プロセカ世界にログインできたけど、デイリーミッションが人間関係。   作:七瀬ぴの

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結構長いよ~。一万文字いってた~。だいぶ前に書いたやつだからおかしかったらごめんね。


第十四話 ワンダショの一員に!

陽菜「とりあえず...。ワンダショの次回のショーに私がなんか急遽できることになったけど...なんやこれ?」

陽菜(どう考えても散らかりすぎやろ!)

 

「ねぇ、るいくーん! スイッチ押したら爆発したよ!!」

「……うん、見てた」

類が額を押さえた。

舞台装置のライト部分が「ボンッ!」と可愛く煙を上げている。

「爆発!?!?!?!?」

司が飛び上がった。

「これは新たなるショーの演出か!? いや、違うな!? 煙が出すぎておる!!」

寧々:「あんたたち、本番明日だよ……?」

えむ:「うわぁ〜! でもでもっ、煙がハートの形しててかわいいっ☆」

(……えむちゃん、ポジティブの神……)

類が溜息をつく。

「……修理しないと。僕がやるから、少し待ってて」

「類くん、一人でできる?」

「まぁ、できるけど……」

類が私の方を見た。

「……手伝ってくれる?」

「えっ、わ、私!?」

「うん。手が足りないんだ」

その一言で、脳がフリーズする。

推しからの直々の“手伝い要請”。

「は、はいっっっっ!!」

えむ「わぁ〜! がんばれーっ! 二人で仲良くねっ☆」

司「任せたぞ! 我らの栄光の舞台を救うのだ!」

寧々「はいはい、爆発しないようにね……」

二人が残されたステージ裏は、思ったより静かだった。

類が工具を取り出し、膝をつく。

照明ユニットの中の配線が焼け焦げていて、ほんのり焦げ臭い。

「……これ、熱でショートしたみたいだね」

「す、すごい……一瞬でわかるんだ」

「まぁ、慣れてるから」

類は少し笑って、髪をかきあげた。

その仕草が、

照明の残り光でやけに綺麗に見えた。

(え、ちょ、近っ……!! 顔近っ……!!)

「ここの線、押さえてて」

「は、はいっ!!」

指先が少し触れる。

一瞬、時間が止まった。

類は気づいていないのか、いつも通りの落ち着いた声で言う。

「……手、震えてるけど、大丈夫?」

「だ、大丈夫じゃないですっ!!」

類:「……ふふ」

(え、笑った!?!?!?!?!?!?!?!?!?)

「ごめん。でも……なんか、君といると、空気が楽しい」

「……え?」

「君のリアクション、ワンダショっぽいんだ。

予想外で、見てて飽きない」

その言葉に、胸がぎゅっとなる。

私なんかが、ワンダショの“っぽさ”に含まれてる――?

「……ありがとう」

類が微笑む。

「こっちこそ。助かった」

その瞬間、ライトがぱっと点いた。

ステージが再び輝きを取り戻す。

えむ:「わぁぁーっ!! ついたぁぁ!!」

司:「見よ!! これぞ友情と努力の輝き!!!」

寧々:「ほんとに爆発しなくてよかった……」

類が小さくつぶやいた。

「これで、明日はまた笑顔が作れるね」

私はその横顔を見ながら思う。

(……やっぱり、この人が、私の“推し”だ)

【デイリーミッション達成:神代類とステージを修理せよ】

(報酬:尊死)

「それではみなさーんっ! 本日のショータイム、はじまりはじまり~っ☆」

えむの声が響いた瞬間、観客席がどっと沸いた。

カラフルなライトが一斉に点灯し、紙吹雪が舞い上がる。

私はステージの端で息を整えながら、その光景を見つめた。

(……本当に始まっちゃったんだ)

胸の鼓動が、音楽と同じリズムで高鳴る。

類が舞台袖から一歩前に出て、

「この世界は、驚きと笑顔でできている。――さあ、君も笑って」

その声で、照明が切り替わる。

司がステージ中央でポーズを決めた。

「我が名は天馬司! ワンダーランズ×ショウタイムの看板役者なり!」

「はいはい、また始まったよ……」

寧々の呆れ声がマイクに乗って笑いを誘う。

えむ:「さあさあみんな! 今日はね~! 特別ゲストがいるんだよっ☆」

(え、待って、まさか……)

司:「うむ! 我らの新たなる仲間――!」

類:「……彼女だ」

照明が、私に当たった。

眩しい。

でも、心は不思議と落ち着いていた。

類が前を見据えたまま、小さく囁く。

「大丈夫。君ならできる」

私は深呼吸して、マイクを握った。

「は、はじめましてっ……! 私も、笑顔を届けたいです!」

客席から歓声。

えむが満面の笑みで拍手する。

寧々が笑いをこらえながらウィンク。

司が誇らしげに腕を組む。

類が穏やかに頷く。

音楽が流れた。

足が自然に動く。

心が音に乗る。

(あ、そうか。これが……“フルコンボ”)

いつかゲーム画面で追いかけていた音が、今、私の中で鳴っている。

えむの笑顔。

司の声。

寧々の視線。

類の手の動き。

それら全部が、ステージという一枚の絵を作っていた。

そして曲の最後。

類が手を伸ばし、

「――笑って」

私は、自然と笑っていた。

心の底から、嬉しくて、楽しくて、

涙がこぼれそうになるくらいに。

それは、

“推しに会えたから”じゃなくて――

“この世界で、自分の笑顔を見つけたから”。

音が止まり、歓声が響く。

「ありがとーっ! またねっ☆」

えむが最後に叫んで、幕が下りた。

類:「……完璧だったね」

「う、うん……! わたし……今、ちゃんと笑えた……!」

類が少し驚いたように目を見開いて、そして微笑む。

「それが、ワンダショの魔法だよ」

【デイリーミッション達成:本当の笑顔を見つけよう】

(……これ以上のイベント、ある?)

翌朝。

神山高校の前に着いた瞬間、私は小さく息を吐いた。

「……夢じゃ、なかったんだ」

昨日のショーの余韻がまだ体に残ってる。

あのライトの眩しさ、歓声、笑顔。

そして、類の「よくやったね」という声。

(うぅ……思い出すたびに心臓が跳ねる……)

そんな私の背後から、元気な声が飛んできた。

「おっはよーっ☆」

「うわっ!? え、えむちゃん!?」

えむが笑顔でぴょんと跳ねる。

「ねぇねぇ! 今日もショーの準備あるんだよ! 一緒に行こっ♪」

「え、えっ!? 学校じゃなくて!?」

「うんっ! 類くんが『新しい装置を試す』って言ってたよ!」

(……嫌な予感しかしない)

案の定、ステージに着いたら――

「……あの、これ、何ですか?」

目の前にそびえ立つ巨大な箱。

なかには無数のボタン、レバー、そして謎の配線。

類:「“笑顔測定マシーン”だよ」

「は?」

司:「ふははっ! 素晴らしいネーミングだな! これで観客の笑顔を測るのか!」

寧々:「……いや、多分爆発する」

「否定しないで!?!?!?」

類は少しだけ肩をすくめる。

「まぁ、爆発しなければ成功だから」

「基準がおかしい!!」

えむが楽しそうにボタンを押そうとする。

「押していい!? 押していい!?☆」

「待って待って待って!!」

結果、装置は“爆発”はしなかったものの――

ステージ全体がシャボン玉まみれになった。

「わぁぁ~~っ☆ すごーいっ! 泡の中のショーだっ!」

「これは……想定外だが……悪くないな!!」

類:「……予想の範囲内だよ」

寧々:「嘘つけ」

私は笑いながら、髪についた泡を払う。

ふと気づくと、みんな笑っていた。

子どもみたいに無邪気に、心の底から。

司が高らかに言う。

「これぞ我らがワンダーランズ×ショウタイム!! 今日も世界を笑顔にするのだ!!」

(ああ……本当に、この人たちといると笑ってばかりだ)

【デイリーミッション達成:ワンダショと笑顔の朝を迎えよう】

(……毎日がイベント級なんですけど)

 

 

 

放課後のワンダーステージは、昼間の喧騒が嘘みたいに静かだった。

光の粒がカーテンの隙間から差し込んで、舞台の埃をきらきら照らしている。

その真ん中に、いつもの姿があった。

白衣の袖をまくって、工具片手に何かを調整している天才。

「……やっぱりいた」

類はちらりとこっちを見て、目元だけでふっと笑った。

「おや、また来たんだ。今日も好奇心旺盛だね」

「だ、だって……昨日の装置の後始末、手伝わなきゃって思って……」

「ふふ。責任感が強いんだね。いいことだよ」

彼の手元を見ると、例の“笑顔測定マシーン”が見事にバラバラになっていた。

「……壊れたんじゃなくて、分解してるんだよね?」

「もちろん。失敗の原因を確かめてるんだ。君の反応データも、面白かったし」

「反応データ!?」

「だって君、笑ってたでしょ。あのとき」

さらりと言われたその一言に、心臓が小さく跳ねた。

類はネジを回す手を止めずに、静かに続ける。

「人間の笑顔って、セカイの音よりも難しいんだ。

でも君は、わりと自然に笑えるタイプだね」

「え、えっと……そんなことないよ。私、緊張ばっかりしてるし……」

「緊張してても笑える人って、すごいよ」

類の声は、いつもより少しだけ柔らかかった。

機械の音と、窓の外の風の音。

それだけが響く、穏やかな放課後。

「ねぇ」

「ん?」

「類くんって、どうして“笑顔”にこだわるの?」

類はほんの一瞬だけ、視線を天井に向けた。

「……誰かが笑ってくれたら、世界が少しだけ広がる気がするんだ」

「僕にとって、それは“実験”というより、“祈り”に近いのかもね」

その言葉が、胸の奥に静かに染みた。

「……なんか、かっこいいね」

「ふふ、それは褒め言葉として受け取っておこうか」

彼が工具を置き、私の方を向いた。

優しく目を細めて、言う。

「君と話してると、僕も“未知”が見えてくるよ」

「え?」

「だから、また明日も来て」

そう言って、彼は照明のスイッチを入れた。

ステージが、夕日の光と混ざってゆっくりと輝く。

【デイリーミッション達成:類と、光の中で笑い合おう】

(……笑わせてもらうつもりだったのに、笑わされてばっかりだよ……)

「ねぇねぇっ! 今日は“特別レッスン”するよっ☆」

朝からえむちゃんのテンションはMAX。

ワンダーステージの真ん中で、キラキラの紙吹雪を撒き散らしながら跳ねている。

「れ、レッスンって……ダンス?」

「ううんっ! “笑顔”のレッスンだよっ☆!」

「笑顔の……?」

彼女の笑顔は、太陽みたいにまぶしい。

けれど、そこに“演技”の影なんてまるでない。

本気で人を笑顔にしたいって思ってるのが、見てるだけで伝わる。

「まずは~……ほらっ、こーんな感じで!」

えむちゃんは両手を広げ、満開の花みたいに笑ってみせた。

私も真似してみるけど……鏡の中の笑顔はどこかぎこちない。

「あれ……なんか私、引きつってない?」

「うーん、そうだねぇ~……“笑わなきゃ”って顔してるかも!」

「うぐっ……」

えむちゃんは少し首を傾げて、ふふっと笑う。

「じゃあさ、“楽しかったこと”思い出して?」

「楽しかったこと……?」

「うんっ! 類くんとおしゃべりしたときとか~、司くんの変なセリフ聞いたときとか!」

「変なセリフはともかく……ふふっ」

自然に笑ってしまう。

えむちゃんの顔がぱぁっと明るくなった。

「ほらっ! 今のすっごくいいよっ!!」

彼女は勢いよく私の手を取って、くるっと一回転させる。

ステージのライトが、二人を照らす。

「笑顔ってね、“頑張って出す”ものじゃなくて、“誰かと出す”ものなんだよ!」

その言葉が、胸の奥にふわっと残った。

「……えむちゃん、ほんとに“笑顔のプロ”だね」

「えへへ~! でもね、わたしも悲しいときあるよ?」

「え……?」

えむちゃんの瞳が、一瞬だけ遠くを見た。

「でも、そんなときこそ笑うの! そしたらね……みんなも、笑ってくれるの!」

「……だから、えむちゃんはいつも笑ってるんだね」

「うんっ☆ “悲しい”も“楽しい”も、笑顔に変えるのがわたしの得意技っ!」

彼女がまた、ぱっと私に笑いかけた。

その笑顔は――本物の太陽よりあたたかかった。

【デイリーミッション達成:えむと、一緒に笑うこと】

(……この人の“明るさ”に、何度だって救われそうだ)

夜の遊園地って、こんなに静かなんだ。

昼間は子どもの笑い声でいっぱいの場所が、今はただ、観覧車のゆっくりした音だけ響いていた。

その観覧車の前で、寧々ちゃんが腕を組んで待っていた。

「……遅い」

「ご、ごめん! 類くんに呼ばれてて!」

「どうせまた変な発明の実験でしょ。……まったく」

小さくため息をつきながらも、彼女の声はどこか柔らかい。

「乗るよ」

ゴンドラのドアが閉まる音がして、観覧車が静かに動き出す。

下の光がだんだん小さくなっていく。

「なんか……不思議だね。

まるで世界から切り離されたみたい」

「……そうだね。ここだけ静か」

ガラス越しに外を見つめる寧々ちゃんの横顔は、

昼間のショーのときよりずっと落ち着いていて、

でもどこか、少しだけ寂しそうにも見えた。

「寧々ちゃんって、舞台のときと今、全然違うね」

「舞台の上の私は、“役”だから」

「役……?」

「舞台の上では、笑って、歌って、みんなを楽しませるの。

でも、ほんとの私は……そんな器用じゃないから」

彼女がそう言って、少しだけ目を伏せた。

私は迷ったけど、正直に口を開いた。

「でもね、私……舞台の外の寧々ちゃんも好きだよ」

「……は?」

「だって、優しいもん。

司くんが暴走したとき止めてくれるし、えむちゃんの話もちゃんと聞いてあげてるし」

「あれは……放っておいたら収拾がつかないからで」

「それが優しさなんだよ」

一瞬、寧々ちゃんが固まった。

そして――

「……あんた、ほんと変な人」

でも、ほんの少しだけ笑った。

観覧車が一番高いところに来たとき、

ふたりの間に沈黙が降りた。

下に見える街の灯りが、宝石みたいにきらめく。

「ねぇ」

「なに?」

「“ワンダショ”って、変な人ばっかりだけどさ。

……なんか、居心地いいんだよね」

「うん。すごく」

ゴンドラがゆっくり降りていく。

光の粒が少しずつ近づいてくる。

【デイリーミッション達成:寧々と、静かな夜を過ごそう】

(笑い声が聞こえなくても、“あったかい”時間ってあるんだな……)

「よぉぉぉし!! 今日もワンダーランズ×ショウタイムは絶好調だっ!!」

夕方のステージ裏。

突然聞こえてきたその声に、思わず反射的に身を引いた。

「……びっくりした……」

「むっ!? 驚くのも無理はない! なにせ、天馬司が登場したのだからな!」

そう言って胸を張る彼は、今日も最初からテンションMAX。

でも、その勢いがなぜか今日は少しだけ空回りしているように見えた。

「司くん、今日ちょっと元気ない?」

「なっ……!? この天馬司が“元気がない”だと!? 馬鹿な!!!」

「声のボリュームは元気だけど……顔がちょっと疲れてる気がする」

「……ぬぅ」

司は少し俯き、舞台の方をちらりと見た。

「昨日、セリフを噛んでしまってな……観客の笑い声が耳から離れんのだ」

「でもあれ、面白かったよ? みんな笑ってたし」

「あれは“笑われた”のだ! “笑わせた”のではない!!」

彼の声が思わず裏返る。

(……いや、どっちでもいい気がするけど)

「司くんはさ、どうして“主役”にこだわるの?」

「それは当然! 俺は舞台の頂点を目指す男だからな!」

「頂点、かぁ……」

「しかしな」

司が少しだけ声を落とす。

「最近思うんだ。“主役”って本当に一人なのかって」

「え……?」

「俺が輝けるのは、類や寧々やえむ、そして――お前がいるからだ」

「っ……」

「舞台は、一人では成り立たん。

誰かが笑い、誰かが支え、誰かが拍手する……それが“ショウ”だ」

彼が真正面から私を見る。

「だから――お前も主役なんだ」

「え、えぇぇぇっ!?!?」

「ふははっ! 驚いたか!?」

「そりゃ驚くよ!!」

司は照れくさそうに鼻を鳴らした。

「だが本気だ。お前がこの世界に来てから、ワンダショはさらに輝いた。

……お前の笑顔は、俺たちの舞台に“色”を足してくれる」

「……司くん」

「だから今日も、俺たちのショウを見ていけ!

天馬司、堂々の主役タイムだ!!!」

舞台のライトが一気に点く。

司がスポットライトの中に立ち、全力の笑顔で腕を広げた。

私はその姿を見つめながら、胸の奥がじんと熱くなった。

“主役”って、ステージの上だけじゃない。

誰かの隣で笑ってる瞬間も、きっと主役なんだ。

【デイリーミッション達成:司と、“主役”を見つけよう】

(……あぁ、やっぱりワンダショが一番だ)

放課後の理科準備室は、夕陽に染まっていた。

机の上には工具とノート、そして半分壊れかけたスピーカー。

「……また壊したの?」

「“また”とは失礼だね。これは改良中」

類くんはそう言いながら、細い指で小さなネジを回している。

光に透けたその横顔が、少しだけ柔らかく見えた。

「君、ちょっと持ってて」

「これ? あ、うん」

「もう少し右」

「こう?」

「……そう。完璧」

類くんの声が近くて、息がかかるくらい。

ドキッとして、手が少し震えた。

「どうしたの?」

「な、なんでもないっ!」

「ふふ。君ってわかりやすいね」

彼は軽く笑いながら、スイッチを入れる。

「――“音”は、感情の振動だと思うんだ」

「感情の、振動?」

「うん。人が笑うとき、声も震える。悲しいときも、怒るときも。

つまり“心の音”を感じ取れれば、人のことがもっとわかる」

「……すごい考え方だね」

「君といると、そういう考えが増えるんだ」

「えっ……?」

類はスピーカーをいじる手を止め、こちらを見た。

「君と話してると、世界の“音”が違って聞こえる」

「そ、そんな……」

「本当だよ」

静かな沈黙。

時計の針の音だけが響く。

「……あのね、類くん」

「うん?」

「私も……類くんの声、好きだよ」

一瞬、類の目が大きく見開かれた。

でもすぐに、ふっと微笑んだ。

「……ありがとう」

その笑顔があまりにもやさしくて、胸がきゅっとした。

「じゃあ、今日のテスト音源はこれにしよう」

類がパソコンに触れると、静かなピアノの音が流れた。

穏やかで、少し切ない旋律。

「君の“笑顔”を波形にしたら、こんな音が出たんだ」

「えっ、それ……私?」

「そう。きれいだろ?」

胸の奥が、ぽっと熱くなる。

まるで、心臓までその音に溶けていくみたいに。

【デイリーミッション達成:類と、同じ音を聴こう】

(……この人の隣にいるだけで、世界がやさしく響く)

「――本番、10分前です!」

スタッフの声が響いた瞬間、

バックステージの空気がぐっと張り詰めた。

客席のざわめき。

スポットライトがまだ閉じた幕を照らす。

「ついにきたね~!」

えむちゃんが両手を広げて、くるくると回る。

スカートの裾がふわっと舞って、

そのまま司くんにぶつかった。

「うわっと!? ちょ、ちょっとえむ! 本番前にテンションが高すぎる!」

「だって~ワンダショだもんっ!」

「まったく……」

司くんは呆れたようにため息をつきながらも、

その目は嬉しそうに笑っていた。

寧々ちゃんは袖の影で台本を見直している。

「台詞は大丈夫?」

「平気。……たぶん」

「“たぶん”!?」

司が思わず声を上げる。

「だいじょーぶだよ!寧々ちゃんは本番強いタイプだもん!」

「……えむ、それプレッシャーになる」

そんなやり取りに、

私はつい、ふふっと笑ってしまった。

「……何笑ってるの?」

寧々ちゃんがこっちを見て、少し照れくさそうに言う。

「みんな、本当に仲いいなって」

「仲いいっていうか、うるさいっていうか……」

でもその口元は、少し緩んでいた。

類くんが少し離れたところでマイクを調整している。

「音響チェック、良好。……君、緊張してる?」

「う、うん……正直ちょっと」

「大丈夫。緊張も“ステージの音”の一部だよ」

「……ありがとう」

「よしっ!それじゃあ――」

司くんが一歩前に出る。

「我らが“ワンダーランズ×ショウタイム”、

今日も最高の笑顔を届けようじゃないか!」

「おーっ!!!」

手を合わせる5人。

えむの笑顔、寧々の真剣な目、

類の静かな優しさ、

そして司の眩しいリーダーの背中。

(――私、本当にこの世界に来たんだ)

幕が上がる。

スポットライトが目に痛いほどまぶしくて、

客席の歓声が胸にぶつかる。

一歩、ステージに踏み出した瞬間、

涙がこぼれそうになった。

夢の中で何度もプレイした“プロセカのステージ”。

そこに、今――

“私自身”が立っている。

【デイリーミッション達成:ワンダショの一員として笑う】

えむが笑い、寧々がツッコミ、司が叫び、類が照明を操る。

そのすべてが、

まるで夢と現実の境目を溶かしていくようだった。

(……ワンダショって、本当に“奇跡”だ)

「おつかれさまーーっ!!!」

えむちゃんの声が、廊下に響いた。

その声が合図みたいに、

スタッフの拍手と「最高だった!」の声があちこちで飛び交う。

司くんは胸を張って、

「ふっ、当然だ!我ら“ワンダーランズ×ショウタイム”に不可能はない!」

と満面のドヤ顔。

「はいはい、はいはい。ドヤりすぎ」

寧々ちゃんがタオルを司の顔に押し付ける。

「むぐっ!?ぬぬっ……!」

「ふふっ、司くん顔ぐちゃぐちゃだよ〜!」

「えむ、笑いすぎっ……!」

私は、少し離れた場所でその光景を見ていた。

みんな笑ってる。

でも――その笑顔のひとつひとつが、

どれもまぶしくて、泣きそうになる。

類くんが、そっと横に立った。

「……君、泣いてる?」

「え? あっ……いや、その……」

「まぁ、泣くのも悪くない。

“感情があふれる”って、ステージの成功だと思うよ」

「……うん」

ほんの一瞬だけ、類の声が優しく揺れた気がした。

彼の髪の端に、照明の残り光が当たって金色に見える。

「ねぇ、類くん」

「うん?」

「ワンダショってさ……どうして、こんなに楽しそうに笑えるんだろう」

「うーん。そうだね……。

多分、“楽しもう”って努力をしてるから、だと思う」

「努力……?」

「そう。“楽しい”って自然に生まれるものじゃない。

誰かが少しだけ我慢して、誰かが少しだけ踏み出して――

そのバランスでやっと、“笑顔”になるんだ」

「……そうなんだ」

「でも、君が来てから少し違うよ」

「えっ?」

「君の“素直な反応”が、みんなのバランスを変えた。

えむの笑顔も、司の情熱も、寧々のツッコミも……。

たぶん、君が見て笑ってくれるのが、嬉しいんだと思う」

類はそう言って、

少しだけ、目を細めて笑った。

その笑顔が静かで、

でもどこかあたたかくて、

胸の奥にじんと残る。

「……ありがとう、類くん」

「礼を言うのは僕のほうだよ」

「え?」

「君が来てくれて、“笑顔”の定義が少し変わった気がするから」

言葉が、出なかった。

代わりに、心臓がやけにうるさく鳴った。

【デイリーミッション達成:類と、“静かな魔法”を分け合おう】

外から、まだ歓声が聞こえる。

でも、私の世界は今――この距離の中だけで、満ちていた。

翌朝。

神山高校の校門をくぐると、いつもより空が青かった。

「ふぁぁ……昨日のショー、夢みたいだったなぁ……」

思わず呟いたその瞬間――

「おっはよーっ!!」

ばばんっ!!

教室のドアを開けた瞬間、えむちゃんの勢いでカーテンが吹き飛んだ。

「うわ!? 朝からテンション高っ!」

「だって昨日の余韻がまだ残ってるんだもーんっ!」

「余韻っていうか……燃え残りやろそれ……」

後ろの席から、寧々ちゃんがイヤホンを外してため息をつく。

「あーあ、また始まった……。朝からテンションの暴力」

「暴力じゃないよ~!えむはみんなを笑顔にしたいだけっ♪」

「……そのテンション、ちょっと分けて」

「いいよ! えーっと、笑顔注入~!!!」

「ひゃっ!?ちょ、近いってば!」

そんな二人の騒ぎを、窓際で見ていた司くんが、

髪をかき上げながらキリッと立ち上がる。

「まったく! “笑顔注入”などという曖昧な言葉では伝わらん!

我ら“ワンダショ”は、観客の心を掴んで離さぬ本格派なのだ!」

「いや教室に観客いないし」

寧々ちゃんの冷静なツッコミ。

「あ、でも見て! 窓の外のハトがこっち見てる!」

「えっ、ほんと!? ならばショーの時間だ!」

「司!?ハト相手にショーしないで!」

「さあ諸君、準備はいいか!えむ!」

「はーい!」

「寧々!」

「やらないってば!」

「そして君!」

「……え、私!?」

「当然だ!昨日のステージを思い出せ!

ワンダショに“日常”など存在しないのだ!」

「存在しないの!?」

「返す相手間違ってる...」

類くんが、少し離れた席からくすっと笑う。

「まったく……朝から騒がしい。でも、悪くないね」

「類くん、止めてよー」

「いや、僕は観察する側だから」

「観察!?」

「こういうとき、どんな“音”が出るか気になるんだ」

「音?」

「うん。司の声、えむの笑い、寧々のツッコミ、そして君の反応。

それ全部が、ワンダショの“日常音楽”なんだよ」

「……なんか、それ聞くとちょっと嬉しいかも」

「ふふ。だろ?」

司が机をばんっと叩いた。

「よし!今日の放課後も練習だ!」

「ええー!?もう!昨日終わったばっかりなのに~!」

「笑顔の魔法に休みはないのだ!!!」

「……ほんとにこの人たち、止まらないんだなぁ」

【デイリーミッション達成:“いつも通り”のワンダショを見守ろう】

そんなふうに笑っていると、

放課後がまた――“ショータイム”になる気がした。

放課後の劇場に、今日も叫び声が響いた。

「そっちの板違う!そっちは“空飛ぶステージ”用のパーツだーっ!!」

「えっ!?じゃあこれ、浮くの!?」

「浮くけど落ちる!!!」

「ひぇぇぇぇぇっ!?」

寧々ちゃんの悲鳴とともに、板ががたんっと傾く。

「えむ!! ネジ!! ネジが逆ぅぅぅ!!!」

「逆のほうがかわいいかな~って思って!」

「美的センスで命を危険に晒すな!!!」

類くんが、すぐ隣でメモを取りながらぼそっと言う。

「面白いね。今日の“ドタバタ音”はBPM200くらいだ」

「……それ、音楽的にまとめないで」

司くんは頭を抱えていた。

「なぜこうも毎回“ショー”の準備がサバイバルになるんだ……!」

「それがワンダショの醍醐味でしょーっ!」

えむちゃんがにこにこでハンマーを振る。

「醍醐味が物理的に危険なんだよぉ!」

そんな混沌のなか、

類くんが私の肩を軽く叩いた。

「ねぇ、ちょっとこっち来て」

「え、なに?」

「新しい照明、テストしたいんだ。君の顔、ちょっと貸して」

「えっ!? か、顔!?」

「うん、光の反射を見たいだけ」

「そ、そういうことね!?」

類くんがスイッチを入れると、

温かいオレンジの光が私の頬に当たった。

「……うん。ちょうどいい」

「(ちょ、ちょっと距離近くない!?)」

「君の瞳に反射する色、面白いね。

オレンジなのに、少しピンクが混じってる」

「……そ、それ褒めてるの!?」

「うん。僕の照明よりきれいだよ」

「!?!?!?」

顔が熱くなって、思わず後ずさる。

「ちょ、ちょっと類くん!そういうこと突然言わないでよぉ!」

「え?観察報告だよ?」

「報告にしては破壊力が高すぎるってば!」

その瞬間、背後で「ぎゃあああ!」という司の悲鳴。

「何事!?」

「ステージの床が……回り始めた!?!?」

「え!?なんで!?」

「あっ、それ“自動回転”モード入れたかも~!」

「誰が!?!?!?」

「えむちゃん……」

「えへへ~まわるのって楽しいよねっ♪」

「ステージが遊園地じゃないの!!!」

回転する舞台。

叫ぶ司。

ツッコミ連打の寧々。

それをメモる類。

そして私は――

類と視線が合って、思わず吹き出してしまった。

「……ほんとにもう、止まらないね」

「うん。でも、止まらないって悪くない」

彼の目が、優しく光っていた。

【デイリーミッション達成:とりあえず回るステージに耐えろ】

(雑すぎん?)

「さぁ諸君!!ショーはまだ終わっていない!!」

司の声が響く。

「次の演目は――“ワンダショ回転地獄”だ!!」

「名前が怖いってば!!」

「いいね、それ採用!」

「採用しないでぇぇぇぇ!!!」

「ふぅ……」

全員が帰ったあとのワンダショ劇場は、

不思議なくらい静かだった。

さっきまで司くんが“演技の神”になりきって叫んでいた舞台。

えむちゃんがハンマーを振り回し、

寧々ちゃんがため息を100回ついた場所。

今は、ただ天井のライトだけがぽつんと灯っていた。

「……今日も、カオスだったなぁ」

一人で笑っていたら、

舞台裏から足音がした。

「まだいたんだ」

「あっ、類くん……」

「片づけ、残ってたから。君こそ、何してるの?」

「なんか……帰るのもったいなくて」

「ふふ、わかる」

類くんは小さく笑って、

舞台の中央まで歩いていった。

「……やっぱり、光ってるね」

「照明のこと?」

「いや、君のこと」

「えっ!?」

「今日のステージでさ、みんなドタバタだったけど――

君だけ、すごく楽しそうだった」

「え、だって……楽しかったし!」

「うん。その“楽しい”が、ちゃんと伝わる笑顔だった」

類くんは照明のスイッチをいじる。

残っていた光がゆっくり落ち、

舞台の上に、月みたいな淡い青が灯った。

「……あ」

「この色、似合う」

「な、なにそれ……!」

「観察。

照明が人をどう照らすかって、実験中」

「またそうやって、理系みたいな言い訳する!」

「ふふ。じゃあ“恋愛実験”って言ったら信じる?」

「え、えっ!?!?!?」

顔が一瞬で熱くなる。

「……冗談」

「っ~~~!もう!意地悪っ!」

「でもね、君の反応が見たかった」

「そ、それ観察目的なの!?!?」

「うん。

どんな照明よりも、君の表情の変化のほうが綺麗だから」

「~~~っ!」

何も言えずに顔を覆った。

類くんは笑いながら、ステージの中央に立つ。

「君が笑うだけで、僕らのステージが明るくなる」

「……そんなの、ずるいよ」

「ワンダショだからね」

ふたりの笑い声が、がらんとした劇場に響く。

【デイリーミッション達成:類の“実験”に巻き込まれよう】

その夜、帰り道の風がいつもよりやさしかった。

きっと、ステージの光がまだどこかで灯ってる――そんな気がした。

ワンダショのストーリーは主人公の人柄上多いんですが他に多めに書いてほしいっていうユニットってありますか?

  • レオ二
  • モモジャン
  • ビビバス
  • ニーゴ
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