目にかかります!」
「お疲れ様です。あなたのお名前は何と言うのですか?」
「えっ、私の名前は…」
「…私に名前はありません。皆からは「スープ」と呼ばれております」
「スープ?何か由来があるんですか?」
「何でも、私の作ったスープが美味しかったそうです。ただ石を皿にして適当な草を入れただけだったのですが…「ホール」の奴がしきりにうまいなんて言うもんだから…いえ、すいません。どうでもいい記憶でした」
「そんなことはありませんよ。とても大切な記憶です。温かくていい名前ですね」
「…陛下、恐れながら、質問をしてもよろしいでしょうか」
「構いません」
「我々は…」
「我々は「戦争が終わるごとに、サルカズは帰ることができる場所を得る」」
「我々はすぐにカズデルへ帰ることができますよね?」
「もちろんです」
「サルカズの敵は、私が倒します」
「私たちは、必ず故郷に帰れます」
子供が夢を見ているね
その夢の中で、サルカズは他の種族と一緒に暮らしているんだ
貧困も飢餓も、寒さも傷も、もちろん差別もどこにもない。サルカズは大地のどこへでも行く事ができて、様々な人と言葉を交わす事ができるんだ
例えば、カッコつけたがりのブラッドブルートの口説き文句をリーベリが嫌そうにしながら、でも邪険にはしなかったり
バンシーの王庭が仲間たちと悪ふざけをして、先生に叱られてしまっているね
こんな何気ない、幸せな日常を皆が過ごしているんだ。サルカズに限らず、皆がね
でも、夢を夢のまま終わらせるつもりもないみたい
子供が目覚めたみたいだね。いよいよ始めるつもりなのかも
サルカズの、尊厳を取り戻す戦いを
テレシスの立ち位置にいる鏡の世界のアーミヤ
大地の救済者ではない、サルカズの魔王