紅魔族の異世界生活   作:味八木

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お調子者としっかり者

 

 

―ジュラの大森林リムルの街―

 

ベニマル達が仲間になってから、幾日が経過した。ベニマルは軍事部門、ハクロウは軍事顧問、ソウエイは諜報部門、シュナは衣服部門と料理担当、クロベエは鍛冶職人、シオンはリムルの護衛兼秘書になった。

 

はみはみは、客人兼顧問として滞在する事が正式に決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガビル率いる蜥蜴人族(リザードマン)の戦士達は小鬼族(ゴブリン)の村々を回って援軍を集めていた。順調に進むと小鬼族(ゴブリン)の村の1つの村長からおかしな話を聞いた。何でも、牙狼族(がろうぞく)に襲われていた村が逆に牙狼族(がろうぞく)を従えたという。しかも、小鬼族(ゴブリン)が進化していると言う。

 

ガビルは、思う。牙狼族(がろうぞく)は草原の覇者とも呼ばれる魔物だ。草原での戦いは蜥蜴人族(リザードマン)は劣るが、湿地帯なら遅れは取らない。謂わば、場所によっては蜥蜴人族(リザードマン)ですら苦戦するのだ。小鬼族(ゴブリン)達が勝てるとは思えない。しかも、小鬼族(ゴブリン)達を治めるのは最下級の魔物であるスライムだと言うではないか。巫山戯た話だと思った。だが、牙狼族(がろうぞく)を戦力に引き込めたら…そんな考えがガビルの脳裏によぎった。

 

ガビルは、小鬼族(ゴブリン)の村長に件の村の場所を教えてもらい、行ってみたがそこはもぬけの殻だった。ガビルは少しイラッときたが、必要経費と割り切って地道に小鬼族(ゴブリン)の村を探すことにした。

 

そう、彼には野望があった。下等な豚頭族(オーク)如きに畏れる軟弱な首領など必要無い。自分こそが蜥蜴人族(リザードマン)の首領に相応しいと思っている。彼には仕えたい主がいるのだ。ある日、湿地帯で魔族に出会った。"名"を"ゲルミュッド"

 

『お前は見所があるな。いずれは、俺の片腕になれそうだ。またいずれ会おう』

 

そう言って、ガビルに名を与えたのだ。彼はゲルミュッド様の為に己の力を内外に見せつけたい。牙狼族(がろうぞく)を配下に加えれば、その力は圧倒的な物になると彼は信じて止まない。故に、少しの障壁など苦ではないのである。

 

だが、ガビルに名を与えたゲルミュッドは他の魔物にも名を与えているのだが、そんな事を彼は知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーリムルの街ー

 

リムルとはみはみは、ハクロウ相手に剣の修行をしていた。リムルは刀を、はみはみは西洋剣だ。刀と西洋剣では勝手が違うが、流石は剣術指南役と呼ばれたハクロウは、見事に捌いてみせた。

 

はみはみの剣術は、シルヴィア・エル・リュより習った物だ。その腕は、ハクロウも絶賛するものだった。ハクロウ曰く、『本職が剣術ではなく魔法使いなのが勿体ない』そう称する程であった。それに対して、リムルは初めて見る技術(アーツ)に翻弄されていた。そんな中だった。

 

カランカランカランカラン

 

いつの間にか設置された警報装置の音だった。リムルの知識を元に、住民達は自主的に開発をしている。何事かと思っているとリグルドがリムルに教えに来た。

 

「リムル様!蜥蜴人族(リザードマン)の使者が接近しています!」

 

突然の来客に一同は困惑した。

 

 

 

 

 

 

 

 

場所を移して、リムル達は街に程近い場所で使者の到着を待っていた。待ち時間にシオンはリムルの為に食事を用意したとの事だが、料理をしているはみはみからすれば、ダークマターと称すべき物体がリムルの前に出されていた。因みにだが、はみはみにもこのダークマターは提供されている。曰く『リムル様のお客人なら秘書として御食事を提供するのは当然です』との事だった。

 

はみはみは、自分には『状態異常無効』と『自然影響無効』が有るんだ。大丈夫!と勇気を出して食べてみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死ぬかと思った。いや、確かに各種耐性はちゃんと機能していた。しかし、『味』と言うものはある訳で、余りの食感と不味さに耐性を貫通したのかと疑うレベルだった。はみはみは、直ぐ様水を『クリエイトウォーター』で召喚して飲んだ。余りに勢い良く飲むのでむせてしまっている。そんな様子を見てリムルはシオンをじっと見る。逆に、シオンの料理センスが壊滅的なのを知っているベニマルとハクロウ、ソウエイは、はみはみの反応に驚いている。なんせ、自分達が食べたら気絶する程の料理を咽てるとは言え、意識を保っていることにだ。

 

これを見たリムルは決断した。

 

「シオン。これから料理をするときは、ベニマルの許可を得てからするように」

 

その言葉にベニマルはこの世の終わりの様な顔をしたが、リムルは心を鬼にして無視した。そんなやり取りをしている頃に、蜥蜴人族(リザードマン)の使者がやって来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外に出てみると、騎乗出来る蜥蜴に乗った蜥蜴人族(リザードマン)が偉そうに降りてきた。そして、開口一番こんな事を言い出した。

 

「出迎えご苦労である。吾輩の"名"は"ガビル"である!お前たちにも俺の配下になる栄誉を与えよう!光栄に思うがよい」

 

突然寝ぼけた事を言い出す蜥蜴人族(リザードマン)に一同は困惑した。リグルドが思わず聞き返す。

 

「配下…と申されましてもどういった理由で?」

「何だ知らんのか?近ごろ豚頭族(オーク)の豚共がジュラの大森林を荒らしていることを。お前達のような貧弱な者達を救えるのは俺だけだぞ!」

 

そう言ってガビルは目の前の者達を見渡した。ジュラの大森林の中にさも当然かのように居る魔法使いの人間(はみはみ)、筋骨隆々な小鬼族(リグルド)、青少年や達人の気配を滲ませる鬼人族(ベニマル・ソウエイ・ハクロウ)、可憐な鬼人族(シュナ)、そしておっぱいがおっきな鬼人族(シオン)。ガビルは思わず、そのたわわな果実を見る。そして、その果実に何故か抱えられているスライムを。

 

貧弱どころか強靭そうな面々を見てガビルは困惑するが咳払いして続ける。

 

「聞けばここには、牙狼族を手懐けた者がいるそうではないか?その者は名乗り出ろ!特別に幹部に引き立ててやるぞ!」

 

この実力を測れないガビル(バカ)の言葉に皆が困惑する。無能な味方は敵より恐ろしいと言う。現にリグルドは困惑を隠せない。ベニマルは、さわやかな笑顔で殺意を向けている。そして、はみはみは目が死んだ様に固まっている。余程何かが気に障ったのだろう。シオンは苛立ったのか、その万力でリムルのスライムボデイが引き伸ばされる。

 

話が進まないと考えたリムルは一先、名乗り出ることにした。

 

「はあ〜っ?下等なスライムがそんな事出来るわけなかろう!そう言うなら証拠を見せてみよ」

 

何処までも上からの発言にイラッと来たリムルはランガを呼び出した。

 

ランガは大型の状態でガビルの前に姿を現す。ランガは『威圧』をしながら聞く。

 

「我が主からお前達の話を聞けと命を受けた。話してみろ」

 

ランガの巨体にガビルの部下は狼狽えるが、ガビルは臆することなく言う。

 

「おおっ!貴殿が牙狼族の族長殿か?吾輩、蜥蜴人族(リザードマン)の戦士団の長であるガビルと申す。どうだろう、下等なスライムより吾輩と手を組まぬか?」

 

そんな事を言ってきたものだから大変。はみはみとリムルは『お前がこの中で一番弱いよ』と言ってやりたい。

 

「トカゲ風情が生意気な…我は既に牙狼族では無い」

 

そう言ってランガは、怒りを顕にするがガビルは自惚れているせいでその様子が分かってない。はみはみは、ちょっとイラッと来たのか、はたまた紅魔族故の喧嘩の青田買いなのかガビルの前に立つ。

 

「…何故人間の女がここにいるのだ?貴様などお呼びではないわ!」

「私と貴方で勝負をして私が負けたら牙狼族の皆さんがあなた達の配下になる。私が勝ったらこのまま帰ってください」

「…承った!その勝負受けて立つのである!」

「見届人はこのランガが務めよう。それでは、試合開始!」

 

そう言った瞬間、はみはみは鍛え上げられた技術(アーツ)の《瞬動法》で急速接近。魔法を使うことなく首を"トンッ"としてガビルは眠りについた。

 

僅か1秒程の出来事だった。そして、直にリムル達の方へ戻っている。ガビルが聖人と渡り合えるはずも無かった。

 

リムルは、ガビルが一瞬で倒されたことに慌てる蜥蜴人族(リザードマン)達に告げた。

 

「おい!勝負はついたぞ!配下にはならないが、豚頭族(オーク)と共同で戦うのなら検討する。だから、さっさとソイツを連れて帰れ」

 

そう言うと、蜥蜴人族(リザードマン)達はそそくさと立ち去っていった。

 

因みにだが、はみはみの提案にランガとリムルが何も口出しして来なかったのは、事前に『魔法通信』で相談してあったからだ。リムルは、はみはみの力を信頼してるし、ランガは『自分の主が問題無いと言うならそれに従うまで』と考えた。つまりは、はみはみは事前に許可を取っていたのだ。

 

もし、この場を見ているある男がいたなら、『こういう報連相を何処ぞの駄女神(アクア)にも見習って欲しい』と保護者なら言うだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

リムルは、主要な者達を集めて会議を行うことになった。そんな中、ソウエイが立ち上がった。

 

何でも、ソウエイの分身体に接触した者がリムルに会いたいと言ってきたのだ。ソウエイはAランクオーバーの強者だ。分身体とは言え接触出来たと言うことはそれに準ずる強者と言うことだ。

 

ソウエイも驚いている。その相手が樹妖精(ドライアド)だと言うのだから無理もない。樹妖精(ドライアド)は『森の管理者』と呼ばれ、Aランクに当てはまる。リムルも面会を許可すると、数秒後に北欧系の美女が現れた。

 

「はじめまして。魔物を統べる者よ。私は樹妖精(ドライアド)の"トレイニー"と申します」

 

滅多に姿を現さない樹妖精(ドライアド)に皆が緊張しているが、トレイニーの話を纏めるとこうだ。

 

豚頭族(オーク)の軍勢が大鬼族(オーガ)の里を滅ぼし、蜥蜴人族(リザードマン)の領域に接近していると言う。そして、いつ樹人族(トレント)の領域に接近するか分からない。樹妖精(ドライアド)は戦闘に秀でているが、樹人族(トレント)はその限りではなく、全員を守りきれる訳では無いからだ。

 

そこで、現状最も力を持つリムルの元を訪れたと言う事だ。

 

リムルはこの話を保留にして報告を聞くことになった。

 

「所でソウエイさん。私の懸念は当たりましたか?」

「はい。姫様も同様の事を仰っていたので、もしやと思い調べてみましたが…その通りでした」

 

そう言うと、シュナは「やはり…」と呟き、はみはみは天を仰いだ。リムルが報告する様に言うと、ソウエイは言う。

 

「御二方が懸念される事項を調べてみたのです。それが、豚頭族(オーク)の兵站です」

 

豚頭族(オーク)とは本来繁殖を繰り返す魔物だ。しかし、20万もの大軍を擁するまでに成長することは有り得ない。それは、よっぽど統率に秀でた魔物が現れたと考えるべきなのだ。勿論、そんな大軍を支える兵站も軍略の上では必須だ。

 

大鬼族(オーガ)の里の跡に遺体が1つも無かったのです。大鬼族(オーガ)豚頭族(オーク)…両方共…」

「では、豚頭帝(オークロード)の存在が確定的でしょうね」

 

そう言うはみはみに視線が集まる。この場にいるものは、はみはみが『紅魔の勇者』である事を知っている。故に、その発言力は大きい。

 

豚頭帝(オークロード)はユニークスキル『飢餓者(ウエルモノ)』の効果で仲間の感情すら喰らうので異常に統率力が高いのは知ってると思う。だけど、それは副次効果でしかないの。『飢餓者(ウエルモノ)』は仲間に強烈な飢餓感を抱かせるの。だから動く者を見境無しに喰らっていく。それは仲間も例外ではないの。仲間の豚頭族(オーク)も動かなくなると生きていようと喰らっていく。それが、大鬼族(オーガ)の里で死体がなかった理由だよ」

 

その言葉に皆は言葉を失った。地球やはみはみの世界にあった倫理観が比較的薄いこの世界でも、共食いは忌避される。当然だ。かつてイングラシア王国にいた人食いの異端児が処刑されかけた様に、この世界でも共食いは忌避されるのだ。それを20万の規模の軍勢が敵味方関係なくしてくるのだ。恐れるのも無理は無い。

 

「そして、このユニークスキル『飢餓者(ウエルモノ)』は、喰らった対象の能力を低確率で奪うことが出来る。故に、様々なスキルを持つ魔物相手では危険な能力だ。過去に発生した豚頭帝(オークロード)は全て、そう言ったスキルを持たない人間が討伐している。彼等は、技術(アーツ)を駆使するからね。技術(アーツ)は奪う事は出来ない」

 

はみはみの言葉に皆が沈黙する。だが、気負いはしていなかった。ベニマル達鬼人(キジン)は負ける気は無いとばかりに自信満々だ。

 

「それに、この森のことなら何でも知ってる森の管理者に聞いたほうが良いだろう。トレイニーさん?」

「ええ。居ますよ豚頭帝(オークロード)

 

その言葉に皆が緊迫した雰囲気になった。豚頭帝(オークロード)の存在が確実視された所に森の管理者と言うこれ以上ない信頼できるソースからの断言なのだ。リムル達は対応に追われることになる。

 

 

 

 






〜ステータス〜

名前:はみはみ
種族︰人間ー聖人
加護︰勇者の加護、闇の大精霊の加護
称号︰紅魔の勇者
魔法︰上級魔法、中級魔法、初級魔法、元素魔法、精霊魔法、神聖魔法、
技能︰ユニークスキル『厨二病』
耐性︰物理攻撃無効、状態異常無効、自然影響無効、精神攻撃耐性、聖魔攻撃耐性

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