2人の幸せ   作:言うても

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10話

―朝。

 

 カーテンのすき間から光が差しこみ、

 部屋の中をゆっくり照らしていた。

 保護施設の一室、静かな寝息。

 

 ベッドの上でデンジは、顔を半分枕に埋めて寝ていた。

 寝ぐせは爆発、毛布は床に落ちている。

 「……肉……タダ、大量」

 

 ドアが静かに開いた。

 レゼが顔をのぞかせ、そっと近づく。

 

 「デンジ君、起きて。」

 静かで優しい声。

 「今日は試験あるでしょ? 雄英高校の。」

 

 「……んぁ……今日だったっけ……?」

 「そう。今日だよ。」

 

 レゼが毛布をめくる。

 「ほら、起きて。朝ごはん冷めちゃうよ。」

 「……五分……いや三分……。」

 「ゼロ分。」

 「地獄かよ……。」

 

 ――食堂。

 

 デンジは寝ぼけたまま椅子に座り、

 白飯と味噌汁と卵焼きを前にしていた。

 

 

 レゼが手を合わせて言う。

 「いただきます。」

 「……いだだだだきま……す……。」

 

 デンジは箸を持ち、勢いよくかきこむ。

 「……うめぇ……。」

 「早起きしてよかった、でしょ。」

 

 レゼがくすっと笑いながら、

 デンジの頬をじっと見つめる。

 

 「……デンジ君。」

 「ん?」

 「ここ。」

 

 レゼが身を乗り出して、

 デンジの頬についたご飯粒を指で取る。

 その仕草は、驚くほど自然で、優しかった。

 

 デンジは箸を止め、固まったまま赤くなる。

 「……お、おい……顔近ぇ……!」

 

 「はい、取れた。」

 

 レゼは微笑んで、そのままご飯粒をぱくりと食べた。

 「無駄にできないもんね。」

 「お、お前……そんなこと普通しねぇだろ……!」

 「デンジ君だからいいの。」

 

 「……それ一番照れるんだよな……。」

 「顔、また赤いよ?」

 「うるせぇな!」

 

 デンジは勢いよくお茶を飲み干し、

 茶碗の残りを一気にかきこんだ。

 

 「ふぅ……限界まで食った……これで動けるぜ……。」

 「食べすぎて走れなくならないでね。」

 

 

 ――洗面所。

 

 デンジが歯ブラシをくわえながら鏡の前に立つ。

 寝ぼけ顔のまま、ぐるぐる口を動かす。

 

 レゼが後ろから近づき、鏡越しに笑う。

 「ほら、じっとして。」

 「ん? なんだ?」

 

 レゼの指先がデンジの髪に触れた。

 水をつけて、寝ぐせを手ぐしで直していく。

 朝の光の中で、鏡越しに二人の視線がふっと合った。

 

 デンジは思わず動きを止めた。

 歯ブラシをくわえたまま、

 少しだけ頬を赤くして――視線をそらす。

 

 「……おい、そんな近づくと……磨けねぇじゃん。」

 「動かなければ磨けるでしょ。」

 「……いや、そういう問題じゃねぇ……。」

 「じゃあどんな問題?」

 「……なんか、近ぇ。」

 「近くなきゃ髪、直せないよ。」

 「……そりゃそうだな……。」

 

 レゼがクスッと笑う。

 「はい、これでよし。……ちょっと寝ぐせ残ってるけど、それもデンジ君っぽいね。」

 「どのへんがだよ。」

 「うまく整わないところ。」

 「……悪口じゃねぇか。」

 「褒め言葉。」

 

 デンジは頬をかきながら、鏡越しにぼそっと言った。

 「……ありがとな、レゼ。」

 「どういたしまして。」

 「……なんか、変な感じだな。」

 「何が?」

 「オレ、こうやって人に髪直されたの、たぶん初めてだからよ。」

 「ふふ、じゃあ“初めて”記念日だね。」

 「そういうの照れるからやめろ!」

 「顔、赤いよ?」

 「うるせぇな!」

 

 ――その瞬間。

 

 バァーン!!!

 

 「チェンソー様ァァァァァ!! レゼ様ァァァァァァ出発の時間!!!」

 

 ビームがドアを全力でぶち開けて突入してきた。

 「うおっ!? びっくりした!」

 

 レゼは笑いをこらえながらタオルを差し出す。

 「デンジ君歯磨き粉、口についてるよ。」

 「サンキュ!」

 

 ビームは跳ねるように叫ぶ。

 「今日はチェンソー様の伝説の日!!伝説!」

 「伝説とかいらねぇ! 試験できりゃ十分だ!」

「チェンソー様は無敵!!!」

 

「うるせーぞビーム!!!」

 

 レゼは肩を震わせて笑った。

「ふたりとも、ほんと元気だね。」

「朝からビームがうるせーんだよ」

 外では根津校長が待っていた。

「準備はできたかい?」

 

 三人が並ぶ。

デンジ、レゼ、ビーム――それぞれ違う光を持っていた。

 

「チェンソー様、レゼ様、ビーム準備万端!!!」

「いい返事だね!」根津が微笑む。

「今日の試験は君たちの“始まり”だ。

  結果ではなく、自分の力を知ることを恐れずに。」

 

 デンジが拳を握る。

 「……なんか知らねぇけど、行ける気がする。」

 レゼが小さく笑って言う。

 「うん、一緒に頑張ろうね!」

 

 ビームがデンジの横で叫ぶ。

 「チェンソー様、レゼ様ならいけます! 絶対! 絶対!」

 

 「耳元で大声出すなビーム!」

 

 三人の声が、朝の光に溶けていった。

 

 




試験まで突っ走る予定が、まさかの風邪でダウンしました…
回復したらすぐ続き書きますので、少しだけお待ちください!
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