デンジとビームは、先に教室へ戻っていた。
デンジはイスにだらしなく座り、天井を見上げながら大きく息を吐く。
「は〜……やっと終わった。学校って、こんなに疲れんのかよ?」
「チェンソー様余裕!! 余裕!!」
「余裕じゃねぇだろ。ツンツン野郎が絡んできてチョーめんどくさかったじゃんか」
「アイツ滅茶苦茶チェンソー様に失礼! 失礼!
ビーム、あいつ倒す! 倒す!」
「やめろビーム。レゼに怒られるぞ」
「ヒッ……レゼ様に怒られる……」
ビームはレゼの“怒り”を想像して、肩をすぼめて縮こまる。
その様子を見たデンジは、呆れたように息をこぼした。
「レゼ遅っせ〜……早く帰りてぇ〜」
その時だった。
廊下の向こうから、甲高く弾ける声が段々と近づいてくる。
その勢いはまるで台風の接近のようだ。
「てかレゼちゃん落ち着いてるけど、めっちゃ可愛い〜!」
「ほんとそれ! レゼちゃん可愛すぎ〜!!」
「ちょ、ちょっと……あまり大声で……」
(うわ……芦戸さん達、すごい勢い……)
「レゼと……誰だ……?」
デンジが眉間をしかめる。
「シャッ!? レゼ様の声!!そして……知らぬ女の声!!」
ビームはなぜか警戒態勢に入り、構え出した。
そして――
バァァン!!
教室の扉が勢いよく開いた。
「デンジくーん!!」
「ビーム君もー!!」
「「今日はよろしくね〜!!」」
芦戸と葉隠、二人のテンションは最高潮。
その後ろでレゼは、頬を赤くしながら小さく笑っている。
困ってはいるけれど、どこか楽しそうでもあった。
「……はぁ?」
デンジは素で引いた。
「な、なんだ……レゼ様に近い……なぜ……?」
ビームは完全に理解不能で首を傾げる。
ズンズンと歩み寄り――
ドン!!
芦戸と葉隠はデンジの机に勢いよく手を置いた。
「初めましてデンジ君! ビーム君! 私、芦戸三奈!」
「私、葉隠透!!」
そして――
「「ねぇデンジ君っ!! 聞いたよ!! レゼちゃんと付き合ってるんでしょ!!」」
二人の声は弾丸のように飛んでくる。
「はぁ!? なんでお前ぇらが知ってんだよ!?」
「レゼちゃんが言ってた!」
葉隠が空中でぴょこんと手を上げる。
「……言わされたんだよ」
レゼが小声で抗議する。
次の瞬間。
「「キャーーーー!! カップルだーー!!」」
女子2人の絶叫が教室中に炸裂した。
「初日でカップル拝めるなんて思わなかったよね、葉隠ちゃん!」
「だよね! 完全に青春!!」
デンジは2人を見て引く。
「……なんなんだコイツら……」
「テンション……すごい……」
ビームは自分より騒がしい二人に完全に引いている。
レゼは肩をすくめつつ、デンジの後ろにそっと立ち、どこか嬉しそうに視線を落とした。
「デンジ君、ビーム君、帰る準備できてる
みたいだから、私達も準備するね!」
「よっしゃ!!」
「ちょっとだけ待っててね!」
「は、はぁ……?」
デンジが状況を飲み込めず固まっていると、
レゼがそっと近づき、耳元で説明する。
「ごめんねデンジ君。更衣室で会ったの。
色々あって……これから皆でどこか行こうって話になって」
「……はあ、なるほどな。レゼが行くなら行くけどよ」
「じゃあ、すぐ準備してくるね」
「お、おう」
レゼが離れていき、デンジはビームに顔を向けた。
「なぁビーム……理解できたか?」
「チェンソー様……全く分かりません!!」
「……だよな」
二人は、女性陣の準備が終わるのを、
混乱しつつも大人しく待つのだった。
「――それでね!レゼちゃんってば可愛いのに落ち着いてて、なんか大人っぽいんだよね〜!」
「デンジ君の話もっと聞きたいよね透ちゃん!」
「うんうん!私まだ半分も聞けてない!」
(……なんだこの騒がしさ)
デンジは、芦戸と葉隠の高速マシンガントークの波に飲まれ、
返事をする余裕もなくただ前を歩くだけだった。
ビームはというと――
「シャシャ……人、多い……ビーム警戒……警戒……」
なぜか周囲をキョロキョロしている。
(レゼ……助けてくれ……)
隣で歩くレゼは、デンジの袖をそっとつまみながら小声で言う。
「ごめんね……本当にテンションすごいよね……
でも、悪い子達じゃないから」
(いや悪いとかじゃねぇんだよ……情報量多すぎて脳がついてかねぇんだよ……)
そんな心の声も届かないまま――
「ついたよー!!」
芦戸が突然大声を上げた。
デンジがようやく前を向くと、
ファミレスの看板が目の前にあった。
「……は?」
一瞬、本気で転移でもしたのかと思った。
さっきまで学校の前を歩いていた気がするのに、
気づけば自動ドアの前。
(俺、ここまで歩いた記憶ねぇんだけど……)
「デンジ君?どうしたの?」
レゼが覗き込んでくる。
「いや……え? ここか?」
「うん、三奈ちゃんが『ここ入りたい!』って決めたんだよ」
「そうそう!レゼちゃんと色々話したいし、
デンジ君のことももっと聞きたいし!
だからファミレスがちょうどいいの!」
「そうだよ!個室っぽい席もあるしね!」
「…………」
デンジの脳は処理を放棄した。
「シャ!?チェンソー様、魂抜けてる!!」
「抜けてねぇよ……抜けてねぇけどよ……」
完全に気圧されたデンジは、小さく呟いた。
「……俺、帰ったらぜってぇ寝る……」
レゼはくすっと笑い、袖を軽くひっぱった。
「大丈夫、私も一緒にフォローするから。
ほら、入ろ?」
その声に押されるように、デンジは静かに店の中へ足を踏み入れた。
ライブで遠征していて書けてませんでした