「凄いのよさ」
「そうね」
私が、精霊に呼びかける場所から戻ると、ラミリスとクロノアから言われた言葉だった。
「どうですか!これが私の実力ですよ!」
「おめでとう」
クロノアは、私にお祝いの言葉を述べてくれる。すっごく嬉しい。けど、1つ疑問があったので聞いてみる。
「クロノアは、精霊契約をしなくていいのですか?」
「大丈夫。私は勇者の卵を宿してるからね。無理に精霊契約をする必要もないよ」
「あの、勇者の卵って?」
「ああ、言ってなかったね。勇者の卵とは、文字通り勇者の卵。世界が成長途上の勇者と認めた者に宿る印…みたいな物かな?それが孵化する事で"真なる勇者"として覚醒する…と言われてる」
「言われてる…とは?」
「私の勇者の卵は孵化してないの。だから、真なる勇者になるのかは分からないの。まあ、真なる魔王と言う存在がいる以上、真なる勇者がいても可笑しくないけどね。それを言ったら、はみはみ、君だって勇者の卵を有しているよ」
「えっ?」
「勇者の卵を得るには、世界が認めるか、光か闇の大精霊に認められる必要が有るからね」
「そう…ですか…」
そう言って、私は震える。これは勇者と言う存在に近づいたからの感激の震えではない。
(それってつまり、私の決めポーズが決まった様な物じゃないですか!我が名は、はみはみ!紅魔族随一の勇者候補にして、闇の大精霊と契約せし者!…いや、前の世界には、私みたいに日本から来た転生者が勇者候補として来ている筈…勇者候補と言うのは変えた方が良さそうですね)
考え事をしていると、ラミリスが「オッホン」とわざとらしく咳払いする。そして言った。
「では、勇者はみはみよ。全ての罪と咎を受け止める覚悟は有りますか?」
「ええ!勿論ですとも!私は勇者として、人々を救おうじゃありませんか!」
「では、勇者はみはみよ。貴方の未来に幸あらん事を…」
「………あの…ホントにラミリスですか?」
「失礼な奴ね!私は魔王であり精霊女王なのよ!敬いなさい!」
「ハハッー!」
そう言って私は、90°のお辞儀をした。
「そう言えば、ラミリスって物知り何ですか?」
「モッチロン!伊達に精霊女王と呼ばれてるだけあって、頭がいいの良さ!」
「それじゃあ、聞きたいんですが、異世界に此方から渡る事って出来ますか?」
「う〜ん…無理」
「え…」
「もしかしたら、特殊な条件とか、技術的な問題があるかもだけど、私が知る限りそんな事できないわ」
「そんな…」
「けどまあ…心配しなくていいのよさ!アンタが元いた世界がどんな所かは知らないけど、この世界も好きになるのよさ!」
「…それもそうですね。暫くは面白可笑しく楽しく人類を救う旅に行きましょうか!」
そう言って、私はラミリスと出口まで雑談をしながら歩き、精霊の住処の出口まで辿り着いた。
「それじゃあ…行ってきます!」
「アンタの活躍を楽しみにしてるの良さ!」
私達は、精霊の住処から出ると、徒歩で勇者の卵としての一歩を歩き出した。
◆
そこからは、怒涛の毎日だった。暴風竜ヴェルドラがクロノアによって封印されたとは言え、世界は魔物の脅威に溢れている。私は、クロノア師匠に連れられて東西南北至る所の国から魔物の脅威を取り払ってきた。
途中で、クロノアが神聖法王国ルベリオスに寄ったりしたが、概ね順調に旅を重ねていた。そんな旅を続けて、230年近くたったある日、私にクロノアが言った。
「はみはみ、魔王の領域に行くよ」
それに対して、私は…
「魔王ですか!どちらに行くのでしょうか?やっぱり最強最古の魔王
私はそう言ったが、クロノアは首を横に振って言った。
「私達が行くのは、魔導王朝サリオン近くの島。十大魔王が1柱、
そう言って、私達は魔導王朝サリオンから船を借りて目的の島に行くことにした。この時、私は何故飛行魔法を使用しないのか不思議に思ったが、特に指摘することなくついていく事にした。
◆
魔王レオン・クロムウェルが住む城に辿り着いた。『魔力感知』をする限り、大きな魔力を持つ個体は1体しか見受けられない。どうやら、私たちが来ることを知って逃げ出した様だ。その殿として、召喚されたのだろうか?頬に火傷の跡がある日本人が待ち構えていた。恐らく、捨て駒にされたのだろう。クロノアが手を出すまでも無い。と考えて私が出ようとしたのだが、クロノアが私を手で制した。どうやら、相手をするらしい。
日本人は剣に炎を纏わせると、クロノアに斬り掛かった。しかし、クロノアは難なくそれを受け流す。しかし、攻勢をすることは無い。何度か切り合っているとクロノアが日本人の剣をはたき落とした。そこから、クロノアは日本人を抱き寄せ呟いている。それを聞いた日本人は、大声で泣いていた。
やがて、泣き終わった日本人にクロノアが告げた。
「もう大丈夫、良かったら私と一緒に来る?」
「はい…」
「なら、自己紹介するね。私は仮面の勇者クロノア。こっちは、私の弟子の…」
「我が名は、はみはみ!紅魔族随一の仙人にして、闇の大精霊と契約せし者!」
周りがシーンと静まり返った。日本人は、困惑したかのようにクロノアの方を見ている。もうこの反応にも慣れたものである。
「わ…私は…シズ…
「うん。それじゃあシズって呼ぶね」
「では、私も」
その後、色々の話をしながら私達は船に乗り込んだ。そこで、シズは私達にこれまでの事を教えてくれた。シズは、空から爆弾の雨が降ってきたのだという。十中八九、第二次大戦の空襲によるものだろう。母と避難していると、母とはぐれてしまい、炎に包まれて全身に火傷を負ったと思ったら、この世界に来ていたのだという。呼び出したのは、魔王レオン・クロムウェル。魔王レオンは、死の淵に瀕したシズを上位精霊︰
ここで1つ問題があった。シズは、上位精霊︰
これに私は、反発した。仮面をシズにあげるのは事情から見ても仕方がない。しかし、仮面をつくれる人を紹介すると言う約束を果たしてもらっていないのだ。それを言ったら、クロノアは…
「後、70年もすれば会えるよ」
と言われた。予言にしては的確だな…と私は思った。しかし、クロノアとの長い付き合いでこういった予感はよく当たると知っていたので、私は深く考えないことにした。そこから、私達はシズを仲間に加えて戦った。クロノアは剣術で、私は元素魔法を、シズが精霊魔法を併用した剣術を使っていた。そんなこんなで、私達は勇者パーティーとして活躍していた。そんな事を続けて5年程たったある日、私達は、野営をする事になった。
その日は、この世界ではご馳走に当たるカレーを食べる日だった。カレーに必要な調味料や素材をこの世界で、手に入れるには難しく、年に1回食べれるかどうか分からないご馳走だった。
クロノアが主体となって調理を進めていく。シズは、そんなクロノアのお手伝いをしている。私は、薪木集めや食器洗いなんかを手伝った。この日作ったカレーも美味しく出来ていた。皆がカレーを食べて、談笑したりした。私はこんな楽しい時を200年以上もしているので、この世界も楽しいと思っていた。けど、やっぱりめぐみん達の世界も忘れる事が出来ない楽しい思い出だと感じていた私がいた。
けど、そう思ったのが良くなかったのだろうか?翌日、目を覚ましてみると、いつもは、私より速く起きている筈のクロノアの姿が何処にもいなかった。偶にはそんな事があるのかな?と思って待っていると、シズも起きてきた。しかし、いくら待ってもクロノアが出て来ない。不思議に思って、クロノアが眠るテントを見ると、そこには、クロノアの姿は無かった。代わりにあったのは、2つの書き置きだった。
『私は、訳あってこれ以上君たちと一緒にいられない。けれど、君達を見捨てた訳じゃない。君達の活躍を祈ってるよ』
そんな文面から始まった書き置きには、これまでの200年近くに及ぶ日々の思い出が書き連ねられていた。そして、最期には、こんな事が書かれていた。
『貴方がずっと前から欲しいと思っていた仮面を作くれる人を教えれなくてゴメン。その代わりと言ってはなんだけど、暴風竜ヴェルドラの封印が解けたら、ブルムンド王国に行って欲しい。そこに行けば、仮面を作れる人に会えるよ』
そんな書き置きがなされていた。私は、悲しみの余り、書き置きを濡らしているのに気づいた。如何に師匠と弟子の関係とは言え、200年以上も生きていれば、クロノアとのある種の友情が芽生えていたのだ。そんな悲しい出来事があった私は、シズとこれからの事を話し合った。
1つ目は、このまま2人で旅を続けること。
2つ目は、別れること。
私は正直に言って、どちらでも良かった。けど、シズは日本…しかも、私より昔の時代、戦時中から来たのだ。肉親とはぐれている彼女は、私たちを姉妹のように見ていた節が言動から垣間見えた。故に、私はあまり2つ目の選択は取れなかった。そこから、私達は2人で色んな所へ旅をした。
ある時は、この世界で最も進んでいたイングラシア王国でショッピングをしたり、私が作った魔道具を売ったり、偶には1人で、魔導王朝サリオンに里帰りしたりした。そんな生活を続けていたからか、シズは何時しか『爆炎の支配者』と呼ばれる様になっていた。因みに、私の二つ名は『紅魔の勇者はみはみ』とか言う紅魔族的には、微妙な二つ名がつけられていた。
そんな『紅魔の勇者はみはみ』である私は、シズと一緒にジュラの大森林で素材を集めたりして、過ごしていると、シズから依頼を持ち掛けられた。それは、復活した悪魔の討伐。なんでも、ジュラの大森林近くのフィルトウット王国からの要請で呼ばれたのだという。私は呼ばれなかったのだが、何故シズは呼んで、私は呼ばないのか不思議だが、シズに誘われた手前、一緒に行くことにした。
「クフフフフ、久しぶりの現世です。存分に楽しむとしましょう」
因縁の存在と出会う事になるとは知らずに…
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