風紀委員モブの昼休み   作:ふゆうさぎ

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昨日の夜に投稿したよね。
あの後3時間でコレ書き上げたの。


行方不明

 アンブロジウス、そしてもう一体の巨大な化け物の討伐が終了した。

 強力な範囲攻撃を繰り出してくる上に、鋼のように固いこの化け物たちを倒すのに時間がかかり過ぎた。

 空は既に朱に染まり、廃墟と化したこの一帯の空を飛んでいく数羽の烏が夕暮れ時を知らせる。

 時計を見ずともどれくらいの時間が経ったのかはわかる。この二体を町に放すわけにはいかないから頑張ったのだけれど……もうアリウスには逃げられてしまった。

 彼女を取り返すためにはアリウスを捕まえなければならかったのに……私に力があるがゆえに足を止めざるを得なく、みすみす逃してしまうという結果になってしまった。

 不覚だった……そんな言葉が、ただ朱色の空に消えていく。

 

 

「お疲れ様ヒナ。ありがとう」

「……まだ終わってないわ。あの子が連れ去られた」

「あの子って……風紀委員の子?」

「そう。連絡も取れないし、誰もあの子を見ていない」

「そっか……トリニティの子にも聞いた?」

「聞いたわ。でも、見つからない……」

 

 

 疲れて瓦礫に腰かけていたけど、もう少しだけやらなければならない。

 傷だらけで砂埃だらけになった銃を持ち上げ、瓦礫の山と化した古聖堂の前に立つ。

 

 あの子がこのエデン条約の為にどんな動きをしていたのかはわからない。

 最初はトリニティ側のスパイかと思った。でも違った。

 アリウスの登場でそちらのスパイかと思った。それなのに彼女は私をかばってリンチされた。だから絶対に違う。

 であれば彼女は誰の味方だったのだろうか? それは、推測だけど先生の味方だったんだと思う。

 風紀委員という立場はただ利用していただけで、彼女が動いていたのはただ先生を救うためだったんだろう。

 錠前サオリによる先生襲撃、あの時彼女がいなかったら、先生は間違いなく撃たれていた。

 今思えばタイミングが良すぎる。もしかして、彼女は知っていたのだろうか? 

 

 弾倉を確認し、まだ十分な弾があることを確認。私は銃口を地面に向けた。

 ここからあの化け物は出てきた。奴らが暴れまわってくれたおかげで、地下への入口は完全に塞がれている。

 ではどうするか? 

 あの憎きアリウスたちを見つけ出すためには、どうすべきか? 

 

 

「……ふぅ」

 

 

 この攻撃は疲れる、そう自分で言っていたのだけれど、今なら何発も撃てる気がする。

 ありったけの神秘を銃に注ぎ、それを地面に向けて放つ。

 超高速で放たれる弾丸は超連続で射出されることで、あたかもビームになる。

 あくまで、見た目の話だ。

 あの時アリウスにこの攻撃をしていたら、今頃彼女は連れ去れらていなかっただろう。

 

 

「ちょ、ちょっと何をしているんですか!?」

 

 

 私の攻撃で次々と瓦礫たちが破壊されて地面が抉れていく。

 誰もが疲弊して寝転がったり互いに労い合っている中の私の行動、さぞ頭のおかしい奴と映ったでしょう。

 でもね、私にはまだ仕事があるの。

 あの子を助けないといけない。

 アリウスを徹底的に叩き潰して、彼女を救わなければ。

 

 

「アリウスに連れ去られた風紀委員がいるのよ。助けないと」

「待ってください! 今ここでそんなことをしてもアリウスを見つけられるか」

 

 

 私を止めに来た羽川ハスミの言葉に指が止まる。

 銃を少しだけ下に向けて、顔を彼女に向けた。

 

 

「この地下通路は特殊で、一定の時間が過ぎると構造が変わります」

「……何を言っているの? 地形が変わる? 意味がわからないわ」

「私もよくはわかりません……ですが、入るにはその時々の地図が無ければ生きて帰れないという文献が見つかっています」

「関係ない。変わるなら破壊するだけ……私は彼女を取り戻す」

 

 

 再び銃を抉れた地面に向けて引き金を引くが、反応が無い。

 何故か、弾切れだ。

 

 

「なんで……どうして?」

 

 

 弾倉を交換して続けようとするも、なぜか撃てない。違う、これは空の弾倉だ。

 

 

「……なら、これで」

 

 

 真っ赤に染まるほど赤熱化した銃身を握り、自分の手が焼けるのを自覚しながらそれを地面へと叩き付ける。

 瓦礫の一つも壊せないこの攻撃、数回繰り返したところで誰かの制止が入った。

 掲げた銃がそこから動かなくなり、背後を見ればそこにはアコ、イオリ、チナツの三人がいた。

 

 

「ヒナ委員長! こんなことやめましょう! 武器が壊れてしまいます!」

「アコ……ここには地下に繋がる道がある。アリウスを追いかけないと」

「ダメだ委員長。これ以上は委員長が危ない」

「うるさいわイオリ。私は彼女を助けないと」

「看過できません。イオリ、アコ行政官、武器を取り上げてください」

「邪魔しないでチナツ、これは私の役目で……」

「……ヒナ、止めよう」

 

 

 三人の後ろから現れたのは先生。

 どうして先生まで止めるのか。私は彼女を……私たちをかばって、ただ一人あそこに残されてから行方不明になった彼女を探しに行くだけだ。

 それを止める理由はどこにある。仲間を救いたいだけななのに。

 ただアリウスを潰したいだけなのに。

 

 

「ヒナ……今は休もう」

「休んでる暇は無いわ先生。あの子は今も苦しめられている。忌まわしきアリウスに、どれだけ痛い目を」

「ヒナ!」

「っ……」

 

 

 先生が私の武器を取り上げる。焼けて焦げかけている私の手を素早くチナツが治療を施す。

 おかげで手はゴムまりのように包帯グルグル巻きになって、もう武器は持てなくなってしまった。

 

 

「あの子のことは私が必ず助ける。だからヒナは休んで」

「休めないわ。委員長としての仕事だから……絶対にアリウスを許すわけにはいかない」

「……チナツ、お願い」

「委員長、失礼します」

 

 

 先生がチナツの名前を呼んだ瞬間、首筋にチクッと小さな刺激。

 何をしたのかと振り向くと、そこには注射器を持ったチナツ。そして、嫌々私に銃を向けるアコとイオリ。

 なんで私に銃を向けているの? 

 

 

「……ヒナ、休んで」

「わたしは……助けないと……潰さないと」

 

 

「アリウスを……殺さないと……」

 

 

 意識が、途切れた。

 

 

 


 

 

 

「スクワッドが、逃走した?」

 

 

 真っ暗な闇の中、たくさんの本が積まれているこの空間に飛び込んできたのは一人の生徒。

 この子は幹部としての役職を与え、スクワッドの動向を監視する任務に与えていた。

 その生徒がこうしてここに来て、このような連絡をしてきたということは、つまりそういうことなのでしょう。

 期待などしていなかったのですが、多少役に立つと思って送り出した結果がコレ。

 やはり使えない駒を無理にでも使おうとするのは、あまりに無策だったか。

 

 

「それで、スクワッドの現在地は?」

「現在カタコンベ内を移動中です。私の部隊はほぼ壊滅させられましたが、生き残った数名で追跡を続行しております」

「なるほど、引き続き追跡を続けなさい。他の部隊も動かして構いません。私が許可します」

「ありがたき幸せです、マダム。それでは、失礼します」

「必ず捕まえなさい、ロイヤルブラッド……それと、あの警察犬も」

「はっ!」

 

 

 生徒が私の部屋から出ていく。元気よく返す返事はどれも耳に刺さる様な声色で聞いていて不愉快。

 でも、利用するためには多少の我慢も必要というもの。私の駒として動いてくれるのであれば、この不愉快程度は受け入れるとしましょう。

 でも、一つだけ受け入れられないことがある。

 

 

「スクワッド……まさかあの警察犬を連れて逃げるとは。これだけは予想外でしたね」

 

 

 手に持っていた本を閉じる。ここにきて様々な本を手に取って読んでみてはいるものの、どれも退屈な物ばかり。

 私を上位の存在に引き上げてくれるような知見や知識を授けてくれる本は一冊もなく、どれも途中まで読んでは最後を確認して廃棄、途中まで読んで最後だけ確認して廃棄……その繰り返し。

 流石にそろそろ飽きるというものでしょう。

 

 

「このアリウスを手中に収めてからどれだけの時間が経ったか……手駒を増やすには、必要な躾が多すぎましたからね」

 

 

 無造作に積み上げられた本の上に、手にある本も積み上げる。

 どれもが不必要な本。焼却処理しようにも、地下であるため空気が逃げない。

 その結果、ただ積み上げられた本は私のここでの功績のように輝かしく聳え立ち、ただ埃を被るだけのオブジェクトへと姿を変えようとしていた。

 

 

「ロイヤルブラッド……秤アツコの神秘を吸収し、私は高みへ至る」

 

 

 壁に描かれた私の計画。真っ赤な文字がそこに並び、未来への希望が描かれている。

 私の未来予想図……誰がそんな陳腐な言葉を生み出したのか知らないが、この壁はまさにそれ。

 

 

「色彩を吸収し、さらなる崇高へと至る……それができれば、私の願いは完遂される」

 

 

 そのためにも秤アツコにはビーコンとしての役目を担ってもらい、色彩を儀式場であるバシリカへと到来させなければならない。

 当初の目的はそれだけだった……そう、あのイレギュラーである警察犬が現れるまでは。

 

 

「あの蝿のように飛び回るゲヘナの生徒……あの生徒は、全てを知っている。この物語の終焉までも含めた、全てを」

 

 

 新たなペンを取り出し、計画に加筆していく。あの生徒をも巻き込んだ、私の崇高へと至る道を。

 

 

「奴の全ての記憶を吸収すれば……私は必ずや、目的を達成することができるでしょう……ふふ」

 

 

 私の未来図に書き入れた言葉。「+未来の記憶」と、何の面白みもない中二病臭い単語。でも、これほど私の心を躍らせたのは久しい。

 ロイヤルブラッド、そして未来の記憶……この二つがあれば、私はこのキヴォトスにおける神のような存在へと至ることができる。崇高を超えた崇高……その場所には、必ず神に近しい存在がいるに違いない。

 そこへ至るためにも……

 

 

「聞きなさい、子供たちよ」

 

 

 窓から声を張る。一斉に校舎から飛び出して整列する子供たちに、命令を下した。

 

 

「逃走したスクワッドを早急に捕えなさい。そして、ロイヤルブラッドとそのオマケを、必ずここへ連れてくること」

 

 

 全員がガスマスクを着け、各々の武器を掲げた。

 

 

「その他は……殺して構いません」

 

 

 私の命令を聞き終えた子供たちが、隊列を組んで一斉に飛び出していく。

 閑散とした自治区内に取り残された私は、また本を読みに椅子へと腰掛ける。

 未来など見なくとも、私の道は既に舗装済なのだから。

 問題は、皆無だ。

 

 

「全ては虚しいのですから……せいぜい、私のために働きなさい。子供たちよ」




ヒナちゃん、ちょっと怖いよぉ…
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