いいねと返信が追いつきません!笑
仕事これから繁忙期だぞぉ……(震)
皆様体調にはお気をつけくださいね!!!
ダービーから戻ってきた私は、いつもの馬房ではなく……診療所にいた。
白い壁。消毒液の匂い。そして……獣医師の先生が、私の脚を触診している。
「(……痛い)」
声には出さなかったけど……右前脚がけっこー痛かった。レースの後半にズキっと来てから、ずっと痛かった。でも……勝たなきゃいけなかったから。だから、我慢した。全力で、走り抜いた。
田中さんが、そんな私を心配そうに見守っている。
「先生……どうでしょうか」
その声が……震えていた。
獣医師の先生が、ゆっくりと立ち上がった。そして……難しい顔をしている。
「……ソエですね」
その言葉に……田中さんの顔が、強張った。
「ソエ……ですか」
「はい。管骨骨膜炎、いわゆるソエです。右前脚の骨膜に炎症が起きています」
先生が、私の脚を指差した。
「おそらく、レース中に発症したものと思われます。距離、負荷、そして激しい競り合い……いくつかの要因が重なったのでしょう」
田中さんが……唇を、噛んだ。
「治療は……どのくらいかかりますか」
「個体差、治りの早さにもよりますが……通常、この程度の炎症ですと2ヶ月から3ヶ月程度の休養が必要です」
「……そんなに」
田中さんの声が、小さくなった。
その時、診療所の扉が開いた。
水野さんが、入ってきた。その顔は……真剣だった。
「……それで、どうなんです?」
水野さんが、獣医師の先生に聞いた。
「ソエです。右前脚の管骨骨膜炎。2ヶ月から3ヶ月の休養が必要かと」
水野さんが……黙った。しばらく、何も言わなかった。そして……ゆっくりと、口を開いた。
「……私としては、サクラノヒメは次のレースは菊花賞を予定しています」
その言葉に……獣医師の先生が、眉をひそめた。
「菊花賞……10月24日ですね」
「はい」
「今から約5ヶ月弱です」
先生が、少し考えてから言った。
「治りの早さにもよりますが……菊花賞は……」
その言葉が、途切れた。
「厳しい、と?」
水野さんが、静かに聞く。
「……いえ、不可能とは言いません。ただ、かなりのリスクが伴います」
先生が、真剣な顔で続けた。
「ソエは、適切な休養と治療を行えば完治します。しかし、無理をすれば悪化する可能性もあります。最悪の場合……骨折に繋がることも」
骨折……その言葉に、田中さんの顔が青ざめた。
「そんな……」
「もちろん、適切な管理をすれば避けられます。しかし……」
先生が、水野さんを見つめた。
「たしかに三冠を狙うのであれば、菊花賞は必須です。しかし、この馬の将来を考えれば……今回は見送るという選択肢もあります」
水野さんが……腕を、組んだ。しばらく、黙っていた。診療所に、静寂が流れる。私も……じっと、待っていた。
「……先生」
水野さんが、ゆっくりと口を開いた。
「それでも、菊に出させたいんです」
その声は……静かだった。でも、確固たる決意があった。
「この馬は……牝馬で牡馬二冠を達成しました。史上初の快挙です」
水野さんが、私を見つめた。
「ここまで来たら……三冠を、狙わせてやりたい。それが、この馬への……そして、応援してくれたファンへの、答えだと思うんです」
獣医師の先生が……深く、息を吸った。
「……気持ちは、分かります。しかし、馬の体が第一です」
「分かっています」
水野さんが、頷いた。
「だからこそ、先生の指導のもと、万全の体制で臨みたいんです」
先生が……しばらく考えていた。そして……
「……分かりました」
その言葉に、田中さんが顔を上げた。
「ただし、条件があります」
「はい」
「少しでもおかしい、治りが遅いと感じた時は、すぐに諦めてください」
先生の声が……厳しかった。
「調教中でも、レース前でも、レース中でも。少しでも異変があれば、すぐに諦める。それを約束してください」
水野さんが……真剣な顔で、頷いた。
「約束します」
「田中さんもですよ」
先生が、田中さんを見た。
「あなたが一番、この馬のことを知っています。毎日、細心の注意を払って観察してください」
「……はい」
田中さんが、力強く頷いた。
「私が、ヒメを守ります」
その声が……決意に満ちていた。
「よろしい。では、治療方針を説明します」
先生が、資料を取り出した。
「まず、2週間は完全休養。その後、様子を見ながら軽い運動から再開します。調教は、慎重に段階を踏んで……」
先生の説明が、続く。水野さんと田中さんが、真剣に聞いている。
私は……その様子を、静かに見ていた。
ソエ、か。右前脚が、まだ痛い。レースの後から、ずっと痛かった。あぁこれが、怪我ってやつなんだ。
菊花賞……牡馬三冠。牝馬で、牡馬三冠を取る。それは前人未到の、領域。でも少し無理をさせ過ぎたのかもしれない。
ダービーで、私は、全力を出し切った。いや、限界を超えたのかもしれない。その代償がこれなんだ。
でも……
諦めたくない。
菊花賞。3000m。最長距離。そして……牡馬三冠の、最後の一冠。
そこまで……行きたい。牝馬で、牡馬三冠を取りたい。それが私の願いでもあるから。
「……では、よろしくお願いします」
水野さんが、先生に頭を下げた。
「はい。全力でサポートします。ただし……」
先生が、もう一度念を押した。
「無理は、絶対にしないでください。この馬の将来が、果てには命がかかっています」
「分かっています」
水野さんが、私を見つめた。
「……ヒメ。お前を、無理させたくない。でも……お前なら、やれると信じてる」
その目が……優しかった。
「ゆっくり、治していこう。菊花賞で、また走れるように」
私は、小さく鼻を鳴らした。
……うん。
治す。この脚を、治す。そして……菊花賞で、走る。牡馬三冠を……取りに行く。
診療所を出て、馬房に戻る。
田中さんが、いつもより優しく手綱を引いてくれる。
「ヒメ……大丈夫か?」
その声が……心配そうだった。私は、小さく鼻を鳴らした。
大丈夫……とは言い難いかな。でも、大丈夫に、する。
馬房に入ると、いつもの藁のベッドが待っていた。ゆっくりと、横になる。右前脚が……まだ、痛い。でも……耐えられる。
田中さんが、優しく私の首を撫でてくれた。
「お前……今日、本当によく頑張ったな」
その声が……優しかった。
「ダービー、勝ったんだぞ。牝馬で牡馬二冠……史上初だ」
田中さんが、少し笑った。
「でも……無理させちゃったな。ごめんな」
その声が……少し、震えていた。
「これから、しっかり治していこう。焦らなくていい。ゆっくり、ゆっくりでいい」
田中さんが、私の額を撫でた。
「菊花賞まで、あと5ヶ月弱ある。十分、間に合う。だから……ゆっくり、休もうな」
私は、小さく鼻を鳴らした。
……うん。ゆっくり、休む。そしてまた、走る。
菊花賞で……最後の、一冠を取る。
それが……私の、使命だから。
目を閉じる。
体は、疲れていた。右前脚は、痛かった。でも……心は、まだ燃えていた。
菊花賞。3000m。牡馬三冠。
そこまで……行く。
絶対に。行ってみせる。史実を、蹴散らしてでも。
ネットでは、サクラノヒメのダービー制覇が話題になっていた。
そして……一部では、こんな声も上がり始めていた。
@keiba_mania
サクラノヒメ、レース後の脚運び気になった
大丈夫かな
#サクラノヒメ
@uma_love_999
レース後、ちょっと引きずってなかった?
心配
@veteran_keiba
あの走り、限界超えてたと思う
菊花賞出るって噂もあるけど大丈夫か?
2ちゃんねる競馬板
234 名無しさん@実況厳禁
ヒメ、レース後おかしくなかった?
235 名無しさん@実況厳禁
>>234
気になった
脚引きずってたような
236 名無しさん@実況厳禁
まさか故障発生?
237 名無しさん@実況厳禁
やめてくれよぉ……
238 名無しさん@実況厳禁
無事でいてくれ
239 名無しさん@実況厳禁
頼む
心配する声が……少しずつ、広がり始めていた。
スポーツ報知
サクラノヒメ、ソエ発症も三冠へ 『信じてる』
田中厩務員「この馬は特別」
ダービーを制したサクラノヒメが、右前脚にソエを発症していることが31日、明らかになった。約1ヶ月ほどの休養を経て、10月24日の菊花賞で牡馬三冠に挑戦する。
異変に最初に気づいたのは、担当厩務員の田中氏だった。「ダービー後、馬場を引き上げる時、少しびっこを引いていた。すぐに先生に診てもらいました」
検診の結果、ソエと診断された。「ショックでしたが、重症化しなくて良かった。ヒメは強い馬です。きっと治る」と田中氏。
水野調教師は「無理はさせない。でも、この馬には牡馬三冠を達成する使命がある」と菊花賞出走を明言した。
サクラノヒメは新馬戦から無敗の5連勝中。牝馬で牡馬三冠を達成すれば、史上初の快挙となる。
「信じてます。この馬は特別ですから」。田中氏の言葉に、揺るぎない信念があった。
厩舎にて
水野さんは新聞を読んでいた。
「……まあ、こうなるわな」
佐藤さんが、苦笑する。
「でも、間違ったことは書かれてないですね」
「ああ。事実だからな」
水野さんが、新聞を置いた。
「問題は……これからだ」
「ヒメの治療、ですか」
「ああ。1ヶ月でいけるかどうか……」
水野さんが、窓の外を見た。
「菊花賞まで、5ヶ月。長距離向けの調教も進めないといけないし、ギリギリの線だ」
「……でも、やるんですよね」
「ああ」
水野さんが、頷いた。
「この馬は、牡馬三冠を獲れる。そう信じてる」
そして、ダービーから約2週間。
私は、馬房でゆっくりと過ごしていた。
右前脚は……まだ完全には治っていない。でも、少しずつ良くなっている。痛みも、だいぶ引いてきた。
田中さんが、毎日丁寧に包帯を巻き替えてくれる。水で冷やして、薬を塗って、優しく包帯を巻く。その手つきが……とても、優しかった。
「ヒメ、今日も良い感じだな」
田中さんが、満足そうに頷く。
「腫れも引いてきたし、順調だ。このままいけば……」
その時。
『ヒヒィィィィィンッ!!!』
遠くから、大きな嘶きが聞こえた。
……って、ん?私は、耳を立てた。
なーんかこの声聞き覚えがあるんだよな。
『ヒヒィィィンッ!!ヒヒィィンッ!!』
また、嘶き声。
しかも……こっちに向かってくる?
田中さんも、気づいた。
「なんだ?誰か嘶いてんな」
厩舎の外を見ると……
鹿毛の馬が、こちらに向かって歩いてきていた。
いや、歩いてるというより……引っ張られている?
『ヒヒィィンッ!!』
その馬が、また大きく嘶いた。
……あ。タイホ君だ。
「おい!?どうした!」
タイトルホルダーの厩務員さんが、必死に手綱を引いている。
「急に興奮しだして……!こっちに行きたいって……!」
タイトルホルダーが、私の馬房に向かって突進しようとしている。
厩務員さんが、全力で止めている。
「タイトルホルダー!落ち着け!」
でも、タイトルホルダーは止まらない。
『ヒヒッ!!!』
また、嘶いた。
そして……私の馬房の前まで来た。
ブモッ!ブモッ!と激しく鼻息を荒くしている。
「どうしたどうした!タイホ!」
厩務員さんが、手綱をしっかりと握って止めている。
「こんなに興奮するなんて……何があったんだ!」
タイトルホルダーが、私をじっと見つめている。
その目は……心配そうだった。
『……おい、君!』
タイトルホルダーの声が、聞こえた。
『大丈夫なのか!?』
私は、小さく鼻を鳴らした。
「(タイホ君……?)」
『人間たちが話してた!君が怪我したって!脚!』
タイトルホルダーが、興奮した様子で言う。
『本当なのか!?本当に怪我したのか!?』
「(……そーだよ)」
私は、正直に答えた。
「(ダービーの後、ソエになっちゃった)」
『……そんな』
タイトルホルダーの声が……小さくなった。
『僕は……あんなに頑張ってる君にも全然追いつけなくて情けなかったのに』
「(違うよ)」
私は、すぐに否定した。
「(タイホ君、あなたの逃げは凄かった。だから誇っていい)」
『でも……』
「(それに、お互い得意不得意というものがあるんだし)」
私は、タイトルホルダーを見つめた。
「(……大丈夫だよ。ちゃんと治ってる。もうすぐ、また走れるよ)」
タイトルホルダーが……じっと、私を見ていた。
そして……少しずつ、落ち着いてきた。
ブモッ、ブモッと鼻息は続いているけど……さっきほど激しくはない。
『……本当に、大丈夫なのかい』
「(うん。ウチの田中さんが、毎日ちゃんと治療してくれてるから)」
『そうか……』
タイトルホルダーが、小さく頷いた。
『良かった……』
その声が……安堵に満ちていた。
「タイホ、やっと落ち着いたか」
厩務員さんが、ホッとした様子で言った。
「どうしたんだ一体……サクラノヒメの馬房に向かって嘶いて……」
田中さんが、苦笑しながら言った。
「心配してくれたんですかね、ヒメのこと」
「え?」
「ほら、ダービーで一緒に走ったじゃないですか。仲間意識があるのかも」
厩務員さんが、タイトルホルダーの首を撫でた。
「お前……サクラノヒメのこと、心配してたのか」
タイトルホルダーが、小さく鼻を鳴らした。
『君は……僕のライバルなんだから』
私は、少し笑った。
「(ありがとう、タイホ君)」
タイトルホルダーが、私を見つめた。
『……次のレース出るのか』
「(うん。出る)」
私は、迷わず答えた。
タイトルホルダーが……少し驚いた顔をした。
『……無理するなよ』
「(大丈夫。ちゃんと治してから走るから)」
『……そうか』
タイトルホルダーが、小さく笑った。
『なら……僕も出る』
「(え?)」
『菊花賞とやら。僕も出る』
タイトルホルダーが、真剣な顔で言った。
『君と……もう一度、戦いたい』
その目が……闘志に満ちていた。
『君には負け続きだからね。でも……次は、負けないよ』
私は、嬉しくなった。
「(うん。楽しみにしてる)」
タイトルホルダーが、大きく鼻を鳴らした。
『じゃあ……早く治せよ』
「(うん)」
『それで……菊花賞で、また会おう』
「(……うん、また会おう)」
タイトルホルダーが、厩務員さんに引かれて去っていった。
でも……何度も、振り返ってこちらを見ていた。心配そうに。
そして……どこか、嬉しそうに。
「……タイトルホルダー、ヒメのこと心配してたんだな」
田中さんが、優しく笑った。
「馬同士、分かり合えるんだろうな」
私は、小さく鼻を鳴らした。
うん。タイホ君は、優しいよ。
心配してくれてありがとう。そして、また会おうって、言ってくれた。
菊花賞でもう一度、戦おうって。……嬉しい。
ライバルが、待っていてくれる。
それが……何よりも、嬉しい。
「さて、ヒメ。リハビリ続けるぞ」
田中さんが、手綱を手に取った。
「今日は、軽く歩くだけだ。無理はしないからな」
私は、ゆっくりと立ち上がった。
右前脚はまだ少し痛い。でも……動ける。
ゆっくりと、馬房の中を歩く。
1歩、2歩、3歩……
「いいぞ、ヒメ。そのペースで」
田中さんが、優しく見守ってくれる。
……大丈夫。少しずつだけど、良くなってる。
この調子で。菊花賞まで、治す。
そして……タイホ君と、また戦う。
みんなと。
窓の外を見ると……
タイトルホルダーの姿が、まだ見えた。
調教に向かう途中で、何度もこちらを振り返っている。
私は、小さく首を振って応えた。
……また会おうね、タイホ君。菊花賞で。
その姿が、見えなくなるまで……
私は、窓の外を見つめていた。
その日の午後。
佐藤さんが、笑いながら事務所に入ってきた。
「師匠、聞きました?タイトルホルダー、ヒメのこと心配して大騒ぎしたらしいですよ」
水野調教師が、少し笑った。
「聞いた。あの馬も、優しいんだな」
「ライバル意識があるんですかね」
田中さんが、お茶を入れながら言った。
「でも、嬉しいですよね。他の馬に心配されるなんて」
「ああ」
水野調教師が、頷いた。
「ヒメは……愛されてるんだ」
その声が……優しかった。
「人間にも、馬にも」
佐藤さんが、窓の外を見た。
「菊花賞、タイトルホルダーも出るらしいですよ」
「そうか」
「また、あの2頭の対決が見られるんですね」
田中さんが、嬉しそうに言った。
「楽しみですね」
「ああ」
水野さんが、遠くを見つめた。
「でも……まずは、ヒメを完治させることだ」
「はい」
3人が、頷いた。
「焦らず、じっくりと。ヒメのペースで」
水野さんが、静かに言った。
「菊花賞まで、まだ4ヶ月以上ある。十分、間に合う」
その声が……確信に満ちていた。
その夜。
私は、馬房で横たわっていた。
右前脚は……まだ痛い。でも……少しずつ、良くなってる気がする。
今日、タイホ君が来てくれた。
心配して、声をかけてくれた。
そして……また会おうって、言ってくれた。
……嬉しかった。
ライバルが、待っていてくれる。それが……何よりも、力になる。
目を閉じる。
体を、休める。
……菊花賞、3000m。
牡馬三冠、最後の一冠。そこまで行く。
タイホ君と。みんなと。
もう一度全力で、戦う。それが私の使命なのだと確信しているから。
サクラノヒメ無敗三冠なるか!?
次回、タイトルホルダーとサクラノヒメの新婚旅行!(大嘘)
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