2人の幸せ   作:言うても

13 / 23
13話

――雄英高校・実技試験フィールド。

 

 空気には鉄と油の匂いが混じっていた。

 廃ビルを模したコンクリの壁、ねじ曲がった手すり、ひび割れた標識。

 どこまでも灰色が続く街並みの中、デンジは目を細めて呟く。

 

 「なんだぁ……ここ、滅茶苦茶デケェ街だな。試験会場、間違えたか?」

 

 その声に、朗々とした笑いが響いた。

 「ハハハ! 間違ってないさ、デンジ少年! ここは雄英の模擬訓練場――グラウンドαだ!」

 オールマイトが胸を張り、まるでショーの司会のように宣言する。

 

 相澤は面倒そうに髪をかき上げながら紙を配った。

 「……はい、これ。制限時間内に仮想敵をできるだけ倒せ。Aタイプが1点、Bタイプが2点、Cタイプが3点だ。」

 

 デンジは紙をひらひらさせ、にやりと笑う。

 「へへっ、倒すだけなら頭いらねぇから楽だな!」

 

 「もう、デンジ君はすぐそう言うんだから。」

 レゼが苦笑しながらピンを指先で回す。

 

 「ロボ! 簡単! 倒すだけ!!」

 ビームが地面を叩いて興奮を隠せずにいる。

 

 オールマイトが満足そうに頷いた。

 「理解は良好だね! 準備ができたら言ってくれたまえ!」

 

 デンジは口角を上げ、レゼに顔を向ける。

 「なぁレゼ、“どっちが多く倒すか”勝負しねぇか?」

 

 レゼは片眉を上げた。

 「勝負? なんで?」

 

 「普通にやるのつまんねぇし。勝ったやつの言うこと、なんでも一つ聞くってルールで!」

 

 「え、なんでも? 本当に?」

 

 「おう! なんでもだ!」

 

 レゼは小さく笑い、肩をすくめた。

 「ふふっ……いいよ。でも負けても知らないからね?」

 

 「上等! 負けねぇよ!オッサン始めてくれ!」

 

 オールマイトが腕を振り上げた。

 「ハハハ! では――実技試験、開始!!!」

 

 アラームが鳴り響き、鉄の街が唸りを上げる。

 廃ビルの奥から、無数のロボットがぞろぞろと姿を現した。

 その動きはまるで、錆びた巨人の行進だった。

 

 デンジは胸のスターターを引く。

 ヴヴヴヴヴヴン――。

 刃が腕と頭から飛び出し、金属音が地面を這う。

 

 「よっしゃ、やるかぁ!」

 

 レゼは軽く笑い、ピンを抜く。

 「行こっか。」

 

 ビームが吠えた。

 「ギャギャ!!」

 

 最初の一体がアームを振り下ろす。

 デンジは正面から突っ込み、肩の刃を半回転。

 火花が散り、金属の悲鳴が空気を裂いた。

 

 「楽勝だぜ!」

 

 砂を蹴り、次の一体の胴を水平に断つ。

 黒煙が上がり、デンジは笑う。

 

 一方で、レゼは壁を蹴って宙へと跳び、爆光を放った。

 白い閃光が線を描き、ロボットが吹き飛ぶ。

 

 「脆いね。」

 

 ビームは群れの中を駆け、頭部をサメに変えて鉄を食いちぎった。

 「食べ放題!!食い放題!!」

 

 

3人は次々に仮想敵を倒していく

 

 

 試験開始数十分後、街区の一角が爆炎に染まる。

 レゼの爆発が、次々とロボットを倒していった。

 

 デンジはその光景を睨みながら歯ぎしりする。

 「クソッ、レゼの方がぜってぇ多く倒してる……!どうすりゃ追いつけんだ!」

 

 

 

 遠くの管制室では、根津校長がモニターを見つめていた。

 

  「根津校長、想定より仮想敵の減りが早いです」

 『数百人分の試験を三人で……しかもノーダメージ。 この子達、コスパ悪すぎだよ。これじゃあ大赤字だよ』

 

 『まあいい。最終段階に移ろう。――Dタイプ、投入しようか。』

 

「分かりました。大型仮想敵タイプD投入」

スタッフがボタンを押す

 

 地鳴り。

 コンクリートの壁が開き、巨大な影が現れる。

 

 ――大型仮想敵《タイプD》。

 

 深緑の装甲。重脚が一歩進むたび、地が沈む。

 赤いセンサーが光り、肩の砲台が回転した。

 

 「うわ、なんだよあれ……デケェ……」

 デンジが呟く。

 

 「説明、あった?」

 レゼが聞く。

 

 「見たことないです!」

 ビームが歯を鳴らした。

 

 振り払い一撃でビルが砕けた。

 レゼは瞬時に身をかわす。

 

 「危なっ!」

 

 デンジは舌打ちした。

 「おいレゼ! あんなの説明にあったか?」

 

 「ないよ!」

 

 「だろ! こういうのは“シークレット”って言うんだ! ヤバいやつほどポイント高ぇんだよ!」

 

 「……早い者勝ち?」

 

 「いや、俺に譲れ!ポイント多いだろ!」

 

 「えー、勝負なのに?」

 

 「ハンデだよ!ハンデ!」

 

 レゼはくすりと笑った。

 「も〜……しょうがないな。頑張ってね。」

 

 「任せとけ!」

 

 タイプDの腕が振り下ろされる。

 轟音。崩れる建物。

 

 「クソッ、下手に近づいたら潰される……!」

 

 タイプDが一歩を踏み出す。地面が鳴動した。

 

 「遅ぇくせに、歩くだけで壊しやがる……」

 デンジの目が光る。

 「……そうだ。遅いってことは、避け放題じゃねぇか。 俺、天才!」

 

 自然にチェンソーの回転数があがる

 ヴヴヴヴヴヴン――。

 「遅い奴はぶった斬るに限る!」

 

タイプD「標的ヲ……排除スル。」

 

 地面が弾ける。ズンッ!

 クレーターの中心、煙の中から――

 

 チェーンソーが咆哮し、デンジが駆ける。

 地を這う轟音。火花が流星のように散る。

 

  アヒャアヒャアヒャアヒャ

 「おせぇ! 遅すぎんだよ!」

 

チェーンソーを腕に突き立て、駆け上がる。

 ヴンヴンヴンッ、火花が散る。

 

 タイプDが腕を垂直に上げて振り払う。

 

「アハハハ! テメェに刺してんのに落ちるかよ!」

 

 腕を駆け上がり、頭部にたどり着く。

 「やっとてっぺんだ。人間の脳みそは見たことあっけど、ロボの中身はまだだぜ!」

 

 両腕の刃を突き立てる。

 ヴヴヴヴヴヴン――!

 ギギギギィン! 火花が滝のように降り注ぐ。

 

 「ギャアーハッハハァ!!!」

 

      バァンッ!

 

 爆発音と共にタイプDの頭部が貫かれた。

 センサーが一つずつ消え、巨体が倒れる。

 

 「シャァーッ! シークレット、ぶっ壊したぞ!!!」

 

 砂煙の中で、デンジが勝ち誇るように叫んだ。

 その時――。

 

 「ギャハハハハハァ――」

 笑い声の途中で、チェーンソーの音が止まった。

 

 「あ? やっべ……血、使いすぎた。」

 

 視界が揺れ、体が傾く。

 「あー……落ちるかも。」

 

 空へ投げ出されたデンジが叫ぶ。

 「ビーム!! 受け止めろォ!!」

 

 

 

 だが、空を切る爆風と共に現れたのは――レゼだった。

 

 「しょうがないなぁ、デンジ君は。」

 

 爆煙の中、レゼが彼をお姫様抱っこで受け止める。

 

 「や、やめろレゼ! ビームに頼んだんだよ!

  恥ずかしいだろ!!」

 

 血を失った体では逃げることもできず、ただ顔を真っ赤にする。

 

 「ふふっ、動けないデンジ君……可愛いね。」

 レゼが微笑む。

 

 「うわぁぁぁ! やめろっての!」

 

 「レゼ離せ! まだ試験中だろ!?

  俺がシークレット倒したんだから、

  お前もポイント稼いでこいよ!」

 

  「デンジ君でも、そろそろ」

 

 「――試験、終了!!!!!」

オールマイトの声が響いた。

 

 静寂の中で、レゼは微笑む。

 「デンジ君。私が安全なとこまで運んであげる。」

 

 「辞めろレゼ!! 離せ!…」

 

 




お気に入り登録、コメント、高評価ありがとうございます!
励みになります!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。