桜の姫がターフを駆けた軌跡   作:夜刀神 闇

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実際のヒメ鞍上の喋り方研究した!
あとネットの反応書くの大変だけど見てて面白そうだから書き続ける!

2歳戦GI始まります!

p.s:なんか書いてたら長くなった汗


第10話 GI舞台 ~ホープフルステークス~

 

 

午後3時。

 

 

 

中山競馬場は、すでに熱気に包まれていた。

 

 

 

年末、しかも有馬記念の前日。

 

そして、ホープフルステークス。

 

2歳のGIだ。未来のクラシックホースを占う、重要な一戦。

 

そのせいか、スタンドは人で埋め尽くされていた。

 

 

「すごい人だな……」

 

「年末だからな」

 

「ホープフル目当ての人も多いだろ」

 

「ダノンザキッド、人気だもんな」

 

「"あの"白毛を見たい奴もいるんじゃね?」

 

 

ざわめきが、あちこちから聞こえる。

 

あの……か。私も、そこまで有名になったんだ。

 

一足先にGI阪神JFを勝っているはずのソダシの方が、今は有名かとは思うけれどね。

史上初だのなんだの、私が札幌で勝った時も言われてたし。

 

私は、パドックへと向かった。

 

田中さんが、手綱を引いてくれている。

 

 

「緊張してるか、ヒメ?」

 

 

緊張……

 

してないといえば、嘘になる。

 

むしろ、心臓が、いつもより速く打っている。

 

でも、それは……怖さじゃない。

 

ワクワクだ。

 

 

パドックに入った瞬間……

 

 

「おおおっ!」

 

 

どよめきが起きた。

 

 

「白毛だ!」

 

「サクラノヒメ!」

 

「札幌勝った馬だろ?!」

 

 

たくさんの視線が、私に集まる。

 

スマートフォンを構える人、双眼鏡を覗く人、手を振る人。

 

 

私は、背筋を伸ばして歩いた。

 

GIのパドック。札幌とは、空気が、陣営の意気込みが全然違う。

 

 

もっと重い。

 

もっと熱い。

 

気を抜いたらこの空気に飲まれてしまいそうだ。

 

 

……周りを見渡すけど、今迄と違って牝馬が1頭(ひとり)もいなかった。

 

今度こそ、実力を証明出来るんだ。

 

白毛の牝馬だって、"やれる"ってことを、見せつけてやれるんだ。

 

これが、最高峰の舞台なんだ。

 

 

 

…………1頭の牡馬と目が合った。

 

 

 

鹿毛の、力強い馬体。

 

筋肉の付き方が、素晴らしい。

 

歩き方も、堂々としている。

 

 

……本命馬の、風格。

 

 

 

「うおおお、ダノンザキッド!」

「本命!」

「いい馬体してるな!」

 

 

 

観客の声が聞こえてくる。

 

私は、ダノンザキッドを見た。

 

 

強い。

 

 

間違いなく、強い。

 

でも、負けない。

 

絶対に負けるわけにはいかない。

 

 

 

パドックを周回しながら、他の馬たちも観察していた。

 

 

……と、その中に、いつかの日に併せた馬がいた。

 

 

11番、タイトルホルダー。

前に会った時より、少し大きくなったかな?

 

しかし、今では何故だか私より小さく見える。

 

ふふん、私も少しは変わっているってことかな?

 

 

……父の血を引く馬たちと、こうして走る。

本当に、不思議な気分だね。

 

 

そうしていると、色とりどりの勝負服を着た騎手たちが奥の方からやってきた。

そこに、たけしもいる。物凄く嬉しい!

 

 

「ヒメ!」

 

 

その声が、いつもより低い。

 

たけしも、緊張しているんだ。

 

 

「お前なら、やれる」

 

 

そしてたけしが、私の背中に跨る。

 

その重みが……いつもより、重く感じた。

 

いや、違う。これは、GIの重みだ。

 

期待の、重み。

 

 

でも……大丈夫。

一緒に、走ろう。

 

私たちは、最高のコンビなんだから。

 

やって、やろうよ。

 

そして、あなたをGIジョッキーにしてみせるから。

 

 

 

 

 

パドックを周回している間に、オッズが表示された。

 

 

 

大画面に映し出される数字。

 

 

 

1番人気:ダノンザキッド(2.1倍)

2番人気:ランドオブリバティ(3.5倍)

3番人気:サクラノヒメ(5.7倍)

4番人気:ヨーホーレイク(13.1倍)

5番人気:シュヴァリエローズ(14.4倍)

 

 

3番人気。

 

これだけの強豪揃いの中、牝馬で3番人気。

 

かなり期待されている方だと思う。

でも、本命ではない。

 

それがちょうどいい。

 

プレッシャーが、少し軽くなった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

各地の反応

 

スタンドにて

 

「サクラノヒメ、綺麗だな」

「白毛って、やっぱ目立つ」

「でもダノンザキッドが本命だろ」

「牝馬だしな、厳しいと思うけど、まぁいい所までいけるといいな」

「でも札幌勝ってるし、勝つ可能性はあるだろ」

 

 

 

 

 

 

ネット配信

 

コメント欄:

- サクラノヒメきた

- 白毛綺麗

- でもダノンザキッド強そう

- 3番人気か

- 牝馬頑張れ

- 白毛応援

 

 

 

Twitter

 

@keiba_fan_123

パドック

サクラノヒメ、めっちゃ綺麗

でもダノンザキッド強そう...

どうなるか

#ホープフルS

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パドックを後にして……

 

いよいよ、本馬場へ。

 

 

 

ゲートをくぐった瞬間……

 

 

 

「うおおおおおっ!!」

 

 

凄まじい歓声。

スタンドが、揺れているような気がした。

 

人、人、人。

 

何千人もの人たちが、スタンドを埋め尽くしている。

 

札幌とは、比べ物にならない。

 

 

これが……

 

中山競馬場。GIの舞台。強豪牡馬たちが集うレース。

 

 

体が、震えた。

 

武者震い。怖さじゃない。興奮だ。

 

こんなにたくさんの人が……

 

私を、私たちを、見てくれている。

 

応援してくれている。

 

 

たけしが、私の震えに気づいた。

 

 

「大丈夫か?」

 

 

私は、小さく鼻を鳴らした。

 

大丈夫。これは……

 

 

 

嬉しい震えだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「白い馬体がひときわ目立ちます!これまで2戦2勝。この中山の舞台で、GIホースの座を、更なる栄光を!4番サクラノヒメ510kg、+2kg!」

 

 

アナウンスが流れる。

 

 

軽く芝を駆ける。

 

 

 

中山の芝。

 

札幌の時より少し硬めだけど、しっかりしている。

 

新馬戦の時の東京より、めちゃくちゃ走りやすそうだ。あの時は、不良馬場でかなりぬかるんでたからね。

 

 

蹄が、気持ちよく地面を掴む。

 

返し馬をしていると……

 

隣に、別の馬が並んだ。

 

 

鹿毛の、大きな馬…………ゼッケンを見ると。

 

 

10番 ダノンザキッド。

 

堂々の1番人気の馬だ。史実では、確かかなり強い走りを見せて勝った馬だ。

流石だな、面構えが違う。

 

 

 

また横を見ると、すぐ隣に別の馬が。

 

……ああ、この子は知ってる。併せで一緒になったタイホ君だ。

 

 

11番 タイトルホルダー。

 

後の、菊花賞馬。もし私が牡馬クラシックに本気で挑むのなら、間違いなく私のライバルとなる存在になる。

 

未来の、菊花賞馬だ。

 

 

私は、その馬たちと並んで、軽く駆けた。

 

 

お互いに、返し馬。

 

競い合っているわけじゃない。

 

 

「(ねえ、今日も頑張ろうね)」

『……』

 

 

タイトルホルダーは、応えてくれなかった。

併せの時も、そうだった。他の馬はよく返してきてくれたりしてたけど。

こちらを一瞬見たかと思うと、追い越して去って行ってしまった。

 

本番で、力を出せと言いたげな顔で。

 

 

……私も、返し馬を終えて、輪乗りへ。

 

 

 

 

 

 

「去年はコントレイルがこのレースを3戦3勝で制して、皆さんもご存知の通り、無敗の三冠馬へと上り詰めました。今年はどの馬がこのレースを勝って飛躍するでしょうか?中山11レース、第37回ホープフルステークス、GI。スタートまでもう暫くお待ちください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私を含め15頭の馬たちが、輪乗りをしている。

 

 

本命馬への、注目。

 

私は、静かに輪乗りを続けた。

 

落ち着いている。

 

 

心臓は速く打っているけど、パニックじゃない。

 

 

 

これは……戦いへの、高揚なんだ。

 

 

 

 

 

「まもなく発走です」

 

 

アナウンスが響く。

 

いよいよだ。

 

 

 

「各馬、ゲートへ」

 

 

係員が、私を誘導してくれる。

 

 

「4番、サクラノヒメ」

 

 

私は、迷わずゲートの中へ。

 

ガシャン、と扉が閉まる。

 

 

もう何度も経験したことなのに、今回ばかりは流石に空気が違った。

 

各陣営が仕上げた牡の若駒たち。その中に私が混ざっている。

 

史実では、ダノンザキッドが勝った、このレース。

 

史実では、エフフォーリアがたけしをGIジョッキーへと導いた。

 

神様のなんの悪戯かは分からないけれども、こうしてたけしを乗せている。

 

……悪いけど、一足先に、その座は譲らせてもらうよエフフォーリア君?

 

 

前を見る。

 

2000m。

 

初めての距離。でも、大丈夫。

 

調教で、何度も走った。

 

ソダシを下したこの脚で、走る。

 

この脚なら……

 

 

 

走り切れる。

 

 

 

 

 

たけしが、私の首を軽く叩いた。

 

 

「行くぞ、ヒメ!GI、取りに行こう!俺たちで」

 

 

全馬、ゲートイン完了。

 

 

静寂。

 

 

 

……心臓の音だけが、やけに大きい。

 

 

 

 

ドクン、ドクン、ドクン……

 

 

 

 

 

 

 

 

来い。

 

 

 

 

 

ガシャァァンッ!!

 

 

 

 

 

扉が、開いた。

 

 

「スタートしました!!ホープフルステークス!!」

 

 

一斉に、飛び出す。

 

15頭の馬が、中山の芝を蹴る。

 

 

「1番人気のダノンザキッド好スタートを切りました!そして白毛の牝馬サクラノヒメも良いスタートです!観客の声援を受けて、まずホームストレッチ先行争いは、11番タイトルホルダーが先頭に立ちます」

 

 

タイトルホルダーが、まずは先頭に立った。

私はその様子を見ながら、割りといい位置につけたのかなと思っていた。

周りは全員牡馬(おとこ)。ナーバスになるかもしれないから気をつけろと水野さんが言ってたっけ。

 

 

「……各馬の出方を見ながら、内では3番ランドオブリバティこちらの方が前か?そして6番ホールシバン、そしてインコース4番手1番オーソクレース。並んで10番ダノンザキッド……」

 

 

前が、速い。

札幌なんて、比じゃないくらいプレッシャーに襲われる。展開が、早い。

周りの馬たちの闘志が溢れ出ている。

…………勝ちたいって、気持ち。先に先に行きたいって、気持ち。私にだって……ある!

 

 

たけしが、手綱を抑える。

 

 

「……焦るな!」

 

 

その声で私は、少し力を抜けた。

そうだね、焦らない。ここを、私たちに向けた声援で埋めつくしてしまおう。

 

2000m、まだ長いんだから、楽しんでいこう?

 

 

「6番手に白毛の馬体サクラノヒメ!横川武司騎手、落ち着いた位置取りです!今日はそれほど後方ではありません!」

 

 

ダノンザキッドが、私の少し前にいる。

本命馬の、気配。重い、重すぎる。

 

とんでもない気配だ。あれに追いかけられるタイトルホルダーたち逃げ・先行勢が少し不憫になる。

 

 

 

でも……私だって。

 

 

 

……負けない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「1000m通過、1分1秒9と計測されて向正面中間です」

 

 

 

速い。速く感じる。

札幌の時より遅いはずだ。なのに、どうして……

前ではランドオブリバティが、逃げを打っている。

 

 

「中団よりも後ろはバラけました5番テンカハル、9番アオイショー、3コーナー手前7番マカオンドール、後方から3頭目15番セイハロートゥユーが行って、最後方から14番モリデンアローです……3コーナーのカーブに入っています」

 

 

前だけじゃなく、後ろから感じる気配。

前の馬だけじゃなく、私も同じように追われてるんだということ。

たけしがいなかったら、もしかしたら私は…………いや、やめよう。私は目の前のレースに全力で挑むのみなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

……と、ここで前方に動きがあった。

 

 

「3番手が11番タイトルホルダー、インコースが1番オーソクレース。外ジョッキーが促して10番ダノンザキッドが3番手外目。その後ろがテンカハル、外から鞭が入ってアドマイヤザーゲ、更には2番のヨーホーレイク上がっていきます!…………っ!?外に3番の、ランドオブリバティ逸走してしまいました!!!」

 

 

 

前方が、乱れる。

 

完全なアクシデント。チラチラと見る騎手や馬もいる。

 

 

でも、私たちには影響ない。

 

 

 

むしろ……

 

 

 

チャンスだろう。

 

 

 

「先頭がいなくなりました!今度は、ダノンザキッドが先頭か!タイトルホルダー、そして内は3番オーソクレース3頭競り合って200を切って坂を上るッ!!!」

 

 

ダノンザキッドが、ぐんぐん前に出ていく。

 

 

速い。本命馬の、底力。タイトルホルダーも、まだ私の前にいる。

 

心臓が物凄く速く打っている。これまでにないほどのプレッシャーが私を襲う。牡馬たち、先行集団、そして中山の急坂を前にしてスタミナをゴリゴリ削られる。

 

 

 

……あぁ、良かった。調教、真面目にやっておいて。

 

 

 

たけしが、手綱を動かした。

 

 

「ヒメ、行こう!!!」

 

 

あぁ、そうだね……行こう。

 

たけしが、行こうって、そう言ってるんだ。

 

今度は私たちの番だ。

 

 

脚が、地面を蹴る。

 

風が、顔を叩く。

 

 

もっと速く。

 

 

 

もっと前へ。

 

 

 

前へ!!!

 

 

 

 

 

「…………おっとここで横川武司とサクラノヒメが来たぞおぉーーーっ!!!鞭を叩いて白毛の馬体が飛んできたッ!!タイトルホルダーを躱して先頭に並びかけようとしているぞ!!!」

 

 

 

ゴールまであと少ししかない。

 

ダノンザキッドの背中が、もうそこに、見える。

 

 

あと、少し、あと少し、あと少し!!!

 

 

全身の力を、脚に込める。

 

 

 

もっと。

 

 

 

もっと速く。

 

 

 

この脚が……

 

 

 

前世では、絶対に味わえなかった力が…………

 

 

 

今、ここにある!!

 

 

 

「しかし先頭はまだ10番のダノンザキッド、内から1番オーソクレース!」

 

 

ダノンザキッドとの距離が更に縮まる。

 

 

 

「サクラノヒメ、ダノンザキッドに並んだ!!しかしダノンザキッドも譲らない!1番人気に応えるかダノンザキッド!冬の中山に花咲かせるかサクラノヒメ!!!」

 

 

ダノンザキッドの鞍上が、ムチを入れる。

 

ダノンザキッドも、必死に走っている。

 

あぁ、あれが本命馬の、意地なんだ。

 

 

 

でも……

私も、負けない。

 

 

 

たけしが、手綱を動かす。

 

 

「行け!!ヒメ!!」

 

 

 

もう一度…………

 

 

 

芝を蹴り上げた。

 

 

 

 

「ここでサクラノヒメが抜け出した!白毛の牝馬が先頭に立ったッ!ダノンザキッドを追い抜いて先頭だ!!サクラノヒメ先頭に変わって3番手はヨーホーレイク!!」

 

 

 

……抜け出したその時、前には誰もいなかった。

 

札幌で感じたあの景色、あの空気。あぁなんて気持ちいいんだろう。

 

横目でダノンザキッドを見た。

 

 

「(お先に)」

 

 

そう告げると、私は、力を振り絞るように一気に加速した。

 

 

 

「サクラノヒメ抜けた!サクラノヒメ抜けた!サクラノヒメ抜けたッ!!中山に桜が咲き誇るぞホープフルステークス!」

 

 

 

差が、開いていく。

 

1馬身、2馬身……他の馬たちを置き去りにしていく。

 

あぁ、本当になんて景色だ。

 

 

 

「これは強い!!」

 

 

 

後ろから、追いすがる気配。

 

 

 

でも……

 

 

 

届かない。

 

 

 

私の方が……

 

 

 

速い。

 

 

 

ゴール板が、目の前に迫る。

 

 

 

「行けえええええ!!!!!」

 

 

 

たけしの声が、反響して私の耳に届いていた。

 

 

 

そして…………

 

 

 

駆け抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴオオオオオォォォルッ!!!」

 

 

 

 

 

「勝ったのは……なんと、なんと!!!白毛の牝馬、サクラノヒメ!!!4番サクラノヒメがホープフルステークスを制しました!!!並み居る牡馬達(男ども)を打ち破り、今年も3戦3勝ホープフルステークスウィナーが誕生しました!!!2着にダノンザキッド!!1番人気、本命を破っての大金星です!!そして3着争いは1番オーソクレースに最後追い込んだ2番ヨーホーレイク…………」

 

 

 

 

 

スタンドが……爆発した。

 

 

 

「うおおおおおっ!!!」

 

「ヒメちゃあーーーん!!!」

 

「すげええええええ!!!」

 

 

 

 

 

拍手、歓声、叫び声。

 

全てが、混ざり合って、巨大な音の渦になる。

 

GIの、歓声。

 

 

 

これが……

 

 

 

最高峰の舞台なんだ。

 

 

 

 

 

「これは……これは凄いレースでした!!白毛の牝馬で牡馬混合GI制覇!しかも、本命ダノンザキッドを2馬身差で破っての完勝!!サクラノヒメ、見事です!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

各地の反応(ゴール直後)

 

中山スタンド

 

「うおおおおっ!!」

 

「サクラノヒメ勝った!!」

 

「マジかよおおおお!!」

 

「すげぇ!!」

 

 

 

WINS汐留

 

「きちゃああああ!!」

 

「サクラノヒメ!!」

 

「3番人気的中!!」

 

「ダノンザキッド負けた!!」

 

「本命崩れた!!」

 

「でも感動した!!」

 

 

 

WINS難波

 

「うわああああ!!」

 

「牝馬や!牝馬がホープフル勝ったで!!」

 

「白毛や!!」

 

「すごいわ!!」

 

「泣ける!!」

 

 

 

ネット配信

 

視聴者数:45,678人(最高記録更新)

 

コメント欄:

- きたああああああああ

- サクラノヒメ!!!!

- GI制覇!!!!

- 牝馬が!!

- 白毛が!!

- 泣いた

- 歴史的瞬間

- 鳥肌

- すごすぎる

- 感動

 

 

 

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トレンド:

1位 #ホープフルS

2位 #サクラノヒメ

3位 #白毛GI制覇

4位 #ダノンザキッド

5位 #牝馬GI

 

 

 

全国のタイムラインが、一斉に動く。

 

 

 

@keiba_fan_123

泣いた

牝馬がホープフル勝った

しかも本命破って

サクラノヒメ、ありがとう

#ホープフルS

 

RT:52,345 いいね:178,234

 

 

 

@uma_love_45

これは歴史に残るレース

白毛の牝馬がGI制覇

しかもダノンザキッドに2馬身差

サクラノヒメ、最高

#ホープフルS #白毛ホープフル制覇 #次は皐月

 

RT:38,123 いいね:145,678

 

 

 

@keiba_veteran

競馬歴30年

今日のレースは、ベスト5に入る

牝馬でGI、しかも圧勝

サクラノヒメは本物だ

これは、クラシックも見えてきた

#ホープフルS

 

RT:25,678 いいね:98,234

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、ゆっくりと速度を落とした。

 

 

 

勝った。GIを、勝った。

ホープフルステークスを、勝ったんだ。

1番人気のダノンザキッドを破って。

 

 

……信じられない。

 

人間だった頃、テレビで見ていたGI。

 

声援を送っていた舞台。

 

その舞台で……私が、先頭でゴール板を駆け抜けたんだ。

 

 

たけしが、私の首を何度も何度も叩いた。

 

 

「やった!!やったぞヒメ!!!」

 

 

その声が、喜びで震えている。

 

 

「すごい!!お前、本当にすごい!!!GI勝ったぞ!!GI!!ホープフルだぞっ」

 

 

 

たけしも、初めてのGI勝利。

私と一緒に、掴んだ。その事実が嬉しかった。

一緒に、勝てて、本当に本当に嬉しかった。

 

 

 

 

 

振り返ると……

 

 

 

ダノンザキッドが、ゆっくりと走っていた。2着だった。

 

 

『おい、お前。白い雌』

 

 

…………白い、雌。雌ねぇ。うん、合ってるけど口悪いねぇ君!?

 

ブルルルブルルルと鼻をフゴフゴさせてるから悔しいのかは分からないけれども、私は話しかけてくれたのが嬉しくて……

 

そろそろとダノンザキッドに近づき、鼻筋を擦り合わせて……

 

 

 

「(良いレースだったね。また今度一緒に走ろうよキッド君♪)」

『次はオレのほうが速く走るからな。調子に乗るなよ。覚えとけよ、白い雌!!!』

「(えっ!えっ!?なんで追いかけてくるのおおおお!!?ヤメテ!!?)」

 

 

私は、耳を絞りまくって急に敵意むき出しにして襲いかかってきたダノンザキッドに恐れ戦き逃げてしまい、ダノンザキッドの鞍上がやっとの思いで止めてくれ、たけしが慌てて手綱を絞って私を止めるまでその追いかけっこは続いた。

 

全力疾走したあとでやめてよぉ、とヒィンと力無く嘶きたけしを心配させてしまったことは反省だ。

 

ダノンザキッドの鞍上がたけしの腕をバンバンと叩き、「武司君ウイニングランしてきなよw」とそう言われ、たけしは私に乗ったままスタンド前を走り始めた。

 

 

 

 

 

……スタンドは、まだ興奮冷めやらぬ様子だった。

 

 

 

「サクラノヒメー!!」

 

「GI馬!!」

 

「白毛すごい!!」

 

「牝馬でホープフルステークス!!」

 

 

拍手が、鳴り止まない。

 

私は、ウイニングランをしながら……スタンドを、見上げた。

 

何千人もの人が、手を振ってくれている。笑顔で、拍手してくれている。中には、泣いている人もいる。

 

 

……あぁ、武司コールだ。

 

 

嬉しい、嬉しいよ。

 

こんなに、たくさんの人が私を、私たちを見てくれている。

 

応援してくれている。

 

 

 

 

 

人間だった頃……

 

 

あの日、振られて。

 

裏切られて。

 

殺されて。

 

 

全部、終わったと思った。

 

 

 

でも……

 

 

 

こうして、もう一度生きることができた。走ることができた。

 

そして……

 

GIを、勝つことができた。

 

 

 

前世の痛みは、まだ消えてない。

 

 

 

でも……今は、幸せだ。

 

走ることが、楽しい。

 

みんなが、応援してくれる。

 

 

この馬生が……

 

 

 

愛おしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

田中さんが、号泣しながら待っていた。

 

 

「ヒメえぇぇぇ!!!」

 

 

彼が、駆け寄ってきた。

 

 

「GI!!GI勝った!ホープフル!!」

 

 

その顔は、涙でぐしゃぐしゃだった。

札幌の時でも泣いてたけど、もしかして毎回泣いちゃう感じ?

 

……それとなれば、田中さんの涙が枯れるくらいまで勝ち続けなきゃね。

 

 

「お前……お前……!!」

 

 

言葉にならない。

 

ただ、泣いている。

 

田中さんが、私の首を抱きしめた。

 

 

 

その温かさが……凄く、心に染みた。

 

水野さんも、やってきた。その顔は……穏やかだった。

 

でも、目には……確かな、感動があった。

 

 

「サクラノヒメ」

 

 

その声が、少し震えている。

 

 

「よくやった。見事だった」

 

 

水野さんが、私の顔を覗き込む。

 

 

「お前は、本物だ」

 

 

たけしが、私の背に乗ったまま興奮した様子で言った。

 

 

「師匠!凄いですよヒメ!!2000m、全然問題ないです!直線も、まだ伸びてましたし……」

 

 

水野さんが、深く頷く。

 

 

「ああ、見ていた」

 

 

彼が、私の目を見つめた。

 

 

「この馬は……クラシックに行ける」

 

 

クラシック。

 

その言葉が、いまはっきりと口にされた。

 

田中さんが、驚いた顔をする。

 

 

「師匠……まさか」

 

 

 

水野さんが、答える。

 

 

「皐月賞だ」

 

 

皐月賞。牡馬クラシック、第一戦。

 

中山競馬場、芝2000m。このレースと、同じだ。

 

桜の季節に行われる、クラシック第一関門。

 

 

「牝馬で……牡馬クラシックに……」

 

 

田中さんが、震える声で呟く。

 

 

「ああ」

 

 

水野さんが、きっぱりと答えた。

 

 

「今日の走りを見た。この馬なら、やれる。ダノンザキッドを破った。しかも2馬身差でだ。2000mも、牡馬相手でも怖気付くことなく走り切った」

 

 

たけしが、真剣な表情で言った。

 

 

「師匠、次も乗らせてください。皐月賞も、この馬と、ヒメと一緒に走りたいです」

 

 

水野さんが、笑った。

 

 

「当然だ。お前とサクラノヒメのコンビで、クラシックに挑んで欲しい。最後まで、な」

 

 

 

 

 

ウィナーズサークル。

 

中山競馬場の、一番輝かしい場所。

 

勝利馬だけが立てる、特別な場所。

 

 

私は、そこに立っていた。

 

 

周りを、たくさんの人が囲んでいる。

 

 

 

カメラのフラッシュ。

 

拍手。

 

歓声。

 

 

 

全てが、私に、私たちに向けられている。

 

 

私の肩に、優勝レイがかけられた。

 

【2020年 ホープフルステークス】と、書かれた赤い優勝レイが。

 

勝利の、証。GIを制した、証。

 

カメラのシャッター音が、響く。

 

 

この瞬間が……永遠に、記録される。

 

白毛の牝馬が、GIを制した瞬間。

 

歴史に、刻まれるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……表彰式の後、武司がインタビューに応えていた。

 

 

 ̄ ̄おめでとうございます!横川武司騎手、今回GI初制覇です、今の気持ちを聞かせてください!

 

 

「ありがとうございます。えー……正直、もう、嬉しいです。それしか出てこないですよ!えー……もうデビューから乗せていただいてる馬なんですがいやーほんと、最後まで頑張ってくれて……すごい馬です、ヒメは」

 

 

 ̄ ̄直線では見事な末脚でしたね!

 

 

「そうですね、置いてかれそうになるところもあったんですけど、あの子、自分から“行く”って気持ちを見せてくれて。僕もう鞭なんていらないんじゃないかってくらい、もう、馬が全部やってくれました」

 

 

 ̄ ̄この馬とのコンビで、ここまで来ました。サクラノヒメはどんな存在ですか?

 

 

(少し照れ笑いをしながら)

「最高の相棒です!このままクラシック最後まで走り切りたいですね!」

 

 

 ̄ ̄サクラノヒメは次走、桜花賞ではなく、皐月賞に出るという話が出ていると聞きますが?

 

 

「ええ、そうですね。ヒメの脚は皐月賞でも十分通用すると思ってますし、もしそこ走るとしても、僕は出せるだけの力を出すだけです」

 

 

 ̄ ̄それは楽しみですね。見事な今回ホープフルステークスの制覇、ファンの皆様も、テレビの前で多くの方が応援していたと思います!最後、ファンの皆様に一言メッセージお願いします!

 

 

「はい!……ここまで無敗で、GI取れて。本当にこの馬の力もあり、関係者の方々のおかげというのもあり。本当に嬉しいです。これからは今回のホープフルやまたまた皐月賞以外にも、もっと大きいところに挑戦していくと思いますけど、更なるプレッシャーがかかると思います。

でも……馬の能力も……そうですけど。僕自身も、もっともっと成長して、大きい本番に挑めるように、頑張りたいと思います。よろしくお願いします!」

 

 

 ̄ ̄改めて、おめでとうございます!横川武司ジョッキーでした!

 

 

「ありがとうございましたっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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トレンド:

1位 #サクラノヒメ

2位 #ホープフルS

3位 #皐月賞

4位 #牝馬クラシック挑戦

5位 #白毛GI

 

 

 

@keiba_fan_123

いよいよ本気で牡馬路線見えてきた

牝馬で牡馬クラシックとか

胸熱すぎる

#サクラノヒメ #皐月賞

 

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@uma_love_45

皐月賞!!!

桜花賞じゃなくて皐月賞!!

白毛の牝馬が牡馬クラシック挑戦とか

もう泣いてる

応援するしかない

#サクラノヒメ

 

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@keiba_veteran

水野師匠、本気だ

ホープフル圧勝の内容なら、確かに可能性はある

でも、皐月賞は牡馬の本気が集まる

厳しい戦いになるだろね

それでも、見たいよね

#サクラノヒメ #皐月賞

 

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@keiba_history

【速報】

サクラノヒメ、皐月賞挑戦へ

牝馬の皐月賞挑戦は

ファンディーナ(2017年度7着)以来

もし勝てばヒデヒカリ(1948年度優勝)以来

白毛での挑戦は史上初

歴史的挑戦になる

#競馬 #サクラノヒメ

 

RT:92,456 いいね:312,789

 

 

 

 

 

 

2ちゃんねる競馬板

 

【GI制覇】サクラノヒメ 皐月賞挑戦へ Part.1

 

1 名無しさん@実況厳禁

立てた

水野師匠、本気で皐月賞狙ってたんだなやっぱり

 

2 名無しさん@実況厳禁

>>1

 

マジで牡馬クラシック行くのか

 

3 名無しさん@実況厳禁

ホープフル勝ってるし当然ではある

 

4 名無しさん@実況厳禁

でも皐月賞は別格だぞ

全国の強豪牡馬が集まる

 

5 名無しさん@実況厳禁

それでも見たい

白毛の牝馬が牡馬クラシック挑戦とか

 

6 名無しさん@実況厳禁

桜花賞出ないのか?

 

7 名無しさん@実況厳禁

>>6

師匠のインタビューだと

牡馬相手でこそ活きるって

 

8 名無しさん@実況厳禁

完全に牡馬路線か

 

9 名無しさん@実況厳禁

ダービーも狙うのか?

 

10 名無しさん@実況厳禁

>>9

皐月賞で結果出せばあるだろうな

 

11 名無しさん@実況厳禁

白毛の牝馬がクラシック制覇とか

浪漫しかない

 

12 名無しさん@実況厳禁

全力で応援するわそれはマジで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

 

私は、中山の厩舎で横たわっていた。

 

体は疲れている。いや、正直メッチャ疲れた。

 

ただまぁたけしとか……田中さんに至っては泣いて喜んでくれたし……

 

でも、心は満たされていた。

 

 

 

 

 

GI制覇。

 

たけしに、初GI制覇を送れて本当に良かった。

私は、ウィナーズサークルでのたけしの嬉しそうな顔を見て、思わず擦り寄ってペロペロ舐めまくってしまったことを思い出した。

 

 

 

皐月賞への挑戦。

牡馬クラシック。

桜の季節に行われる、最高峰の戦い。

 

 

牝馬で、挑む。

 

白毛で、挑む。

 

 

 

 

 

田中さんが、最後にもう一度馬房に来てくれた。

 

 

「ヒメ」

 

 

 

その声が、優しかった。

 

 

「GI、勝ったな。それでこれから、ようやくクラシックだ」

 

 

田中さんが、私の首を撫でてくれる。

 

 

「皐月賞……牡馬の本気が集まるレースだ。厳しい戦いになる」

 

 

彼が、私の目を見つめた。

 

 

「でも……お前なら、やれる。俺も、師匠も、武司君も。みんなが、お前を信じてる。"牝馬だから"なんて言う奴を、後悔させてやれ」

 

 

私は、小さく鼻を鳴らした。

ありがとう。

 

 

信じてくれて。

 

窓の外を見ると、星が輝いていた。

冬の夜空。

澄んだ、綺麗な星。

2020年が、もうすぐ終わる。

 

そして……

 

 

 

2021年が、始まる。

 

 

 

私の世代のクラシックの、年。

 

皐月賞。

ダービー。

 

その舞台に……

 

私は、立つことになる。

 

 

 

 

 

目を閉じる。

 

明日から、また新しい1日が始まる。

皐月賞に向けて。

クラシック制覇に向けて。

 

 

でも今は……

 

 

ただ、眠ろう。

 

 

GI制覇の、余韻に浸りながら。

 

 

 

 

 

ホープフルステークス。

 

 

 

白毛の牝馬が、GIを制した日。

 

 

 

歴史に残る、一日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12月31日

大晦日。

 

美浦トレーニングセンターは、静かだった。

 

本格的な調教をする馬は少ない。

 

ほとんどのスタッフが当番制で休みを取り、家族と過ごしている。

 

 

でも……

厩舎にはまだ人がいた。

 

田中さんが、私の馬房にやってきた。

 

 

「ヒーメ!年越しそば、人間だけだけどな」

 

 

彼が、笑いながら言った。

 

 

「お前には、特別な乾草だ」

 

 

新鮮な、良い香りの乾草を置いてくれる。

 

 

「今年は……すごい年だったな」

 

 

田中さんが、遠くを見つめる。

 

 

「お前がこっちに来て新馬戦勝って、札幌で重賞勝って、それで……GIに勝った」

 

 

彼が、私を見つめた。

 

 

「来年は、もっとすごいことになる。皐月賞……クラシックだ」

 

 

田中さんが、少し不安そうな顔をする。

 

 

「正直、怖い。あんなことを言ったけどさ、牡馬相手はやっぱり厳しい……でもな」

 

 

彼が、私の首を撫でてくれた。

 

 

「お前が、無事に走りきってくれればそれで俺は嬉しいから」

 

 

 

遠くから、除夜の鐘が聞こえてきた。

2020年が、終わろうとしている。

 

そして……

 

2021年が、始まる。

 

 

クラシックの、年。桜の季節。

皐月賞。

 

 

私は、窓の外を見つめた。

冬の夜空に、星が輝いている。

 

その向こうに……

 

春が、待っている。

 

 

桜が咲く、季節が。

 

 

サクラノヒメ(桜の姫)として……桜の季節に、走る。

牡馬クラシックで、走る。

 

 

新しい年が、始まる。

 

 

新しい物語が、始まる。

 

 

 

そして……

 

 

 

私の挑戦は、まだ終わらない。

 

 

 




ジョッキーインタビューの時の鞍上の言葉は、2021年度皐月賞をエフフォーリアで制覇時に発した言葉を引用したりしてます

競馬のゴール後とか分からなすぎて調べながら書いてます!!!

違和感あったらゴメン!!!

〈追記〉
優勝レイ、青じゃなくて赤ですね。気づいたので訂正しておきます

あと感想嬉しい!!!

エフフォーリアとその鞍上の関係は……

凱旋門賞 前哨戦としてどこ行くか

  • ヴェルメイユ賞※牝限
  • フォワ賞
  • ニエル賞
  • ギヨームドルナノ賞
  • プランスドランジュ賞
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