2人の幸せ   作:言うても

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12話

 

 

オールマイトが堂々と腕を広げた。

 

「投擲テストは見事だった!! では次だ、諸君!!

 “50メートル走”で、機動力と瞬発力を見せてくれ!!!」

 

 タイマーを構えた相澤が、淡々と指示を出す。

「お前ら三人、同時に走れ。」

 

 その言葉に、デンジが眉をひそめた。

「はぁ!? オイもじゃもじゃ! さっきの見てたのかよ!」

「……何がだ。」

「レゼの爆発で俺らぶっ飛ぶわ!!!」

 

 ビームも慌てて両手を振る。

「命! 危険!!」

 

「も〜、そんな酷い言い方しなくてもいいのに。」

 レゼは、少しだけ拗ねたように唇を尖らせる。

「……じゃあ、後から走るね。」

 

「よっしゃ!! 命拾いしたぜ!!」

 デンジが両手を上げて喜ぶ。

 

 オールマイトは笑いを堪えながら言った。

「では、まずデンジ君とビーム君から行こう!」

 

 二人がスタートラインに立つ。

 砂の上で、風がぴたりと止まった。

 

「ビーム!手加減すんなよ!」

「チェンソー様! 全力勝負!!」

 

相澤が合図をだす

「位置について――よーい……ドンッ」

 

 火花と水しぶきが同時に弾けた。

 デンジはチェンソーを駆動させ、火花を散らしながら地面を刻む。

 加速するたびに砂が爆ぜ、空気を裂く。

 その隣では、ビームが地面を蹴るたび水しぶきを上げ、

 まるで波を切るように疾走していた。

 

 ――ゴール。

 

 二人の通った跡には、火の筋と水の跡が交差していた。

 

 オールマイトがストップウォッチを確認する。

「デンジ君、1.2秒。ビーム君、1.8秒。」

 

「シャア!勝ったぜ!!」

 デンジが両腕を掲げる。

「チェンソー様、速い!!!」

 

 オールマイトが親指を立てた。

「すばらしいスピードだ!!」

 

「さて!」

 声を張り上げ、オールマイトが振り返る。

「最後は――レゼ君!!!」

 

 レゼは一歩前へ進み、前髪を払って静かに構えた。

 視線はまっすぐ、呼吸は穏やかだ。

 

「うん。応援してね、デンジ君。」

 

「頑張れよ!!!」

 デンジが叫ぶ。

「よーい――ドン」

 

 火花が散った瞬間、風が裂けた。

 轟音と爆閃。空気が爆ぜ、視界が真っ白に染まる。

 

「……は?」

 デンジが瞬きをした時には、

 もうレゼはゴールの先に立っていた。

 

 遅れて焦げた風が押し寄せる。

 オールマイトが声を張り上げた。

「タイム――0.6秒!!!」

 

「なっ……!?」

 相澤が息をのむ。

 

 オールマイトは静かに見つめた。

「……私の“全盛期”に近い数値だ。」

 

 胸の奥で小さく息をつく。

 

 風が止み、世界が静まり返る。

 

 レゼは汗ひとつかかず、微笑んで言った。

「ちょっと、本気出しちゃった。」

 

 

 相澤がため息を吐く。

「お前ら50m走とボール投げに時間かけすぎた。次からは急げ。」

 

 オールマイトが腕を組んで言った。

「続けよう。次は――立ち幅跳びだ。」

 

 デンジが助走をつけ飛ぶ

 

「2.8メートル。」

「まぁまぁだな。」

 

 レゼが軽く爆発を起こし、ふわりと宙を舞う。

「お前、それずっと続けられるのか?」

「はい、続けれますよ。」

「……無限。」

「ズりぃ。」

 

 ビームが地面を滑るように助走し、勢いよく跳んだ。

「2.4メートル。」

「楽勝ッス!」

 

――立ち幅跳び、終了。

 

 

「ここから体育館だ。壊すなよ。特にレゼ。」

「はぁ〜い。じゃあ、あんまり個性使えませんねー。」

 

「握力だ。」

 

 デンジが握力計を掴む。

 バキン。粉砕。

「……壊したな。」

「ヘヘ、強ぇだろ。」

 

 レゼが静かに握る。

 パキッ。数字が止まる。

「……壊した。」

「優しくしたのに。」

 

 ビームが噛みついた。

 ガリッ。液晶が消える。

「もういい。」

 

――握力、終了。

 

 

「反復横跳び。」

 

「ヘヘ、横に飛ぶだけとか、わけわかんねぇ。」

 

 デンジがチェンソーを鳴らして跳ぶ。

 コーンが飛び散る。

「80回……壊すな。」

 

 ビームが地面を潜りながら跳ぶ。

「70回。」

 

 レゼは静かにステップを刻む。

 正確なリズム、揺れる髪。

「78回。」

 

――反復横跳び、終了。

 

 

「上体起こし。」

 

「デンジ君、足抑えてあげる。」

「おう、頼むぜ。」

 

 一回目、レゼの顔が近い。

 二回目、息が当たる。

 三回目、目が合う。

 

(やべ……近ぇ……。)

 

 レゼが笑って言う。

「頑張れ、デンジ君。」

「お、おう!」

 

 六回目。

「うおおおおおお!!!」

 

 マットが裂けた。

 

「……55回。」

「……命削ったわ。」

「終わりだ。」

 

――上体起こし、終了。

 

 

「長座体前屈。」

 

 デンジは前に倒れない。

「体が前にいかねぇ。」

 

 ビームは関節が曲がらない。

「伸びない。」

 

 レゼが振り返る。

「デンジ君、背中押して。」

「お、おう。」

 

 デンジが背後から手を添えた。

 思ったより距離が近く、息が止まる。

 前のめりになった反動で、

 レゼの胸元が少し押し潰された。

 

(やべぇ……胸が!)

 

「……ちょっと、デンジ君。どこ見てるの?」

「あ、わりぃ!!」

「デンジ君のエッチ」

 

「70センチ。」

 

――長座体前屈、終了。

 

 

「最後、持久走。」

 

「長ぇな。」

 

 号令。三人が走り出す。

 

 デンジはすぐに息が切れた。

「走るだけとか拷問じゃねぇか!」

 

 ビームは地面を泳ぐように進み、

 レゼは爆風を推進力に変えて加速する。

 

 最初にゴールしたのはレゼだった。

「2分20秒。」

 

 オールマイトが頷く。

「君たち、いい感じだね!」

 

 通信越しに根津の声が響く。

「データは取れたようだね。これで十分さ。」

 

――個性把握テスト、終了。

 相澤が前に出た。

「これで個性把握テストは終了だ。

午後から“実技試験”だ。準備しておけ。」

 

「やり〜! やっと飯だぜ!!」

 




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