リンバスの鏡技術、何がヤバいってそのキャラのifストーリーだけじゃなくて絶対にありえない立ち位置にそのキャラがいる場合の世界が見れるめちゃくちゃ具合なんですよね
アークナイツで例えるとステインレスがウルサス皇帝に生まれた世界線ぐらいめちゃくちゃなものが見れます
「お前は知るだろう。全身全霊を捧げた大地が、そんなお前を必要としていないことを」
「お前は目の当たりにするだろう。お前のやってきた全てが無に帰す様子を」
「お前は目の当たりにするだろう。お前が大切にするものを平気で穢す人の姿を。命も尊厳も理念も、全く意味がないということを」
「チェン」
「一つ賭けをしよう」
アルトリウスへ:
感染者になったばかりの頃、私は無為に過ごしていた
コシチェイが私を利用し、何かを企んでいたのは知っていた。それが恐ろしかった。奴は私に何をさせる気なのかと
剣で切れる問題ならば私はそれがどれほど強大なものであっても恐れることはない。だが、もしコシチェイの企みが、すでに私の中に刻まれているのだとしたら。そんなことを考える自分の疑心が恐ろしい。まるで、振り払えない薄暗い闇が、私の頭上を覆っているようだ
それでも私は先に進むしかない
昨日の話だ。確かミュラーという名前の遊撃隊員が、オイルシードをシスティミルクで炒めていた。変わった調理法で、面白い味だったから、お前にも食べさせてみたいと思った
「何を書いてるのよ、チェン」
「姉に、手紙をな。届くこともない手紙だが、なんとなく、やめられないんだ」
「あんたはほんと、変なところでネガティブよね」
「?」
「そこは、いつか必ず届けてみせる!って言うべき所じゃないの?」
「なるほど、確かにその方がいいな、スワイヤー」
子供は長い旅を終えて、ついにウルサスの凍原にたどり着いたんだ
その旅の間に、たくさんの仲間たちに恵まれたみたいだね
ウルサスの大英勇、遊撃隊のオニ、術師のザラック、それに腐れ縁のフェリーン
レユニオンはまだまだ弱いけれども、彼女は仲間たちを信じているんだね。いつか私たちなら大地を変えられるのだと
「それで、今日はどういう風の吹きまわし?」
「…訓練の最中にリンの奴のコートを切ってしまってな。その…直したくて」
「はあ!?これで何度目よ!あんたアタシのこと便利な雑用か何かと勘違いしてるんしゃないの!?物資だって有限なのよわかってる!?」
「だ、だからすまないと謝ってるじゃないか。そもそも、コートを切った回数だったらお前の方が多いだろ!」
「そ、それは…すぐにでも心配する必要がなくなるからいいのよ。わかったわよ、とにかく渡しなさい」
「助かるよ、スワイヤー」
「どういたしまして、チェン」
「最近はどうなの?パトリオットさんの理解は得られた?」
「…うまくいってないよ。今でも彼を前にすると萎縮してしまう。彼のような大英勇にしてみれば、私なんてただの小娘だろうからな」
「まあ、あの人は見るからに頑固そうだものねぇ。あの手の人種は時間をかけるしかないわよ。少しずつ時間をかけて心を溶かしていくのよ。信頼という炎でね」
「肝に命じておく。だが、悪いことばかりじゃないぞ。また新しい弟子ができたんだ。かなり才能がある。このまま成長すれば私を越えるかもしれない」
「へぇ、これで三人目だったかしら?あんたの剣技を覚えられる奴がそんなにいるとはね」
「お前は単純に才能がなかったんだ。諦めろ」
「うるっさいわね!いいのよ、剣なんかに頼らずとも、いつかあんたのことこてんぱんにしてやるんだから!」
「なあスワイヤー。本当に戦士たちに挨拶するつもりはないのか?今のお前の腕前なら前線に出ても問題ないと思うんだが」
「いいのよ、アタシが戦士たちに挨拶するのはあんたをぶっ倒したときと決めてるんだから。それに前線に出る気もないわ。アタシは後方で無茶をするあんたらを支えるの。合理的な分業なのよ」
「…」
「…」
「ねえチェン」
「何だ」
「今が丁度いい機会だと思うから話すわ」
「あんたは何のために戦ってるの?」
「感染者の未来のためだ」
「始めて会った時はそんなこと言ってなかったわよ」
「…」
「アタシはね、これでもあんたのこと信じてるの」
「だからあんたに限ってそんなことはないと思うけどね、まさか最初の志を忘れた、なんて言わないわよね」
「絶え間ない戦闘や、変化する世の中では、柔軟に方針を変化させる必要があるだろ。頭が硬いままではリーダーは務まらない」
「…わかったよ、最初の願いだろ。私が忘れるわけあるか」
「おじいさんを助けたい、私はそう言ったな」
「そうよ」
「あんたはおじいちゃんを助けようとしてくれたの」
「それがどんな結果で終わってしまったのだとしても、あの時の言葉にアタシは感謝してるの」
「チェン、あんたは何がしたいの?感染者は普通の人と同じだと証明したいの?それとも普通の人も感染者も同じだと証明したいの?」
「その二つに違いなんてないだろ」
「あんたが感染者の居場所を作ったとして、じゃあ普通の人をどうするつもりなのかって話よ」
「もっと言うとね、アタシたちは普通になれるのか」
「それも問題よね」
「無理だろうな。私もお前も、この凍原で変わってしまった」
「チェン、あんた未来のことはちゃんと考えてる?」
「あんたの夢が叶った場所で感染者はどうなってるの?昨日まで殺し合ってた感染者と普通の人が突然よく分からないまま仲良くなってる、なんて言わないわよね」
「当然だ。私にも考えはある」
「南に向かったら、感染者の都市を作る。感染者が自給できる都市だ。そこから私たちの本当の戦いを始めるんだ」
「こんな話をしてくるということは、お前にも何か考えがあるのか?」
「ええ、そうよ。喜びなさい。この考えを明かすのは、あんたが始めてなんだから!」
「これこそが、アタシの考える未来よ!」
「何だこれ…レユニオン・グループ…?」
「レユニオン・グループ!ウルサスを飛び越えて、テラを股にかける感染者による国際企業の名前よ!」
「アタシの夢は、ウルサス一国で留まったりしないわ!」
「企業?ウルサスで感染者が企業を作ったところで成功するはずがない。だが、南で力を蓄えて、さらに南に向かいウルサスすらも後にして、その先にまで行ければ或いは…」
「アタシの戦いはとっくに始まっていたのよ。周りの集落との交渉も商談の一つ。そうやって誠実な商売を繰り返して信用を得るの」
「今はまだ、小さな活動だけど」
「あと10年もすれば、アタシたちは自分たちの都市をつくる必要もない、移動都市を買い取ることができるようになってるわ」
「随分と大きく出たな」
「まったく、完全に夢物語じゃないか」
「今に見てなさい。あんたは戦士としてもリーダーとしても優秀だけど、経営者としてはアタシのほうが上だったことを証明してやるから」
「あんたも、ちゃんと自分の夢を持つのよ」
「いくらこの凍原が厳しいからって、現実に負けて最初の理想を忘れたりしたら、アタシはあんたを全力でぶん殴るからね」
「ああ、分かってるよ。私は絶対に忘れたりしない」
「私はどんな残酷な運命にだって負けない」
「ええ、そうよ。運命なんてものは所詮アタシたちの人生に現れる障害物でしかないんだから」
「アタシは絶対にこんな貧乏生活のまま終わらないわよ。必ずテラで一番の大富豪になってやるから!」
「それはいいな、その時はぜひとも飯を奢ってもらおう。それぐらいの度量は見せてくれるだろう、スワイヤーお嬢様?」
「ふざけんじゃないわよ!あんたの分はあんたで払え!」
運命は私たちの人生に現れる障害物でしかない
あの時の私は、どうしてこんな言葉を信じられたんだろう
思い出せない。怒りの炎が、消えない
私は、あの村で、何を、願っていたんだ
子供が走っているね。必死になって、息を切らせて、足がもつれてガクガク震えてもお構い無し
まるで、後ろから迫ってくる現実から逃げるように走って、走って
全部、無意味なことなのにね
子供はとても賢いんだ。だから一目見ただけで、全部分かってしまった
誰が、スワイヤーを殺したのか
「…」
そんなはずはない
レユニオンに集まった人々は誰もが強いわけじゃないんだ。むしろ弱い人のほうがたくさんいるだろうね。だから、その事件が起こるのは必然と言えるかな
一部の人が、食料を盗んで逃げ出そうとしたんだ。当然、失敗した彼らは捕まって、人々は盗人の処遇について話し合った
子供は彼らに食料を与えて追放することに決めたんだ。とても優しいんだね
この時、子供の弟子だった三人が盗人たちについて行くと言ったんだ。盗人の中に彼らの家族が混じっていたから、見捨てられなかったんだね
子供はそれを了承した。弟子がレユニオンを離れていくのを、寂しそうに見ながらね
「…何故」
そんなはずはない
いつものように監視隊の襲撃を倒した子供は一息ついていたところに、驚きのニュースを聞いたんだ
なんでも、スワイヤーが商談に向かった村の方角に監視隊が現れた、と
実はこの時、子供はそこまで焦っていなかったんだ。スワイヤーは強いから、監視隊に囲まれてもそうそう死なない
でも、なぜか消えない不安を抱えて、子供はスワイヤーを助けに向かったんだ
「何故なんだ…?」
そんなはずはない のに
ケンツは始めてできた剣の弟子だった。いつかチェンと同じぐらい剣を振れるようになったら必ず妹の仇をとる、いつもそう言っていた。大きな図体の割に絵を描くことが好きで、良く村の子どもたちに絵を描いてやっていた
死んでいる 近くにはスワイヤーが愛用していた袋が落ちていて
フランクは二番目の弟子だった。才能に恵まれず、その代わりに不断の努力を苦に思わない男だった。その腕前は遊撃隊にも認められるほどだ。寡黙な男だが、剣について褒められると僅かに口角が上がるのをチェンは知っていた
死んでいる スワイヤーの武器が糸を切られてコロコロと転がっている
ジークは三番目の弟子で、最も才能に愛された男だった。きっと鍛えれば自分を超えるだろう、そう思っていた。別れ際、鍛錬が中途半端に終わってしまったことを何度も謝っていた。元は虫も殺せないような男で、誰かを守る剣が知りたいと弟子入りを志願した
死んでいる 教えた通り死んでも離さなかった剣はフェリーンの血で濡れている
「……………何故だ!!?」
怒りの炎が、消えない
一度灯ったものは、二度と、消えない
「あの、チェンさん。大丈夫ですか?」
「ああ、問題ない。君こそ大丈夫か?ここから先は私一人で充分だと言っているだろう」
「そんな!チェンさんに比べれば俺なんてまだまだへっちゃらですよ」
「なんというか、最近のチェンさんは疲れてるみたいですから」
「頼りないと思いますが、俺たちもチェンさんの仲間です!いつでも力になりますよ」
「ありがとう、だが、これはただ近くの村に物資を分けてもらうよう交渉しに行くだけだ。仲間の手を余計なことに割くわけにはいかない」
「私一人で充分だ」
「…わかりました。とにかく気をつけてくださいね」
「まさか、何も起きないさ」
「それじゃあ、行ってくる」
「チェン」
「一つ賭けをしよう」
「この大地と向き合い続けた時、お前の信念は壊れるか、否か」
「この賭けに私が勝ったら」
「お前が心から私の教えを理解し、それに同意したとき」
「お前は、私になる」
タルラの立ち位置にいる鏡の世界のチェン
運命は変わらない、怒りの炎が全てを燃やし尽くす