ージュラの大森林リムルの街ー
日本の暦で8月、お盆の時期になった。お盆とは簡単に言えば死者の霊を迎え、祀ることだ。リムルの街を見渡せる丘に賽の河原の様に積み上げられた石がある。
その横には見ることは出来ないが
彼女はリムルによって捕食され、リムルの前世。三上悟が住んでいた日本の景色の中で眠ることを選んだ。あれから数ヶ月。お盆となり、あの世から帰ってきた彼女の魂は、恩人である
生きている時に訪れた街はテントが張られ、土道だった小さな集落としか呼べない物は、今や彼女の記憶にもある日本風な建造物を交えつつ、ハイカラな街に変貌していた。
さらに驚いた事がある。
そして、彼女の恩人である
(なんだかちょっと恥ずかしい)
その事が、彼女にとっては少し恥ずかしかった。
彼女が服屋に飾られたスライムTシャツを見ていた時だった。
「うわぁっー!」
そう言って表を見ると、そこにはバニーガール姿の自分(リムルの擬態)が表を頭を抱えながら走っていた。
「なんで毎回こんな服なんだよー!」
「よくお似合いですよ!リムル様」
「まだ服はありますよ!」
その後ろを見覚えのない女性2人が追いかけている。しかも、彼女達の手にはこの世界で何度か見たメイド服と、見覚えのない布面積が少なく、真ん中に『りむる』と書かれた服?があった。
「やだー!」
そう言うリムルの姿に、まるで自分が着ているかのような錯覚を受けて頬を真っ赤にして恥ずかしがるシズの姿があった。幸いなことに彼女のことを誰一人として認識できていなかったことが唯一の救いだろう。
◆
「というわけで、明日と明後日はお盆休みという祝日とする」
リムルは街の皆の前でそう告げる。当然、"お盆休み"という行事を知っているのは元日本人のリムルと、はみはみだけだ。
「お盆休み?なんすかソレ?」
「ご先祖様の霊を祀り、一族の絆を確認する日だ」
(分かりやすい例えですね。これなら、皆も理解しやすいでしょうね。けど…)
説明を聞いて、はみはみはそう考える。
「うちは歴史の浅い街だが、暮らしている皆には歴史があるだろう?」
「確かにな」
「一年に一度くらいは一族で集まって宴を開き、種族の歴史や絆を兄弟や親子と確認してくれ」
リムルは続ける。
「この街に住む者達は皆家族だ。自分達の絆を知ったら、他の者たちにも交流を通して絆を深めてくれ」
皆が"さすリム""さすリム"をする。
(どっちかと言えば"宴"の方に主軸が向いている気が…)
はみはみは懸念と言うか不安と言うかそんな形容しがたい感情を抱いていた。
「所でリムル様、お盆ってなんすか?」
(ぅ…俺も知らない…えっと…)
「アレだよ!お盆に料理を載せて皆で楽しむ、的な!」
"さすリム"が止まらない中、リムルは
(異世界の人…と言うか魔物は宴が好きすぎるのでは?)
なんて考えていた。
◆
はみはみは、前から発注していた家兼お店の建物の受け渡しに訪れていた。
その外観は和洋折衷のような外観であり、看板には『ウィズ魔道具店支部』と書かれていた。完全に本人の同意がされていないが、特許などの利権がないこの世界では何を書いても合法である。
はみはみとしても、彼女とは懇意にしていたのも理由の一つだろう。
中に入ると、はみはみが自作した家電に似た魔道具や回復薬、自作ポーションなどを販売している。だが、決定的に違うのはウィズ魔法具店のガラクタ道具を販売していない点だろう。だが、道具の説明欄が厨二臭いのは御愛嬌だろう。
2階は、はみはみの魔道具及びポーションの製作作業場。寝室などの各種生活インフラが完備されている。そして、つよい希望で和室が一室に用意されている。
はみはみは様子を見て自身の希望が叶えられているのを見てとても満足するのだった。
◆
ジュラの森に流れる川の中流でハクロウとゴブタは釣り糸を垂らしていた。
「せっかくの休みなのに師匠と一緒に釣りなんて。全然食いつかないっすよ」
ゴブタが文句を垂れるがハクロウは「お主に邪念があるからじゃ」と述べる。
「剣の道と釣りは通ずる物がある。邪念を減らし、自然と一体になる。魔力の流れに溶け込む。さすれば目の前の魚どころか敵すらも己の場所を見失うじゃろうて」
そう述べるハクロウ。だが、ハクロウが違和感を感じてゴブタのほうを見ると、そこには無残にも食い散らされたゴブタ案山子があるのみで、本人の姿はなかった。
案山子には『オサラバっす』と書かれ木の板があるのみだった。
「儂の目を欺くとは…明日からの修行の量は成長に合わせて十倍じゃな」
後日、ゴブタから一連の事を聞いた、はみはみはゴブタの成長に驚くと共にハクロウが案外負けず嫌いな事を知るのだった。
◆
テンペストの軍司令官を勤めるベニマルの執務室にリムルはやって来た。ベニマルは真剣に書類(木の板)に目を通しており、その様子からは名付け前の野武士の様な様は見受けられない。
(今や立派な軍司令官だな)
「何してるんだ?」
「部隊の編成ですよ」
「大変だな」
「平時であるからこそ、部隊の穴を見逃さないためです。それに規模も大きくなりましたし、ハクロウの扱きで皆が腕を上げてます」
そう言いながらベニマルは掃除をしている。彼は「無敵の軍団」を目指していると言うが、リムルはすっかり変わったと感じた。
「お前、前より変わったな」
「いや俺は前から同じですよ」
そう言う彼だが、シュナが掃除に部屋にやって来た事で一変する。
シュナは棚の上の埃をなぞる。それを見たベニマルは慌てて掃除をする。その様子を見て、リムルは妹には頭が上がらない事は変わらないことを実感した。
◆
ソウエイは隠密である。リムルの街の諜報を一手に引き受ける闇に生きる者だ。
彼の任務は密偵、調査、暗殺など多岐にわたる。冷酷にして無情。ただひたすらに任務をこなす男である。
そんな彼は
そんなソウエイはソーカと共にリムルの下に報告をしにきていた。その内容とはコボルトの紛争であった。西の族長と東の族長の会話内容を報告するためである。
「コボルトの会話内容を一言一句覚えているか?」
「はい」
「それならいい。西の族長と東の族長。どちらをする?」
「え?で、では東の族長を」
そう言うと、ソウエイは「フッ」と笑う。
「ツッコミ役か。よほど自信があるのだな。ボケは任せろ語尾はワンだ。」
「…はい?ですワン」
ソーカの反応を完全に無視してソウエイはリムルの執務室をノックする。
「どーぞ」
という呑気な言葉を受けて、2人は入室する。その後、報告をした彼らはリムルに大受けすることになる。
◆
一同は赤い敷物を敷いて小さな祝宴を開催していた。
「若は亡き殿に似てきましたな」
「んだ。ベニマル様は里にいた頃よりずっと頼もしく見えますだ」
「おだてるなよ。すべてはリムル様のおかげだ」
ベニマルガ視線を移すと折れた刀があった。ベニマルは自身の父親について気になり、年長者であるハクロウに聞く。
「ハクロウ。父上は若い頃、どのようなお人だったのだ?」
「あの頃は里も小さく若は比べ物にならない程、ワルでした」
その言葉に子供であるベニマルとシュナは驚く。
「そのような話聞いた事も…」
「聞いたこともないだしょうな。何しろお二人が生まれるずっと昔のことじゃからのう」
ホッホッホッ。と笑うハクロウ。
「いや、全くよい日よりじゃ」
彼らの宴は静かに進むのだった。
◆
リムルと、はみはみは鏡の前に立っていた。いや、正確に言えばリムルが中心で、はみはみは側に立っていた。
リムルは今までの異世界生活を振り返る。
まだ街が簡素だった頃、トラブルと一緒にやって来たブルムンド王国の冒険者達の中にいた。
その当の冒険者達は1名を除いてブルムンド王国の喫茶店にいた。
「私、昨日シズさんの夢を見たの」
「あ、それ俺も見た」
3人はシズさんを思い出す。シズさんは寿命を理由にリムルの『胃袋』の中に弔われた。故に、彼女のお墓はない。だからこそ、3人は地球の日本と呼ばれる国に伝わるお盆の時期に偶然にもお祈りをジュラの森方向に向けてした。
「シズさん。私達元気に冒険者しています」
「貧乏ながら楽しくやっていやす」
「どうか、俺達を見守ってください」
(うんうん。頑張ってね)
エレン、ガバル、ギドの3人にシズさんは応援する。だが、彼女はそれを後悔?することになる。
「で、夢の中のシズさんどうだった?」
「えっとね。バニー姿で魔物に追っかけられてた」
(っえ!?)
それは正に、シズの形をとったリムルに起きた出来事であった。
「似合ってたな」
(まってまって、何か間違ってる!)
シズは誤解を解きたいが、魂だけの存在ゆえにそれを伝えることは叶わない。
「そう言う趣味だったんでやすね」
(それ…違うよぉ)
哀れ、シズさん。スライムさんを引っ叩いても良いのよ?
◆
ソーカはお盆休みに伴って、シス湖にある
そして、ソーカはお土産に
だが、ここで問題がある。ガビルは勘当された身であり、族長の血族はソーカのみである。そのソーカに世継ぎを作ってもらう必要がある。
故に、族長は
ソーカはこれがあるから帰省したくないのだった。その愚痴を酒の席で聞いた、はみはみは縁談の苦労話を前世の「結婚は人生の墓場」の話と結びつけて彼女を慰めるのだった。
ソーカとしては
◆
ー傀儡国ジスターヴー
十大魔王が1柱、
彼は策謀を巡らせるのが得意であり、彼の眼の前に置かれた気色の悪い…ゲフンゲフン。趣味の悪い時計のアラームと共に、彼は執務室を離れる。
何故なら、間もなく
彼は魔法陣でロックされた部屋を自身のユニークスキル『
彼はこれからやって来る来客、魔王について思案する。
(魔王カリオンは粗野だが、本物を見極める眼と素直な感性があり、急遽参加のフレイは女性らしい繊細さは私と共感出来るだろう。そして…ミリム・ナーヴァ。最古参の魔王とは言え、その思考は既に念入りに調査済み。対策は万全だ)
そんな事を考えつつ、幾つかの粉や調味料の缶を開ける。
「さあ、早くこい魔王どもよ」
そう言って彼の手に付けてある白い手袋を外し、可愛らしい厚い手袋に変える。
「私の野望のために!」
そう言って、彼は
「フンフフン…お茶会に出す美味しいスコーンがもうすぐ焼き上がる」
そう、
「楽しそうだね…クレイマン」
◆
ー武装国家ドワルゴンー
王宮の会議室で英雄王ガゼル・ドワルゴとその部下であるジェーン、ドルフ、バーン、アンリエットはジュラの大森林に現れた魔物を統べるスライムについて話していた。
が…
彼らはスライムに黒蜜派と酢ダレ派で分かれて真面目な顔して議論していた。そして、何を思ったのかガゼルは「余自ら見極めてやろうではないか」と言って出撃準備を始める。
リムルは悪寒を感じて風に当たりに行くのだった。
※はみはみは黒蜜派である。
◆
その後、リムルとはみはみが一緒に井戸水を飲んで休憩して、
ゴブリン邂逅祭、鍛冶工房新設、ヒポクテ草栽培ノルマ達成etc
その他諸々の記念の何十回目の宴が開かれた。その後は、リムルがバニーガール姿やらメイド服、スクール水着、紅魔族衣装を着せ替えられまいと逃げ回ったりしたが、お盆でリムルと、はみはみはお詣りした。
その時だった。
シズさんが(恥ずかしい恰好は控えめにね)と言ったような気がした。
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