風紀委員モブの昼休み   作:ふゆうさぎ

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2日に1回投稿ならなんとかできそうかな
創作する体力落ちたなぁ


内乱

『パテル派、そしてサンクトゥス派の臨時代表の方々に通告します』

 

 

 彼女が一時シャーレに戻り、スバルを連れて再びアリウスに帰っていった夜の翌朝。

 全生徒が登校を済ませ、各々が学業や部活動に精を出そうとする直前の時間帯。

 トリニティの校舎に、桐藤ナギサの声が響き渡った。

 

 

『今すぐ、私の下へ……ティーパーティーのテラスへ来なさい』

 

 

 無機質でいて、そして畏怖を感じる声色。これを聞いている生徒全員が同じことを思っているだろう。

 誰が、何をしでかしたんだと。

 

 私たちは今、先生と共に「臨時代表」を名乗っているトリニティの生徒を尾行している。

 ギリースーツを纏い草むらに身を隠し、ナギサの言葉への反応を伺っている。

 

 エデン条約の一件以降、ティーパーティーから降ろされてしまったミカ、未だ療養中のセイアに代わり、とある生徒が各派閥から一人ずつ、臨時代表として出馬してきたのは真実だ。

 彼女たちが現にそういう立場の扱いを受けていることが何よりの証拠であるものの、残念ながらその席を確実なものとしたわけではない。

 三つのうちの二つの席が空席のまま、一人そこに残っているナギサがトリニティの事実上のトップであることは、今のトリニティ全生徒の周知の事実だ。

 

 

「先生、どうする」

「まだ動いていないから、もう少し」

「えへへ……久しぶりに集合できてうれしいですね……!」

「はしゃがないでヒヨリ。バレるでしょ」

「少し位はいいんじゃないミサキ?」

「皆静かにしろ……と言いたいが、無理もないか」

 

 

 草むらに隠れるのは私含めて5人。

 私、アツコ、ヒヨリ、ミサキ、そして先生。久しぶりのスクワッドの集合。それには当然、経緯がある。

 

 彼女が帰った後、すぐに先生はナギサと連絡を取り、会談する席を作った。

 先生は噂や情報に強い生徒たちと連絡を取り合うことで情報を得て、その真偽を確かめるべく早急に向かったテラスで待っていたのは、日を跨いでから数時間経っているにも関わらず、制服のまま紅茶を嗜んでいたナギサだった。

 

 ナギサは先生の質問に答えるまでもなく、アリウス復興の件をぽつりと零した。

 全ては、私の責任だと。

 

 

「……ナギサ先輩、あんなに思いつめなくてもいいのに」

「同感。彼女のせいじゃないでしょ。実害を加えてきたのが他所にいるなら、責任はそこにある」

「確かにそうかもしれない。だが、それでは面子が立たない……指導者としてのプライドなのかもしれない」

「む、難しいことはわかりませんが……ナギサさんが優しい人ってことはわかります……えへ」

 

 

 結論から言ってしまえば、アリウス復興はパテル派、サンクトゥス派によって妨害されていた。

 

 エデン条約に纏わる一件が片付いた直後、臨時代表を名乗る生徒が先生と接触し「アリウスについては我々二分派に任せてほしい。先生の手を借りずに解決する」と申し出たそうだ。

 当然それはナギサの耳にも入っており、ナギサはそれを了承したらしい。

 ナギサはナギサで、私たちのテロによって破壊された古聖堂の復旧、市街地への被害の確認及び復旧、そして後進であるアツコの教育などなど、やることに追われていたために了承したらしいのだが、今思えばそれすらも彼女たちの思惑通りだったのだろう。

 ナギサが別の仕事にかかりきりになれば、アリウスについて「任された」という確かな言葉を良い様に使える彼女たちの独壇場。

 何をどうしてこんなことをしたのかは不明だ。しかし、結果こうなっているのであれば……そこに悪意があったことは間違いない。

 

 

『事実上出頭命令です。その気があるならば、私に今すぐ連絡を。貴女方の本日の出席は既に取っていますので、学園内にいることは知っております』

「うわ……畳みかけるね」

「こ、怖いです……!」

 

 

 ミサキとヒヨリの言葉に同感しつつも、目の前で右往左往している二人を観察し続ける。自分たちへの言葉だということを理解しつつ、どう行動すべきか思案しているようだ。

 やましいことがなければ真っ先に連絡を入れているはずだが……つまり、そういうことなのだろう。

 

 

『あと三分待ちます。連絡を寄越しなさい』

 

 

 ブツリと放送が切れる。それと同時、二人の顔が青ざめていく。出頭すべきか否か。今出頭したらひどい目に遭うだの、後で出頭した方が痛い目に遭うだの、そんなくだらないことでの言い合い。

 時間は待ってくれないということを忘れているような諍いに、三分は無情な数字だった。

 スピーカーに電源が入る。少しだけ大きな音と共に放たれたのは、深く、そして大きな大きなため息。

 

 

『はァ~……わかりました。そちらがその気でしたら、こちらも手段は選びませんので……悪しからず』

 

 

 まぁそうなるだろう、予想は的中した。草むらからいつでも飛び出せるようにギリースーツを脱ぎ、そして長年使ってきた愛銃のセーフティを解除する。

 

 

『スクワッドの皆さん、よろしくお願いします』

 

 

 そう。私たちが久しぶりに集合し、こうやって先生と共に身を潜めていた理由はコレ。

 桐藤ナギサの一言で正義実現委員会を私的使用し、他分派を攻撃する……事実上の内乱を起こすことは、正義実現委員会がフィリウス派閥、ひいてはトリニティの政治活動に密に関与していることを意味してしまう。それは今後のトリニティ学園の運営のためにも避けなければいけない。

 それを考慮したうえで選ばれた人選は、事の渦中にいる私たちだった。

 水面下で動いてくれた桐藤ナギサのおかげで、私たちは正式に「アリウススクワッド」としての活動を再開するに至ったのだ。

 

 

「スクワッドって……ま、まさか!?」

「だってあいつら、聴聞会で集団での行動の制限がかけられてるって──」

「なんだ、それが解除されたことも知らないのか」

 

 

 隠れるのをやめて草むらから出る。ぞろぞろと出てくる私たちに、臨時代表の二人は腰を抜かしたようにしりもちをする。

 懐かしいこの雰囲気、相手を「消す」際に使っていた声色と殺気。長らく出していなかったからもう出せないと思っていたが、身体に刻まれた技術はそう衰えやしなかった。

 

 

「どうしたんですか先輩? 臨時代表なのに知らないなんて……おかしいですね?」

「ど、どうしてアンタたちが、アリウス分派のお姫様がここにいるのよ! それに、ナギサ様がスクワッドを使うって……コレって内乱じゃない!」

「そうよ! タダで済むと思ってるの!? ナギサ様ができたばかりのアリウス分派側についてるからって、2対2の構図になったとでも思ってんの!?」

「思ってませんよ。だって、事実は3対1ですから」

「……は?」

 

 

 飄々と語るアツコの言葉。信じられないと顔を歪める臨時代表の一人が、もう一人を睨みつけた。知らないと首を全力で横に振るのを他所に、少し離れた場所から声がかかる。

 久しく聞いていなかった声。そして、もう一人。

 

 

「サオリ。久しぶりだな」

「あ、アズサ!? どうしてここに!? それに、そいつは……!」

「やぁ。こうして直接会うのは初めてだね、錠前サオリ」

「百合園……セイア!?」

 

 

 アズサが押す車いすにちょこんと座る百合園セイア。療養中だと聞いていたのだが、どうしてここに。

 私の顔にそのまま書いてあったのだろう。持て余した袖で口を隠してセイアはクスクスと笑う。

 

 

「元々療養なんて終わっていたんだ。だがナギサが大事をとってと煩くてね」

 

 

 ありがとうアズサと言い車いすから立ち上がる。丸い美味しそうな鳥を肩に乗せて、セイアは臨時代表たちを見下した。

 心底つまらないことをすると、抑揚のない声色が、二人の糾弾を始めた。

 

 

「ミカのパテル派はともかく、サンクトゥス派代表である私に相談もなく事を進めていただなんてね」

「お、お待ちくださいセイア様! 私たちはアリウスに陥れられた貴女のことを想って──」

「そうか、憐れんでの行動だったか……であれば尚、気分が悪いな」

「そ、そんな……」

 

 

 睨むでもない、怒るでもない。心底呆れ、つまらないと冷たく目を細めるセイアに、二人は膝を折った。傍若無人が通用しないと理解したのか、はたまた諦めたのか。

 彼女たちは銃を捨てて、降参の意を示した。セイアの一声に私たちの銃を収めて、二人を拘束して立ち上がらせる。

 二人の前に立ったセイアが、これから忙しくなると小さく呟いて、続けた。

 

 

「アリウスについての話を詳しく聞かせてもらおうか。ナギサたちのいる、テラスでね」

 

 

 


 

 

 

 アリウスの校舎の一部屋から賑やかな声が漏れる。

 所々空気が入って膨らんでしまっている白色の壁紙は無機質なアリウスの雰囲気を和らげ、天井から雑に吊られている照明は部屋全体を照らし、床全部に敷かれたフォームマットの上に並ぶは色とりどりの寝袋。

 そしてそこにいるのは──

 

 

「すごい……着心地が良い!!!」

「なにこれぇ……いい匂い……」

「肌触りが良すぎるよぉ……全身下着で包まれてるみたい……」

「軽いし動きやすいし、すごく伸び伸びできる……」

 

 

 各々が好きな色を選び袖を通した、パジャマ姿のアリウスの子たち。

 

 は? 可愛すぎるんだが??? 

 

 

「可愛すぎるんだが???」

「……そういうことは胸に留めておいてください」

「おっと、口に出ちゃってたか……失敬」

「まったく。一応、私たちの保護者のような役割なんですから、あの子たちの前でだけでもいいのでしゃんとしてください」

「スバルちゃんに言われちゃ聞かないわけには──は?」

「……な、なんです?」

 

 

 隣に立っていたから全然気が付かなかった。

 パジャマ姿のスバルちゃん。

 可愛すぎるだろなんだこの生き物イケメンと可愛いが完璧に両立されているパーフェクトスバルちゃんなのかいや違うどちらかというと可愛いが勝っているかもしれない見てみろこの薄紫色の水玉模様のパジャマを少し大きめのサイズの方がゆったりできると思ってワンサイズ大きいパジャマを買ってきたおかげで可愛いパジャマ+萌え袖のスバルちゃんが拝めているんだ最高だろうしかもここに色気まで感じるじゃないかまだドライヤーを用意できていない関係で風呂上がりはタオルドライしかできない環境なのだがそれが功を奏したのかスバルちゃんの髪の毛が若干湿気っててところどころ跳ねていて風呂上がりの女の子感がとてつもない色気として醸し出されているつまり今のスバルちゃんはイケメンと可愛さと色気の全てを兼ね備えた最高で無敵のスバルちゃんってことだどうして天はスバルちゃんに二物も三物も与えたんだこんなのお出しされて無事でいられるわけがないだろスバルちゃんしゅきしゅき。

 

 

「……大丈夫ですか?」

「スバルちゃん、好きだよ──」

「寝言は寝てから言ってください。寝ます」

「うぇ……うん、おやすみ」

 

 

 スバルちゃんは手を叩いて全員に寝袋に入るように指示を出した。

 この寝室を作るのに時間がかかってしまい、時計の針は既に12を回りそうになっている。皆もパジャマではしゃいでいたのも束の間、疲れで船をこぎ出している子が出てきた。

 皆スバルちゃんの指示に素直に従って寝袋へとモゾモゾ入っていく。芋虫が何匹もできあがる頃、寝袋から頭だけを出すスバルちゃんと目が合う。

 

 

「電気、お願いできますか?」

「任せて。私はもう少し起きてるから、何かあったら来てね」

「わかりました。……おやすみなさい」

「うん、おやすみスバルちゃん。みんなも、おやすみ」

 

 

 電気を消して、扉をそっと閉じる。

 廊下に出ればいつものアリウスの空気。この空気を薄れさせた唯一の部屋がここだけだということに、私自身の力不足を嘆かざるを得ない。

 まだまだやることは山積みだ。私がいなくても、この子たちだけで維持できる生活インフラを整える。それが、私の仕事。

 おまわりさんとしてではない、一人の大人として……子供を守るべき大人として。

 

 この子たちの『今すぐ』の声に、応えるために。

 

 頬を叩く。重くなった瞼にまだ閉じるなと痛みで命令して、私は廊下を歩んでいく。

 少し離れた場所にある私の仕事部屋には、持ってきた書類の山が大量にある。アリウスの生活改善、その進捗報告に加えて日頃の書類仕事。

 風紀委員の頃とは比べ物にならないほどの量を前に、私は栄養ドリンクを胃に流し込んだ。




今すぐ…さて誰の言葉だったかな?
行動は違えど、おまわりさんの役目は「手遅れ」に対する「今すぐ」ですからね
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