紅魔族の異世界生活   作:味八木

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仮面の勇者

 

 

「大丈夫。後は任せて」

 

そんな言葉とともに、私の目の前に現れたのは白いマントを羽織った黒髪の女性だった。

 

黒髪の女性はヴェルドラさんに問いかける。

 

「今度は私が相手をしてあげる。これ以上の破壊は許さない」

「ほう?貴様が我の相手をするだと?貴様は勇者だな?良いだろう!相手にとって不足なし!」

 

そう言って、ヴェルドラさんはドラゴンブレスを出す。しかし、勇者はそれを必要最低限の動きで交わしていく。私でも敵わない様な身体能力でヴェルドラに近づくと、レイピアで斬りつける。精神生命体であるヴェルドラに唯の物理攻撃で倒せる訳が無い。そう思った。しかし、予想に反して、ヴェルドラは悶えている。

 

「私のユニークスキル『絶対切断』はあらゆる物を切り裂くの。貴方も例外じゃないわ」

 

この時の私は知る由もないが、この勇者は、"仮面の勇者"と呼ばれており、彼女が持つユニークスキル『絶対切断(アブソリュートエンド)』の効果によるものだ。そして、思いっきり跳躍して悶えるヴェルドラから距離を離すと剣を掲げると地面に突き刺した。すると、剣から虹色の光が溢れ、それはヴェルドラへと殺到する。虹色の光はヴェルドラを囲い込んでしまった。そこから、ヴェルドラは何かしようとしていたが、ドラゴンブレスも出すことも無くなった。それ即ち、ヴェルドラの封印を意味していた。

 

「何なのだ!これは?!」

「それは私のユニークスキル『無限牢獄』貴方を封じさせて貰うわ」

 

封印され永劫の時を過ごすヴェルドラへの手向けの様に仮面の勇者は言った。それは、たった数分の出来事だった。仮面の勇者はヴェルドラをユニークスキル『無限牢獄(インフィニティプリズン)』を使ったのだ。ここに、意思ある災害、邪竜と呼ばれた竜種が1体暴風竜ヴェルドラは封印されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫?怪我はない?」

 

仮面の勇者は、はみはみに問い掛ける。これは何十回もやって来た質問だ。仮面の勇者が持つユニークスキル『時間旅行(トキノタビビト)』による過去の体験。これによって、仮面の勇者はこの後の展開も予想出来ていた。

 

「どうか私を!弟子にして下さい!」

 

そう、はみはみは仮面の勇者に対して弟子希望をしたのだ。これに対する返答も決めていた。

 

「いいよ」

 

短い一言だったが、はみはみは嬉しかったのだろう。感動に打ちひしがれている。仮面の勇者についても打算があった。彼女の最愛の人がいつもいなくなる。タイムスリップする前には失踪し、自分の死ぬ間際に強くなって現れる。そんな体験を何度もして来た。その間、はみはみの存在は彼にも大きな物になっていた。それに、未来に訪れる脅威への対策と言った意味合いもある。はみはみの存在は仮面の勇者の大切な人達の運命を支えている人物なのだ。そんな考え事をしている間に、はみはみはじっと、仮面の勇者の仮面をじっと見て言った。

 

「何ですか!その仮面は!カッコいい!紅魔族の琴線に激しく響きます!」

 

この反応も見慣れていた。しかし、普通の受け答えをするのは駄目だ。はみはみは実力も高いが、知能も一級品なのだ。気を抜くと怪しまれてしまう。

 

「えっ〜と。そう?ありがとね」

「はい!私も欲しいです!」

「う〜ん。ゴメンね。この仮面はあげられないんだ」

 

この仮面は特異点に位置する貴重な物品であり、彼女に渡すまでは誰にも贈る訳にはいかない。

 

「けど、仮面を作ってくれる人なら、いつか紹介してあげる」

「本当ですか!ありがとう御座います!」

 

はみはみが仮面の話から落ち着いた所で仮面の勇者は話し掛ける。

 

「えっと、そう言えば君の名前は?」

「そうでした。私としたことが…んん。わが名は、はみはみ!紅魔族随一の仙人にして、上級魔法を操るもの!」

 

場は膠着した。2人とも共通した意見として「やっぱり」と言った所だ。

 

はみはみとしては、自己紹介をすると決まって気まずい雰囲気になる。これは紅魔族が挨拶すると必ずと言っていいほど起こる為、気にしていない。まあ、最近はユニークスキル『厨二病(イタイタシイモノ)』の『精神操作』で、すごーい!と、なる様にしているが、ユニークスキル保持者には効かない。勇者とも言われるものがユニークスキルを持たない方が可笑しいので気にしていない。

 

一方、仮面の勇者も同様だった。記憶は無いが、何度もこの挨拶を聞いている。無視して話を続けてもいいが、はみはみは頭が良い。普段とは違う対応をされると勘ぐってくる。ならば、気まずい雰囲気が出て来ても困惑するのが正しいのだ。バタフライエフェクト*1と言う言葉があるように、小さな出来事が世界を変える事があるのだ。

 

気まずい沈黙を破ったのは仮面の勇者だった。

 

「えっと。私も挨拶すべきだよね。私は仮面の勇者。仮面の勇者クロノアよ」

「なんてお呼びすれば良いですか?!クロノア師匠?それとも勇者様?!」

「ふふっ。普通にクロノアでいいよ」

「ありがとうございます!」

 

はみはみが感激する中、仮面の勇者は話を続ける。

 

「それで、貴方は何処に住んでるの?」

「え?住処ですか?一応、魔導王朝サリオンに拠点を置いてますが…」

「じゃあ旅の荷物を纏めなきゃでしょ?」

「それもそうですね。じゃあ、私が元素魔法:拠点移動(ワープポータル)を使いますよ」

 

そう言うと、はみはみは魔法陣を組む。仮面の勇者は魔法陣に乗り、戦場から消えた。そこには、暴風竜ヴェルドラが残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「只今帰りました」

 

そう言うと、エルメシアはぷくっと頬を膨らませながら近付いてくる。

 

「何でヴェルドラの所なんかに行ったの!」

 

エルメシアは強い口調で、はみはみを問う。エルメシアは暴風竜は人が抗う事が出来る存在では無いと思っている。いや、ごく一部の人間、それこそ勇者等なら戦うことは可能だろう。しかし、現在のはみはみの実力では話にならないと思っている。その為に引き留めたのに、はみはみは行ったのだ。怒るのは無理も無い。しかし、エルメシアは怒りを抑えて、話を変える。

 

「それにしても、貴方のようなお方に会えて光栄です」

 

そう言って、エルメシアは頭を下げた。エルメシアは趣味である情報収集から世界の危機が何度も来ている事を知っていた。そして、その世界の危機を何度も救ってきたのだ。年などエルメシアと同い年と言って良いのだが、エルメシアは仮面の勇者に深い尊敬の念を抱いているのだ。ちなみに、はみはみは、クロノアとエルメシアが会話している内に、自室に荷物を取りに行った。

 

「気にしないで。私はこの子の面倒を見るだけだから」

「それって…」

「そう。はみはみに頼まれてね。暫く一緒に旅をする事にするよ」

「良いのですか?」

「勿論。何か問題があるかな?」

「いえ。どうか宜しくお願いします」

「任せて。あっ、貴方のお母さんにお願いがあるの」

「何でしょうか?」

「多分ね、近い内にレオンって言う勇者がこの国に来ると思う。その子の師匠になってあげて欲しい」

「それだけですか?」

「うん。それだけ」

「分かりました。お母様に掛け合ってみます」

「宜しくね」

 

そう言って、荷物を纏めてやって来たはみはみと一緒に『空間支配』で転移してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

クロノアとはみはみは、とある小国に来ていた。そこは、魔導王朝サリオンの南方に位置する小国、ウルグレイシア共和国だ。ウルグレイシア共和国の住民は皆が精霊魔法の使い手だ。この国で生まれた子供達は10歳の時に精霊契約を行う。それにより、精霊魔法の行使が可能になるのだ。そこで契約が失敗すれば国外追放され、住民資格を失うのだ。精霊は心の清らかな者に集まる。故に、悪人は国外追放によっていなくなるので、総じて治安が良い国である。国民全てが精霊魔法を扱える。それこそが、西側諸国評議会(カウンシル・オブ・ウェスト)にも属さず、魔導王朝サリオンと言う大国と隣接しているにも関わらず、国を保てる所以でもある。

 

そんな、ウルグレイシア共和国のウルグ自然公園に来ている。そこには、魔王であり、迷宮妖精(ラビリンス)と称される精霊女王の住処がある。

 

2人は、ウルグ自然公園の大木に埋まるように存在する門の中に入っていった。そこは、まるで何も無いかのように見せかけて、方向感覚を狂わせる罠が至る所に仕掛けられていた。だが、その様な罠が勇者であるクロノアや仙人であるはみはみに通じる筈がない。迷わず進んでいくと、直接脳に言葉が響いてきた。

 

『おやおや…ようこそお客人』

「これは…魔法通話…いや、精神感知(テレパシー)ですか?」

「そうだね」

『つまらない、つまらない。もっと迷え!もっと驚け!』

「私は仮面の勇者クロノア。精霊女王である貴方にお目通りしたい」

『勇者!あの有名な仮面の勇者クロノア!ささっ!どうぞコチラへ!』

 

さっきの尊大な口調は何処やら…腰が低くなると急に景色が入れ替わり、広場に連れてこられた。すると、光が集まって、小人サイズの妖精が現れた。

 

「じゃっじゃーん!我こそは偉大なる魔王が内の1柱!迷宮妖精(ラビリンス)のラミリスである!ひれ伏しなさい!」

「我が名は、はみはみ!紅魔族随一の仙人にして、勇者クロノアの一番弟子である者!」

 

場が時でも止まったかの様に停止した。数秒の間を経て、ラミリスが口を開く。

 

「えっと…なに?からかってる?」

「失礼な。これは我が紅魔族の伝統的な名乗りです。貴方もどうですか?!カッコいいですよ!」

「そうかな?じゃあ私も…我が名はラミリス!妖精族(ピクシー)随一の精霊女王にして、魔王が内の1柱である迷宮妖精(ラビリンス)である!ひれ伏しなさい!」

「おお〜!カッコいい!カッコいいです!」

「そう?そう?さっすが私!何でもこなせる凄い魔王なのよ!」

 

はみはみとラミリスのやり取りをクロノアは生暖かい目で見ていた。しかし、このままでは話が続かないので、ラミリスに話しかける。

 

「ラミリス様。ご存じかと思われますが、私は仮面の勇者クロノアと申します。この、はみはみの師匠として面倒を見ることになりました。それにつきまして、彼女に勇者の資格があるかの確認も込めて、お伺いに参りました」

「うんうん。貴方が有名な仮面の勇者ね!良いよ!いいの良さ!私は魔王であると同時にね、聖なる者の導き手なの。勇者に聖霊の加護を授ける役目も担っているの。

私は公平だから。私こそが!世界のバランスを保つ者なのだよ!」

 

虚無の中に力が満ちている。これが聖霊だ。大いなる聖霊は、ただ存在するだけの力の源であった。そんな中、光と闇の2柱の大精霊が生じた。これが、世界が誕生した瞬間であった。しかし、世界はまだ、漂うだけの存在であった。光と影、陰と陽。互いに交わろうとしても叶わぬ存在だった。しかし、ある時、時の大精霊が生まれた。それは、光と闇の子としての存在だ。故に、世界は動き出した。動き出した世界は目的も無くぐるぐると回る。生と死、一方通行に進む流れの中で、地・水・火・風・空という5柱の大精霊が誕生した。世界は、相互に干渉しあって、やがて安定する。これが、大いなる8柱の大精霊達。そして、世界に光が満ち、闇に覆われて…

新たな精霊達が誕生し、消えていく。生と死。世界がいつか終わりを迎えるその時まで…

 

「これが精霊の何たるかよ!」

「ちなみに、勇者として認められるには"勇者の卵"を宿すか、光か闇の大精霊に認められる必要があるの。何の精霊が出るかは、はみはみ次第。さっ行っておいで」

 

そう言って、迷宮の景色が変わる。半透明な足場?が光が集まる場所に向かっている。

 

「あそこで精霊に呼びかけるの。そうすると、興味が持った精霊がやって来るのよさ!」

 

言われるがままに私は、精霊に呼びかける場所まで恐る恐る歩く。直に辿り着いた場所で私は膝をついてまるで聖女の様に祈りをささげる。

 

(我が名は、はみはみ!紅魔族随一の仙人にして勇者クロノアの一番弟子である者!集え!我が魂の輝きの元へ!)

(この子、予想してたけど、やっぱり凄い祈り方ね)

 

はみはみは、ラミリスの固有能力迷宮創造(チイサナセカイ)によって、思考が筒抜けなのも知らずにブレない紅魔族の挨拶をする。あまり精霊がやってこず、ラミリスは困惑していると、3つの光がやって来た。

 

1つは、真っ赤な輝きを放つ下位精霊…火の下位精霊だ。

 

2つ目は、緑の輝きを放つ下位精霊…風の下位精霊だ。

 

3つ目は、真っ黒な輝きを放つ…

 

「やあ、面白そうだから来てみました」

 

"闇"の大精霊の姿があった。

 

「えっ!嘘でしょ!闇の大精霊と他2つの下位とは言え、3体も精霊が来るなんて!」

「ええ。私が最初は1人で行こうと思ったのですが、この子らもどうしても行きたいと仰るので…では、はみはみよ。貴殿が優れた勇者になれる様に手助けしますぞ」

 

そう言って、闇の大精霊は火と風の下位精霊を伴って、私の中に入っていった。

 

*1
蝶の羽ばたきが遠く離れた場所で台風を起こす事。基本的に、小さな出来事が大きな出来事に繋がる事の例え






〜コラム〜

クロノア

クロノアはご存知の通り、時を移動してます。なので、恐らく原作の2000年もの流れで、知り合いでは無いラミリスやエルメシアと言った人達の知識をヒナタやクロエは少しは持ってます。また、ラミリスに関しては、2000年も活動している勇者クロノアをワルプルギスで知っているだろう。との判断です。この頃は、魔装兵計画も無いはずですから、エレメンタルコロッサスもいません。そんな時に、勇者が来たら腰も低くなるよね?と言う判断です。

ステータス

名前︰はみはみ
種族︰人間ー仙人
称号︰勇者の弟子、勇者の卵
魔法︰元素魔法、精霊魔法、上級魔法、爆裂魔法、神聖魔法
技能︰ユニークスキル『厨二病』
耐性︰物理攻撃耐性、自然影響耐性、状態異常耐性


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