風紀委員モブの昼休み   作:ふゆうさぎ

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暇つぶしに書くんじゃなくてちゃんとした本読めよって思う。


学食裏

 吾輩はモブである。

 否、モブでありたいモブである。

 

 私はモブ子。名前は言わないでおこう、モブでありたいから。

 

 自己紹介をしよう。

 私は先生と同じ「外の世界」から来た人間。

 ……いや間違えた。私は「外の世界」から生まれ変わってここに来た人間だ。

 つまり外の世界の私は死んでいて、ここにいる私はオンリーワンダーなわけ。

 ただネームドになりたいとか、先生と結ばれたいとか、ネームドキャラと百合百合したいとかは考えてない。

 第二の生をこの世界で受けたからには前世ではできなかった楽しい青春とかを経験したいわけ。

 前世はろくなもんじゃなかったからね。

 勉強勉強勉強仕事仕事仕事……どこぞのB〇Gモーターのメール文よろしく、私の死ぬまでの人生はそんな感じ。

 学生時代に恋愛の一つも経験せず、結局死ぬまで純潔は守り抜けたよ。

 攻めてくる人がいなかったのはナイショ。

 

 私はゲヘナ学園に通う高校一年生。

 所属は風紀委員で、この世の終わりを煮詰めたようなゲヘナの治安を守る仕事をしている。

 当然、定時までだけど。

 前世では仕事のしすぎで過労死して死んじゃったけど、その甲斐もあってか風紀委員の仕事は簡単。

 皆が頭を抱えて処理する書類仕事など、数時間あれば一日分はすぐに終わる。

 不良たちが暴れてたとしても、正確な射撃をショットガンで打ち込めば大抵沈黙してくれるし。

 

 前世でおまわりさんやっててよかった~!!! 

 

 と、こんな感じの自己紹介を終えまして……今から私はお昼休みに突入します! 

 ……おまわりさんって社畜なのか? 

 

 


 

 

 チャイムが鳴ると同時に腕章と帽子を机の上に置き、財布をかっさらい風紀委員の部屋を抜け出す。

 奴らは休むという言葉を知らないのか、馬車馬のごとく働き続ける……休もうよみんな。

 ゲヘナの治安を内側から知っている人間としては、休む暇なんて無いのだろうけど。

 

 休むことは大事。それは体力面だけのお話ではない。

 メンタルも適度な休息を、常に欲しているのだよ。

 それを死をもって経験した私は昼休みだけでなく、休み時間全部を絶対休むウーマンになった。

 他の子たちは働いてるわけでして……まぁ白い目で見られるよね。

 でもこっちの世界に来たのにそんなに働きたくは無いわけでして……でも無職も嫌だった。

 ……というのは言い訳でして、限界社畜として生き抜いた私の魂は、既にワーカーホリック気味になっていただけ。

 一度社会人を経験したら、そう簡単に無職にはなれない。

 慣れた生活は魂に刻まれてしまっていて、学生という楽な肩書は私には役不足だった。

 

 

「今日はフウカちゃんにおかずだけ貰おう」

 

 

 お昼ご飯の内容をどうするか考えながら歩いていると、ふと学食が目に入った。

 電流が頭に走った。モブに電流走る。

 足は既に学食に向いていた。

 

 私はジュリちゃんと同じクラスでそれなりに仲良し。

 それゆえに彼女が懐いているフウカちゃんとは既に面識がある。

 学食の裏手に回り、裏口の扉をゆっくり開ける。

 油っこい匂いが扉から噴き出してくるのを感じ、すぐに今日のお昼のメニューが何か理解した。

 天ぷらだ。

 

 

「こんにちはフウカさん」

「……またあなた」

 

 

 ひょっこり顔を出すと、そこには例の顔をしたフウカちゃん。

 

 

「またでは無いです。お久しぶりです」

「一週間前は久しぶりじゃないわ。今日は何?」

「テイクアウトをお願いしたくって」

「そんなメニュー無いわよ……ジュリの世話をしてもらってる手前、文句が言えないのが悔しいわ」

「パンちゃん、結構強いですからね」

「毎回助けてもらってるお礼。あなただけ特別よ」

「えへへ」

「いつもそれくらい愛想があればね……ま、今度も頼むわ」

「風紀委員にお任せです!」

 

 

 ペコペコしながら裏口から出ようとした瞬間。

 カウンターの向こう、食券機の目の前にヒナちゃんがいるのが見えた。

 

 

(え、なんでヒナちゃんが……?)

 

 

 扉を開け放しにしてしまったせいか、フウカちゃんが睨みつけてきた。

 急いで扉を閉めたが、思考はヒナちゃんのことでいっぱいになってしまった。

 

 

(なんで……なんで??? 生粋のワーカーホリックのヒナちゃんがお昼休み? ありえないわ!)

 

 

 某新世紀なアニメの人のような戯言が頭の中を数回往復したが、すぐに思考を切り替える。

 

 

(……とにかく、ここから離れないと)

 

 

 私は別にヒナちゃんが嫌いというわけではない、むしろダイダイダイスキである。

 先生との絆ストで「ヒナの頭はおひさまの匂い」ということが判明していて、つまりそれはヒナちゃん自身が発生させているヒナニウムがそういういい匂いだということだ。

 好いている人や懐いている人が撫でると猫のようにもなりそうな小動物感を兼ね備え、しかもあのふわっとした声色。

 褒められている時にはあの大きな翼を無意識にパタパタさせている……かわいいですねヒナチャン……

 嫌いになる要素などどこにもないのだ。

 

 周囲の不良や美食研や温泉部には死ぬほど恐れらていて、他の委員たちも一歩引いた場所から眺めてしまう程には敬遠されてしまっているが、私はそんなことをするほどヒナさんを恐ろしいと思ったことは無い。

 むしろ可能ならばベッドに共に入りその髪の匂いを存分に嗅ぎながら小さな体躯をぎゅっとして抱き枕のようにして共にお昼寝をしたいくらいにはだいしゅきなのだ。

 しゅきしゅきだいしゅきなのである。

 

(ッ──スゥ)

 

 

 心の中でも早口は体力を使う。

 爆速でドラムを鳴らし続ける心臓を落ち着けるために深呼吸。

 数回やって落ち着いたところで、私は場所を移した。

 

 私はゲヘナの中でもとても綺麗な万魔殿のトイレへと移動し、そこでフウカちゃんから受け取ったタッパーを開ける。

 そこにはエビフライ、鶏肉、ピーマン、ししとう、れんこん……天ぷら定番の仲間たちが鎮座していた。

 衣はサクッと、中身はじゅわっと……月並みの感想しか私には出せないが、まさに理想的な天ぷら。

 彼女の作る食事を食べる度に思うが、もうフウカちゃんお店出せばいいんじゃないかと思う。

 天ぷらにかぶりついて数分、気づけばタッパーは空に。

 お茶を流し込み口内の油を洗い流して、食事は終わり。

 

 

「ふぅ……あんなうるさい場所じゃゆっくりできないよ……やっぱトイレが一番ってね」

 

 

 タッパーを閉じて天井を仰ぐ。

 またこの後仕事があると考えると、憂鬱。

 本当は仕事などしたくないのに、魂が仕事を求めてるんだ。

 私にはどうしようもない。

 

 

「……戻ろ」

 

 

 午後の始業まであと5分。

 ここから戻れば丁度いい。

 ヒナちゃんたちを避ける理由、それは……

 

 

「……うっし!」

 

 

 今は考えない。




連日は流石に無理だったよ。
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