紅魔族の異世界生活   作:味八木

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魔王ミリム

 

 

 

ージュラ・テンペスト連邦国ー

 

ベスターが仲間になった事で、竜人族(ドラゴニュート)が生産するヒポクテ草を元に作られる回復薬の生産が順調に始動し始めた。

 

ドワーフの技術では、最高品質98%の上位回復薬(ハイポーション)が限界だ。生産した上位回復薬(ハイポーション)を水で薄めて量産した下位回復薬(ローポーション)を生産している。しかし、ここでベスターが待ったをかけた。

 

ベスターはヒポクテ草を生産している封印の洞窟を見学したいと申し出たのだ。はみはみもこの機会に探検したいと言ってきたので2人はリムルと共に封印の洞窟に向かった。

 

入口ではガビルが待っており、ガビルの案内の元封印の洞窟内部を一通り見回った。だが、ベスターが地底湖を見学した時に思わぬ提案を口にした。

 

「リムル様。この地下水は魔素が豊富に含まれている様です。上位回復薬(ハイポーション)を薄める水をこの地下水に変更してはどうでしょう?」

 

その考えは無かったと、リムルは直ぐ様ガビルに上位回復薬(ハイポーション)を用意させ、地下水の水を混ぜた所、性能の良い回復薬が完成した。1つの上位回復薬(ハイポーション)から生産される下位回復薬(ローポーション)の数も増えた。

 

ベスターがソワソワしている事に気付いた、はみはみはベスターに問う。

 

「ベスターさん?どうしたんです?ソワソワして」

「いえ、この洞窟は秘密の研究所の様な雰囲気があるので…」

「それなら、ここに研究室を作るか?」

「良いのですか?!」

「ああ。けど、大丈夫か?護衛を付けるとは言えここにはB+ランクのエビルムカデが出ることもあるぞ」

 

リムルが注意すると、ベスターは胸を張る。

 

「私、こう見えて魔導を嗜んでいます。自衛位ならお任せ下さい」

 

本人が了承したので、洞窟内部に研究室を作る事になった。洞窟内部と言う事もあって保温性に優れた部屋が完成した。中々快適そうである。しかし、問題は中央都市リムルと封印の洞窟の行き来だ。そこは、ベスターとはみはみが解決してくれた。

 

「リムル様。洞窟の外に転移魔法陣を設置するのはどうでしょう?これで、移動が楽になると思います」

「転移魔法陣は便利ですよね。私の魔法『テレポート』は3つの地点までしか転移出来ませんから。《空間移動》は別ですが」

 

リムルは早速、転移魔法陣と《空間移動》を教えてもらった。『テレポート』は、使い勝手が悪いらしく《空間移動》が使えるなら覚える必要は無いとの事でリムルは覚えなかった。

 

リムルは、ベスターに魔物が街に現れない様に釘をさした上で使用を許可した。リムルが渡した完全回復薬(フルポーション)と魔鋼を熱心に研究するようだ。また、シュナやクロベエと熱心に議論していた。リムルは権力は人を駄目にすると、つくづく思った。人はやはり好きな事をしてナンボだな!と。

 

こうして、ベスターは時間と共に仲間と打ち解けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

魔王ミリムは、ジュラの大森林に突如として生まれた街を上空から観察していた。

 

綺麗に区画が分けられ、住んでいる魔人はどれもそこらの魔物より魔素量(エネルギー)が多い。ユニークスキル『竜眼(ミリムアイ)』を用いて観察する。驚くべき事に全員が名持ち(ネームド)であった。これがミリムには信じられなかった。

 

名付けは自身の力の一部を与える行為だ。与えた力は下手をしたら二度と戻らない。魔王であるミリムは力の流出を嫌う。

 

今回の調査に出向いたのは単なる暇潰しだ。ミリムが本気で動いたとなれば、フレイは兎も角としても、カリオンとクレイマンは怒る事だろう。まあ、襲われても負ける可能性は無きに等しいが。

 

しかし、暇潰しに来てみれば思い掛けない収穫があった。ミリムはこの町を作った者に興味が出てきた。ミリムは部下を作るつもりなど微塵もなかった。カリオンとクレイマンの悔しがる顔を見て、満足したら戦力は手放すつもりだった。

 

だが、ミリムは見つけてしまった。この街に住む魔物の質の高さ、それを統べる魔物。彼女の眼は逃さない。この街で一番魔素量(エネルギー)が多い覚えがある持ち主と、2番目に多い持ち主を。

 

彼女は、行動を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

リムルと、はみはみは街の道路を歩きながら会話をしていた。その時だった。はみはみがいきなり駆け出したのだ。リムルは何事かと思ったが、膨大な魔素量(エネルギー)質量体が街に向かってきたのだ。

 

はみはみは、近くの丘に聖人の身体能力で退避する。後ろにリムルが続くが、膨大な魔素量(エネルギー)の質量体はリムルの元に向けて真っ直ぐ向かって来る。

 

そして、大地を抉って着陸した物体は人だった。その人はしっかりと2本の足で大地を踏みしめており、着陸に失敗した訳では無いようだ。その人物は、口を開く。

 

「はじめまして!ワタシの名はミリム・ナーヴァ!魔王の一人にして、破壊の暴君(デストロイ)の異名を持つ者なのだ!お前達が一番強そうだから挨拶に来てやったぞ!」

 

リムルは心の中で『魔王かよ!』と突っ込む以前に、聞き覚えのある名乗りに違和感を覚えた。彼は前世の知識から魔王本人ではなく四天王とか、部下を送り込んでくるものだと思っていただけに、心底驚いたのだ。しかし、更に驚いたのは、はみはみの反応だった。

 

「おや、ミリムじゃないですか」

 

と、知り合いどころか親しい雰囲気で声を掛けたのだ。

 

「やはり、はみはみもいたのか!懐かしい気配もあったので、もしやと思ったが、やはりお前だったか!」

 

どうやら、親しい間柄の様だとリムルは見抜いた。まあ、ミリムの名乗りを聞けば当然である。

 

「所で、はみはみよ。お前の隣にいるスライムは何なのだ?」

「ああ、彼はこの街を治めている名持ち(ネームド)のスライム。リムル=テンペストだよ」

「あ〜。ご紹介に与りました。リムル=テンペストと申します。よく私が強いとわかりましたね」

 

そう言うと、ミリムはツルペタな胸を張って言う。

 

「ふふん!私にとっては造作もない。この眼、『竜眼(ミリムアイ)』は相手が隠す魔素量(エネルギー)まで測定出来るのだ!まあ、私の前では弱者の真似など出来ぬと思え!」

 

リムルは厄介な事になったと思った。リムルの『解析鑑定』で調べなくても魔素量(エネルギー)は相手が上。技能(レベル)も上だ。そんな事を分析している内に、はみはみがミリムに問う。

 

「要件だと?挨拶に来たんだけど?」

 

場を沈黙が支配した。しかし、その時だった。

 

「はぁっー!」

 

そう言って、シオンが大太刀である"剛力丸"を振り下ろした。それと同時にランガはリムルを乗せて街に駆け出した。

 

リムルの部下達は、ミリムを脅威と見なして排除しにかかったのだ。はみはみは、ミリムと知り合いと見なされて置いてかれている。まあ、聖人の脚力なら問題無いが。魔王ミリムの強さを知る、はみはみからすれば、彼等の行動は無謀だ。だが、それでも排除に動くのは偏に、リムルへの忠誠心の賜物だろう。

 

「おい、ランガ待てって!はみはみ置いてってる!」

「待てません!お許しを!」

 

シオンがリムルが退避する後ろ姿を確認すると同時にミリムが声を掛ける。

 

「なんだ?ワタシと遊びたいのか?」

 

そういった後に、ミリムは大太刀を無造作に放り投げる。それにシオンも引っ張られる。そこにフォローに入るようにソウエイが『操糸妖縛陣(そうしようばくじん)』で拘束し、ベニマルが『黒炎獄(ヘルフレア)』を打ち込んだのだ。

 

「これで倒れてくれれば良いが…」

「ベニマル!それフラグ!フラグだから!」

「ふら…なんです?」

 

はみはみがフラグとベニマルを注意するがこの世界にフラグなんて言葉はない。正確にはあるかもだが、魔物で人間と接点を持たないベニマルが知る筈もない。

 

「わっーはっはっはっはっ!これ程の攻撃、ワタシ以外の魔王達なら耐えられなかったやも知れぬぞ!だが、ワタシには通用しないのだー!」

 

だが、無傷で出て来たミリムはそう言って、ミリムは少しだけ妖気(オーラ)を解放した。その余波でベニマル達は弾き飛ばされる。ただ、はみはみのみが平然としていた。

 

「ミリム!ここからは私が相手です!」

「はみはみか!お前となら楽しめそうだ!」

 

魔王と勇者のお遊びが始まりそうな所に、リムルが割ってはいる。

 

「待て待て待て待て!ここら一帯吹き飛ばすつもりか!」

「まさか、ちゃんと手加減するよ」

「その通りだ!手加減は弁えているのだ!」

「そういう問題じゃない!」

 

リムルがゼーゼーと精神的に疲れるが、はみはみがツッコミを入れる。

 

「てか、リムル。君は私を置いて逃げてたじゃないか」

「あれは、ランガ達が勝手に…って!そうじゃない。俺がミリムの対応をしてもいいか?」

「構わないが…策はあるのかい?」

「勿論!」

 

ミリムは自身が持つユニークスキル『竜耳(ミリムイヤー)』で話を聞いていた。

 

「ほう?お前が相手をするのか?」

「ああ。もとを辿れば俺の部下が原因だからな。魔王ミリム。俺の攻撃を受けてみる気はあるか?」

「わーはっはっはっはっ!いいだろう!面白そうなのだ!ただし、お前が負ければお前達はワタシの部下になると約束するのだぞ」

 

(部下にするだけ?意外に優しいな…)

 

《告。個体名ミリムの魔素量(エネルギー)は測定可能な下限段階でマスターの10倍以上です》

(分かってるよ。ただ、大人の交渉術をするだけだ)

 

リムルは手元に黄色い物体を集める。ミリムはそれを脅威にならないと判断して微動だにしない。リムルはその物体をミリムの口元に持っていき、飲み込ませた。

 

ミリムはそれを飲み込んで1言…

 

「何なのだこれは!こんな美味しいもの、食べたことが無いのだ!」

(よし!成功した!)

 

そしてリムルは手元に黄色の物体を集めて悪い顔で言う。

 

「どうした?魔王ミリム?今俺を倒すとこれは二度と手にはいらないぞ…」

「ぐぬぬぬぬ。しかし、負けを認めるなど…」

「おおっと!残りが少なくなってきたぞ!」

「なぬ!待て待て!提案!提案がある!引き分け。この勝負引き分けはどうだ!」

「いいだろう。その提案を受けよう」

 

そうして、和解は成立しリムルはアピトと言う蜂型の蟲型魔獣(インセクト)が集めた樹人族(トレント)の集落で集めた蜂蜜をミリムに手渡した。ミリムは大はしゃぎで蜂蜜を手ですくって舐めていた。

 

この様子を見て部下達は『さすリム』をしていた。

 

場所を移して、リムルは問う。

 

「そう言えば、はみはみと知り合いらしいけど、どんな関係なんだ?」

「ミリムと知り合ったのは何年前でしたかね…私が『紅魔の勇者』と呼ばれて数十年が経った頃でしたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ージュラの大森林ー

 

はみはみは1人で悠々自適に生活していた。別に勇者を引退した訳では無い。手に負えない魔物が出た時は現場に出向いている。

 

彼女は勇者を務める傍らで本を沢山読みたいと思っていた。なので、各国から本を集めて自分だけの図書館みたいなのを作っていた。そんな時、はみはみは感じたことも無い魔素量(エネルギー)が向かっているのを感知した。

 

急いで家を出ると同時に轟音が鳴り響き、家の前にクレーターを作った。その中から出てきたのが魔王ミリムだったのだ。

 

「初めまして!ワタシは唯一人の竜魔人(ドラゴノイド)にして破壊の暴君(デストロイ)の異名を持つ、魔王ミリム・ナーヴァだぞ!」

 

これを聞いたはみはみは、当然反応する。

 

「カッコいい名乗りですね!では、私も名乗りましょう!」

 

そう言って、『ウィンドブレス』で風を巻き起こし、マントを靡かせる。そうして、帽子のつばを掴んで言う。

 

「わが名は、はみはみ!紅魔族随一の魔法の使い手にして、『紅魔の勇者』と呼ばれしもの!」

 

それを聞いたミリムは、「何だ?ワタシの真似か?」と言う。

 

「違いますよ!これは、我が一族、紅魔族に伝わる伝統的な挨拶です。初対面の人にはこうやって挨拶するんです」

「そうなのか。それで、改めて聞くがお前が『紅魔の勇者』で間違いないか?」

「ええ。とは言っても自分から勇者を名乗ったつもりはありません」

「なんだ。勇者と名乗った馬鹿者かと思ったが違ったのか」

「異名は最近付けられましたが、勇者の資格自体は何年も前から持ってますよ」

「なぬ!それは本当か?!」

 

はみはみが自ら名乗った訳ではなく周囲が囃し立てただけだと思い、ガッカリしたミリムだったが、はみはみのカミングアウトに驚く。

 

「ええ。闇の大精霊をラミリス様から貰ってますよ。ねっ?」

『その通りです。魔王ミリムよ。私は主を勇者として認めた。ただ、卵は孵化してはいないがね』

 

はみはみから出てきたのは、イケメンな長身の男だ。髪は黒く、モテること間違いなしだ。まあ、精霊に性別は無いのだが…

 

「闇の大精霊が居るのなら、勇者を名乗る資格はあるわけだな。"勇者を名乗る者には因果が巡る"から馬鹿者を懲らしめに来たのだが、思わぬ収穫があったものだな!」

 

わっーはっはっはっはっ!と笑うミリムとは対照的にはみはみは対応に困っていた。勇者は魔王と戦う定めにある。実際、はみはみを転生させてくれた女神アクアも勇者候補となる日本人を多数送り込んでいる。女神アクアとしては、魔王を討伐して欲しいから送り込んでいるのだから当然だろう。

 

だが、この世界と前の世界の魔王は別人である。と言うか、魔王が10人いる時点で違う。女神アクアの思惑通り討伐をするべきか悩んでいた。理由としては、魔王ミリムの魔素量(エネルギー)は自分の2倍以上だ。魔王ミリムは古代から生きる魔王である以上技術(レベル)も上だ。勝てるか悩んでいた。

 

「所で、はみはみよ。ワタシと遊ばないか?」

「遊ぶって何で?」

「勿論、戦うのだ!最近歯応えのあるヤツが少なくて暇なのだ!」

 

この提案に、はみはみは悩む。別に戦ってもいいがメリットが無い。

 

「うーん。ゴメンけど…「駄目なのか?」ッ!」

 

ミリムが目が潤むが、それとは別に拳に大量の魔素量(エネルギー)が集まっているのを確認したはみはみは、前言撤回する。

 

「分かった!分かった!戦うよ!」

「そうか!嬉しいのだ!」

 

何とかミリムを落ち着かせることには成功したが、家を吹き飛ばされたら堪らない。なので、条件をつけることにした。

 

「ですが、条件があります」

「なんだ?」

「家や周りの木々が吹き飛ばない程度に、手加減する。これが条件です」

「分かったのだ!」

 

はみはみは、転移前から愛用している杖ーちぇちぇ棒ーを取り出した。それは、マナタイトが取り付けられた逸品であり、はみはみの進化に伴って神話級(ゴッズ)に進化している。普段は使わないのだが、魔王ミリム相手ではそんな心配は無用だろう。

 

ミリムは不敵に笑い、一瞬の静寂の後、両者が衝突した。

 






〜ステータス〜

名前:はみはみ
種族︰人間ー聖人ー
加護︰仮面の紋章、闇の大精霊の加護
魔法︰上級魔法、中級魔法、初級魔法、元素魔法、精霊魔法、神聖魔法、核撃魔法
技能︰ユニークスキル『厨二病』
耐性︰物理攻撃無効、状態異常無効、自然影響無効、精神攻撃耐性、聖魔攻撃耐性

ちぇちぇ棒の詳しい話は後の話で載せます。

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