風紀委員モブの昼休み   作:ふゆうさぎ

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毎日投稿する元気なんかねぇよ


さいあく

 標的であった不良たちを引き連れて正実の建物へと戻り、まず行ったのはツルギたちへの報告。

 おまわりさん、そしてアリウスの生徒たちが不良たちの制圧をやったという情報に、二人の目の色が変わる。

 少しのやり取りの末、この話は上の人間、アツコたちティーパーティーにまで上がることとなった。

 早朝からの任務だったこともあり、私たちのこの件はツルギとハスミのツートップに引き継がれ、今日の仕事は上りとなり……昼間に手持ち無沙汰になることは滅多になく、想定外の余暇がここで生まれた。

 しかし、その余暇で何かをしようと思えない。私の心は、ざわついていた。

 

 

「サオリ」

「ハスミ? どうした」

「いえ、心なしか落ち着いていないように見えたので」

「……隠せない程、か」

「彼女とアリウスのこと、気になりますか?」

 

 

 ハスミの問いかけに素直に頷く。どうしようもない心のざわつきは、間違いなくこれだろう。

 

 トリニティに来てからも、アリウスに残っていた子たちのことが気にならなかった日はない。毎日毎日、私たちだけがここにいていいのかと自問自答を繰り返していた。自分のこと、アツコたちのこと、トリニティに来れたアリウスの子たち。

 そして、アリウスに残る選択をしたアリウスの子たち。考えなかった日は、一度だってない。

 

 しかしそんな中、突然アリウスの生徒が外へ出てきているなんて聞いて、落ち着いていられるわけがない。

 それも、彼女がアリウスの生徒を率いていたなんて聞けば、猶更。

 

 

「最近彼女とは会えていないそうですね」

「仕事のために遠出すると言っていたから……アリウスの生徒と一緒にいたことを聞いて、まさかとは思っている」

「行き先はアリウス……可能性はゼロではありません。ですが、既にサンクトゥス派とパテル派がアリウスの復興に尽力していると聞いていますが」

「……事実上のトップがいない二つの組織が、まともに機能していると思うか?」

「……まさか」

「可能性はゼロじゃない。だが、それを一方的に決めるのは早計だろうな」

 

 

 私は正実の制服を脱いで、いつもの服と帽子を被る。アリウスの時からずっと被っている、慣れた感触の帽子。

 トリニティに来てからも変わらない腕章。私を私たらしめる、骸骨の腕章。

 

 

「私はこれからシャーレに行ってくる。先生なら多少情報を持っているはずだ」

「朝早くから動いていたのに、無理してはいませんか?」

「問題ない。彼女が疑われているのであれば、私はそれを解決したい」

 

 

 本当にあそこにいたのがアリウスの生徒なのか、そしてそれを率いていたのは本当に彼女なのか。それを考えあぐねる理由は、エデン条約の件があったからに他ならない。

 アリウスと大人。もし本当にアリウスを率いていたのが彼女であったとしても、世間から見た時にそれが良い様に見られることはない。

 だから、ティーパーティにまで話があがってしまうのだ。

 

 

「本当に好きなのですね」

「……あぁ、大好きだ」

 

 

 大好き、素直に出てきた言葉。

 私を助けてくれて、私の面倒を見てくれて、ずっと一緒にいてくれて……いや、違う。きっと私は、彼女に甘えたいんだ。甘えたくて仕方がないんだ。

 どうしてだろうか……わからないけど、ずっと甘えていたい。彼女に抱きしめられたあの時の感触が忘れられないから。

 とても大きくて、全てを包み込んでくれる大きな大きな腕。

 あの腕の中にいるときだけは、何もかもに安心できる。あの腕の中にいるときだけは、私は守られているって思えるから。

 

 だから、早く解決させなければならない。

 彼女の腕に、また抱かれたいから。

 

 

「行ってくるハスミ。何かあったら連絡をくれ」

「わかりました。お気をつけて、サオリ」

 

 

 ハスミに見送られながら正実の建物を出る。向かう先はシャーレ。

 先生から情報を聞き出して、その後は自分の足で動くとしよう。

 今日の夕飯は何がいいか……あぁ、彼女がいてくれたらな。

 

 

 


 

 

 

「ハスミ、何か面白いことでもあったのか?」

「ふふ、思ったよりも素直なんだなと改めて思いまして」

「……サオリのことか。あまり揶揄うんじゃないぞ」

「あんな家族愛を見せられて、もう揶揄うことなんかできないですよ。そこまで良い性格はしてませんから」

「随分素直だな?」

「ツルギは私のことを何だと思っているのですか???」

「意地っ張りの食いしん坊でダイエットにいつも失敗してるやつ」

「表出なさいツルギ。叩きのめしてやります」

「付き合ってやる。ダイエットになるといいな」

 

 

 


 

 

 

 日が暮れ始めるころ。お空がオレンジ色に染まって綺麗ですわね。

 どうもおまわりさんです。これからスバルちゃんと夕方デートです。どうだ羨ましいだろ。

 スバルちゃんには私のセンス皆無な私服を着てもらっています。アリウスの服のままだと流石にすぐばれるだろうし、今のアリウスの立場的にそれは避けたかったから仕方ないんだよ。

 今のスバルちゃんの服装は、白Tシャツに青デニム生地のオーバーオールという単純な組み合わせ。そこに帽子を組み合わせて目元を隠すというかんぺき~な変装である。

 やっぱセンスがない? 言うんじゃないよ。

 

 

「これが、私服……?」

「気に入らなかった?」

「いえ、支給された服以外着たことが無かったので、新鮮で」

「……帰りにパジャマ買っていこうか」

「ぱじゃま……?」

 

 

 聞いたことのない名前だったのか、妙な語呂であるパジャマという言葉に首をかしげる。

 パジャマという名前も聞いたことが無かったかと、いつも変わらない服を着ているスバルちゃんたちに合点がいった。

 そこから考えられること。多分、アリウスの服以外持っていないのだろう。

 

 

「パジャマはね、寝るときに着る服だよ。家でのんびりするための服、かな」

「……贅沢な服ですね」

「かもしれないね。でも、きっと着るだけでリラックスできるよ」

「では、人数分買っていきましょう」

「ふふ、決まりだね! スバルちゃんとお買い物デート!」

「違います」

「スバルちゃん!?」

 

 

 間をおく暇もなく一刀両断されてしまった。くそう、せっかくスバルちゃんとデートできると思ったのに。こんなイケメン顔の女の子とデートできるなんて滅多にないんだぞ? 

 私がデートしたことあるのはサオリとラブちゃんとヒナちゃん。モブ子時代にはイチカちゃんとサツキちゃんともデートしたよね。もしかして私、思ったより遊んでる? 悪い大人じゃんね? 

 

 カタコンベから出て十数分。私たちはとある小さな駐車場に辿り着く。

 トリニティの郊外とも呼べようその駐車場にあったのは、至って普通の車が1台。ドアに「連邦生徒会(公用車)」と書かれていること以外は。

 そう、実はリンちゃんに事前に連絡して車を一台ここまで手配してもらったのだ。

 もちろん、先生やトリニティのティーパーティーには内緒で。

 

 

「この車で行くのですか?」

「そっ。帰りにお買い物もあるし荷物乗る方がいいしさ。ほら乗って」

「し、失礼します……」

 

 

 どこか緊張した様子のスバルちゃん。車にはあまり乗ったことが無いのかもしれない。

 そんなスバルちゃんも車に揺られ始めるとあら不思議、あっという間に瞼を重そうにし始める。不思議だよね車って、乗ってると眠くなるんだもん。だから居眠り運転もなくならないのですけどね。

 

 暗くなりはじめてから車を走らせたから、シャーレの建物にたどり着くころには当然空は暗くなっていた。

 時計を見れば、公園の街灯も消え始めるような時間。市街地なのに人っ子一人いないような時間に、私たちはシャーレにたどり着いた。

 スバルちゃんも目を擦りながら車から降りて、私は久しぶりに建物の敷地をまたいだ。

 

 

「そりゃ当然、誰も……うわ」

 

 

 シャーレの建物の入り口には、今誰がどこにいるかを簡単に示す電子標識がある。それには、まだシャーレに先生がいることを示していた。

 先生のお仕事がいつも山積みになっているのは当然だが、まさかこの時間にまで居残っているとは思わなかった。

 

 

「あー……どうしよ。私の部屋、シャーレの隣だしなぁ」

「どうしました?」

「ちょっとトラブル。でもま、問題はないかな」

 

 

 私はスバルちゃんの帽子を今よりももっと深く被るようにと言い、シャーレ警察のある階までエレベーターで昇る。

 チンと子気味良い音を立てて止まったエレベーターが扉を開くと、正面には未だ明かりの灯る部屋が一つ。先生のいるシャーレの部屋だ。

 こんな時間に来客があるとは思っていなかったのか、部屋の奥で書類の山に囲まれている先生が顔を上げた。そして、大声。

 

 

「おっ、おまわりさん!?!?」

「久しぶりですわ先生~。私がいない間もちゃんとお仕事してましたかぁ?」

「……」

「おい仕事しろよ」

 

 

 ふざけて聞いたのになんで初手から説教が始まる様な沈黙を召喚するんだこいつ。知ってるよ、どうせ生徒とイチャイチャしてたんだろう? 許せねぇなぁ。まぁいいもん、私だってスバルちゃんと実質デートだし。

 先生に対しての存在しない記憶に口を尖らせていると、先生が小さな息を吐いてから、真面目モードの顔に変わった。

 行き先を伝えずに数日席をはずしていたんだ、当然そうなるだろうと、少し姿勢を正す。

 

 

「この数日間、どこに行っていたのですか?」

「リンちゃんから聞かされてないなら、私の口からは言えないです」

「アリウス……ですよね?」

「……どこで知りました?」

 

 

 リンちゃん自身、まだ先生には伝えるべきではないとこの件に関しては口を噤んでいたはず。それにも関わらず知っているということは、どこかで私の姿が目撃されたということ。それも、アリウスの子たちと一緒にいるところを。

 思い当たる節は昨日の買い出しの時。不良を倒すときに誰かに見られたか、不良が私たちのことを誰かに喋ったか。

 

 

「サオリから聞いたんです。当初おまわりさんと合同で行う予定の任務を、先に誰かが解決させたって」

「あー、やっぱ不良の子たちか。あの時の私、制服着てなかったんだけどなぁ」

「盾と警棒だけで戦う大人の女性、多分キヴォトスじゃおまわりさんくらいですよ?」

「たしかに……」

 

 

 そもそも身バレする要因が武器が特殊すぎたことにあったかと反省する。しかし、生徒相手に鉄砲を持ち出す気にはなれない。こればかりは甘んじて受け入れるしかない弊害である。

 

 

「それで、本当にアリウスに行ってたんですか?」

「まぁ」

「……リンちゃんに、なんて言われたんですか?」

「それを知るに足る情報を持ってるか、それによります」

「……どういう意味、ですか?」

「アリウスの現状。先生は、どう把握していますか?」

 

 

 私の言葉。先生は少し考えてから答えた。

 

 

「ミカとセイアの分派が、復興を担当してると聞いてますが……」

「……行きましょうスバルちゃん」

 

 

 先生の顔を見ることなく、私は踵を返す。先生は待ったの一言もかけてこない。それが答えだ。間違いという、答えだ。

 スバルちゃんの手を引いて隣の部屋、シャーレ警察の部屋に入る。埃の少しでも積もっているだろうと思って電気を点けるが、部屋は綺麗そのもの。書類を置きに来てくれたであろう連邦生徒会の子が掃除をしてくれたのだろうか。

 仕事用のノートPC、それと山のように積もっている書類をカバンに詰め込んで、私たちは部屋を後にする。

 シャーレの中で視線をこちらに向けたままの先生。エレベーターに向かう前に真実の一つでも伝えておくべきか……余計なことを考えて、足を止めたのが悪かった。

 

 気づかなかった。エレベーターが動いていたことに。

 チンと子気味良い音が響く。

 扉が開いて、目が合った。

 

 

「……久しぶり、だな」

「サオリ……」

 

 

 スバルちゃんを連れてる状態で、一番会いたくない人……サオリが、来てしまった。




はやく爆発させてぇ〜(人の心)
ちょいと2日くらい休むぞ☆
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