アークナイツ・鏡の世界   作:チノープル

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前回の話で原作キャラが死亡してるのにタグがないことを指摘されました。タグと注意書きを付け足しておきました。申し訳ありません

これはあくまでアークナイツの二次創作ですからね。万が一にもアークナイツのファンの方が不快に思わないように以後気をつけます


オリジムシクラフトビール工場主:フロストノヴァ

凍原を歩き、草原を歩き、荒れ地を歩き、私たちはついに旅を終えることができた

ウルサスの凍原を出た時は、私が最も頼りにするものは鍛えた技とアーツ、戦う力だとばかり思っていた。だというのに、旅を振り返った今となっては、私の力は道を切り開きはしたが、兄弟たちを守ったものは、また別のもであるだろう

今の私なら、それは己の幸運だったと言う。こんな考えは凍原にいた頃は絶対にしなかった。あそこにはただどこまでも冷たさばかりがあって、どれほど強い人でも心の余裕というものを持つことができなかったから

今の私はとても恵まれた生活をしている。命を奪われる冷たさはどこにもない。温かな家で兄弟たちと明日のことについて語り合うことができる。最近は昔のようにアーツを使うこともできなくなってしまった。体の熱を感じるのは、本当に久しぶりだった

 

「姐さん!」

「ロドスのファウストから、手紙が返ってきたぞ!」

 

もう一度言おう。私は運が良かった

長い旅の間鉱石病がそれほど悪化しなかった、圧倒的な強さを持つ敵と会うこともなかった、そして、人との出会いに恵まれた

メフィストとファウストは、旅の終わりに出会った戦士だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャロル、俺から離れるな」

 

「ううっー!」

 

子供が物陰に身を潜ませて戦いを見ているね

賞金稼ぎたちが大勢で女性を囲んでいて、女性を守っているのは一人の狙撃手。一見すると、どちらが追い込まれているのかは明らかだけど…

子供はとても強い戦士なんだ。だから、狙撃手がただ者じゃないことをすぐに見抜いたみたい

 

「姐さん、いつでもいける」

「いつも通り、姐さんは見て見ぬふりはしない、だろ」

 

「もちろんだ」

「私の合図で突撃する」

「1、2…」

 

「そこの狙撃手、伏せろ!」

 

「!?」

 

「ああ?何だこのウサギは?どこから湧いてきやがった!」

 

突撃すると同時に、クロスボウを一斉に放つ

有象無象の賞金稼ぎたちが倒れていく中で、狙撃手だけはこちらを見ていた。いつでも私たちを倒せるように、引き金に指をかけて

いい戦士だ

もしかしたら、私たちの助けなど必要なかったかもしれない

それでも、力を振るうべき時に振るうことを、私はためらうことはない

 

「誰だ」

 

「クロスボウは下ろせ。お前の味方だ。今はここから退避することが先だ」

 

「…キャロル、何か退避ルートの案は?」

 

「えっと、じゃあこっちに逃げましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トルン団、ヴロツ団、ルブリン団、ワグニスク団…」

「この村の近くにいる賞金稼ぎは数こそ多いが、有象無象の寄せ集めだ」

「あと数日もあれば、私と兄弟たちで全滅させられる。そうすれば、村も平和になるだろう」

 

「確かにお前の仲間たちは、賞金稼ぎたちとは比べものにならない練度だな」

「なぜ俺を助けた」

 

「何も全てが善意なわけじゃない」

「私は元々そちらの村長を助けるつもりだった。この村に少しの間滞在させてもらいたかったからだ。そうしたら、村は賞金稼ぎたちによって占拠されていた。村長を探していたその時、お前が彼女を守って戦っているのを見た」

「私は見て見ぬふりはしない主義だ。余計だったかもしれないが加勢した」

 

「…なるほど」

「つまりお前たちは、この大地で類をみないほどのお人好し集団なんだな」

 

「自分が絶対の正義を体現しているなんて考えたことはない」

「だが、優しさについて言うのであれば、そうだ。私は慈悲の心を忘れたことはない」

「何より私は、戦士として恥ずべきことがないように行動しているに過ぎない」

 

「嘘をついてるようにも見えない」

「そうか、まぁ…ロドス以外にもそういうお人好しがいてもいいか」

「分かった、お前たちを信じる」

「キャロルはどうする?」

 

「…一つ聞いてもいいですか、白装束の皆さん」

「賞金稼ぎが村を占拠する少し前、村の近くで真っ白な獣が雷のような鳴き声をあげながら徘徊している、という噂を聞きました」

「もしかして、皆さんのことだったんですか?」

 

「あっ」

「姐さん…」

「なあ姐さん、やっぱりその武器使うのやめないか?姐さんの戦い方に全然合ってないと思うんだ」

 

「…ああ、それは私のことだな。そんな噂になっているとは知らなかったが、怖がらせたならすまない。長く愛用していたナイフが壊れてしまって、拾い物の武器を使って戦っていたからうまく加減できなかった」

 

そう言って子供が掲げて見せたのは、巨大なチェーンソーだったんだ

狙撃手はすごく悩んだみたい。そのチェーンソー、明らかに子供の体格に合っていなくて使いにくそうだったんだけど。なぜかチェーンソーを担いだ子供の顔が満足気だったから何も言わないことにしたんだ

 

「ファウストさん、この人たちとなら協力してもいいと思います」

 

「キャロルがそう言うなら、いいだろう。分かった、これからよろしく」

「俺はロドス狙撃オペレーターのファウストだ」

 

「よろしく」

「私はフロストノヴァだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャロルと相談して、私たちはモティカ山に向かうことになった。キャロル曰く、そこが賞金稼ぎたちの探す財宝の眠る場所だとか

 

「このまま財宝が村の厄となってしまうなら、私たちで見つけ出してしまえばいいんじゃないか」

「もちろん、分前なんていらない。その代わりしばらく村に滞在させて欲しい」

 

ファウストは製薬会社ロドスのオペレーターとして、この付近のロドス事務所を助けるためにここに来た。

彼は子供でありながら、既に仕事に就いている。だが、きっとそれは強制されたからではない

あれは、大地の残酷さと戦うことを選んだ、戦士の目だ

 

「ロドスか」

 

「信用できないか」

「別に構わない。感染者に理解されないことも、いつものことだ」

 

「噂だけは聞いたことがある。今までは、信頼を置くことができなかった。ただの製薬会社だというのも眉唾ものだ」

「私には、戦闘以外のことは考えられない」

「あの村でのお前の戦いを観察させてもらった。お前が確固たる信念をもって行動しているのは、私もこの目で確認できた。しかし、だからといってロドスの善悪を判断することはできない」

「だが、お前とは共に戦い、語り合った仲だ」

「お前は私の無駄話を文句も言わず聞いてくれた…」

「それに、私の悪戯に引っかかってくれたな」

「仲の良い者たちには使い古した手だ、もう誰も引っかからなくなってしまった」

 

「…本当に辛かった」

 

「私はお前を信じる。お前が信じるロドスのことも信じることができる」

「ロドスは、私たち感染者の敵ではない」

 

「フロストノヴァ、一つ聞きたいことがある」

 

「何だ」

 

「なぜキャロルに自分たちが感染者であることを明かした」

「感染者に対する扱いはどこも変わらない。あんなことを言ったら村に居づらくなるだけだ」

 

「それが人間のあるべき姿だからだ」

「私たちは本来、差別される謂れなどない」

 

「そうか」

「俺は感染者だ。俺の友人も、感染者だ」

「ずっと二人で逃げ続けた。一緒に生きていくと約束したからな。そうしたらロドスが俺たちを救ってくれた」

「俺は運が良かっただけだ」

「俺はお前たちのように強くは生きられなかった」

 

「姐さん!」

「洞窟を見つけた。ここが探していた場所だ。でも問題が一つある」

「妙な術師が洞窟の入口にいるんだ。見たことのないアーツを使ってる。強敵かもしれない。ファウストも来てくれ!狙撃が必要になるかもしれない」

 

「分かった、すぐに向かう」

「…ん?」

「…」

「…はぁ!!?」

 

「メフィスト、お前が何でこんな所に?!」

 

「どうした、ファウスト!」

 

「俺の友達がなぜか洞窟の入口に立ってる!」

 

「えっと、それなら問題ないんじゃないですか」

 

「大アリだ!あいつは今回の外勤申請が通らなかったんだよ。だから本艦で待機してるはずなのに、こんな所にいるってことは…」

「また、俺を助けようなんてことを考えてるんだ…」

 

メフィストがこっちに気づいたようで、嬉しそうに腕を振っている。喉に原石結晶が見える。それが原因だろうか、彼は声を出せないようだった

一見、あどけない少年のように見える。だが私の戦士の勘はそれを否定した。彼もまた、優れた戦士だ

 

「おい、メフィスト!何でこんなとこにいるんだ。ケルシー先生がお前は絶対安静だって言ってただろ」

「はぁ!ドクターの指示?嘘ならもっとマシな嘘をつけ。ドクターがお前をこんな所に送るわけがあるか」

「俺は確かに、お前に本当にやりたいことが見つかったなら、お前が何を選ぼうと責めはしない、そう言った」

「だが、悪戯に命を削る真似は許さない、ロドスの医務室で俺はそう言ったはずだ!」

「生きろ、そう言ったはずだ!」

 

メフィストがひどく傷ついたような顔をした。そして、そのまま顔を背けて洞窟の奥へと消えてしまった

 

「…あいつはずっと、俺のやってほしいことはなんでもやる、そう言ってた。自分で選択はしたくないとも」

「でも、ロドスに来てからは、自分で考えるようになったんだ」

「ただ、……誰も教えてくれなかったから、自分で考えることが何なのか、よく分かってないんだ」

「だからこうやって、空回りする。本当は悪いやつじゃないんだ」

「皆、すまない」

 

「彼は何と言っていたんだ?あの腕の動きがきっと彼の言葉なんだろう」

 

「この村の財宝は危険だと。だから自分が先に見つけて壊すと、そう言っていた」

 

「そうなのか、キャロル?」

 

「えっと、「危険を恐れず、犠牲を顧みないカジミエーシュの血脈だけが、すべての障害を取り除くことができる。」もしかして、これのことかもしれないです」

 

「メフィストの勘違いという可能性は?」

 

「あいつは頭は悪くない。あんなことを言う以上それなりの根拠があるはずだ」

 

「いずれにせよ、財宝を確かめないことには分からないか」

「たが、それよりも。ファウスト、話したいことがある」

 

「なんだ」

 

「先ほど言っていたな、お前は私たちのように強くはないと」

「お前たちの過去について多くは知らない。語るつもりもない」

「だが、お前たちは二人とも間違いなくこの大地と戦い続けた戦士だ。お前の目を見て、先ほどのメフィストの目を見て、確信した」

「お前たちは逃げることを選択した。それは、簡単な選択ではなかったんだろう」

「お前は運が良かった。だが、その運はお前が勝ち取ったものだ」

「お前も運命に勝った。私と同じだ」

 

「最初から疑問だったんだが、どうしてそんなに俺に構うんだ?」

 

「私の兄弟の一人にお前と同じぐらいの年の子供がいた」

「彼はウルサスの国境を越えることは出来なかった。気弱な性格だったが、私たちと共に最後まで戦い続けた」

「…またつまらない過去を語ってしまったな」

 

「いや、ありがとう」

「お前ほどの戦士に認められたなら、光栄だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メフィスト、この宝箱は開けた人間の命を奪うのか?」

 

「(肯定の意味のハンドジェスチャー)」

 

「そんな、あの言い伝えに、そんな意味があったなんて…」

「でも、村のために、覚悟はできてます。この宝箱は村長である私が開けます!ファウストさん、もし私に何かあったら、この財宝で手に入ったお金を村のみんなにわたしてあげてください!」

 

「待て、メフィストがまだ何か伝えようとしている」

「この鍵が、何かあるのか?」

「宝箱を開けようとすると、鍵が吸血する仕組み?良くわかったな。俺のクロスボウを整備するために勉強しているんだろ。ちゃんと役に立ったじゃないか」

「この小ささじゃ人一人殺す量の血は抜けないはず。キャロル、安心して開けてくれ」

 

「イーノ」

「ごめん」

「俺を助けようとここまで来たのに、あんなことを言って」

「結局、お前の力を頼ることになった」

「ありがとう」

 

「(喜びのジェスチャー)」

 

 

 

 

「へへ、感動の仲直りは終わりかよ」

「お前らについてきたおかげで、楽に財宝までたどり着けたぜ」

「ここでお前らを全員殺せば、財宝は丸ごと俺たちのモンって寸法よ!」

「村長ももういらねぇな!財宝手に入れたら毎日パーティ開いてやるぜ」

「ヒャッハー、みなごろしだぁ!」

 

 

 

 

「あまりにも、見苦しい」

この感情は私にとっては馴染み深いものだ。だが、それにしたって今回は激しい

今すぐこのうるさい悪党どもを蹂躙してやらないと気が済まない

私は正義の騎士を名乗ることはない。だが、今回ばかりはそれに近い気持ちで戦うだろう。

「兄弟たち、手加減はいらない」

「殲滅するぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この先を見る必要はないだろね。君たちの思う通りの結末が待っているだけだから

子供と子供の兄弟たちは協力して悪党を懲らしめたら、財宝を持って村に帰ったんだ。そして村で別れた後は、メフィストとファウストと別れて、それぞれの旅に出発したんだ

まるで、物語の主人公みたいな冒険だったよ。分かりやすい悪役がいて、皆笑顔で物語を終えているんだから。子供の物語に、涙はいらなかったみたい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「拝啓

フロストノヴァだ

今はクルビアの辺境に身を置き、この手紙を書いている

兄弟たちは健やかに過ごしている。感染者という身分は多少の不便さはあるが、太陽の下での生活は、想像していたよりも美しいものだった

クルビアでも様々な苦難に出会ったが、幸運にも、兄弟たちのための安息の家を見つけることができた

私も半信半疑だった。まさかオリジムシが良質なビールを作るそざいになり得るとは。兄弟の言い出したことでなければ正気を疑っていただろう

とにかく、事業を成功した私たちは思っていた以上に安定した生活を手に入れることができた

前々から、ドクターが私たちのオリジムシクラフトビールに興味を持っていると聞いた。トランスポーターに工場で作れた一番良いものを持たせたから渡してやってくれ

お前とメフィストにはそれぞれ贈り物を送った。あの村での出来事は私にとってもそれだけ大切な記憶だ

クルビアでお前たちに会える日を楽しみにしている

フロストノヴァ

ファウストへ」




ビック・ボブの立ち位置にいる、鏡の世界のフロストノヴァ
彼女の物語は苦難の連続だった。でもその最後はきれいなハッピーエンドだ




ビック・ボブの立ち位置に立たせればどんなキャラでも救える説、あると思います
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