風紀委員モブの昼休み   作:ふゆうさぎ

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どうやって書いたらいいかわからない。
クライマックスまで書けたことがないから自信がない…


進め

 ベアトリーチェを確保しても、まだこの事件は終わりではない。

 まだやるべきことがたくさん残っている。だけど、その前に先生は話さなければならない。

 サオリ達のこれからのことを。

 これは警察ではなく、先生にしかできない仕事だから。

 

 先生がサオリ達と言葉を交わす。

 サオリが土砂降りの中、土下座までした約束を果たそうとするが、先生は首を横に振った。

 責任から逃れてきたツケを払おうとするサオリに、先生はただ諭していく。

 

 先生の言葉を必死に理解しようとして、わからないとベソをかくサオリ。

 今までアツコたちの為に全てを捧げて、守り抜いてきた。リーダーとしての責任を負ってきた。

 だけど先生は言う。その責任はサオリ達が負う物ではないと。

 サオリは先生にしがみつく。では、私は何の責任を負えばいいのか。聞いていてすぐにわかった、それが今までの生きる理由だったのだろう。

 先生はにっこり笑い、サオリに言った。

 

 

「責任を負うのは、自分の人生そのものだよ」

 

 

 余計にわからないと嘆くサオリに、アツコは聞いた。

 

 やりたいことはあるか? 

 

 かつて同じようにサオリに守られてきて、今はトリニティ生として受け入れられたことで幸せとなったアズサ。一度ゲヘナに侵入してきたから、彼女がどういう人物かは知ってるつもりだ。

 彼女は学ぶことが楽しい、友達と一緒にいることが幸せだ言っていたと、アツコはさらに続ける。

 

 好きな物は何? 

 やりたいことは? 

 趣味は? 

 好きな食べ物は? 

 将来の夢は? 

 なりたいものは? 

 

 どれもが日常生活で交わす会話。だけど、サオリはどれ一つ答えられない。

 それだけで、サオリがどれだけ自分を捨ててきたのかが否が応でもわからされる。

 あの子だって、今はサオリたちを見ないようにしている。きっと、酷い顔をしているからだろう。

 それが怒りなのか、悲しみなのか。今のあの子の後姿は、そのどちらも語っていない。

 

 サオリは聞いた。

 

 

「私は、生きていても……いいのか?」

「その答えは、自分で見つけようね」

 

 

 先生はあくまで教え、導くこと。だからこそ、その答えは教えない。

 優しい笑みで、サオリの頭を撫でた。

 

 

「これでお別れだよ」

 

 

 そっと手を離す。サオリが待ったをかけるけど、先生は振り向かない。

 まだ助けが必要な生徒がいると。

 地下回廊へ向かって歩き……足を止めた。

 

 

「大人の私が保証するよ。答えは、必ず見つけられる」

 

 

 それだけ言い残し、先生は走って来た道を引き返いしていく。

 待っているのは聖園ミカ。ベアトリーチェの置き土産を、たった一人で受け止め続けている。

 先生は助けに行ったんだ。助けを呼ぶ最後の一人を。

 

 

「……さて、私たちはどうするの?」

 

 

 先生の背中を見送って、あの子へと視線を移す。

 どうやら考えあぐねているようで、首を左右に振りながら唸っている。

 

 

「私は先生の手伝いをしに行くよ……って、言いたいんだけど。ベアトリーチェから目を離せないし」

「確かにそうね。じゃあ、先生が戻ってくるまで待機?」

「それは……どうだろう」

 

 

 あの子がスクワッドたちの方を指さした。そこではアツコが着替えを始めていた。終わったらこの場から逃げるつもりだろう。

 いそいそと荷物をまとめるヒヨリに、アツコの身支度を手伝うミサキ。

 まさに逃亡準備といった所だ。

 

 

「スクワッドたちも拘束するつもり? 指名手配犯ではあるけど」

「いや、そうじゃないよヒナちゃん。多分……ほら」

 

 

 準備が終わったのだろう。サオリがアツコたちに何かを指示して……何故かこちらへ歩いてきた。

 全員がサオリの後に続き、全員集合を果たしたスクワッドが私達と向き合う。

 しかし、サオリだけはあの子と目を合わせようとしない。合ったとしても、すぐに逸らそうとしている。

 

 

「……」

「どうしたのかな、サオリちゃん」

「いや……その……」

「ほらサッちゃん。ちゃんと言わないと」

「わ、わかっている! ……その」

 

 

 帽子で隠れる目を覗くために屈むあの子とアツコの言葉に観念したようで、サオリが帽子を脱いで……深く頭を下げた。

 それに合わせてアツコ達も頭を下げる。まるで先生に怒られているシーンのようだが、笑えるものか。

 

 

「……すまなかった。お前を……いや、貴女を殺そうとして」

 

 

 数秒の静寂。

 気付けば、私は血が出るほどの力で拳を握っていた。呆れたという感情と、殺そうとしてやったあの子への行為が頭を過ったから。

 なんとか自制できたのは、あの子が横にいたからだろう。いなかったら手を出していたかもしれない。

 息を吸って、吐いた。繰り返すことで酸素が行き渡った脳は冴えて、冷静になる。

 あの子は何も言わない。ただサオリを見つめるだけ。

 沈黙が流れる中、私が口を切った。

 

 

 

「すまない? それだけで済むと思ってるの?」

「……いや。だから、罪を償いたい」

「簡単に言うわね。償う罪を自分の口で羅列してみなさい。洗脳教育をされていたからといって、実際に事を起こしたのはアナタたちなのだから」

「お前の言う通りだ。私が重ねた罪は、多すぎる」

「でしょうね。過去は消えない。やってしまったことを無かったことには、絶対にできない」

「……さっき先生にも言われた」

 

 

 帽子を胸に抱いて俯くサオリ。言い過ぎなのはわかっている。あの子だって不安そうな目でこちらを見てきている。

 だけど、この役目は誰かが負わなくてはならない。

 先生は道を示した。あの子は苦境から救った。

 誰も、この子たちの行ってしまった悪行を叱っていない。

 悪い事をしてしまったら、まずその状況から救い、叱り、そして正しい道へと導く。

 それが正しい更生の在り方だと、私は思っている。

 だからこそ、続けなければならない。

 

 

「アナタたちがこれから何をするかは知らないわ。ただ、罪からは逃れられない。それは一生背負っていくモノよ」

「覚悟の上だ。私はもう決めたんだ。責任から逃げないって」

「じゃあどうするの?」

「……自分の責任は自分で取る。その一歩を、踏み出したい」

「言ってみなさい。どうやって責任を取る?」

「……聖園ミカを、助けたいんだ」

 

 

 想像通りというべきだろう。ふと、口角が上がった。それは、あの子も同じようだ。

 悪い事をしてしまった。なら次からは悪いことをしないで、良いことをしよう。そう考えるのが人として普通だ。

 洗脳教育をされていても、自分を知らなくても、常識を知らなくても、サオリがそういう善性を備えていると知った。

 私がこれ以上何かを言う必要は無いだろう。

 

 

「……その心、忘れないようにしなさい」

「その……心?」

 

 

 自覚に関しては、追々できるようになるだろう。

 後は任せたという意味も込めて、あの子の背中を叩く。そして、小声で伝えた。

 

 

「ベアトリーチェは私に任せておきなさい」

「……いいのヒナちゃん?」

「いいのよ。あんな叱り方して一緒に居られるほど、私は図太く無いわ」

 

 

 サオリたちに背を向ける。転がっているベアトリーチェが呻ったりしているから、きっとそのうち目を覚ます。

 ベアトリーチェが目を覚ませば、サオリ達はここに留まるという選択するだろう。

 

 

「行ってちょうだい、おまわりさん」

「ヒナちゃん……うん。行ってくるね」

 

 

 帽子をあの子に返す。ただの人へ戻ったベアトリーチェに、この帽子の力は不要だ。

 受け取った帽子を被り直し、あの子はサオリ達に向き合う。

 

 

「サオリちゃん、やりたいことは決まったかな?」

「あぁ。手伝ってほしいことがあるんだ」

「うん! なんでも手伝うよ! それが、おまわりさんのお仕事だからね!」

「ありがとう……私は、聖園ミカを助けたい!」

 

 

 あの子が手を叩いた。それで決まりだね、そう言わんばかりのとびきりの笑顔で。

 スクワッドたちがその笑顔に頷く。進むべき第一歩は決まった。あとは、踏み出すだけだ。

 

 サオリが再び帽子を被り、マスクを装着する。鋭い眼光も、今は少し柔らかい。

 全員が戦闘準備を終える。あの子も警棒と盾を装備して、戦う準備は万全となった。

 

 

「行ってくるねヒナちゃん!」

「ええ、今度は無事に帰ってきなさい」

「任せてよ!」

 

 

 地下回廊へ向けて歩き出す。そして、あの子はピースサインを掲げた。

 

 

「とびきりのハッピーエンドを持ち帰って来るぜっ!」

 

 

 


 

 

 

「問題だらけの不良生徒だとしても、危険に晒されている生徒に背を向ける先生なんて、どこにもいない!」

 

 

 先生がカードを掲げた。聞いたことはあったけど、実際に見るのは初めて。

 大人のカードと言われる、どんな奇跡だって起こせる魔法のカード。

 

 

「私の……」

 

 

 カードが輝く。奇跡が、起きる。

 

 

「私の大切なお姫様に、何しているの!!!」

 

 

 唐突なお姫様呼びに、目が輝いてしまった。王子様……そんな言葉が、ふと浮かんだ。

 白馬に乗ってるわけでもないし、本当に王子様ってわけでもない。だけど、その姿は間違いなく王子様。

 今にも奇跡が起きようとしている中で、地下回廊から足音が聞こえてきた。

 まさかこのタイミングで増援か!? そう思って振り返ると──

 

 

「聖園ミカさん、ですね?」

 

 

 青い服を着た、もう一人の大人がいた。

 隅から隅まで全部青。そして、胸に大きく書かれているのは「警察」の文字。

 私を逮捕しに来たのかと身構えたけど、警察官は私の前で屈んで目線を合わせてきた。

 

 

「たくさん怪我してますね……出血もあります。大丈夫ですか?」

「え、あ……うん」

「良かった。では、戦いが終わるまで後ろの方で隠れていてください」

「えっと……先生にも言ったけど、アレ強いよ?」

「大丈夫ですよ。先生と一緒に戦うのは、私だけではありません」

 

 

 警察官が先生の隣まで歩きながら、指を鳴らした。

 その音を合図としていたのだろうか。音と同時に地下回廊からロケット弾頭が飛んできた。

 バルバラに直撃して、大きな爆発が建物内を土埃で充満させる。

 

 

「な、なに? 何が起きてるの……?」

「待たせたな、ミカ」

「……その声」

 

 

 地下回廊から、数人分の足音。

 煙をかき分けて出てきたのは、サオリ率いるスクワッド。

 アリウススクワッドだ。

 

 

「どう……して……?」

「責任を……罪を、償うためだ」

「罪を……?」

 

 

 サオリは頷いて、先生と警察官の隣に立った。続く三人も横に並び、後姿はさながら全員集合。

 同タイミングで先生のカードの光りが収まる。同時に、スクワッド全員の怪我が瞬時に治った。それどころか、ダメージでボロボロになっていた服すらも、全て元に戻る。

 先生が起こした奇跡は、それだった。

 

 

「先生、感謝する」

「ううん。サオリ達が最初に選んだ道がこれなら、私は応援するよ」

「……これが正しい道なのかはわからない。……だけど」

 

 

 サオリが自らの銃を見つめて、目を細めた。それがどんな意味を持つのか、私には到底想像もつかない。

 一つ確かなことがあるとしたら、次にはサオリは笑っていたことだ。

 

 

「私は、この選択が正しかったと言えるようになりたい」

 

 

 セーフティを解除して、銃をバルバラに向ける。

 先生が一歩引き、警察官が最前列に立って、全員が戦闘態勢を取る。

 スクワッドたちのヘイローが、形が見えるほどに輝き、先生のタブレットと戦術リンクが構築された。

 

 

「皆、準備はいいか?」

「大丈夫だよサッちゃん」

「いつでも」

「えへへ、準備万端です、サオリ姉さん!」

「よし。では、始めるとしよう」

 

 

 ユスティナ聖徒会たちも一斉に銃を構えた。

 バルバラの持つ武器が、火を噴いた。

 

 

「アリウススクワッド、社会奉仕の時間だ」




デカい仕事の波が近づいてきたから更新頻度落ちる…ごめんね。
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