桜の姫がターフを駆けた軌跡   作:夜刀神 闇

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いよいよ、ここまできました!!!
ヒメちゃんを応援してあげてください!!!
感想、評価、お気に入り登録ありがとうございます!!!
違和感とかあったら教えてください。見落としてる部分もしかしたらあるかもなので。

ヒメちゃんの旅路はまだまだ続くよ!


第20話 GI舞台 クラシック最終戦 ~菊花賞~

10月24日 日曜日

 

菊花賞 当日。

 

朝、早くに目が覚めた。

窓の外は、まだ薄暗い。でも……体は、もう準備万端だった。

今日だ。今日、私は菊花賞を走る。牡馬三冠のうち最後の一冠だ。

 

「おはよう、ヒメ」

 

田中さんが、馬房に入ってきた。

 

「よく眠れたか?」

 

私は、小さく嘶いた。

ぐっすり、だよ。

 

「そっか。じゃあ、朝飯だ」

 

飼い葉桶を置いてくれる。

私は、ゆっくりと食べ始めた。

今日は、特別な日。だから、しっかり食べる。

 

 

 

 

 

そして時が来た午後3時。

阪神競馬場は、満員だった。

スタンドには、大勢の観客。みんなが、この瞬間を待っていた。

 

私は、田中さんに曳かれるままパドックで周回していた。

18頭の馬が、ゆっくりと歩いている。

タイトルホルダーも、いた。

ステラヴェローチェも。オーソクレースも。レッドジェネシスも。

 

「7枠13番、サクラノヒメ」

 

アナウンスが響く。歓声が、上がる。

たくさんの声が、私に向けられている。

私は、背筋を伸ばして歩いた。この期待に、応える。絶対に。

 

「ヒメ、緊張することはない。武司君の言うことを聞いて、お前だけの走りをして、それで……無事に帰ってきてくれればいいから」

 

私は、田中さんの方に顔を向けて応える。

うん、そうだね。それで勝つんだ。

 

騎手たちが、入ってきた。

武司の姿が見える。

 

「ヒメ」

 

武司が、私の前に立った。

 

「……ここまで俺と一緒に走ってくれてありがとうな。今日も勝つぞ」

 

その声が……決意に満ちていた。

私は、小さく鼻を鳴らした。

……うん。獲りに行こうね、三冠を。

 

武司が、私の背中に跨る。

この重み。この感覚。何度も経験してきた。

でも今日は……特別だ。ダービーの時もだったが……今回は特に。三冠が、かかっているから。

 

 

 

パドックを後にして……本馬場へ。

阪神競馬場の、芝コース。

満員のスタンドから、歓声が降り注ぐ。

 

「うおおおおっ!!」

 

空は、晴れている。完璧な、菊花賞日和。

私は、軽く芝を駆けた。

阪神の芝。初めて走るコース。

でも……走りやすい。フカフカで、蹄が気持ちよく地面を掴む。

 

 

「 ̄ ̄ ̄白毛の乙女は春のクラシックを駆け抜け、3歳の頂点に君臨。フロックだなんて言わせない。さあ、最高の相棒と共に三冠へ。父の忘れ形見を獲りにいこうサクラノヒメと横川武司!」

 

 

返し馬をしていると……

横に、タイトルホルダーが並んだ。

 

『……サクラノヒメ』

 

その声が、聞こえた。

 

「(タイホ君)」

 

私は、タイトルホルダーを見た。

 

『治ったんだね、脚』

「(うん。完璧だよ)」

『そうか……良かったよ、安心だ』

 

タイトルホルダーが、前を見つめた。

 

『今日、驚くほど調子がいい。万全の状態で君と走れるなんて夢みたい。でも僕は心配なんだ』

「(どうしたの?)」

 

タイトルホルダーが、小さく笑って私の方を向いた。

 

『君が僕の逃げに着いて来れなくて泣いちゃうんじゃないかってね!』

「(……言うねぇ?その言葉、後悔させてみせる)」

 

私たちは笑い合う。

そうだね、あなたはこのレースを勝って長距離の王者へと輝いたんだから。

でもね。

 

『……じゃあ、いつも通り全力で』

「(当然)」

 

()()()()()()()()()()()()()()

だから、それだけは()()()()

そしてお互いに見つめ合い、そして……それぞれの位置へ、戻っていった。

 

 

 

 

 

「まもなく発走です」

 

アナウンスが響く。

輪乗りをしていた馬たちが、ゲートへ向かう。

次々に、ゲート入りが完了していく。

 

「13番、サクラノヒメ」

 

係員が、私を誘導してくれる。

タイトルホルダーの気迫に押されながらも大人しくゲートの中へ。

……あぁ、ここまで来て体がブルブルと震えてきた。

怖くてたまらない。

 

ガシャン、と扉が閉まる。

 

前を見る。

待ち受けるは3000m。菊花賞。

……競馬の、()()()()()()()()レース。

武司が、私の首を軽く叩いた。

 

「ヒメ……大丈夫だ」

 

その声が、優しかった。

私は、小さく鼻を鳴らした。

……うん。行こう。三冠、取りに。

もう体の震えは無かった。

 

 

そして全馬、ゲートイン完了。

 

静寂。

 

心臓が、激しく打つ。

 

そして……

 

 

ガシャァァンッ!!

 

 

 

扉が、開いた。

 

 

 

「42年振り仁川の菊舞台…………いま飛び出しました。各馬揃った綺麗なスタートを見せました。レッドジェネシスは後方からになりました。さぁ各馬のスタートにお客さんから拍手が沸いています!1番人気のサクラノヒメも好スタートを切りました!」

 

一斉に、飛び出す。

18頭の馬が、芝を蹴る。

 

「先頭争いは、タイトルホルダー!タイトルホルダーがハナを切った!これは予想通りの逃げですね。各馬を連れて逃げていっています!」

 

予想通り、タイトルホルダーが飛び出していく。

その逃げ脚。圧倒的なスピード。

 

「2番手にモンテディオ、3番手エアサージュ、4番手ワールドリバイバルも先行策です!タイトルホルダーは早くも単独先頭を目指します!」

 

前が、速い。

みんな、好位を取ろうと必死。

私もその例に漏れず、たけしの指示に従いながら中団につける。

 

「タイトルホルダー、3コーナーまでに単独先頭に立ちました!」

 

私は……内側にいた。周りに馬は少ない。たけしが、じっくりと脚を溜めてくれている。良い位置につけれた気がする。

いつもの、いやいつもより良い感じに行けた気がする展開だ。

 

「5馬身ほど空いてグラティアスとディヴァインラヴが追走!それよりさらに後方、大きな集団ができています!ディープモンスター、アリーヴォ、ロードトゥフェイム、ヴィクティファルス……そしてサクラノヒメは中団!無敗の三冠を狙う白毛の乙女は、いつもよりは少し前目での待機です!さぁ、ここからどんな脚を見せてくれるのでしょうか?」

 

後方は、大きな集団になっていた。

みんな、脚を溜めている。

 

「中団より後ろ、ヴェローチェオロ、オーソクレース、ノースザワールド、ステラヴェローチェ、ヴァイスメテオール、レッドジェネシス、アサマノイタズラ、セファーラジエルと続きます」

 

いつも通りだ。

位置は"いつもより"前目につけているとはいえ、やることは同じ。

……時が来たら、一気に押し上げていく。

それが、私の戦法。

 

 

でも……前が、遠い。

タイトルホルダーが、もう見えないくらい離れている。

 

「最初の1000m通過は1分0秒0!これは平均的なペースでしょうか!タイトルホルダーが快調に逃げています!まさに理想的な逃げ、鞍上の手腕が光ります!」

 

……速い。

タイトルホルダー、本当に速い。

あの逃げ脚……追いつけるかな。

 

「(ハァ……ハァ……)」

 

まだ序盤なのに……息が、少し荒い。

本当に大丈夫なのかと疑いたくなるが、それでも耐えなきゃならない。持たせないといけないんだ。

 

「各馬正面スタンド前に入っていきました。縦長、今年の菊花賞は縦長になりました!タイトルホルダーの逃げ、単独です!セントライト記念では13着に沈みましたが、今日は別の馬のような走りを見せています!」

 

前を見る。

鹿毛の馬体が……遠くに見える。

タイトルホルダーだ。

……遠い、遠すぎる。

こんなに離されたの、初めてかも。

 

「さぁ18頭それぞれに思いを託す、ファンの拍手が背中を押すスタンド前です。タイトルホルダー、大きくリードを広げました。各馬を離して5馬身と大きくリード。そしてモンテディオ単独の2番手。そして外からセファーラジエルが一気に上がっていきました。3歳には過酷な3000mですが序盤からレースが動いています」

 

私も、コーナーを回る。脚を溜めながら。

でも……心臓が、バクバクと打っている。

不安、だ。タイトルホルダー、本当に強い。この距離は、彼の独壇場なんだろう。

長距離じゃ敵う相手なんて本当にいるのかよ……と思いたくなる。

史実で春天を勝ったスタミナは伊達じゃないと、そう言いたいのか?

 

「さぁ木枯らしが冬の到来告げる向正面に入っていきます。後続が進出を始めますが流石にタイトルホルダーはマイペース!持ったままの抜群の手応えです。二冠馬の父、ドゥラメンテにも捧げたい菊のタイトル3馬身のリード!」

 

私も……少しずつ、前へ。

たけしが、少しずつ手綱を動かし始めた。

 

「ヒメ……落ち着こうな」

 

その声が……言葉通り落ち着いていた。

焦らない。まだ、焦らない。

そうだね、いつも通りやればいいんだ。

 

でも……でもさぁ……

 

前が……

 

遠く見えるんだ。

 

遠いんだよ。

 

 

 

「3コーナーに入りタイトルホルダー、まだリードを保っています!2番手集団はグラティアス、ディヴァインラヴ!さらに後方からオーソクレース、ステラヴェローチェが進出を開始!そしてタイトルホルダーと同じく菊のタイトル狙う1番人気サクラノヒメ、徐々にポジションを上げてきました!」

 

……ダメだ。

このままじゃ、離される。

タイトルホルダーに……置いていかれる。

 

「(ハァ……ハァ……)」

 

息が荒い。

まだ3コーナーなのに。まだ、半分以上残っているというのに。

 

 

……分かってる。分かってるんだよ。

長距離じゃ、タイトルホルダーには私なんかじゃ敵わないってことくらいはさ。

 

 

 

「4コーナー、タイトルホルダー、後続を引き付けています!さあここからが勝負どころだぞ!」

 

タイトルホルダーが……加速した。

 

「タイトルホルダー、追い出されると再び後続を引き離していく!これは逃げ切りか!?」

 

……速い。

本当に、速い。

 

 

 

でも……

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()!!!

 

 

 

「後方からオーソクレース、ステラヴェローチェが脚を伸ばす!比較的前にいた牝馬ディヴァインラヴも追い上げてきた!しかしタイトルホルダーは前が遠い!」

 

みんな、追いかけている。

後ろから聞こえる蹄の音が襲いかかってくる。

ものすごいプレッシャーで覆われる。

私も……追いかけなきゃ。

 

「ヒメ、行くぞ!!」

 

たけしが、GOサインを出した。

……うん、行こう。もう迷うことは無い。

たけしが、そう言ってるんだから。

 

しかしここで、ここで!サクラノヒメが伸びてきた!!三冠狙う正に豪脚!!前に届くのか!?逃げ切ることが出来るかタイトルホルダー!!!

 

私は、全力で脚を伸ばした。

心臓が、破裂しそうだ。

肺が、焼けるように痛い。

でも、最早そんなのは関係ない。

 

止まらない。

 

前へ。

 

ただ、前へ。

 

 

「直線に入りました!タイトルホルダー先頭!リードは4馬身!しかし後方からサクラノヒメが猛追して2番手に上がる!物凄い勢いだっ!!大外を回ってオーソクレース、ステラヴェローチェ、ディヴァインラヴも追い上げますが……!」

 

前に、タイトルホルダーの姿が見えてきた。

まだ……遠い。

でも……諦めない。

 

息が、切れる。脚が、重い。

でも……

 

 

 

離されるもんか……!!!

 

 

 

「タイトルホルダー、リード保っています!しかしサクラノヒメが着実に差を詰めている!!残り200m!クラシック三冠の最後大一番、タイトルホルダーか!サクラノヒメか!!タイトルホルダーか!!サクラノヒメか!!?他の各馬が全く追いつけない!!!仁川のスタンドが揺れているぞ!!!」

 

もっと……

もっと速く……!!

武司が、鞭を入れた。

 

「頼む、ヒメ!!もう一度!!もう一度だけ!!」

 

その声が……必死だった。

 

「(分かって……る……!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……勝てる』

 

僕は、そう思った。

直線に入って、視界が開ける。背中の人が鞭を入れてくれる。

 

『ああ……このまま……』

 

後ろを、チラリと見る。

後続は……まだ遠い。

 

『今日の僕は、完璧だ』

 

心臓も、まだ余裕がある。

脚も、まだ動く。

 

『ここでは……僕が1番なんだ』

 

この前味わった屈辱。

あの時は……自分でも信じられないくらい、ダメだった。

 

でも、今日は違う。

 

『今日は……君に勝てる』

 

サクラノヒメ。

いつも僕の前を走る、あの白い牝馬(可愛い娘)

 

『でも、今日は僕が……!』

 

その時。

後ろから……何か、聞こえた。

 

蹄の音。

激しい、蹄の音。

 

『……?』

 

振り返ると……

白い馬体が、迫ってきていた。

 

『……サクラノヒメ!?』

 

目を、見開いた。

 

なんて、速さ。

なんて、気迫。

 

まるで……

命を削るような、走り。

 

『……嘘だろう』

 

あの目。

あの表情。

口から泡を吹きながら……

それでも、走ってくる。

 

『……!』

 

僕は……圧倒された。

鬼気迫る、何か。

まるで……

何かに取り憑かれたような。

 

『で、でも……僕だって!!』

 

僕も、諦めない。

脚を、さらに伸ばす。

 

「タイトホルダー!頑張れ!!」

 

背中の人の声が、響く。

 

『負けない……!今日だけは!』

 

でも……

サクラノヒメは……

止まらない。

どんどん、迫ってくる。

 

『……君は』

 

僕は、思った。

 

『本当に……化け物だ……っ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「残り150m!タイトルホルダー先頭!しかしサクラノヒメが物凄い脚で迫っている!!差は2馬身!1馬身!!半馬身!!!」

 

「(ハァッ……ハァッ……ハァッ……!!!)」

 

もう何も考えられない。

 

ただ……前へ。前へ。

 

 

 

前へ!!!

 

 

 

「サクラノヒメ、タイトルホルダーに並びかける!!馬体を合わせて!残り100m!!」

 

タイトルホルダーの姿が……

すぐそこに。

 

「(もう……少し……!!)」

 

脚が……もう、限界。

口から、泡が出ている。

 

息が……

できない……

 

でも……

あと……

 

あと少し……!!!

 

「サクラノヒメ!!サクラノヒメが並んだ!!残り50m!!逃げ切ることが出来るのか!?菊のタイトルを掴むのは、どっちだァー!?」

 

並んだ。

タイトルホルダーと。

 

「(タイホ君……ごめんね……!!)」

 

そして、もう一歩。

 

サクラノヒメ抜けた!サクラノヒメ抜けた!!サクラノヒメが先頭に躍り出た!!!

 

タイトルホルダーがちらりと私を見やる。

 

「並み居る牡馬を打ち破り世代の頂点に立ったサクラノヒメだ!!!サクラノヒメ完全に先頭!!」

 

もう……

息が……

視界が……ぼやけてきた……

 

でも……

ゴールは……

すぐそこ……!!

 

「(あと……少し……!!!)」

「ヒメ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仁川のターフに桜が咲き誇る!!!サクラノヒメ、いま1着でゴールインッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ……やった、のか。

 

 

 

 

 

……………………ゴールした瞬間、私は何も考えられなかった。

 

段々と、その事実が頭の中を覆い尽くす。

 

あぁ……やったんだ。やったのか。やったんだ!!?私が、私が!!!

 

菊の季節に桜が満開!!!菊の季節に桜、サクラノヒメです!!!最強の女王がここに降臨ッ!!!牝馬で牡馬三冠達成!!史上初の快挙です!!!しかも無敗での三冠!!これは……これは日本競馬史上に燦然と輝く金字塔です!!

 

武司が、手綱を絞ってくれる。

 

「ヒメ……ヒメ!!やった……やったぁぁあ!!!」

 

その声は……震えていた。

 

「そして2着にタイトルホルダー!!1馬身差での入着です!タイトルホルダーも素晴らしい走りを見せましたが、サクラノヒメの執念が上回りました!!3着オーソクレース!!4着ディヴァインラヴ!!5着ステラヴェローチェ!!」

 

「(ハァ……ハァ……ハァ……)」

 

息が……

全然、整わない。

 

心臓が……

バクバクと、激しく打っている。

 

脚が……

震えている。

 

でも勝った。三冠を、取った。

 

 

ゆっくりと、速度を落としていく。

スタンドからは……爆発的な歓声。

 

 

 

「うおおおおおおっ!!!」

「サクラノヒメー!!!」

 

その声が……

少しずつ、聞こえてきた。

武司が、私の首を何度も何度も叩いてくれる。

 

「ヒメ……すごい……本当に、すごいぞぉ……」

 

泣いているのか。

 

「勝ちタイムは3分3秒8!!サクラノヒメ、6戦6勝!!無敗での牡馬三冠達成!!牝馬では史上初!!シンボリルドルフ、ディープインパクト、コントレイルら最強の牡馬たちに1頭牝馬が名を連ねました!!!」

 

私は……

ゆっくりと、馬場の真ん中で止まった。

 

「(ハァ……ハァ……)」

 

息が、まだ、荒い。

 

でも……少しずつ、落ち着いてきた。

 

そして……空を、見上げた。

 

青い空。

白い雲。

綺麗だな。

 

私は……

大きく、息を吸った。

 

 

 

そして……

 

 

 

 

 

 

 

「ヒヒイィィィィィィィンッ!!!!!」

 

 

 

 

天に向かって、嘶いた。

全力で。

魂を込めて。

 

「おおっと!!サクラノヒメが天を仰いで雄叫び!!まるで三冠達成を喜んでいるかのような!!いや、喜んでいるのでしょう!!この馬は本当に特別です!!」

 

この声を……

前世の私に、届けたい。

無力で、何もできなかった私に。

 

見て。

私は、ここにいる。

生まれ変わって。

走って。

そして……三冠を、取ったんだよ。

 

無敗で、牝馬で。

史上初の、快挙を。

 

 

スタンドからは、まだ歓声が続いている。

拍手が、鳴り止まない。

 

「ヒーメ!ヒーメ!ヒーメ!ヒーメ!」

 

私の名前を、呼んでいる。

ヒメコールが阪神競馬場を包んでいる。

それのなんと嬉しいことか……!

武司が、私の首を抱きしめてくれた。

 

「ヒメ……ありがとう……本当に、ありがとう……お前は……最高だよ……」

 

その声が……優しかった。

私は、小さく鼻を鳴らした。

……こちらこそ、ありがとう。

みんなのおかげで……

ここまで、来れたんだ。

 

 

ゆっくりと、引き上げていく。

タイトルホルダーが、近くにいた。

 

『……おめでとう』

 

その声が……

少し、悔しそうだった。

 

でも……

どこか、清々しそうでもあった。

 

「(ありがとう。タイホ君も……本当に強かった)」

『……君には、敵わなかったよ』

 

タイトルホルダーが、小さく笑った。

 

『でも……僕も……全力を出した』

「(うん。最高のレースだった)」

 

私たちは、お互いに鼻先を付けあった。

 

『……君は、どこまで行くんだろうね』

 

タイトルホルダーが、遠くを見つめる。

 

『僕は、一生君に勝てないのかなぁ』

「(……どうかな)」

 

私は、小さく笑った。

 

「(でも……タイホ君が勝つところを見たいって気持ちはあるんだよ)」

『……そうかい』

 

一言言い残して、タイトルホルダーは、去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

私は……

もう一度、空を見上げた。

歴代の名馬たちが駆け抜けたこの舞台。

今、私もここにいる。

 

そして……

三冠を、取った。

牝馬で、牡馬三冠。

無敗で。

史上初の、快挙。

 

これ以上の……

幸せが、あるだろうか。

 

いや……

もしかしたら……

まだ、先があるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年10月24日。

第82回菊花賞。

サクラノヒメ、優勝。

タイム、3分03秒8。

1馬身離しての勝利。

牝馬で牡馬三冠達成。6戦6勝、無敗。

まさに、史上初の快挙。

 

この日、新たな伝説が完成した。

そして、競馬ファンは思った。

この馬なら、もしかしたら。あるいは……と。




アンケートで今後見ます!
一応私が考えてるのを挙げてみましたがどうでしょうか?
もしこんなんどう?とかあったらぜひぜひ教えてください!!!
と言うかそろそろウマ娘のすがたを……と思うが画力が着いてこない
一応完成系はあるんだがデジタル苦手!!!ゴメン!!!


サクラノヒメ牝3

新馬戦 1着
札幌2歳ステークス 1着
ホープフルステークス 1着
皐月賞 1着
日本ダービー 1着
菊花賞 1着

p.s:タイムミスってたので訂正

凱旋門賞 前哨戦としてどこ行くか

  • ヴェルメイユ賞※牝限
  • フォワ賞
  • ニエル賞
  • ギヨームドルナノ賞
  • プランスドランジュ賞
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