【禁じ手】と言う言葉が存在する
何かをする中で様々な理由で禁止になる行為の事だ
中でも有名なのは江戸時代に無双を誇った力士【雷電為右衛門】、彼はその余りの強さから【張り手・鉄砲・閂・鯖折り】の4つの技を禁じ手としていた
同様にボスカこと上泉伊勢守もまた自らに禁じ手を科していた、その内容は【剣を抜く事】
その禁じ手は前世で日野長光と出会うまで50年以上破られる事は無かった
しかし、その禁じ手の解禁は厳密には日野長光の技によって強制的に解かされた物であり上泉伊勢守の意思で行われた物ではなく、結果として自らその禁じ手を解いた事は50年以上の間で一度も無かった
彼は今日、その禁じ手を自ら解いた
「残念、前の儂なら今の一撃で死んじゃってたかもね」
「……………………やはり貴様は化け物ジジイだ」
そう言うアルフィアの前には自らの切り札を凌ぎ切ったボスカがいた
ボスカが無事で居られた理由は1つ、アルフィアと同じ様に全てを破壊する力を持った
そして
【ジェノス・アンジェラス】に対処した際、第二の門を開いていたから
第二の門とはその名の通り人間と神を隔てる門の1つでありその門を開いた者は自らの内にある力のみならず自らに向く外からの力すらも知覚出来るようになると言う
最も分かりやすい力は重力、更に今回に限って言えばアルフィアの【ジェノス・アンジェラス】
これらの力を知覚する事でボスカは最適な動きを知ることができその通りに動いたのだ
そして、その門の名前こそ
「ゲボッゴホッ」
アルフィアは止まらない咳に口を押さえる、赤い
「……………………やはりチミ、病人じゃったか」
ボスカは門を閉じ刀を鞘に戻すとアルフィアに問い掛ける
「最初から可笑しいと思っとったよ。何時まで経っても本気を出さないんだから。そりゃあそんな物抱えてたら本気になれないよね」
「………………………………」
「チミ、まだやり残したことがあるでしょ?」
「…………お前に何が」
「分かるとも、儂もそうだから」
思い起こされるのはこの世に来る前の最後の記憶
日野長光との戦い
互いを傷付け互いを殺し、そして互いを愛した
そんな戦いの中で上泉伊勢守は日野長光を
残したのは呪いとも取れる意思と愛刀のみ
「……………………もう良いだろう、殺せ」
アルフィアはそう言いボスカは刀を走らせるとアルフィアの体が倒れる
「やり残したことがあるなら今の内にやっておきなさい。死ぬのはそれからでも遅くない」
ボスカはそう言い残しリヴェリア達の元へ向かう、リヴェリア達も地下から現れた龍を倒し終えており主犯であるエレボスも捕まっていた
「兄上!!アルフィアは!?」
「うん…………まぁ、強かったよ」
「そうではなく!!倒したのですか?」
「うん、
「流石ですボスカ様!!」
「ハイエルフってやべぇな、Lv1だろ?」
「兄上を普通の冒険者に当て嵌めるなと言っただろ」
「ハァ〜疲れた」
「お疲れ様でした。後はここから出るだけです」
ボスカ達はエレボスを連れ地上に戻る。その後エレボスはアストレアの手により天界へ送還された
こうしてオラリオ最悪の時代は終わりを告げた
18階層
ボスカ達が立ち去った階層で放置されたアルフィアは気が付くと天井を見上げる形で倒れていた
周りを見ればまだ完全とは行かぬまでもある程度の修復が終わり遠くの方では命の芽吹きが感じられた
アルフィアは自身の身体に残る刀の痛みに触れるが出血は見られない
「………………………………峰打ちか、食えないジジイだ」
アルフィアはそう言うと自力でダンジョンを脱出しこれからの事を考える。思い浮かんだのは亡き妹の忘れ形見
「北か、すまんなザルド、私はもう少し生き恥を晒す事にするよ」
オラリオと亡き連れにそう言い残しアルフィアは人知れずオラリオを去った
7年後
物語は1人の少年がオラリオを訪れる事で大きく動く事になる