2人の幸せ   作:言うても

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2話

 

 壊れた倉庫の影に、デンジはしゃがんでた。

 

 「腹減った……肉まん食いてぇ……」

 「デンジ君、仕事中だよ。」

 「終わったら食う。ポチタにもやる。」

 「ポチタは肉まん食べないと思うけど。」

 「いーんだよ。気持ちだっつの。」

 

 ポチタが「ワン」と鳴く。

 ちょっと笑ってるみたいな声だった。

 

 「標的、ここで合ってんのか?」

 「うん。中にサワダって人。外に見張りが二人。」

 「おっけ。じゃ、外は任せた。」

 「……ほんと、もう少し慎重に言ってよ。」

 

 レゼが月光の中でナイフを抜いた。

 刃先が冷たく光る。

 風が止まる。

 音も止まる。

 

 すぐに、二人分の呻き声。

 レゼが影から戻ってきた。

 

 「終わったよ。」

 「はっや! 俺もあんなふうにやってみてぇ!」

 「デンジ君がやったら、血の海になるよ。」

 「……まぁ、なるな。」

 

 デンジが鼻をこすって、扉の前に立つ。

 分厚い鉄の鍵。

 

 「鍵かかってんな。」

 「待って、開けるから。」

 「いいよ、もう開ける。」

 「デンジ君、それ違――」

 

 「ポチタ、いくぞー!」

 「ワン!」

 

 エンジンが咆哮する。

 「ギィィィィィィィン!!!」

 火花と金属音。

 鉄の扉が吹っ飛ぶ。

 

 「開いたー!」

 「……ほんとに開けるんだ……」

 「壊れりゃ一緒だろ!」

 

 デンジが笑いながら突っ込む。

 「よぉ!!」

 

 サワダが振り返る。

 目が光る。皮膚が鉄に変わる。

 

 「お前……何の個性だ。」

 「うるせぇ!」

 

 チェンソーが唸る。

 「ギギギギギィィィ――ン!!!」

 火花。

 血。

 金属の悲鳴。

 

 終わり。

 

 煙の中で、デンジが息を吐く。

 「ふぅー……よっしゃ、終わり。」

 

 レゼが入ってくる。

 「ほんとに、考えるより先に動くよね。」

「考えたら腹減るだけだろ。」

「……バカだね、デンジ君。」

「バカでいいだろ。勝ったし。」

 

 静かな倉庫。

 血の匂いだけが残ってる。

 

 「さてと、金目のもんねぇかな。」

 「え?」

 「ほら、悪党の部屋だし。なんか置いてんだろ。」

 

 棚を漁る。

 ガラクタばかり。

 デンジが眉をひそめる。

 

 「ゴミしかねぇじゃん……」

 

 そのとき。

 奥から――金属の音。

 ガン。ガン。ガン。

 

 「……なんだ?」

 奥の闇。鉄の檻。

 中で何かが動いた。

 

 「……チェンソーの……音ォ……」

 

 デンジが身をのり出す。

 レゼが止めようとする。

 遅かった。

 

 「先の戦い、見ましたァァァ!!!」

 

 「うおっ!? なに!?」

 

 檻の中。

 人間の体に、サメの頭。

 水に濡れて、目がギラギラしてる。

 

 「我ァァ! ビーム!! “サメの個性”を持つ者!!!」

 「サメ!? 人間かよ!?」

 「見たァ!! チェンソーの男ッ!! 最高ッ!! 音が最高ッ!!!」

 「うわ、テンション高ぇな!」

 「我は狂っておるゥ!! だがチェンソー様はもっと狂っておるゥ!!!」

 「褒めてんのかそれ!?」

 「褒めてるゥ!! 敬ってるゥ!!!」

 

 デンジが首をかしげる。

 「お前、ヤバいな。」

 「狂信しておるゥ!!!」

 

 レゼが小声で言う。

 「デンジ君、檻は開けちゃダメ。」

 「うーん……でもこいつ、なんか面白ぇし。」

 

 デンジが近づく。

 「おい、ビーム。」

 「ハハァ!! 何なりとォ!!!」

 「今日からお前、俺たちの手下な。」

 「ハッ!! 分かりましたァ!! チェンソー様の下僕、ビームと申しますゥ!!!」

 「よし、話早ぇな!」

 「この命、サメの牙、全てチェンソー様にィ!!!」

 「いや死ぬなって!!」

 

 レゼがこめかみ押さえる。

 「……ねぇデンジ君、ほんとに仲間にするの?」

 「だってノリ合うし。俺、上に立つの初めてだし!」

 「バカ……」

 「へっへ、俺も今日から“チェンソー様”だ!」

 「……どうしようもないね。」

 

 ポチタが「ワン」と鳴く。

 レゼは笑って肩をすくめた。

 

 その夜。

 犬とサメとバカと少女。

 最悪で、ちょっとだけ幸せなチームが、生まれた。

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