2人の幸せ   作:言うても

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21話 初めての放課後−1

テストが終わり、女子更衣室。

 

一斉にロッカーが開く金属音が響き、汗の混じった運動着の匂いと、時折シャワー室から流れる水音が混ざり合う。

 

(はぁ〜……爆豪君、滅茶苦茶デンジ君に絡んできたな。デンジ君も今は我慢してるから……私も我慢しないとダメか…)

 

レゼは体操服を脱ぎながら、今日の騒がしすぎるテストを思い返していた。

デンジは終始だるそうだったが、あれでもかなり感情を抑えていた。

 

そんなふうに考えながら、ロッカーの扉へ手を伸ばした――その時。

 

「ねぇねぇ、レゼさん!」

 

背後から明るく弾む声。

更衣室のざわめきの中でもはっきり届くほど、キラキラした声だ。

 

「……え?」

 

振り向けば、ピンクの髪と跳ねるような角。

息が少し上がっていて、頬が光っている。

 

「着替え中ごめんね!

 私、芦戸三奈っていうの!」

 

彼女は勢いよく手を差し出してくる。

距離の詰め方が突然すぎて、レゼは思わず瞬きをしたが――そっと握り返した。

 

「レゼです。……よろしく」

 

「うん! よろしくー!」

 

芦戸の笑顔は太陽みたいに明るく、

ロッカーの蛍光灯の下でも眩しいくらいだった。

 

「ねぇレゼさん、“さん”付けだと距離あるし……

 “レゼちゃん”って呼んでもいい?」

 

「いいよ」

 

「やった!

 テスト中、記録入力してて忙しそうだったから話しかけら れなくてさ〜。

 こうして話せてめっちゃ嬉しい!」

 

芦戸は本気で嬉しそうに、笑ったまま髪をほどき始める。

レゼはその明るさに、少しだけ肩の力が抜けた。

 

「あ、レゼちゃんも私のこと好きに呼んでいいからね!」

 

「じゃあ……芦戸さん、で」

 

「えっ、三奈ちゃんでもいいのに〜!」

 

「はは、私の柄じゃないからね……」

 

「全然そんなことないよ!

 でも、呼びやすいほうでいいからさ。

 これからもよろしくね、レゼちゃん!」

 

「私こそ、よろしく」

 

二人の会話をよそに、更衣室のあちこちで制服の着替える音が聞こえる。

なんとなく、女子たちの空気が柔らかくなる瞬間だった。

 

その時。

 

「ねえねえレゼちゃん、ちょっと聞いてもいい?」

 

「何? 芦戸さん?」

 

「今日、一緒に記録測ってたデンジ君とビーム君って、知り合いなの?」

 

「うん、知り合いだよ。どうしたの?」

 

「いや〜、入学初日なのに仲良さそうだな〜って思って!」

 

「あぁ……そうだね。

 デンジ君は小さい頃から一緒だし、ビーム君も付き合い長いかな」

 

「え、そうなんだ!

 じゃあデンジ君とは……幼馴染ってやつだね!

 あれだけ息ぴったりなら、

 もしかして〜……付き合ってたりする?」

 

芦戸がニヤニヤと、からかうように眉を上げる。

 

レゼは一瞬だけ黙り――

タオルで髪を押さえながら、視線をそらす。

 

「……うん。デンジ君とは……付き合ってる、かな」

 

「ええええええええええ!!!

 なにそれめっちゃ重大情報じゃん!!!」

 

芦戸の叫び声が更衣室に響き、周りの何人かが思わず振り返る。

 

 

 

 

 

 

    「ちょっとナニソレ詳しく!!」

 

 

 

 

 

 

 突然、空から声が落ちてきた。

 

 レゼと芦戸は揃ってビクッとする。

 

「えっ……?」

 

「ごめ〜ん! 私、個性“透明化”だから今見えないよね。よいしょ、ここだよ〜!」

 

空中に制服だけがふわりと揺れた。

まるで幽霊のようだが、声は明るい。

 

「驚かせてごめんね!

 私、葉隠透っていうの。好きに呼んで!」

 

姿は見えないのに、テンションの高さと笑顔が伝わるようだった。

 

「あとね!

 私もレゼちゃんって呼んでいい?

 芦戸さんのことは“三奈ちゃん”って呼んじゃっていい?」

 

「もちろん! よろしく、透ちゃん!」

芦戸が元気よく答える。

 

「私も、いいよ。葉隠さん、よろしく」

 

「イエイ!」

 

透明な手がピースを作って揺れたように見えた。

 

更衣室の空気が、一気に友達同士のそれに変わっていく。

 

「じゃあ、自己紹介も終わったってことで〜〜

 レゼちゃん、さっきの話ほんと!?」

 

「さっきの……?」

 

「そうだよ!

 レゼちゃんとデンジ君が付き合ってるってやつ!」

芦戸も葉隠も前のめり。

 

「うん。本当」

 

「ウヒョーー!!」

「いいな〜!!」

「聞きたいこと多すぎるんだけど!!」

 

その盛り上がりの最中――

 

キーンコーンカーンコーン。

 

「わ、もうこんな時間!」

葉隠が空中で制服をバタバタ揺らす。

 

「透ちゃん、レゼちゃん! 放課後時間ある?」

芦戸が勢いよく振り返る。

「もっとお話ししよ!」

 

「いいねそれ!」

葉隠が制服ごと跳ねるように揺れた。

 

「私もいいよ。

 あ、でも……デンジ君とビーム君もいて大丈夫?

 私達、一緒のところに住んでるんだ」

 

「え、ナニソレ?」

「えええええ!? 彼氏と一緒に住んでるの!?

 すごっ!!」

 

目を輝かせた二人が、さらに前のめりになってくる。

 

「もちろんいいよ!

 むしろ根掘り葉掘り聞きたいしね!!」

 

「よっしゃー!!

 着替えて早く教室戻ろ! 放課後だー!!」

 

更衣室が2人の笑い声でぱっと明るくなる。

レゼもつられて、小さく笑った。

 

新しい学校、新しいクラス。

そして――新しい友達。

 

こうして、初めての放課後の約束が結ばれた。

 

 




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