その「しつけ」、ポケモン用です   作:マウスブン

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タウニー8 無力化

あの広場での屈辱的な敗北と宣言から、数日が経過していた。約束の「一週間」は、まだ半分も過ぎていない。

 

夜。ホテルZの自室で、タウニーは入念にストレッチを終えると、気合を入れるように自分の頬をパンと叩いた。

「……よしっ!」

あのバトル以来彼女は焦っていた。キョウヤに負けたこと。Aランクのプライドが傷つけられたこと。そして何よりあのジガルデという圧倒的な「切り札」の存在。一週間後の再戦までに自分も強くなっておかなければ、またあの二の舞だ。

 

「今夜こそ、レベルを上げてやる」

タウニーは腰のモンスターボールを確かめると、夜のミアレシティで開催されているランクバトルへ向かうため、勢いよく自室のドアを開けた。

 

その瞬間。

「……!」

ドアのすぐ目の前に、いるはずのない男が立っていた。

 

「よお、タウニー。威勢が良いな」

「キョ、キョウヤ……!?」

キョウヤだ。タウニーはまるで幽霊でも見たかのように目を丸くし、すぐに警戒の色を浮かべた。あの人前でのキスがフラッシュバックし、無意識に唇を押さえる。

 

「何の用……」

「少しタウニーに用事がある」

私は彼女の言葉を遮り淡々と告げた。タウニーは私から一歩距離を取ると、露骨に顔をしかめた。

「あいにくだけど、あたしは今からランクバトルに行くの。急いでるんだけど」

 

その返事は想定通りだった。私はわざとらしく肩をすくめてみせる。

「そうか。でもいいのかい?」

「……なにが」

「タウニーが私の用事に付き合ってくれるなら、その間私は自分のポケモンを鍛える時間がなくなる」

 

私はタウニーのその怪訝な顔を見つめ、ニンマリと笑い一歩近づく。タウニーがビクッと肩を震わせた。

「でもそちらはマチエールだけは鍛えられる。……だから次の賭け、タウニーが勝つためには有利になるんだよ」

 

「―――っ!」

タウニーの動きが、ぴたりと止まった。彼女の頭の中で、天秤が激しく揺れ動いているのが手に取るように分かった。

 

今すぐランクバトルへ行き、自分の実力を高めるか。それとも、目の前の私(キョウヤ)の時間を奪い、一週間後の再戦に向けて、私の戦力を削ぐか。

 

彼女の潤んだ瞳が私とランクバトル会場があるホテルの外とを、数回往復する。

 

「……」

やがて彼女は観念したように、ふぅと深いため息をついた。

 

「……わかったよ」

タウニーは不満そうに、しかし明確な意志を持って、私を睨みつけた。

「……キョウヤの用事、聞いてあげる。……ここで話すのもなんだし、入って」

 

彼女はそう言うと、自室のドアを大きく開け私を中へと招き入れた。

 

(……かかった)

タウニー自身の強化よりも、私の弱体化を選んだか。実に合理的だ、タウニー。私はその完璧な誘導に満足し、ニンマリと笑みを浮かべながら、彼女の部屋へとゆっくりと足を踏み入れた。

 

 

 

バタン、とタウニーはどこか不機嫌そうに自室のドアを閉めた。ランクバトルに行きそびれた焦りと、まんまと私の口車に乗せられた悔しさ。それがない交ぜになった顔だ。

 

「……で?」

彼女は部屋の中央で腕を組み私を睨みつける。

「用ってなによ。言っとくけど、あたしの貴重な時間を奪ってるんだからね。」

 

「ああ、分かってる」

私は悪びれもせず、彼女の部屋のベッドの縁にどかりと腰を下ろした。タウニーは「あっ、ちょっと!人が座るとこ!」と咎める声を上げたが、私は構わず続ける。

 

「大した用じゃない」

「はぁ!?大した用じゃないの!?」

「ああ」と私は頷き、部屋に備え付けられた椅子に座るよう、タウニーに顎でしゃくった。彼女はまだ納得いかない顔だったが、仕方なく私の向かいにある椅子にドスンと腰を下ろす。

 

「……早く言ってよ。用がないなら、今からでも……」

「タウニーに、会いたくてね」

「……は?」

 

タウニーの言葉が、止まった。

 

私は向かい合って座る彼女の顔を、ただじっと見つめた。あの広場での敗北。あの屈辱的なキス。その記憶がまだ新しいせいか、彼女の頬は最初からほんのりと赤い。

 

「……」

「……な、なによ」

タウニーは居心地悪そうに身じろぎした。私の視線が彼女の瞳を鼻を、そしてあの広場で塞いだ唇を、ゆっくりと観察するように往復する。

 

「……っ」

タウニーはついに耐えきれなくなったように、ぷい、と私から顔をそむけた。

 

「……さっきから、全く目が合わないんだけど」

私がそう指摘すると、彼女は顔をそむけたまま、苛立ったように声を荒らげた。

「う、うるさいな!そんなにジロジロ見ないでよ!」

 

「ほう?」

私はわざとらしく首を傾げた。

「タウニーの顔を見たくてここに来たのに、どうしてそんな事を言うんだい」

 

「そ、それは……!」

(……だって)タウニーは口ごもる。

(……なんか、キョウヤ……。あのバトル以来、前より……男前が上がったっていうか……)

あの広場でジガルデを従え、観客全員を敵に回して、平然と私たち二人を組み伏せた姿。あの時の強引なキスの感触。Aランクのライバルとしてではない圧倒的なオスとしての威圧感。それを思い出してしまい、まともに顔が見られない。タウニーは自分の心臓が緊張でうるさいことに、苛立ちを覚えていた。

 

私は彼女のそんな内心を見透かしたように、静かに笑った。

「今のうちに沢山私の顔を見て、慣れてもらわないと」

「は……?な、なんで慣れるのよ……」

「決まっているだろう?」

 

私は椅子から立ち上がり、彼女の目の前に一歩近づいた。タウニーが「あっ」と小さな悲鳴を上げ、椅子の上で身を固くする。私はその真っ赤になった彼女の顔を覗き込むように、ゆっくりと身をかがめた。

 

「これからもタウニーには、毎日私を見てもらう事になるんだから」

「―――っ!」

「それに」

私は彼女の動揺を意にも介さず、続ける。

「私はタウニーが可愛いから、もっと見ていたい」

 

(……なっ……!)

タウニーは息を呑んだ。

(……こいつ、あのバトル以来、なんか……口説き方に、磨きがかかってない……!?)

ランクバトルを妨害された苛立ちも、次の賭けへの焦りも、その甘く、しかし有無を言わせぬ囁きの前ではすべてが吹き飛んでいく。タウニーは「ば、馬鹿じゃないの!」と返すのが精一杯だったが、その顔はもう限界まで真っ赤に染まっていた。

 

 

 

 

 

タウニーは私のその真っ直ぐな視線と、まるで所有権を主張するかのような甘い言葉に、完全にたじろいだ。顔がカッと熱くなるのが自分でも分かった。

(なんなのよ、こいつ……!)

ランクバトルに行けなかった苛立ちも次の賭けへの焦りも、この男の絶対的な自信の前ではただの強がりにしかならない。

 

「……っ、そ、そんなこと言って!」

タウニーは精一杯の虚勢を張り、椅子に座ったまま私を睨みつけた。

「どうせマチエールにも、同じようなこと言ってるくせに!」

 

嫉妬。それしか、この心臓のうるささと顔の熱さを誤魔化す言葉がなかった。Aランクトレーナーとしてのプライドが、この男の前ではいとも簡単にぐらついてしまう。

 

「……何、その反応」

 

私が面白そうに目を細め椅子に座る彼女に、さらに一歩踏み込む。タウニーは「こ、来ないで!」と椅子ごと後ろに下がりそうになるがもう壁が近い。

 

私は彼女の弱々しい抵抗を無視し、その真っ赤に染まった顔に手を伸ばした。「あっ……!?」

タウニーが身を固くする。どうせまた、あの広場みたいに強引にキスされる。そう思ってぎゅっと目を閉じた。

 

だが私の指が触れたのは唇でも頬でもない。そのわずかに震える、彼女の耳だった。

 

「な、なにす……」

私が親指と人差し指で、その柔らかい耳たぶをそっとつまんだことに、タウニーが困惑の声を上げる。

 

私は彼女の言葉を待たず、その耳の形を確かめるかのように、指先でゆっくりと輪郭をなぞり始めた。複雑で入り組んだ軟骨の上を爪を立てないようにじっくりと。まるで極上の宝物でも鑑定するかのように執拗に。

 

「ん……っ」

 

タウニーの喉から意図しない甘い声が漏れた。体がビクッと小さく跳ねる。

(……な、に、これ……)

お腹を撫でられた時とも、首筋を噛まれた時とも違う。もっと直接的でぞわぞわとした未知の感覚。

 

「ぁ……の、さわ、りかた……っ」

彼女が潤んだ瞳で私を見上げる。それは抗議というより、何をされているのか理解できないという戸惑いそのものだった。

 

「ほう?」

私はその初々しい反応を楽しみ、わざと耳元に顔を寄せて囁いた。

「タウニーは耳も弱いね」

 

「なっ……!?」

そのあまりにも言葉に、タウニーの顔が屈辱と羞恥で爆発したように赤くなる。

「ふ、ふざけ……!」

 

彼女が怒鳴ろうとした、その耳朶に、ふぅ、と熱い息を吹きかけた。

 

「―――ひゃぅっ!」

 

タウニーの肩が大きく跳ね上がった。まるで背骨に直接熱い鉄の棒を差し込まれたかのような強烈な衝撃。背筋をぞわぞわと抗いがたい快感が津波のように走り抜ける。

 

「ほら、こんなに感じてる」

私の指が彼女の耳の裏側、うなじにかかる髪の生え際をくすぐるように撫で上げた。タウニーは「あ……っ」と甲高い声を漏らし、椅子の上で逃げようとするが私は彼女の肩を片手で軽く押さえつけ、その動きを封じる。

 

「タウニーは耳だけでも気持ちよくなれるんだって、私がちゃんと……骨の髄まで学習させてあげるよ」

 

「い、いや……っ、やめ……!」

彼女の弱々しい抵抗は、私の舌によって完全に塞がれた。

「んんっ!?」

耳の縁、その軟骨の硬い感触を確かめるように、ぺろり、と下から上まで舐め上げる。タウニーは椅子の上で「いやっ、いやっ」と意味のない悲鳴を上げながら、激しく身をよじるが逃げ場はない。

 

(なにこれ、なにこれ……っ!お腹を撫でられるのとは、全然違う……!)

 

「やだ……っ、そこ、変……!ぁ……!」

「変か?」

私はその反応を嘲笑うかのように今度は耳たぶを甘く、しかし確かな強さで歯を立てて食んだ。

 

「あ゛―――っ!?」

 

もう声にならない。タウニーは椅子の肘掛けを爪が白くなるほど強く握りしめた。脳が痺れる。頭が真っ白になる。ランクバトルのことなど、もう遥か彼方に吹き飛んでいた。

 

「ん……っ、ふ……ぁ、ぁ……」

荒い呼吸が彼女の口から漏れる。私はそのぐずぐずになった獲物を仕留めるように、彼女の耳の穴に、直接舌先をねじ込もうとするかのように深くねっとりと囁いた。

 

「ほら、こんなにビクビクして……。可愛いな、タウニー」

「ひ……っ、だめ、そこ……っ!」

彼女が本能的な恐怖で懇願する。だがそれが「もっとやってほしい」という期待の裏返しであることは、私にはお見通しだった。私は彼女が望んだ通り、その耳の窪みそのすべてを確かめるかのように、執拗に舌を這い回らせた。

 

「ん……っ、ふ……ぁ……、はぁ……っ」

ダメだ。もう抵抗できない。力が入らない。キョウヤの言う通りだ。こんなところを触られただけで、体が芯から熱くなって腰が抜けて、もう立てそうにない。

 

「はぁ……はぁ……っ、きょ……や……」

タウニーは完全に思考を放棄した。あの夜の「教育」の記憶が蘇る。この男には逆らっても無駄だ。それどころか逆らうほど、もっと気持ちいい場所を見つけられて屈服させられる。

 

彼女は羞恥よりも遥かに強くこみ上げてくる期待と脳を焼き切るような快感に、ただその身を委ねた。握りしめていた椅子の肘掛けから力が抜けだらりと垂れ下がった手。私の次の愛撫を、そのすべてを受け入れるためだけにぐったりと首を傾けるのだった。




書き終わりました。後残り4話。安心してください。ハッピーエンド?です。

3人目以降の調教を望む、紳士淑女の皆様へ No.1 H Eroの名言を送ります。
「次は君だ。」
作者はもう出し切ってしまった。
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