風紀委員モブの昼休み   作:ふゆうさぎ

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ブランクが長すぎて言葉が全然浮かばねぇ…


アリウスの皆とおまわりさん

「それでは皆さん。仲間の帰還を祝って、拍手を」

 

 

 そう多くない拍手が部屋に響く……いや、そんな響くような密室ではないのですが。

 えへへと照れるマイアさん。居心地よさそうに笑みを浮かべる彼女に、釣られてみんなの頬が緩む。

 

 そして何故か、全力で拍手するおまわりさん。

 

 

「お゛か゛え゛り゛マ゛イ゛ア゛ち゛ゃ゛ん゛!!!」

「貴女さっきまで部外者だったでしょうが」

「いやーさっき勝ったわけだし、もう実質家族でしょ」

「誰が家族ですか。家族はあなた以外の全員だけです」

「ファーなんでや。私はママやぞ」

 

 

 無視することにした。なんだこの女。

 

 

「あの、スバル先輩……」

「言いたいことはわかります。自己紹介くらいしたらどうですか?」

「おっと、誰も聞きたそうな表情してなかったからすっかり忘れてたわ」

 

 

 彼女はふざけた様子からコロリと表情を変えて、帽子のつばを指で持ち上げる。

 よく見えるようになったまん丸な目を柔和な笑みで細め、優しい声で言う。

 

 

「私はおまわりさん! みんなに会いに来たんだ!」

「おまわり……」

「……さん?」

 

 

 首をかしげる皆さんに頷くおまわりさん。しかし、ピンとこない皆さんの視線は私に集まる。

 説明してくれ、そう言わんばかりの目にため息一つ。重い口を開いて説明する。

 もちろん、経緯も含めて。

 

 

「彼女は連邦生徒会の傘下である『シャーレ警察』の方です。トリニティとの事情を知って、こちらを視察しに来たそうです」

「シャーレ警察……もしかして、先生って人と同じ大人?」

「その通り、私は先生と同じ外から来た大人だよ!」

「よ、よくここに来れましたね……というか、よくスバル先輩が許したというか……」

 

 

 一人の言葉に目を逸らす。可能ならば言いたくない、情けないから。

 しかしこれは責任だ。この巣を守るためにも避けては通れない。

 

 

「……いえ、私は負けてしまったので」

「!? す、スバル先輩が……まさか、アリウス流で!?」

 

 

 無言で頷く。

 私は負けた。攻撃一つ当てることができずに、あっさりと。

 

 マイアさんを背負いながら、おまわりさんは私から勝利をもぎ取った。

 盾と手錠、たったこの二つだけの武器で……いや武器と呼べるかも怪しいような装備だけで。

 

 最初は良かった。私の銃撃で彼女の行動を制限できていたから。だけど、リロードするために移動しようとした瞬間を狙われた。

 あろうことか、彼女は盾を投擲してきたのだ。

 避けることは容易かった。問題なのは、その盾の大きさ。

 彼女の身長の約9割ほどの大きさの投げられたそれは、私の視界のほとんどを奪った。

 盾の大きさも相まって、一撃必殺の質量攻撃だと見誤ってしまったのが運の尽き。

 盾を避け、視線をおまわりさんに向けた時には、もう敗北は決まっていた。

 

 目の前まで移動してきていた彼女は私の銃を蹴り飛ばし、がら空きになった胴に体当たり。倒れる私に覆いかぶさり、そのまま手錠を。

 一分に満たない戦闘。ブランクがあるとはいえ、情けなく私は負けたのだ。

 

 

「……はぁ」

「どしたん話きこか?」

「結構です」

「そういえば名前聞いてなかったよね。教えてくれないかな?」

「……梯スバルです」

「スバルちゃんね、おっけ覚えたよ」

 

 

 一応、と言いながら彼女は手帳に私の名前を書き記していく。既にそこにはマイアさん、そしてその他の生徒の名前までもずらりと並んでいる。

 口が達者なのか……言い方が捻くれている。コミュニケーション能力が高いということだろう。

 

 

「マイアちゃん。アリウスの外はどうだったかな?」

「えっ、えっと……」

 

 

 マイアさんが私を見る。私が聞くつもりだったのに、その役目すらも奪っていく。大人というのは汚い。

 

 

「構いませんよ。よかったら、他の子たちにも教えてあげてください」

「っ! はい! 外の世界は──」

 

 

 マイアさんは語った。外の世界のこと。

 観たことのない景色。聞いたことのない食べ物たち。文化、人々の営み……アリウスの外の普通。

 大人に都合よくつかわれてしまったこと、外の世界に自分の居場所を見つけられなかったことを。

 

 

「私の居場所は、やっぱりここ……アリウスにしかないんだなって」

 

 

 えへへと笑うマイアさん。それに同意するかのように他の子たちが頷く。

 ここにいる半分ほどは、一度外に出た子たち。そして、マイアさんと同じく帰ってきた子たちだ。

 外のどこにも居場所を見つけられなくて、悪い大人たちにいたぶられて、失意の末にここに帰ってきた。一度飛び立った鳥が、再び生まれの巣に戻ってくるように……彼女たちは、そうしてここにいる。

 だからこそ、トリニティの勧誘に乗って出て行ってしまった子たちに嫌悪感を抱いてしまう。

 そして……

 

 

「スクワッド……」

 

 

 何もかもの責任を放棄して出ていったあいつらが許せない。全てを率いる力を持っていながら、その全てを投げだしたことが許せない。

 話を聞けばどうだ、トリニティの一員として馴染んでいるというではないか。

 私たちのことなんて忘れて、好き勝手に幸せに過ごしているんだろうと思うと、どうしようもなく虫唾が走る。

 今この瞬間ですら、奴らが幸せを享受していることが……

 

 

「スバルちゃん」

「な、なんですか」

「スクワッドの皆が嫌い?」

「っ……」

 

 

 彼女の視線が穿つ。そんなに顔に出ていたかと顔ごと視線を逸らすが、言葉の追撃は止まない。

 

 

「なんとなく理由はわかるよ」

「ぽっと出の貴女に、何が……」

「ずっと気になってた。だって、アリウスの生徒は外に出てこれた子たちだけじゃない。他にももっとたくさんいたはずだって」

「……その通りです。ここアリウスには、未だ多くの生徒が残っている」

 

 

 視線をマイアさんたちの方へと向ける。ここには十数人の生徒がいて、彼女たちは私が面倒を見ている。

 私の腕はそこまで大きくない。だから、ここにいる彼女たちだけでも守りたいと思って、私は必死に日々を戦っている。

 せめて彼女たちの居場所を……巣を守りたいって。守って見せるって。

 スクワッドと連中とは、この役目を共に担うものだと思っていた。

 だから、余計に恨めしいんだ。

 

 

「私は名前の通り、おまわりさんとして活動してるんだ。仕事は主にパトロールとかだけど」

 

 

 彼女は視線をマイアさんたちの方に向けたまま口だけ動かす。彼女たちを見つめる瞳には笑みはなく、申し訳なさが映っている。何をそんなに……そう思っていた。

 彼女が語る。おまわりさんとしてキヴォトスに来て、初めにした仕事。

 口を開けたかと思ったら閉じて、開けて閉じて、それを数回繰り返して、息を吸った。

 

 

「ベアトリーチェは私が倒した。そして、アリウスを解放した気になってた」

 

 

 思考が固まる。おもむろに彼女の方へ顔を向ける。

 彼女は俯いたまま続ける。

 

 

「あの後、正実の生徒たちと一緒に、サオリ達を連れてアリウスの外に出た。その時に、他のアリウス生たちが隠れていたことには気づいてた」

「……何故ですか」

 

 

 彼女は答えない。視線を前に向けたまま。

 私が「気づいていて何もしなかったことに対しての理由」を聞いていると思っているのだろうか。そのくらいはわかってる。トリニティに勧誘してくるトリニティ生から、ある程度の事情は聞いているのだから。

 私が聞きたいのは、そんなことではない。

 

 

「何故、今更になって……!」

 

 

 私の言葉に、彼女がこちらを向く。こちらを聞かれるとは思ってもなかったのだろうか。

 そこまで子ども扱いされていると思うと、無性に腹が立ってくる。

 

 

「今更になって……かぁ」

 

 

 マイアさんたちの方からの賑わいに反して起きる沈黙。考えている素振りもなく、きっと結論は出ているのだろう。

 ただそれを、言葉に出すかで迷っている……私にはそう見えた。

 

 

「誰かの命令で、ですか?」

「違う」

 

 

 即答。

 悩むために泳がせていたであろう瞳が、しっかりとこちらと合う。そして、彼女の顔には「しまった」の文字。

 一度合ってしまえばもう逃げられまい。さっきの戦闘の仕返しと言わんばかりの私の行動に、表情に、彼女は少し頬を緩めた。

 一度目を閉じて、自分を落ち着かせようとしてなのか、呼吸を数度。目を開くと同時に、口を開いた。

 

 

「大人として、子供たちの助けになりたいから」

 

 

 ありきたりな言葉だと鼻で笑ってしまう。そんな私の行為に、彼女は表情を崩すことはなかった。

 

 

「ではどうするつもりなのですか? まさか、アリウスの外に連れ出すとか?」

「そんなことしないよ。だって、スバルちゃんたちの居場所はここなんでしょ?」

「……」

 

 

 感心した。こういう時、こんな劣悪な環境から抜け出させることを第一に考えるのが普通だろうに。

 彼女は一発で正解を引き当てた。もしアリウスの外に出ようなんて言ってきたら……いや、それは考えなくていいだろう。

 

 

「みんなを見て、やりたいことを思いついたんだ。できれば、スバルちゃんたちみんなにも手伝ってほしい」

 

 

 彼女は立ち上がり、手を叩く。一気に注目が集まり、全員がおまわりさんの言葉を待つ体勢になる。

 先ほどとは打って変わって、とびきりの笑顔を浮かべる。そして、優しい声色を作って言った。

 

 

「みんなでご飯、食べよう!」

 

 

 


 

 

 

「あれ、あの子からの電話だ」

「珍しいね。おまわりさんになってから一度も会えてなかったのに」

「ど、どうしたんでしょうか急に……もも、もしかして私たちを逮捕しに!?」

「あの子のことだし、それは無いと思う。となると……依頼かな」

「くふふ~! 久しぶりに大きな依頼、来たかもね!」

 

「はい、便利屋68の陸八魔アルです。要件は何かしら? おまわりさん」

 

 

 


 

 

 

 うわーん! 話を聞けば聞くほどアリウスの子たちが純粋すぎます! 

 しかもその純粋さと無知さを悪い大人に利用されて心に傷をつけて……うーん、殺すッ!!! 

 おい悪い大人たち聞いてるか。もうお前らの居場所とかいろいろ聞きだしたからカイテンジャー連れて消し飛ばしに行ってやる。

 今ならカイテンスクワッドもオマケで連れてってやる。覚悟の準備をしておいてください、いいですねッ! 

 

 どうもおまわりさんです。今絶賛ブチギレ中でございますが、そんな中でも大切にしたいことがあるのです。

 それは食事。腹が減ってはなんとやら。花より団子ならぬ、怒りより食事ですね。

 食事の大切さは人生の100割を占めると言っても過言ではありません。過言かもしれないけど過言じゃないんです。なんせ食事は人間が生きるために必要な物理エネルギーそのものですからね。

 

 スバルちゃんに連れられてきたこの場所にいるアリウス生のみんなは、思った以上に痩せていた。

 栄養失調になる程ではないものの、明らかにカロリーが足りていない。辛うじて日常を生きれる程度のエネルギーを、節約しながら使っていると言えばいいだろうか。

 であれば、やるべきことはたった一つ。至極単純明快な解決策。

 

 めしを食うでごわす! 

 

 ということでアルちゃんに電話ですのよ。

 

 

「もすもすひねもす~! ハァイ、みんなのアイドル、おまわりさんだよ~!」

『あら、随分と出世したのね? 今のところTVでも見たことないけど』

「三十路近くのババアのアイドルなんて需要無いからね、今の数秒だけの顕現だよ」

『……それで、依頼は何かしら?』

 

 

 今までのお付き合いがあるから、きっと過酷な依頼だって請けてくれるだろう。

 アルちゃん、信じてるからね! 

 

 

「おつかいを頼みたいんだ! ちょっと離れた場所までなんだけど」

『本当に便利屋として使うのね……まぁいいわ、どこに何をもっていけばいいかしら?』

 

 

 電話越しでも伝わってくる「なんでも言ってごらんなさい」という雰囲気。流石アルちゃんだぞ! 

 

 

「えっとね……来てほしい場所はアリウス自治区!」

『……はい?』

「お米50㎏に業務用の固形カレーを10箱。これを全部一度に作るから、具も結構な量が欲しいよね。あ、あと特大のお鍋と、お肉を焼く用のフライパンとガスコンロも欲しいな。あと大量のお水をね──」

『むり』




可能な限り連日投稿できるように頑張るよ。
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