皆様のおかげで次走決定しましたよ〜(*ΦωΦ)
さてさてヒメちゃんは牡馬たちと渡り合えるのでしょうか!?
札幌から美浦への帰路。
行きと同じで、他の競走馬たちと一緒。
札幌で勝った。まだ昨日のことなのに……
もう遠い昔のことのような気がする。
重賞初制覇。
白毛ワンツー。
歴史的瞬間。
レコード勝ち。
全部、本当にあったことなんだ。
ゴール板を駆け抜けたあの瞬間。
横目で見た時のソダシの表情。
ああ、走るって本当に気持ちいいことなんだなぁと再確認したこと。
「(次、どこ走るんだろうなぁ)」
そんなことを考えながら、フェリーの中で船酔いしているかもしれない担当厩務員である田中さんのことを心配していた。
あの人本当に私のこととなれば感情豊かになってくれるのは嬉しいんだけど、ね。
美浦トレーニングセンターに着いたのは、夕方だった。
ちなみに田中さんは酔い止めが上手く効いてくれたらしく、行きみたいに散々な目に遭うことはなかったんだって。
馬運車から降りると……
「ヒメー!」
厩舎のスタッフたちが、拍手で迎えてくれた。
「おかえり!」
「勝ったな!すごいぞ!」
「重賞勝ち馬だ!」
その歓声が、少し恥ずかしかった。
でも、嬉しい。
みんなが、喜んでくれている。
水野調教師が、穏やかな表情で立っていた。
「お疲れ様、サクラノヒメ」
「ゆっくり休め。明日から、また調教だ」
まだ、休めない。当然。
これは、始まりに過ぎない。
私は、自分の馬房に戻った。
久しぶりの、美浦の馬房。
藁の匂い。慣れ親しんだ空気。
……ああ、帰ってきたんだ。
『おかえり』
「(ただいま)」
馬房が隣の馬と会話する。
そんなやり取りだってここでしか出来ないことだ。
行きで食べたリンゴが美味しかったこととか、走ったレースのこととか。
まだ未出走らしい隣の馬に色々教えてあげた。
時折、知らなかったことなどに驚いたりしていたけど、でも楽しそうにしていたのが、話しているこっちとしても嬉しかった。
会話をするって、やっぱり精神安定剤になる。そう思った。
翌朝、いつものように調教が始まった。
「ヒメ、軽めのメニューだからな」
田中さんが、優しく声をかけてくれる。
札幌の疲れを取るための、軽い調教。坂路ではなく、平地をゆっくりと。
「無理すんなよ」
佐藤さんが騎乗して、コースへ向かう。
軽い常歩、速歩、そして少しだけ駆歩。
体は、思ったより軽かった。
……疲れは、ほとんど残っていない。
札幌での全力疾走から、まだ数日しか経っていないのに。
馬の回復力って、すごいんだな。
あ、でも調子に乗るとすぐに’’掛かっちゃう’’。
そこら辺、佐藤さんにもたけしにも苦労を強いてる気がするから、気を付けないといけないか。
たけしが話していたけど、所謂私は’’反応が良い’’らしい。
調教を終えて馬房に戻る時。
田中さんに手綱を引かれて歩いていたんだけど……
「おっ、帰ってきた」
「いやいやそれにしてもスゲーよな。白毛の牝馬で重賞勝利、しかもレコード勝ちって」
どうやら、私の話をしていたらしい。
別の厩務員たちが立ち話をしながら私の方を向いていた。
ふふん。凄いでしょ?やったったでしょ?
……と、その時。
「えっ、もう500kg越してんのかよ」
「スゲーな、体型が……その……な?」
「まぁ、な?w牝馬とは……その……w」
……とんでもなく失礼な言葉が聞こえてきた。
気づけば私は田中さんの制止も振り切り、2人の元にダンダンと足踏みしながら近づいていた。
「ブモーーッ!!!(お前らああああ!!!女の子に対して失礼なこと言ってんじゃねーーー!!!!!)」
「えっ!えっ!?」
「うわっ、耳絞ってる絞ってる!!蹴るぞ!?離れろ!」
「ヒメどうした!?!?」
結局私は、田中さんに手綱を引かれて戻っていったのだが、戻る時にいろいろ心配されながら歩いていた。
ヒメが怒るなんてこと初めてだよな、とか。
パドックの時でも観客から牝馬とは思えない体型だとか言われてたけど、そんなに?
500kg越してるって、そんなにおかしい?
いや、確かに……その……初めてタイトルホルダーと併せをした時に感じた、牡馬って牝馬より筋肉量も違うんだなーということ。
その時より大きくなってる自覚はあるけどさ?
……でもレディに対して失礼でしょうがぁ!
あんなに怒ったの初めてかもしれないなぁ。やっぱり、馬になってから人間とは相容れない存在になっちゃったのかなぁ。
牧場での馴致の時に言われた、他の馬とは違う、だとか、不気味、だとか。
やっぱり、普通じゃいられないのかなぁ。
……その後。
夕方の厩舎。
日が傾き、窓から射し込む橙の光が、通路を細長く染めている。
馬房からは、ゆっくりと牧草を噛む音がかすかに響いていた。
その静けさの中で、田中さんは帽子を胸に抱き、少し気まずそうに口を開く。
「……師匠、佐藤さん。
ちょっと、ヒメのことで話がありまして」
水野調教師は新聞から目を上げた。
「ん? どうした田中。サクラノヒメ、何か問題でも?」
田中さんは苦笑いを浮かべ、首をかしげた。
「いや、問題っちゃ問題なんですけどね……」
助手の佐藤が眉を上げる。
「もしかして他の馬となんかあったか? いや、ヒメは大人しいしなぁ」
「違うんです」
田中さんは少し言い淀み、それから言葉を選ぶようにして続けた。
「……今日の帰り道で、他の厩務員が、あの子の体重のことで軽口叩いてたんですよ。“500キロ超えてる牝馬なんて”とか……」
「はは、それはまぁ、よくあることだな」
「そうなんですけど……」
田中さんの表情が少し真剣になる。
「その瞬間、ヒメがブチ切れたんです。耳をギュンッて絞って、前脚で地面ガンガン踏んで、次の瞬間にも蹴りそうになってて……まるで、“お前らふざけんな!”って言ってるみたいで」
「……怒った?」
「ええ。あんなの初めて見ました。完全に、意味わかってる顔でした」
二人の間に、短い沈黙が流れた。
風が通路を抜け、どこかで馬が鼻を鳴らす。
水野調教師は腕を組み、軽く笑うように息を漏らした。
「……まさか。いくら賢くて従順だとはいえ、馬が人の言葉、分かるわけないだろ」
しかしその口元は、どこか引きつっていた。
田中さんは真剣に首を振る。
「いや師匠、冗談抜きで。あれは“分かってる顔”でした。あの子、俺らが何言ってるか、全部分かってる気がします」
助手の佐藤さんが腕を組み、ぽつりと呟く。
「……やっぱり、あの目、普通じゃないんですよ。あれ、何か考えてる。俺、初めて見た時からそう思ってました」
「まあでも、良いじゃないか。レースで結果を残してくれれば」
その日はそれで終わったのだが、後日。
サクラノヒメの馬房近くで軽口叩くの禁止、みたいなルールが設けられた。
最初は疑っていた人たちも、実際にキレてるヒメを見て、誰も軽口を言わなくなったという。
……逆に女の子扱いしてあげたら喜ぶ、みたいな噂もついでに流れていたのだとか。
札幌2歳ステークスから何日か経ったあと。
ネット上では、まだその余韻が続いていた。
【競馬】白毛総合スレ Part.146
234 名無しさん@実況厳禁
サクラノヒメ、美浦帰厩したらしいな
235 名無しさん@実況厳禁
調教再開したって
236 名無しさん@実況厳禁
次走どうすんだろ
237 名無しさん@実況厳禁
朝日杯?
238 名無しさん@実況厳禁
>>237
早いかもだけどGI挑戦ありそうだよな
239 名無しさん@実況厳禁
牡馬混合重賞勝ったんだし
240 名無しさん@実況厳禁
でも牝馬だからなぁ
桜花賞路線もあるし
241 名無しさん@実況厳禁
水野師匠なら、牡馬路線行かせそう
242 名無しさん@実況厳禁
札幌の勝ち方見たら可能性ある
【競馬】水野厩舎総合スレ Part.35
456 名無しさん@実況厳禁
師匠、次走どうすんだろうな
457 名無しさん@実況厳禁
まだ発表ないよな
458 名無しさん@実況厳禁
選択肢は?
459 名無しさん@実況厳禁
朝日杯か、デイリー杯か
460 名無しさん@実況厳禁
朝日杯は牡馬混合GI
デイリー杯はGII
461 名無しさん@実況厳禁
師匠の性格的に朝日杯じゃね
462 名無しさん@実況厳禁
札幌勝ったし、自信あるだろ
463 名無しさん@実況厳禁
でも相手強いぞ朝日杯
464 名無しさん@実況厳禁
それでも見たいわ
白毛がGI挑戦とか
9月20日。
水野厩舎の事務所に、再び関係者が集められた。
水野調教師、田中厩務員、佐藤調教助手、桜井オーナー。
そして今回は……
横川武司騎手も、同席していた。
「サクラノヒメの次走について、話をしたい」
水野調教師が、口を開いた。
テーブルの上には、出走可能なレースのリストが並んでいる。
【選択肢】
A) 朝日杯フューチュリティステークス(GI)
- 12月20日、阪神競馬場、芝1600m
B) デイリー杯2歳ステークス(GII)
- 11月14日、阪神競馬場、芝1600m
C) ホープフルステークス(GI)
- 12月26日、中山競馬場、芝2000m
「札幌で、牡馬混合重賞を制した」
水野調教師が、サクラノヒメのレース映像を見ながら続ける。
「ソダシとの直接対決でも、勝った……この事実は、重い」
桜井オーナーが、慎重に聞く。
「水野さんは、どうお考えですか?」
水野調教師が、深く息を吸った。
「……正直に言えば、迷っています」
全員が、息を呑む。
「札幌の勝ち方を見る限り、この馬の実力はGIでも通用すると思っています。朝日杯にしろ、ホープフルにしろ……牡馬相手でも、戦える」
田中さんが、少し不安そうに言う。
「でも、GIは厳しいですよね……」
「ああ、厳しいさ。それは当たり前の話だ」
水野調教師が頷く。
「朝日杯なら、全国の強豪2歳馬が集まる。ホープフルSも、同じだ」
佐藤調教助手が、意見を述べる。
「札幌は1800mでした。2000mなら、さらに200m長い。スタミナが持つかどうか……」
水野調教師が、映像を止める。
「いや、持つね。サクラノヒメは同世代と比べてスタミナがかなりある方だ。」
全員を見渡した。
「札幌での走りを見る限り、サクラノヒメはまだ余力があった」
横川騎手が、頷く。
「はい。ゴール後もまだ走れる感じでしたし、呼吸も乱れてなかったし、脚も余裕がありそうでした。新馬戦で乗せてもらった時と同じように」
水野調教師が、資料を見る。
「つまり、当初の考え通り、1800mではこの馬の限界に達していないことが確定した訳だ」
沈黙。
桜井オーナーが、ゆっくりと口を開く。
「……水野さん。まさか」
水野調教師が、頷いた。
「ホープフルです」
……ホープフルステークス。
GI。
2000m。
牡馬混合。
そして……
クラシックへの、登竜門。
「ホープフルステークスで結果を出せば」
水野調教師が、続ける。
「この馬が、本当にクラシック距離を走れるかどうか証明できます」
田中さんが、震える声で聞いた。
「師匠……まさか、本気で牡馬クラシック狙ってるんですか?」
水野調教師が、サクラノヒメの写真を見つめた。
「この馬なら、やれるかもしれない。その思いが、段々と濃く強くなってきているんだ」
会議の空気が、変わった。
誰もが、感じていた。
水野調教師は……
本気だ。
サクラノヒメを、牡馬クラシックに挑戦させる気だ。
桜井オーナーが、長い沈黙の後、口を開いた。
「……分かりました。ホープフル、出走させましょう」
田中さんが、驚いた顔をする。
「でも、大丈夫ですか?GIですよ、しかも2000m……」
水野調教師が、田中さんを見た。
「お前は、この馬を信じないのか?」
その言葉に、田中さんが黙り込む。
「……いえ、信じてます。ヒメなら、あのお姫様なら、やれます」
水野調教師が、頷いた。
「なら、問題ないな」
横山騎手が、真剣な表情で言った。
「水野さん、僕、乗らせてください。ホープフルも、この馬と一緒に走りたいです」
水野調教師が、笑った。
「当然だ。お前以外に、誰がこの馬に乗れる」
会議が終わった。
サクラノヒメの次走は……
ホープフルステークス(GI)
12月26日、中山競馬場、芝2000m
牡馬混合のGI。
クラシックへの登竜門。
そして……
もし、ここで結果を出せば……
牡馬クラシックへの道が、開ける。
田中さんが、私の馬房にやってきた。
「ヒメ」
その声が、少し震えている。
「次は、ホープフルSだ。GIだぞ。2000mだぞ」
私は、耳を立てた。尻尾をバタバタと振る。
GIレース。
人間だった頃、何度も見てきた世界。
まさか、自分が馬としてそこに挑戦することになるなんて。
「お前なら、やれる」
田中さんが、私の首を撫でてくれた。
「師匠も、武司君も、みんながお前を信じてるんだ。だから……」
彼が、私の目を見つめた。
「頼むぞ、ヒメ」
私は、鼻を鳴らした。
「ブルルッ(任せてよ)」
GI、走ってみせる。
2000m、走り切ってみせる。
そして……
牡馬クラシックへの道を、切り開いてみせる。
牝馬だって、白毛だって牡馬クラシックで勝てるってことを知らしめてみせるよ。
ホープフルステークスへの出走が決まってから……
調教メニューが、変わった。
「ヒメ、今日は2000m想定の調教だ」
佐藤さんが、いつもより真剣な表情で言った。
2000m。
札幌は1800mだった。
今度は、さらに200m長い。
ほんの少しの差かもしれないが、200m、されど200m。
その距離を、本当に走り切れるのか。
私も、まだ分からない。
「コースを2周する。ペースはゆっくりでいい」
水野調教師の指示で、スタート。
最初はゆっくりと。常歩から、速歩。そして、駆歩。
1周目……
余裕がある。
呼吸も整ってる。
2周目に入る。
少しずつ、速度を上げていく。
まだ、大丈夫。脚が、軽い。
心臓も、落ち着いている。
……そして、ゴール。
「……いいタイムだ」
水野さんが、時計を見ながら頷いた。
「呼吸も乱れていない。脚も余裕がある」
佐藤さんが、驚いた声を上げる。
「ヒメ、本当に2000mいけますね」
「ああ。問題ない」
水野さんが、私を見つめた。
「この馬は……思った以上に、スタミナがある。もしかしたら、それ以上も…………」
その目は、まるでその先、はるか先を見つめているようで。
私は、まだ来ぬ未来を想っていた。
11月から12月にかけて。
坂路調教が、さらに厳しくなった。
「4ハロン、全力で登れ」
佐藤さんの合図で、スタート。
坂路を、一気に駆け上がる。
息が切れる。
脚が重くなる。
……なんだこれ、今までと違ったしんどさ。苦しさ。
でも、止まらない。
もっと強く。
もっと速く。
GIで勝つために。
頂上に到達した時、全身が汗で濡れていた。
「……51秒8」
水野調教師の声が、下から聞こえた。
「自己ベストだ」
51秒台。
札幌の時より、さらに速い。
私は、まだ成長している。
12月中旬。
武司が、水野厩舎を訪れていた。
「ホープフル、どうしましょうか?」
水野調教師が、資料を広げる。
「相手を見てくれ」
テーブルには、出走予定馬のリストが並んでいた。
ダノンザキッド 東京スポーツ杯2歳S勝ち
オーソクレース アイビーS勝ち
ランドオブリバティ 芙蓉S勝ち
ヨーホーレイク 紫菊賞勝ち
タイトルホルダー 東京スポーツ杯2歳S2着、サクラノヒメとの併せ経験あり
「……強豪揃いですね」
武司が、真剣な表情で資料を見る。
「特にダノンザキッドは、本命でしょうか」
「ああ。東スポ杯を勝っている。しかも、サクラノヒメとの併せで先着したタイトルホルダーを下して」
水野調教師が、続ける。
「ただ……サクラノヒメにも、チャンスはある」
武司が、顔を上げる。
「どう乗れば?」
「札幌と同じだ。無理に前に行くな」
「中団から、直線勝負」
「分かりました」
武司が、頷く。
「ヒメを信じて、乗ります」
12月21日。
ホープフルステークスの出馬表が、公開された。
第37回 ホープフルステークス(GI)
2020年12月26日(土)中山競馬場 芝2000m 2歳オープン
1枠1番 オーソクレース 牡2
2枠2番 ヨーホーレイク 牡2
2枠3番 ランドオブリバティ 牡2
3枠4番 サクラノヒメ 牝2
〜ネットの反応〜
@keiba_fan_123
ホープフルS出馬表キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
サクラノヒメ出てる!4番!
白毛牝馬で牡馬混合GI挑戦とか胸熱
RT:8,234 いいね:35,678
@uma_love_45
サクラノヒメ、ホープフル出るのか
ソダシも阪神JF勝ったし当然っちゃ当然か?
相手強すぎるけど、応援する
ヒメちゃん頑張れ!
RT:5,123 いいね:22,456
@keiba_yosou
ホープフルS予想
◎ダノンザキッド(2戦2勝、東スポ杯勝ち)
○オーソクレース(アイビーS勝ち)
▲サクラノヒメ(札幌2歳S勝ち)
白毛の牝馬が牡馬相手にどこまでやれる?
RT:3,456 いいね:15,234
2ちゃんねる競馬板
【GI】ホープフルS 出馬表スレ
234 名無しさん@実況厳禁
サクラノヒメ出るのか
235 名無しさん@実況厳禁
牝馬であのメンバーとか無謀じゃね
236 名無しさん@実況厳禁
札幌勝ってるし、その2着だったソダシも阪神JF勝ってるし、可能性はある
237 名無しさん@実況厳禁
でもダノンザキッド強すぎる
238 名無しさん@実況厳禁
東スポ杯勝ってるし本命だろ
239 名無しさん@実況厳禁
サクラノヒメは3番手評価かな
240 名無しさん@実況厳禁
白毛が牡馬GI勝ったら歴史的
241 名無しさん@実況厳禁
それはさすがに厳しいだろ
242 名無しさん@実況厳禁
でも見たいわ
12月23日。
ホープフルステークスまで、あと3日。
最終追い切りの日。
「お姫様、今日が最後の調教だ」
田中さんが、念入りにブラッシングをしてくれる。
「全力で、やってこい」
佐藤さんが騎乗して、坂路へ向かう。
最後の調教。
全力を、出し切る。
「4ハロン、全力だ」
水野調教師の合図で、スタート。
蹄が地面を蹴る。
坂を、駆け上がる。
息が切れる。
心臓が激しく打つ。
でも、止まらない。
GIで勝つために。
強豪牡馬たちに、勝つために。
……頂上に到達した。
「……51秒9」
水野調教師の声が、響いた。
「完璧だ」
佐藤さんが、興奮した様子で言う。
「この馬、まだ伸びてます!」
「ああ。本番で、全て出し切れる」
水野調教師が、私を見つめた。
「サクラノヒメ。お前なら、やれる」
その言葉が、たまらなく嬉しかった。
中山で、強い
白毛の牝馬だって、牡馬に勝てることを証明してみせる。
……そして、たけしをGIジョッキーにしてみせる。
12月26日。
ホープフルステークス当日。
私は、中山競馬場へ向かった。
馬運車の中から、窓の外を見る。
冬の景色。もうすぐ、年が変わる。
2020年も、あと数日。
私が馬として生まれてから……
まだ2年ほどしか経ってない。
でも、もうGIに挑戦している。
人間だった頃には、想像もできなかったこと。
そして、中山競馬場に到着した。
厩舎エリアに入ると……
たくさんの馬運車が並んでいた。
強豪たちが、続々と到着している。
ダノンザキッドも、きっとどこかにいるのだろうか。
オーソクレースも。
ランドオブリバティも。
そして、タイトルホルダーも。
みんな、強い。
でも……
負けない。
負ける、ものか。
私は、馬房に収容された。
窓から、中山のコースが見える。
今日、あそこを走るんだ。
2000m。
初めての距離。
初めてのGI。
緊張する。
でも……
ワクワクもしている。
どんな景色が見られるんだろう。
どんな戦いが待っているんだろう。
先頭でゴール板を駆け抜けてGI馬になった時、いったいどんな気持ちなんだろう。
田中さんが、馬房にやってきた。
「ヒメ、調子はどうだ」
その声が、少し震えている。
「本番だ。GIだぞ。周りは牡馬しかいない」
私は、元気よく鼻を鳴らし、応えた。
「ヒヒッ!(大丈夫。ちゃんと勝ってくるよ)」
「信じてるからな」
田中さんが、私の首を撫でてくれた。
「みんなが、お前を信じてる。だから……」
彼が、私の目を見つめた。
「頑張れ、サクラノヒメ」
飼葉を食べて。
ブラッシングをしてもらって。
そして……
パドックへの準備が始まった。
次回はレース本番ですよ〜(ง ˙˘˙ )ว
さてどんなふうに書こう……Ҩ(´-ω-`)
凱旋門賞 前哨戦としてどこ行くか
-
ヴェルメイユ賞※牝限
-
フォワ賞
-
ニエル賞
-
ギヨームドルナノ賞
-
プランスドランジュ賞