紅魔族の異世界生活   作:味八木

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少し長いです。


紅と黒と仮面

 

 

―フィルトウット王国―

 

フィルトウット王国。この国は、ジュラの大森林に隣接した国だ。その起源は、暴風竜ヴェルドラが勇者クロノアによって封印された頃にまで遡る。それまでは、ヴェルドラが西側諸国の国々を気まぐれに滅ぼしていた。しかし、封印された事によって西側諸国は領土を復興し、発展していった。そんなフィルトウット王国に、冒険者に対して緊急依頼が発せられた。依頼を受けた私、はみはみは、シズと2人でフィルトウット城にやって来ていた。

 

「ようこそ、フィルトウット城に!光栄です。かの有名な爆炎の支配者と紅魔の勇者様にお目にかかれるとは!」

 

そう言うのは、お城の近衛兵だろうか?彼が大広間で案内してくれることになった。シズは、怪しんでいない様だが、私の魔力感知には分かる。この近衛兵は、何かが可笑しい。私は釈然としない物を感じたが、その怪しい本人が近くにいるので、私は取り敢えずは様子見に徹する事にした。

 

大広間に入ると、そこには沢山の冒険者が集められていた。周りは、私達を見て「あれが爆炎の支配者と紅魔の勇者様か…」とか、「なんと頼もしい…」とか呟いているが、私の耳にはしっかりと聞こえている。シズについていくと、1人の男性と話し始めた

 

「よっ!シズさん」

「久しぶり、クーガーさん」

「はみはみさんも久しぶりだな」

「ええ。お久しぶりです」

 

挨拶をすると、クーガーは早速本題に入る。

 

「貴方達もこの依頼を受けたのか」

「国からの依頼だったからね」

「私はその付き添いです」

「やっぱりアンタ達は真面目だな」

「そんなの適当な理由つけて、ブッチすれば良いんだよ」

「そう言う貴方は、何故こちらに?」

 

はみはみが尋ねると、クーガーは頬を指でこすりながら言った。

 

「俺は、報酬目当てだな」

「ブレないですね…貴方は」

「けど、来なきゃよかったぜ」

 

そう言って、小声で理由を言ってくれた。

 

「実は、腕利きが10人以上殺られてるらしい」

 

そこまで言うと、元の声の大きさになって言った。

 

「なるほど。だからこんなに殺気立ってるのですか」

「まっ、そういうこった。けど、そこに英雄と勇者が来れば、話は別だろ?」

「ハァッハッハッハッ!その通りです!私が来たからにはもう安心というものです!」

「おう!頼りにしてるぜ!」

「もう…2人とも…」

 

シズが呆れていると、大広間に白ひげを垂らした青い服を着た人物が入って来た。どうやら、この国の大臣らしい。

 

「冒険者の諸君、残念なお知らせだ。我らが英雄である翼の銀嶺お二方が亡くなられた」

 

そう言うと、辺りはざわつき始めた。どうやら、それなりに名のある冒険者だったらしい。

 

「遺体は食い尽くされ、跡形も残っていなかった。今回の依頼は、復活した悪魔の討伐である」

 

そこから、大臣は依頼内容を改めて話し始めた。100年前の文献に記述があった。国家の騎士であった英雄オルトスが封印したという。しかし、どうやって封印したのかまでは記されていないとの事だった。いや、報連相は大事でしょ。なんでそこを怠っちゃうかな…

 

大臣はそれを説明して、冒険者一同に協力して欲しいと頼んできた。私は強いので、その依頼を承諾するつもりだったのだが、報連相が大事だと知っている私は、大臣に質問した。

 

「英雄級の冒険者を殺したのなら、その悪魔は上位魔将(アークデーモン)である可能性があります。その悪魔に名前はあるのですか?」

「はい。未確認情報ですが…名前を得ていると思われます。悪魔を含め、魔物は名前を得ることによって、力が増します。上位魔将(アークデーモン)が名前を得たのなら…その強さは、計り知れません」

 

その言葉に、冒険者の1人が「そんな危険な依頼、引き受けるか!」と言って、大広間から出ようとした。しかし、大広間の扉の前にいた衛兵隊長が逃げようとした冒険者を斬り殺した。

 

周りは、衛兵隊長を口々に非難しているが、私には分かる。

 

「シズ、あの冒険者。下位悪魔(レッサーデーモン)だよ」

「えっ…」

 

シズに報告すると、非難されていた衛兵隊長は斬り殺した冒険者を見るように怒鳴る。すると、冒険者から魔法陣が展開された。その中心にいたのは、冒険者に取り憑いていた下位悪魔(レッサーデーモン)だった。衛兵隊長は言う。

 

「悪魔は人間に憑依出来る。我々と冒険者の仕事は、憑依した悪魔を倒すないしは、封印することだ」

 

それを聞いて、冒険者の中に動揺が走った。恐らく、この国の狙いは、冒険者の間に疑心暗鬼にさせ、同士討ちを狙っての事だろう。そうなってくると、復活した悪魔の討伐と言う依頼に疑問が生じるが、証拠が何一つ無いのが事実…

 

と、私が考察していると、人を馬鹿にしたような声が響いた。

 

「クフフフフ」

 

声のした方に視線を向けると、そこには、フードを着た男がいた。しかし、この男、私の『魔力感知』に全く反応しなかった。それは、つまり、勇者として知られる私よりも手練れと言うことだ。

 

「シズ、気を付けて。あの男、底が見えない」

「分かった」

 

そんなやり取りをしている内に、大臣が男に話しかける。

 

「貴様…何が可笑しい」

「いえねぇ。思ったより簡単に依頼が達成出来そうだからですよ。衛兵隊長さん。貴方は、この場にいる悪魔を討伐若しくは封印するとおっしゃいましたね。何も、悪魔だけを殺す必要はありませんし、貴方達の自作自演に付き合う義理もありません」

「貴様…」

 

男の言った言葉は、私の紅魔族としての脳細胞が結論を導き出すのは、早かった。恐らく、この悪魔はこの場にいる冒険者を皆殺しにして悪魔を炙り出すつもりなのだろう。同じ結論に至ったのだろうシズと共に、男を止めに入った。

 

「貴方、この場にいる者を皆殺しにして、悪魔を炙り出すつもり?」

「クフフフフ。正解です」

「私はシズ」

「我が名は、はみはみ!紅魔族随一の仙人にして、シズの姉弟子である者!」

「………巫山戯ているのか?」

 

男は、何か私の挨拶が癪に障ったらしい。しかし、これが、紅魔族の挨拶なのだから何も問題は無い。男が分からないのは、時代についていけないだけだ。

 

「貴方は?」

 

シズは、男に問いかけた。私はその態度(無視)に物申したかったが、男のが放つ妖気《オーラ》を受けて、その思いを胸の内にしまった。

 

「…そうですね。クロ、とでもお呼びください。古い知り合いからの呼称の捩りです」

「クロ。貴方のやり方は許容できないわ」

「ええ。どうしてもと言うなら取り押さえますよ」

「ふむ…そうですか…では、貴方達から始末するとしましょう!」

 

そう言うと、男は初っ端から火炎大魔球(ファイアボール)を立て続けに2発放ってきた。

 

私は、『ライト・オブ・セイバー』で火炎大魔球(ファイアボール)を真っ二つにする。シズは、炎の上位精霊︰炎の巨人(イフリート)との同一化をしてるので、炎攻撃は効かない。

 

「私に炎は効かないわよ」

「驚きました。炎の巨人(イフリート)それも同一化とは…それに、そちらの勇者は見たこともない魔法ですね」

「当然です!これは私が元いた世界の魔法。この世界にある筈がありません!」

「それは何とも興味深いです…ね!」

 

そういい終わる頃には、クロは私の眼前に迫っていた。しかし、シズが間に割って入った。私は剣術も扱えるが、本業は魔法使いなのだ。

 

シズの剣が、クロの爪鋏刃(シザース)と何度も打ち合う。その際に火花が散っている。私は、クロノアと別れてから、炎の魔法を使っている。理由は言わずもがな、炎は、シズに効果がないため、フレンドリーファイアが起きないのだ。しかし、精神的なストレスは有るかも…と思った時期があったが、本人曰く問題無いとの事なので、私は気にせず攻撃を仕掛ける。そんな中、シズとクロは打ち合いをしながら話をしていた。私の耳にはしっかりと入って来ていた。

 

「貴方は…一体?」

「クフフフフ。知ってもきっと絶望するだけですよ!」

 

そう言って、後ろに下がっていたクロが距離を詰める。

 

「知っていたらの話ですがね!」

 

そう言ってシズとクロの得物は火花を散らす。

 

「尤も、貴方には関係の無い話です」

「それでも、貴方のやり方は、余りに危険よ!。悪いけど、これで終わらせてもらう!極炎獄霊覇(インフェルノフレイム)!」

「私も!『ライト・オブ・セイバー』!」

 

シズの放った魔法の余波で、空気中の水分が蒸発して煙が発生する。やがて、煙が少なくなっていくと、そこには悪魔の様な羽を前に広げて防御しているクロの姿があった。その羽は生来の物なのか、シズの攻撃によるものなのか、穴が至る所に空いている。

 

「まさか…悪魔、それも上位魔将(アークデーモン)だなんて…」

 

私の言葉に、周りにいた冒険者は怯えだした。上位魔将(アークデーモン)。それは、悪魔の最上位の階級、彼等を倒すには、少なくとも英雄級の人物でなければ、討伐は不可能だろう。聞くのと、実物を見るのとでは、危険を正確に推し測れないのだろう。私心配を他所に、クロは、話続ける。

 

「まさか、たかが人間が炎の巨人(イフリート)の力をここまで行使するとは…」

「シズは強いですから!当然ですね」

「しかし、あの攻撃を食らっても無傷かよ…」

 

私は、周りの冒険者を守りながらの戦闘は厳しいと判断し、精一杯の虚勢を張る。そんな時、クーガーは、驚愕の声を上げた。それを聞いて、クロは否定する。

 

「いえ、多少の痛みは感じました」

 

そして、クロは少し残念そうな顔をして言った。

 

「これだから戦いは面白い…しかし、残念ですがここで終わらせましょう」

 

速い!

 

私に感知できない位の速さでシズに向かって爪鋏刃(シザース)を振りかざしていた。私は間に合わない!と思ったのだが、クロの爪鋏刃(シザース)は、シズの付けていた仮面に弾き返され、右腕がもげていた。

 

「馬鹿な!その時間厚は…無限!その仮面、時を超えているとしか思えませんね。良いでしょう。今回はここまでにしておきましょう」

 

クロは、何か呟いていたが、私には正直理解が半分ほどしか及ばなかった。クロの時間厚やら時を超えるとか言う発言から、仮面が何らかの時に関する事象に関与しているのは明白だ。しかし、それを立証する証拠も方法もない。私はその事を頭から出した。周りの冒険者は私達がクロ…いや、上位魔将(アークデーモン)を撃退した事に感謝していた。そんな中、成り行きを見守っていた大臣が話始めた。

 

「私共としても、冒険者の皆様を蔑ろにするつもりはありません。今回は、城下の城で休んで頂き、悪魔との戦いに備えて頂きたく存じます」

 

そう言って、大臣は、衛兵たちに促して、冒険者達を退出させていった。私達も帰ろうとした時、近衛兵が呼び止めた。

 

「危険な悪魔を撃退して下さった御二方には、城の一室で休んで頂きたいとの、我が王からのご要望です」

「…分かりました」

「おお!ありがとう御座います!」

 

正直言って、大臣や衛兵達からもこの近衛兵よりかは低いが、魔の気配…それも悪魔の気配を感じた。正直言って気が進まないが、かと言って、放置しておくと不味いと感じたので、私はその提案を了承した。

 

やがて、部屋に通された私達は、相談した。

 

「シズ、大広間では言えなかったけど、少なくとも、この国の上層部は悪魔に乗っ取られてる」

「え…それってここにいたのなら危ないんじゃ…」

「いや、かと言って放置しておく訳にもいかない。特に、ここまで案内してくれた近衛兵、一筋縄じゃない。多分…あのクロと同種の気配がする」

上位魔将(アークデーモン)が?大丈夫なの?私は、魔力を使ってあまり戦闘に参加できないよ…」

「…仕方ないですね!ここは姉弟子として、私の力を見せてあげましょう!」

 

そんな時だった。

 

コンコン

 

扉を叩く音が響いた。

 

静江井沢(シズエイザワ)様、はみはみ様、我が王がお待ちです。ご案内します」

 

その声に、『魔法通話』で話をする。

 

『あの近衛兵だ。何が起きても良いように警戒して』

『わかったわ』

 

そして、扉から出て、近衛兵について行った。案内されたのは、地下の禍々しい…そう、危ない宗教が蔓延ってそうな、趣味の悪い部屋だった。そこには、大広間にいた大臣と、身長の低い王がいた。彼等が座る椅子の真ん中に、一際大きな椅子があった。周囲に警戒しつつ、事の成り行きを見守っていると、壁で待機していた近衛兵が口を開いた。

 

「いやはや驚きました。悪魔を簡単に退けるとは、やはり、『爆炎の支配者』と『紅魔の勇者』は、違いますね」

 

先程までのへりくだった口調は何処へやら。尊大な口調で近衛兵が話始めた。

 

「私は、魔族に贄を授ける事によって力を得たのだよ!」

 

そう言って、巨大な椅子に座る。既に、人間の面影はなく、頭に2本の角と、目は真っ赤に染まっていた。

 

「私の名は、オルトス。私は自らの力で頂点たるあの方と同じ名持ち(ネームド)に至ったのだよ」

「『爆炎の支配者』と『紅魔の勇者』、貴様らは魔族の贄となるのだ!」

 

そう言って、攻撃を仕掛けてくるオルトス。間違いなくコイツは、あのクロと名乗る上位魔将(アークデーモン)と同等、しかし、名前を得ているのでその危険度は遥かに上だ。私は、シズの援護に回って魔法を撃とうとする。しかし、シズはクロとの戦いで消耗している。あっという間に首をつかまれてしまった。そこで、私は『ボトムレス・スワンプ』を発動した。この魔法は、巨大な沼を発生させる魔法だ。これで、足元に気を取られている隙にオルトスを『ライト・オブ・セイバー』で仕留めようとする。

 

しかし、『魔力感知』で把握されていたのだろう。あっさり回避されてしまった。そこから私は、シズを助けるべく、様々な魔法を使った。『インフェルノ』を主体として、『ライト・オブ・セイバー』も使った。しかし、オルトスには、回避されてしまう。シズは、半精神生命体でもない唯の人間だ。息が続かなくなってきたのだろう。足をジタバタさせていたのが、今ではあまり動いていない。不味い…

 

私は、クロノアからシズを手助けする様に頼まれたと思っていた。しかし、こんな所で死なせてしまっては、私は、クロノアや元の世界に無事に帰って、めぐみん達に顔向け出来ない。めぐみん達に、守ってやると言ったことがある手前、絶対にシズを死なせてはいけない。私はそう強く思った。それこそ、紅魔族のプライドを捨ててもいいくらいには。私は元はと言えば、普通の日本人だ。故に、郷に行っては郷に従えと。紅魔族のノリを受け継いできた。しかし、そんなプライドはここでは、粗末な物だ。そもそも、ここは元の世界とは違うのだ。私は、プライドを捨てて、シズだけでも逃がそうと思う。

 

…情けないな…仙人になって浮かれてて、こんな初心も忘れるなんて…

 

私は、自分を偽ってても、仲間を助けたい!

 

そんな願いが通じたのだろうか…

 

『確認しました。個体名はみはみの仙人から聖人へ進化しました』

 

久しく聞こえた世界の言葉が響いた。すると、私の魔素量(エネルギー)が急激に増加している事に気づいた。

 

私は、その溢れんばかりの魔素量(エネルギー)を使って、『ライト・オブ・セイバー』を発動した。しかし、今までの、『ライト・オブ・セイバー』とは違い、威力、速度等が大幅に増加していた。もしかしたら、危険だからと止められていた核撃魔法も撃てるようになるかも知れない。そんな、圧倒的な力で、私は今までの苦戦が何だったのかと思うくらい、呆気なくオルトスを倒すことが出来た。いや、悪魔界に戻ったのが正しい表現だろう。

 

ともかく、上位魔将(アークデーモン)は倒せたのだ。

 

 






〜コラム〜

オルトスについて

最初は、当初の通り、クロに始末してもらうつもりだったが、急遽、はみはみに倒してもらうことになりました。その際、名持ち+受肉済み+上位魔将では、コリウスの夢で出てきたヴィオレの眷属たちに当時魔王種級のリムルでは荷が重い様に、仙人であるはみはみも弱ったシズを気遣いながらの戦闘は重いと考えました。

結果として、聖人に進化して倒す…という風にシフトチェンジしました。まあ、ガリギュリオさんは、相手が悪かったので瞬殺されましたが、オルトスはあの方に比べれば、雑魚ですから。

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