紅魔族の異世界生活   作:味八木

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暴風大妖渦

 

 

 

ージュラの大森林ー

 

夜遅く、魔物蔓延るこの森で焚き火をしている1団がいた。その1団は統一された鎧を身に纏っており冒険者と言う風貌ではない。また、彼らは人間の軍隊でもない。

 

彼らは魔王カリオン配下の黒豹牙フォビオの部隊である。彼らは魔王カリオンよりジュラの大森林で確認された魔人を勧誘するべく彼らを派遣していた。

 

しかし、高圧的な姿勢が良くなかったのか魔王ミリムに攻撃され、先鋒からも悪印象を持たれた彼らは唯一人も勧誘に成功することはなく街を去っていた。

 

これに一番腹を立てたのはフォビオであった。彼は魔王カリオンに忠誠と崇拝を念を抱いている。主の命令1つ果たせず帰還するのは彼のプライドが許さなかった。何より、魔王ミリムに自分も、その主である魔王カリオンをも侮辱されたと感じたのだ。

 

それ故に、帰ることなく森の中で野営を行っていた。フォビオの苛立ちをぶつけていた。

 

「そもそも、何故豚頭帝(オークロード)の様な雑魚が魔王に抜擢されるんだ!新しい魔王が必要なら俺が…」

 

彼は目を付けられていた豚頭帝(オークロード)と新しくカリオンが目を付けたスライム率いる魔人達より自分の方が重用されるべきだと考えていたのだ。

 

「オーホッホッホッホッ!その通りです。フォビオ様」

「誰だ!姿を見せろ!」

 

突如として人を馬鹿にしたような笑い声が響いた。その声の主は、あっさりと姿を見せた。その声の主は怒りの表情をしたピエロの仮面を被った太った男の魔人だった。

 

「始めまして。魔王カリオン配下、三獣士の1人である黒豹牙フォビオ様。私は中庸道化連の怒った道化(アングリーピエロ)のフットマンと申します」

 

そして、その背後からひょこり顔を出したのは、これまた涙目の仮面を付けた小柄な女魔人だった。

 

「そう警戒しないで!中庸道化連ってのは謂わば何でも屋!アタイは涙目の道化(ティアドロップ)のティア!」

 

フットマンとティアと名乗る魔人はフォビオに提案する。

 

「フォビオ様の話を聞く限り、私達も同意見です!弱い魔物が魔王になるなど腹立たしい限りです。フォビオ様が新しい魔王になられるなら我々が少しでもお手伝いしたく存じます」

「フォビオ様!話に乗ってはいけません!」

 

フォビオの部下である猿の獣人が止める。しかし、フォビオは話を続けるように促した。

 

「私どもはフォビオ様にあなた様が魔王になる事が出来る方法をお教えしようと思うのですが…いかがでしょう…」

 

フォビオの部下が、フォビオをみる。フォビオを考え、決断した。

 

「その提案をうける」

「フォビオ様!」

「カリオン様に迷惑は掛けられねぇ。お前達はカリオン様にフォビオはカリオン様の元を離れたと伝えておいてくれ」

 

そう言って、フォビオは部下たちを置いて怪しい2人の魔人の手を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

フォビオは中庸道化連を名乗る2人の魔人と共にジュラの大森林にある小さな洞窟に訪れていた。

 

「着きました。ここに、フォビオ様を魔王へと押し上げてくださる者がいます」

「者だと?何だそれは?」

「ここには、かつて勇者に封印された厄災…暴風大妖渦(カリュブディス)が眠っています」

暴風大妖渦(カリュブディス)だと?」

 

フットマンは頷いて続ける。

 

暴風大妖渦(カリュブディス)は無差別に暴れる怪物です。封印が弱まっていたからこそ、強い怨念の様な物を多量に発していました。それが大好物な私達にこそ見つけられたのです。そう、フォビオ様。あなたのように」

「………」

 

フォビオが沈黙する。そして、「暴風大妖渦(カリュブディス)が俺に従うのか?」といった。

 

フットマンは否定する。

 

暴風大妖渦(カリュブディス)は知性のない怪物です。しかし、精神生命体である以上、封印が解け、この世で活動するには依代を必要とします」

「なるほど…まさか!」

 

フォビオはフットマンの言葉で察した。

 

「そう!フォビオ様が暴風大妖渦(カリュブディス)の依代となり、完全な同一化をするのです!」

「そうなれば!魔王ミリムに一矢報入れるんじゃないかな!?」

 

その言葉は甘い誘惑だった。今までカリオン以外に負けたことがなかったフォビオは彼に忠誠を誓っていた。しかし、フォビオの自信は自分より幼い見た目の魔王ミリムに打ち負かされた。故に、強さを求めミリムに一矢報入るつもりのフォビオには魅力的な提案だ。しかし、懸念もある。

 

「封印はどれくらい持つ?」

「う〜ん。長くは持たないと思うよ。復活しちゃったら手当たり次第に破壊を齎すだろうね!」

 

その言葉が決め手となったのか、フォビオは洞窟内部へと入っていった。

 

それを見送るフットマンとティア。2人は笑う。

 

「流石は脳まで筋肉で出来たカリオンの部下ですね」

「うん!言い訳を色々と考えたけど無駄になったね」

「まあ、任務は完了と言う事で帰還しましょう」

「あ…そう言えば、念の為に用意しておいた下位龍族(レッサードラゴン)の死体、無駄になっちゃったね」

「持ち帰っても荷物になるだけです。その辺に捨てておきましょう」

「そうだね!」

 

そう言ってティアとフットマンは下位龍族(レッサードラゴン)の死体を捨てる。

 

下位龍族(レッサードラゴン)は自由組合が指定するランクでB+からAランク程の強さがある。それが、たくさんいるとなれば、Aランク冒険者ですら苦戦しかねない強さだ。だが、2人はそんな下位龍族(レッサードラゴン)をゴミのようにしている。ドラゴンだけあってその素材だけで財産を築ける程の価値があるが、2人は金には興味はなく暴風大妖渦(カリュブディス)の封印の洞窟の側に大量に捨てられていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ージュラ・テンペスト連邦国中央都市リムルー

 

リムルは荷台に槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)を載せてやって来たエレン達とミリムを出迎えていた。

 

「ミリムちゃんって凄いんですよ!魔物の場所をすぐに察知して倒しちゃうんです!」

「わーはっはっはっはっ!この程度造作もないのだ!」

 

リムルとはみはみは苦笑するが、荷物持ちとして荷台を運んでいたガバルとギドは疲れたように腰を曲げたりして運動をしている。

 

「あー疲れたぜ!こうも疲れると一杯なりたくなるよな!」

「そうでやんすね!風呂で一杯やりやしょうぜ!」

 

男性陣が今後の予定を組んでニヤケ顔が出そうな時だった。

 

はみはみと、ミリムが何もない空間を警戒し、それに続けてリムルが、そしてシオンが警戒する。

 

「何奴!」

 

シオンが声を荒げると現れたのは樹妖精(ドライアド)であった。

 

樹妖精(ドライアド)でやす…」

「初めて見た…」

樹妖精(ドライアド)樹妖精(ドライアド)がいる…」

 

エレン達が驚き、フューズは固まっている。まあ、Aランクの魔物が現れたのだから無理はない。しかし、リムルは気にせずに聞く。

 

「トレイニーさん…ではないな。どうしたんだ?そんな殺気立って…」

「始めまして盟主様。私はトレイニーの妹のトライアと申します」

 

自己紹介をすると、トライアと名乗る樹妖精(ドライアド)はすぐに要件を述べた。

 

「厄災が近づいております。厄災級(カラミティ)モンスターである暴風大妖渦(カリュブディス)が復活いたしました。かの大妖に地上戦力では無意味、至急、航空戦力を整えるべく進言に参りました。かの大妖の目的はこの地である模様…」

 

この言葉に有識者は恐れ、リムルを筆頭に知らない者は顔を傾げている。

 

暴風大妖渦(カリュブディス)だと?!その様な魔物が何故この街へ!」

 

固まっていたフューズが声を荒げる。リムルとしては非常に気になったが、取り敢えず立ち話も大変なので執務室に場所を移すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

暴風大妖渦(カリュブディス)は昔より破壊と混乱を齎してきました。流石は暴風と水を司る暴風竜ヴェルドラ様の申し子と言えるでしょう」

「ヴェルドラの申し子ってどういう事だ?」

 

リムルの質問に答えたのは、トライアではなくはみはみだった。

 

暴風大妖渦(カリュブディス)はヴェルドラの魔素溜まりから生まれた破壊の化身だよ。そして質が悪い事でも有名だ」

 

はみはみが苦々しい表情をするので、リムルは質問してみた。

 

「はみはみ、暴風大妖渦(カリュブディス)と何かあったのか?」

「ああ。アイツは私の名乗りの最中に攻撃して来てね。腹が立ったからダメージ覚悟で爆裂魔法を叩き込んでやったことがあるんだ。あれは今思えば失敗だった…」

 

はみはみが言うには、紅魔族の名乗りをしている最中に攻撃をして来た暴風大妖渦(カリュブディス)に腹を立て、爆裂魔法とか言う神や悪魔、精霊にも大ダメージを与える人類最強の魔法を使ったらしい。結果として暴風大妖渦(カリュブディス)は倒せたらしいが、精神生命体である暴風大妖渦(カリュブディス)は年単位の時間を掛けて復活してしまったとの事だ。

 

その点、はみはみとは違う勇者が施した封印は理にかなっていると言えるだろう。リムルは暴風大妖渦(カリュブディス)を知っている、はみはみから出来る限りの情報を集めようとした。

 

「う〜ん。まず、暴風大妖渦(カリュブディス)にはエクストラスキル『魔力妨害』がある。これは魔素の動きを阻害するスキルだ。これは暴風大妖渦(カリュブディス)を中心に魔素の動きを阻害するから魔法や魔素を介するスキルの威力は低くなると思ってもらっていいよ。他にも、暴風大妖渦(カリュブディス)は『魔物召喚』(サモンモンスター)空泳巨大鮫(メガロドン)と言うAー相当の空飛ぶ鮫を異界から召喚する。そして、一番危険なのは暴風の乱鱗雨(テンペストスケイル)と呼ばれる全身の鱗を飛ばす攻撃だ。これは地形すらも変形する威力を誇るよ」

 

トライアの話では、空泳巨大鮫(メガロドン)も何故か付近にあった下位龍族(レッサードラゴン)の死体に受肉したと言う。これで数時間で消滅する空泳巨大鮫(メガロドン)が強化された状態で常に活動可能になったという。

 

そして、戦力としては関係ないが、暴風大妖渦(カリュブディス)は暴風竜ヴェルドラから生まれたのなら、リムルとは従兄弟の関係だ。それだけに、暴風大妖渦(カリュブディス)の接近の理由は、リムルは胃袋にヴェルドラを収納している事を悟られたと考えた。しかし、確かめる手段は無いので、対処法を考えることにしたのだが…

 

「フフン!ワタシを忘れてはいないか!暴風大妖渦(カリュブディス)などワタシが蹴散らしてやる!」

「私も前の借りを返してやります!」

 

ミリムが普段着として使っていた露出の少ない服から一転、魔法換装(ドレスチェンジ)でも使ったのか何時もの露出の多い服に変わっている。はみはみは名乗りの最中に攻撃して来た借りを返す気で満々だ。リムルはその手があった!と、飛びつこうとしたのだが…

 

「いえ、その様な気遣いは不要です。これはこの街の問題ですので」

(おい!)

「そうですよ。親友(マブダチ)だから困った時に何でも助けを求める理由にはならないのですよ」

(いや、今が一番助けを求めるべきでしょーが!)

 

シオンとシュナの配慮と言う名の余計な気遣いにミリムと、はみはみはリムルを見つめるが、リムルは内心涙目になりながらも精一杯の虚勢を張って自信たっぷり風に却下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、集まった戦力は以下の通りだ。

 

総大将…リムル=テンペスト

秘書…シオン

リムルのペット…ランガ

大将…ベニマル

ベニマル率いる魔法軍団

 

指揮官…ハクロウ

ハクロウ指揮の狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)

 

航空部隊…ガビル

ガビル指揮下の龍人族(ドラゴニュート)

 

工作部隊兼支援部隊…ゲルド

ゲルド指揮下の…猪人族(ハイオーク)

 

諜報部隊…ソウエイ

ソウエイ指揮…ソーカ、トーカ、ナンソウ、ホクソウ

 

援軍…武装国家ドワルゴンより

騎士団長ドルフ率いる天翅騎士団(ペガサスナイツ)

 

特別顧問…はみはみ

 

はみはみは、直接戦闘に参加しないかわりに対暴風大妖渦(カリュブディス)の顧問として参加することになった。

 

たいするは、

 

暴風大妖渦(カリュブディス)…1体

空泳巨大鮫(メガロドン)…10数体

 






〜ステータス〜

名前:はみはみ
種族︰人間ー聖人ー
加護︰仮面の紋章、闇の大精霊の加護
魔法︰上級魔法、中級魔法、初級魔法、元素魔法、精霊魔法、神聖魔法、核撃魔法
技能︰ユニークスキル『厨二病』
耐性︰物理攻撃無効、状態異常無効、自然影響無効、精神攻撃耐性、聖魔攻撃耐性 

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